決闘を制して
長め。センシティブ注意
その審判に周囲がざわつき始めた。
僕らを囲んで遠巻きに稽古や打ち合いをしていた者たちも――興味深そうに噂するからだ。
「後日、決闘の通達をする。それまで私闘を禁ずる。……二人とも、分かったね? この場にいる全員が証人だ」
「……………チッ。好きにしろ。俺はもう行く」
骨までは到達しなかったが、満足に歩けるほどでもないのだろう。
仏頂面の男は"虚空から取り出した"ポーションをこぼしながら歩き出した。
メンバーの男二人も追従するように部屋を出ていく。
「あの子、見てたけど凄まじいな。何の『ギフテッド』だ? だけど、これでやつのプライドもへし折れたぞ。期間はどれくらいだ」
「"ベテランVSルーキー"か。本格的な決闘になりそうな雰囲気だったな」
「レベルはまだ3だって聞いたぜ? 並行詠唱にあの身のこなし、どこの派閥のもんだ?」
ザワザワとやかましい雑音がこだまする。
不快な事、この上ない。
とくに無断で《鑑定》されるのは、想像以上にムカっ腹が立つ。
「―――そこまでだ。本人に確認をとらずスキルを使用したもの、またその情報を流布したものはギルド規定により、ランクの降格もありうる。今なら厳重注意と多少の罰金で目をつぶろう」
職員がニヤニヤと笑う。
「チクショウ。いくらだよ」
「金は払う。ポイントの没収はやめてくれ」
「それはお前たちの心次第だ」
そう言って巻き上げた金の一部を――職員のおじさんは、僕にも渡した。
現金で『2万円』と『5万G』ほどの額を【フレンド】のプレゼント機能で受けとった。――こういうの、賄賂と呼ぶんじゃ?
「よし、この話は他言無用だ。表沙汰になろうが痛くも痒くもない。だが、余計な波風立てるのも趣味じゃないんでね」
トントン拍子で話が決まっていく。僕とマナは終始置き去りにされて、大きな権力には逆らえなかったのだ。
このギルド職員のモラルはどうかと思うが、正式な手続きを踏んだことになったらしい。大人には大人の事情があるのだろう。
―――だが、そんなことは一切合切どうでもいい。
「なんか、すごいことになったね」
「…………」
「ほら、エゴサしたら出てきたよ? エイくんがあの人に喧嘩を売ったみたいに言われてる」
「…………………違うっマナが」
「――私が? エイくん何も言ってくれなかったでしょ? 傷ついたなぁ。どうして断らなかったの?」
「…………」
プイ、と顔を背ける。
建物の外は、夕焼けが広がっている。どこかノスタルジックで、お家に帰りたくなる気分だ。
でも、僕は今すぐに―――ダンジョンに帰りたかった。
『まっ、まぁ? そういうこともあるわよっ。でも休息だって必要よ?』
さっきの冒険者も全然本気ではなかっただろう。――それなのに手傷を負わせるので精いっぱいだった。
あそこからどれだけ上手く立ち回っても――魔剣なしで殺し切るのは難しかった。
仲間の二人と、周囲の冒険者全員を敵に回して――その全員を倒すのはもっと難しい。
――やはり強さが足りない。――火力が足りない。あの武道場をデストラップの一つ『モンスターハウス』と考えれば分かりやすい。
今日倒したロックイーターのようなモンスターは、この世界うじゃうじゃいるんだ。
それに――勝手に決闘なんて組まれた。行かなくとも罰則や罰金はないが、評判は最悪だろう。観客も集めるという話だった。
一番嫌なことをされた気分だ。
「何ぃ? 拗ねてるの? さっきのはエイくんだって悪いよ。私のことが迷惑だってホントは思ったんじゃないの?」
「………知らない」
「もう。都合が悪くなったらまただんまりモードに入る。エイくんはずるいよね〜。そうやってムスッとしてたら私が折れるの、知っててやってるんだ」
「……………」
―――ほんとにうるさいなぁ。
***
地下鉄の駅に着いてからも、しつこいマナが何度も僕をバカにしてからかうのをやめなかったから、よりいっそう、口を開く気が失せた。
「………」
ベンチに座り、自分の【ステータス】を眺める。――よし、ちゃんと成長してるな!
―――剣技が習得できたということは、術系の《剣術》スキルもイケるだろう! それに、『白透刃』のスキル化や、もっと高火力の技もほしい!!
『ハイハーイ』
ミカを呼び出して相談する。そんな中でも《魔力操作》を使い続けてMPを満タンにはしない。
あのお姉さんの言う通り、"魔力は使い得"だからだ。
『それ平気なの?』
『多少、気だるくなる、程度かな……?』
『ふうん』
あまりやってる人はいなさそうだったけど。自然回復するMPの回復速度は一律だ。最大値が多くても少なくても一緒なんだからやるべきだよね?
『【MP】が減ると"倦怠感"、"抑うつ状態"が続くそうよ。――アンタはずっと精神をヤスリにかけてるようなものなんじゃない? ―――ホントはムリしてない?』
………ん〜いや……? もし、やめてMPを満タンにする方が気持ち悪いかな……。
『だったら魔法系技能は勝手に伸びそうね! 息するように魔力を操ってるんですもの。独学でも勝手に成長するわね!』
『そうなんだけどさ――魔法はやっぱ遅いんだよねぇ』
だから、魔法成立までの時間や強度に直結する《無属性魔法》のスキルレベルを上げたいんだ。――戦闘中にのんびり魔力を練る暇はないとわかった。
マジックスキルは立ち上げが一瞬だが、だからと言ってそれに頼りたくはない。
スキルを使い切って棒立ちのウィザードなんてカカシも同然。
そこで身体強化の《ブースト》を併用することにより、『思考加速』と『耐久力の向上』、『腕力アップ』も狙いたい。
やりたいことが膨れ上がる。
多種多様な魔法の発展と筋力・持久力のトレーニング。
イメージする。――加速度的に上がる自身の戦闘能力を。
「―――ね。仲直りしよ?」
魔力を練りつつ思考に没頭していると急に近寄ってきたマナが頭を預けてくる。――フワリと花の香りがした。ぎくりと固まる。
「私たちのキズナは、こんなくらいで壊れたりしないよね?」
今度は、泣きそうになって言うのだ。
僕から顔だけを離して上目遣いにする、媚を売るような濡れた瞳。
その儚く壊れそうな笑みに、罪悪感を刺激される。緩急が若干怖かった。
「うん。僕こそごめん」
長く一緒にいるから、すれ違いや喧嘩は珍しいことじゃないけどもそのたびに、こうしてうやむやになる。
僕も本気で嫌ってるわけじゃない。みっともなく拗ねていた自覚はあるし、それはマナだってわかっているだろう。
ここ最近入学やダンジョンと多忙でゴタゴタしていたので少し情緒が不安定なのかもしれない。
『こういうのは"共依存"って言うのかしら? "上手くできてるわね"……。この関係がずっと続くとイイんだけど、でもバランスが崩れ気味かも……?』
『しぃ〜! やめるんだ、ポン』
『なによ?』
―――そんな日常を破壊するように。
遠くで爆発音がした。
「なんだッ」
「きゃぁああああ」
「だ、大丈夫よ! しっかりして!!」
爆発は――複数回あった。
連鎖的に振動が続いて僕達のいるホームまで火薬の匂いが気流に乗ってやってくる。
ダンジョンという非日常を抜け出した――そのすぐ後に今度は地上がおかしくなった。
あとは帰るだけだとリラックスした僕らの不意をつくように。
「…………」
あたりに緊張が走る。――自然に起こる地震ではない。
何者かの攻撃か事故、もしや近くのダンジョンからモンスターが出現したのかもしれない。
『ダンジョンスタンピード』は決して珍しい事象ではない。
「…………」
状況の把握にみなが努める、僕は"いつものように"マナの顔だけを見て判断する。力強い眼力で緊張感に満ちた様子だった彼女は――しだいに事態を把握すると納得の色を見せた。
「――"三つ隣の駅"で"爆破テロ"だって。今さっき『自警団』のメンバーが到着した。――数人の死傷者も出てる」
彼女のスマホに映るのは、テレビのニュース速報だ。
『この世を照らす希望の光。……ああっ、救世主はついぞ現れなかった! 愚鈍で無知な民衆どもよ、今一度、教授してやろう!! 我ら『真邪の聖杯』こそが―――この行き詰まった世界を照らす光だということをなぁ!!』
黒ずくめのローブを着た人間が、自らの思想を喧伝しながら爆発物らしき空き缶を電車に向かって放り投げる、視聴者投稿の映像が流れる。
そのぶつかった空き缶により列車の側面が吹き飛び、窓ガラスが散乱する。
周囲に悲鳴が満ちてパニックになるも、撮影者は冷静にカメラを回し続ける。
そんな鉄火場に駆けつけた完全武装の冒険者たち。
彼らは都市最大の冒険者派閥/レギオン『自警団』の腕章を着けていた。
これは――リアルタイムの出来事だろう。
「大丈夫かな?」
「単独犯っぽいし、すぐ捕まるでしょ。―――それより、手つなご?」
「…………うん」
きっと不安なのだろう。
僕もその感情が――周囲の空気も合わさって影響し、にわかに怖くなる。
映像では、遅れてやってきた都市の最精鋭『星の騎士団/アストラルナイツ』も出動して、あっさりと男の無力化に成功した。
凶悪な犯罪者が手も足も出ないスピード解決だった。
事件は、あっという間に終息したようだ。こうして、街の平和は日々守られている。
組織的な犯罪や大規模なテロ活動は一年に数えるほどしか起きず、多くはこのような無計画・散発的な破壊を撒き散らすのみで、すぐ捕まる。僕らの地域は――世界的に見て――最高水準に治安がいいとされるが、犯罪率がゼロにはならない。
とくに"冒険者崩れ"の犯罪者は手に負えないこともあり、近年は『ダンジョンエントリー』そのものの規制強化と『ライセンスの発行』基準が厳しくなっているそうだ。
だがこの地域は『未来を見通す神様』が守護するので、国内でも指折りの安全が保障される。――と謳われてる。
少し遅れて、復旧した地下鉄を利用し最寄り駅までやってきた。
―――時刻はすでに二十時半。
長い階段を登ってやっと地上に現れた。街灯の暗いアスファルトの道路を歩いて帰路に着く。
『地上では【マップ】の機能も大したことないし、ホントに怖いわね〜』
ミカが【メニュー】を操作して【マップ】を開く。
帰り道は覚えているので不要だが視界の右上にある市街地の地図は――なんとも手抜きだった。
ダンジョンでのソレとは違い、洗練されていない古いバージョンが放置されたままみたいな地図機能。
《魔力感知》など本人の知覚もリアルタイムで反映されていたのに自動マッピング機能そのものがなく立体化もされない。
やりたかったらどうぞ、と言わんばかりの黒ペンと消しゴム、保存ボタンが並ぶ『お絵かき帳」みたいなものだ。
『"無課金"はこんなもんね』
ダンジョンに関してだけは最新の機能を使えるのに落差が大きいな。
ミカは無情な現実を伝えたが、さりとて興味はなさそうだ。
仮にもギルドの手先なら「課金しろ」と圧力をかけても良さそうだがミカは自分の背中から外した【メニュー】でフリスビーをして遊んでいた。
***
「たっだいま〜」
「ただいま」
家に帰ると、今日はルーティンもそこそこにして早々にお風呂に入った。結局、ギルドでもゴタゴタに巻き込まれてシャワーを浴びる暇はなかったな……。
「はぁ、帰った帰った」
やっぱり家は落ち着くな……。マナは夕食の準備をするということで。その間にササっと入浴を済ませよう。
重い疲労から水遊びをする気分にもならず体を洗い終えて湯船に浸かる。――あ〜、疲れたァ!
お湯で体温が上昇して夢うつつになる。予想以上に眠気が強い。
そうなる前にコンディションを確かめよう!
「ん〜、ここ。……それからここ」
"腕の切断部分"や"焼けただれた皮膚"。
"体内で爆散した骨のカケラの異物感"等を真新しくなった体で再現する。
「―――んギィッ」
これら、過去の記憶を指でなぞりながら克明に思い出していくのは――僕が弱いから負った傷を、体に残らずとも"心に深く刻まねばならない"と感じたからだ。
冒険者の持つ基本的なスキルの一つに『耐性スキル』というものがある。
耐性スキルは、今回受けた裂傷や強酸、あるいは攻撃魔法、状態異常といった特定の外的要因に対して免疫的に働くスキル。
これは―――細胞レベルのミクロの防御であり、スキルによって生じる特殊な化学物質が――タンパク質を保護して――など、さまざまな利点があって―――そのメカニズムの研究も盛んに行われている。
小難しいことは置いといて、耐性スキルの習得は、とにかく『反復と反芻』が大事なのだ。
ギルドもあまり推奨してはいないが耐性スキルの習得条件はとにかく"肉体をいじめ抜くこと"である。
――と、昔の"非人道的実験"でも明らかになっている。
それによると、麻酔で昏睡中の患者を切り刻んで燃やし回復しても、あまり効果はないそうだ。本人に刺激を与えて克服する意思をしっかり持ってもらうことが重要だとしていた。――意外にも、『精神論』だったのを覚えている。
『現代では、インスタントに変更可能なスキルや装備品、魔法などで対策をとるのが普通のようね。生身をいじめ抜いて耐性スキルを習得するのは――逆に効率が悪いんじゃない?』
僕の考えを否定するミカは湯船の水面に降り立つ。――波紋は生じない。
でも、自分の体であれば自由だろう。眠るときは今日の戦闘を事細かく想起するつもりだ。――昨日と比べても、たった一日で僕は強くなった。
「新鮮なうちにやらないと経験をとりこぼすんだ」
そして一通りの反芻で幻痛を引き起こす。
僕は我慢できずに肩を押さえた。悶絶して浴槽に頭をぶつけ、痛みが引いたらまた――それを繰り返す。
"魔法は万能"だ。肉体の回復ができるなら反対にキズの復元もできるのではないだろうか? 水面に映る醜い姿の自分が見えた。――お湯が真っ赤に染まる。
頭髪が部分的に剥がれて皮膚がドロドロに溶けた落ち武者みたいな男。炯々に輝く瞳はまるで―――怪物のようだった。
「ぅぅグぁっ……!!」
それを何度も、何度も――何度も何度も何度も――繰り返す。自分の中にある"合格ライン"を満たすまで僕は痛みに喘いで静かにお湯を揺らした。
―――たぶん、今日以後の習慣になるだろう。
"一定回数、怪我の痕を克明に思い出して触れる"。
《無属性魔法》も駆使して行うと鮮明さがまるで異なり僕は家にいながらロックイーターの押しつける、あらゆる痛みを受け止めた。
それは――一度塞がった瘡蓋を剥がし、指でほじくり返すような痛烈な作業だった。しかし、幻覚なのでお湯が汚れるわけじゃない。
『…………ねぇ』
まさに、痛みの分だけ強くなれる。僕の得意な領分だ。
いまも自分の体が変質している実感がある!
これまで体内に存在しなかった細胞や物質を合成し、あのロックイーターに丸裸でも勝てるようになりたい。
『―――ねぇ、ラクミヤ』
どうしたの?
芽生えた好奇心と、義務感をどうにか満たすべく努力する過程で気まずそうな顔をしたミカが話しかける。
『私ってさ、ダンジョン以外でも話しかけていいのかな』
……ん? 別にいいけど。
『だって、ヒグレマナとの関係はあんたが望んでやっていることなんでしょう? だからジャマしたら悪いかなってね。――あの大人たちに連れて行かれたときもあんたが待っていたのはヒグレマナだったから』
「そんなこと気にしてたんだ」
『だってしょうがないでしょ。―――全部わかるんだから』
そうだね……気にしなくていいよ? 表には出なくても、"ささやきモード"があるんだから使っていいよ。
『ほんとに? 迷惑だって思わない?』
思わない、思わない。
ちゃぷちゃぷと湯を跳ねさせる。温度が少し、物足りないか。
『じゃあ言うけど――アンタってMなの?』
「………いや、違うよ」
そんなことはない。否定し、お湯の流れ出る隙間に手を置く。
『……………』
このお湯の温度は『42度』。正直ぬるい。ボタンを押して『60度』のお湯を手づかみしてみる。……うん、まぁまぁか。
『…………』
「もうちょっとかな」
だが『80度』のお湯は――皮膚を燃やさんばかりの刺激だった。
「ぅ……く」
あまりの熱さに目の前が真っ白になった。《魔力操作》が乱れて意識に空白が生じる。呼吸もままならない、そのことを遅れて知り……もしも戦闘中にこんなことになったら、どうするつもりだ! と罵倒する。幼い自分が遠くで泣いてる……。
ちょうどロックイーターの加熱された血液がこんな感じだった。ジュウジュウとタンパク質を焦がす。湯気が出ている。
「あっつ………」
そして手のひらの感覚がついになくなる。真っ赤っかだ。
この状態だとロクに剣も握れないので、目をカッと開いて魔力を流し込む。真っ赤な手のひらを保護する身体強化と回復だ。
"魔法の薄膜"を隔ててやっと無事を取り戻す手のひらを見て僕はまだまだ足りないな、と自覚した。
やはり素手でもそのくらいは耐えないとな! なんらかのスイッチが入った僕は――涙を流して"後悔しながら"作業を続ける。
『………?』
天使のミカが『不可解な生物』を見るように目をパチクリとさせる。
『………人間ってよくわからないわ。もう、ホントにしょうがないやつね………』
でも新しいことを試すのは楽しいよっ?
そして培った技術や強さをぶつける場所があるのもいい。
いまの僕って――案外と幸せ?
素直に将来を期待するのは、久しぶりのことだった。
それこそ僕に生える『天使の翼』を本当に天使のものであればいいな、と思ってたとき以来か。
僕が、そうやって不思議な幸福感を味わっていると、浴室の向こうに気配を感じた。……? ………なんだ? 誰だ?
マナは……不審者……?
「ねぇエイくん」
そしていま――
「久しぶりに一緒に入ろっか」
と言って、当たり前のように乱入してきた裸体の少女の姿があった。
「あっ………はっ?」
唖然として、僕は縮み上がった。
最後に一緒に入ったのは――中学に上がる前のつまり、"精通以前"ということだ。
僕はこれまでずっと、小さい頃から知ってる少女のことがこれっぽっちも分からなくなる。
「先に………入っていいよ、って」
言った。
「うん。―――だから、後から入ったでしょ?」
そんな屁理屈を……?
何もできない僕は――湯船に浸かって、嵐が過ぎ去るのを待つ。
こうして待てば――ちゃんと慮ってくれる。
彼女は本当に嫌なことはやめてくれるんだ。
そう思ってたから。
体を洗い終えたマナが湯船に入ってきても、僕は動き出さなかったし。
またいつもの冗談かなって。
どれくらいしたら満足するのかなって。
思ってたんだけど。
「ねぇ、エイくん」
ささやく。
心臓の音がやけにうるさい。少しだけでいい。静かになってくれ。
「………エッチなこと、しよっか」
「えっっ………?」
何でもないことのように吐かれた言葉が信じられなくて。
「私のこと"オカズ"にしてるでしょ? 知ってるよ全部」
「………や、やめてっ」
おねがい。――いつものマナに戻って?
今日のマナは怖い。徹底的に僕をいじめるつもりのよう。
「だーめ。そうやって可愛くなればやめてもらえるって期待してるんでしょう? ―――いっつも私、負けちゃうの」
「マナ………っ」
「潤んだ目で見つめても、だーめ。エイくんも男の子なんだから――ちょっとはかっこよくなってよ?」
言いながら、馬乗りになって密着するマナの――胸元の『弾力と柔軟性/むにゅんふわ』が衝撃的だった。
シャンプーかなにか、甘ったるい匂いでくらくらする。僕も使ってる……はず、わからなくなった。ミカ? ……だがミカは――どうすればいいかわからないという顔で視界をうろつく。――エイポンはいない。
何が起きているかわからなかった。現実がよくわからない。……のぼせたかもしれない。ともかく――ストレスの許容範囲を超過したのだろう。
だから僕は、"究極の現実逃避"を行った。
―――"ツノにお願い"するんだ。
そうすれば……。
意識がカラダから抜け出して――浴室の天井を突き抜けていき……。
二階の、マナの部屋を通り、断熱材や鉄骨の構造それからホコリだらけのネズミを見つけて、僕の視点は――"天空の領域"へ到達したのだった。
あーっ! コイツごまかしたな! ちょっとはかっこよくなってよ!
下ネタ注意
……まぁ精神年齢小学校低学年くらいだと思うしこうなる。ちなみに精通はしてまぁす! かなり性欲旺盛でオカズはマn……(唐突に暴露される主人公のプライバシー)
それとダンジョンライフ(本編開始)以降は自慰をする場合ミカちゃんがずっと見てます。
所持金 130000G+賄賂5万?
エイ個人で20万弱
マナは数万か




