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【魔神転生】 〜無限の螺旋に挑む者たち〜  作者: 暗黒のグミ
第二章 白き怪物のアギト
14/73

大迷宮2F:レベルアップ

ザッザッ


___________________________________________

[星刻の大迷宮 2F ]

___________________________________________



『ギルドクエスト【星刻の大迷宮2Fに行こう!】をクリアしたわ!』


 初めて足を踏み入れたフロアだ。新規クエストの達成を伝えるミカの声がする。明らかに魔力の濃度が上がった空気を、めいっぱいに吸い込んだ。


「ほう……」


 出てくるモンスターやトラップの脅威度も一段階上昇したのだ。


「《オーラフィールド》」


 さて、何があるか分からない。


 マナをギリギリ包み込める"僕のテリトリー"を発動させる。

 《オーラフィールド》は、任意のMPを消費して発動するスキル。

 その量に応じて、範囲内でのスキル効果が増し、一度発動すれば、継続してMPが減少していく。常に範囲内を自己の魔力で満たす必要があるからだ。

 "MP強者"でもある、僕にとっては、《魔力感知》のレベルを上げられる便利なスキル程度の使い方ができる。


『しかも低コストってことは……熟練値の上がり方も初歩的なスキルと同じくらいになるでしょうしね! 《無属性魔法》か《オーラフィールド》のレベルが上がれば自然回復とも釣り合うんじゃないかしら……』


 それはいいことを聞いた。寝ても覚めても使えるってことだ。


『はぁ〜』


 呆れ顔のミカの言葉に対して警戒心からか眉を顰めたままのマナが口を開く。


「私としては、もう少し歩調を緩めてもらえると嬉しいかなぁ、なんて」

「はは……」


 まるで『赤いシャボンオーラフィールド』の中に入るように相合い傘よろしく歩いた。とても歩きにくいが、この中だと魔力を精密に感知でき、かつノータイムで操れるのだ。

 少々の不便さには、目をつむってもらおう。



 さて、まずは、周辺環境をチェックしてみよう!

 "シャボン玉"の表面の膜を薄く伸ばして周囲に浸透させていく。

 こうすれば、道沿いに伝わっていった"魔力反応"から大雑把にモンスターの動きが把握できた。



 ―――がこん、ぴしゅ、どかん!!



 さらに、たったいま、僕たちの正面で間抜けな音を立てたのは、"魔力感知型のトラップ"が作動した証拠だ。


 白道を構成する石材を破壊して強制的に迫り出した"石槍"。

 誰もいない方向に風を切って進む"魔力の通りが悪い金属製の矢"。

 最後に、一番離れた位置で"黒い噴煙"が上がった。めくらまし、だろう。


 ギルドの基準を満たした僕らの装備では、どれも即死するとまではいかないが、移動中の負荷をかける効果はある。


「わーお! さっすが便利だねぇスキルは〜〜っ!」

「ね」


 マナに頷きつつ、機能【マップ】を触った。1Fの地図と2Fの地図は、引っ張って動かせるようだ。


 重ねると、立体的になり大きさが自動で調節されて、サイズ比が一目瞭然となった。上に登るほど敷地面積が大きくなっていることを教えてくれる。



『ねぇ! ラクミヤッ』


 そんなとき、僕らの後方でミカが、警告した。



【♪〜戦の気配〜】


 唐突に流れる戦闘音楽。

 《魔力感知》のカバー範囲外、かつ今そこで生み出されたモンスターだろう。


 まだ戦闘は始まっていない。

 ミカによる手動再生だ。天使は一部【メニュー】の操作権を持つ。


 また、天使の移動範囲は僕とパーティメンバーであるマナの周囲のみ、そのギリギリまで粘って目視警戒していたミカは、少しでも役に立ちたい一心なのだろう。


「っ! なにっ!?」


 亜麻色の小さなしっぽが左肩を優しく叩いてマナが振り返る。


「――あれは……『クリーピーマッシュ』だよっ! 奇声で恐慌状態に陥らせる!」


 即座に戦闘態勢をとったマナを淡い光が包み込む。

 エイポンの発動したスキル《エンジェルブレス》が僕らを柔らかく守護する。



 ―――ギョギョギョ〜〜、と。


 生まれたてのモンスターは自然界の動物ではありえない、誕生後にすぐ捕食行動をとるバケモノだった。



___________________________________________

【ログ】

[モンスターが現れた!]

[クリーピーマッシュLv.3が現れた!]

[クリーピーマッシュがスキル《なきごえ》を使った! 獲物を威圧する!]

[スキル《擬態/ミミクリー》を使った! 周囲の景色に同化した!]

___________________________________________



 口のないキノコのお化けがドタドタと通路を揺らし、走り寄ってくる。


 もしや、中に誰か入っているのではと思わせる不気味な歩くキノコ。

 のっぺりとした顔のないマッシュルームは不自然に背景に溶け込み、その魔力の揺らぎがなければ見逃してしまうかもしれない。


「消えたっ!?」


 プレッシャーに抵抗したマナが叫び声を上げる。スキル《擬態/ミミクリー》で、通路に同化した『クリーピーマッシュ』を見失ったようだ。


「そこだよ」

「ギョンギョ〜〜!!」


 スキル《魔力感知》で大雑把に捉えて魔力をぶつけると擬態は解除された。


 コイツの保有スキルは、周囲の環境に溶け込む《擬態/ミミクリー》と状態異常を付与する《恐慌胞子/パニックスポア》、そして《寄生/パラサイト》だ。


 接近を気づかせず、広範囲に拡散する胞子で対象を状態異常《恐慌》に陥らせ、生命力を奪いとり、死体からキノコの花を咲かせるという。


 もちろん対策はしている。細かい粒子でもフィルターにかけられるピンクカラーのマスクをつけたマナが突出して切り込む。


「《グリッターボール》、《アロー》」


 胸元の魔導書から、魔法が放たれた。


 一発は――最速で発射。

 もう一発は――目の前で待機。


 手動操作した《アロー》を巨大化させて"槍サイズ"に成長させている頃。


「―――ギョギョッ??」


 クリーピーマッシュは、大きくのけ反って横向きに転がり――そこへ鋭く尖った"魔法の槍"がぐっさりと貫通した。大きく目立つ傷跡ができあがる。

 

 そのとき、綿帽子のようなフワフワとしたものが舞い上がった。

 ……アレが胞子か。


___________________________________________

[ラクミヤエイは《魔力操作》を使った!]

[クリーピーマッシュの擬態が解除された!]

[ラクミヤエイの攻撃! 《グリッターボール》を使った! 輝く魔力球が放たれる!]

[クリーピーマッシュは 16 のダメージを受けた!]

アローを使った! 《無属性魔法》を使った!]

[クリーピーマッシュは 22 のダメージを受けた!]

[クリーピーマッシュは合計 38 のダメージを受けた!]

___________________________________________



「くっ! 効いてんのかイマイチわからん!!」


 人間であれば、胸元に大穴が開いて骨をボロボロにされている状況だが、《魔力感知》ではまだピンピンしてる。今回は、余裕をもって一瞥した【ログ】では、ダメージ量が表示されるが……。


『ごっそりHPが削られたのはわかったわ! むしろ、魔力の高まりが大きいのは弱ってる証拠ね』


 そうかっ! なるほど……。


「エイくんはっ! 後ろで見ててねっ! ……そこで待ってて!!」

「うん……」


 銀河の外套をはためかせるマナは、なんていうかイケメンだ。

 か弱いお姫様を守る騎士のような精悍な顔つきになった彼女は、クリーピーマッシュを一体どのように倒すのだろうか。


 ヤツは、一箇所に弱点部位を持たず、魔石もない。心臓や脳に相当する部位もないし、モンスターの中でもとりわけ意味不明な部類だろう。


 僕の体がこわばっているのも、強さではなくその不気味さゆえだ。


「が、がんばれマナっ!」


 震える声で応援する。


 ―――『構成要素を削り、生命を維持できないほどバラバラにする』。


 これが『植物タイプ』に対する試験の答えだ。モンスターにもHPがあり、見かけ上どんなに無敵に見えても倒せないことはない、と教えられている。


「っ……任せてっ!!」


 そんな異常な生物は、マナのパワフルな剣撃で、繊維状の体が切り刻まれる。


「―――ギョギョギョ〜〜ッ!?」


 おぞましい悲鳴をあげて(どこから聞こえているのか不明)、キノコが地面を打ち上げられた魚みたいに跳ねるたび、大量の胞子が散布される。


 マナの背中に生える"天使の翼"がチカチカと点滅している。あれは豊富に魔力も含んでいて皮膚に付着するだけでも危険なのだ。


 これに関しては、《魔力操作》があれば、体表から染み出すオーラで直接的接触を防げそうだが、普通は、致命的な口元や粘膜の保護のため、マスクやゴーグルを着用する。


 あとは立ち回りの慣れと、魔術・魔法ではない"免疫的な魔力的防御"を会得するのだという。………全体的にギルドも学園も"脳筋"なのだ。


 彼らの方針では、そんなもの何度も戦えば勝手に体が覚える! と言わんばかり。



___________________________________________

[ヒグレマナの剣攻撃!]

[クリーピーマッシュは 6 のダメージを受けた!]

[クリーピーマッシュの攻撃! 《恐慌胞子/パニックスポア》が噴き出した!]

[ヒグレマナには効かなかった!]

エンジェルブレスがヒグレマナを守る!]

[ラクミヤエイには届かない!]

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 あと、『前衛・後衛』で明確にリスクの差が出るなと思う。パーティの報酬分配でも『最前衛』がもっとも多いのが通例、それも納得だ。



___________________________________________

[ヒグレマナの剣攻撃!]

[クリーピーマッシュは 5 のダメージを受けた!]

[クリーピーマッシュを倒した!]

[戦闘に勝利した!]

[経験値を27取得した]

___________________________________________



 いい感じだ。

 クリーピーマッシュは、基本経験値『18』。(経験値補正込みで『27』)

 その分厄介な性質も持つが、やっと張り合いが出てきたぞ!



「マナ身体大丈夫? だいぶマッシュに触ってたみたいだけど」

「………うーん、たぶんね。エイポンのスキルも切れてないし」


 本当はこいつ炎で焼却するのが一番なのだが、魔法の授業はまだない。簡易的にスキルを獲得できる『スキルキューブ』というアイテムもあるが、まずは地力がないとダメらしいし。


「入って入って」


 手招きしてマナを《オーラフィールド》のうちに収める。

 戦闘服やマントに付着した胞子は弱々しいが――僕の目はごまかせない。

 魔法の触手『テンタクルハンド』でペタペタと除去していく。


 モンスターの死骸は、討伐時まとめて消失するが一部の破片などは回収されないらしく、時間差で猛威を振るうこともあるそうだ。


「エイくん……っ、なんだかヘンな気分になるね……っっ」


 僕から伸びる"ゼリー質の触手"が、マナの全身を包み込む。

 無数の触手が編み込まれた『琥珀色の繭』に囚われているようにも、見える。


 ――た、たしかに……?


 間接的とはいえ、自分ののようなものでタッチし続けるのは絵面的には問題がある。……この手。普通に見えるし、触れるのだ。


『悪い魔王と、囚われの身となったお姫様の構図ねっ! 自分のナワバリに縛りつけて魔の手で襲ってるように見えるわよ』

『そうかなぁポン? 力強く、頑固だが同時に繊細な魔法でもあるんだポン。さらっと当たり前のように物質化させているが……。さすがマナの相棒だポン!』


 ミカ曰く―――魔王の繭に囚われたお姫様は、喜色満面の笑みで脱力した。


「………って、やってる場合か!」

「だって――すごく幸せだったんだもん。幸福感がハンパない。………なんで? そういう魔法?」

「そんな効果は付与してないよ」


 真顔で、きっぱりと返す。


 そんな危ない魔法ではないはずだ。触れた先にある魔力の制御を乗っとるくらいで、安全だ。


 さっきのクリーピーマッシュもコレで"全魔力"を奪い取れば勝てる、と思っていた。マナは強かったので、特に必要なかったが……。



 ―――しばらくして食材アイテム《マッシュ》が虚空から出てきたので拾う。


 魔石がドロップしない代わりなのか、ずっしりとした重さの食べ応えがありそうなキノコだ。


「今日の晩ご飯に使おうかな」


 キノコを手渡したらマナが思案した。モンスター・クリーピーマッシュを生きたまま食べるのとは違い、ドロップアイテムなら安全性が保証されている……。


 当然だが、見た目が植物っぽいからと言って、モンスターを丸かじりするのは大変危険だ。


「晩ご飯……いいねー! 何に使うのか想像もできないけど……」


 言いながら、開発した『探知の魔法』を使い、白い地面を悠々と歩く。


 最初の階段から数十メートルほど先に進むと前方にいたパーティが挟撃されていたので、一声かけて、もう一体をもらう。



___________________________________________

[モンスターが現れた!]

[はらぺこウルフLv.4が現れた!]

___________________________________________



 ―――獰猛な獣が僕らに襲いかかった!


 目をギラギラとさせて、ヨダレを垂らす餓狼『はらぺこウルフ』が、僕の肉を喰らいにくる。


「――はっ!」


 だが残念ながら――体力もメンタルもヨワヨワな、そんな僕でも、今のところ魔法だけは裏切らない!


 ―――ドコォッ


 輝く魔力球の衝撃でモンスターは派手に吹っ飛んだ。はらぺこウルフは内臓に大きなダメージを受けて血を吐き出す。


「グルルルゥゥ……!!!」


 それでも、すぐに立ち上がって、今度は必ず襲ってやると息巻くのだ。


 その姿は何故だが美しいと思った。


「――せやぁっ!!」


 そこに、マナの白刃がひらめく。飛び掛かった餓狼の爪と交錯し、火花が散った。


 荒い息を吐き出して俊敏に、跳躍と着地を繰り返す、はらぺこウルフは、クリーピーマッシュとは異なり真っ当に強いモンスターだった。


 しかしながら、武装の差もあってマナに軍配が上がり、僕は適宜、牽制の射撃をするだけでよかった。



 ―――………………ゥアォン、ォン………アオ〜〜〜ンッッ!!



 最期の悲鳴があがる。

 命の灯火を燃やし続ける、彼の瀕死の雄叫びは、耳にこびり付くように離れてくれない。



「つ、強かった………っ!」


 ズタボロになって首に剣先が打ち込まれたウルフを見下ろして、興奮したマナが思わずといった感じで吐息を漏らす。


「…………」


 僕は、そんなケモノの血走った目をじっくりと見て―――その熱が段々と冷め、睨み合った眼光がなくなるまで―――魔法を真上からぶつけた。


「…………フゥ」


 ぐったりと倒れた――"かつてウルフだったモノ"を冷たく見下ろす。血だらけで、ピクリとも動かない……。本当に、ほんとうに――死んでしまったようだ……。


 スキル《雄たけび》が死の間際もっとも大きくなったのは、近くのモンスターを呼ぶためだろう……。



『はらぺこウルフを初めて倒したわ!』

『経験値を21取得したわ』

『おめでとう! レベルが2に上がったわよ!』

『HP+6、MP+86、ちから+3、かしこさ+8、まもり+3、せいしん+10、きよう+7、びんしょう+5』

『おめでとう! ジョブレベルが2に上がったわ!』

『ジョブスキル《暗視》を獲得したわ!』


 ――おお〜っ! レベルアップしたぞ〜!! やったー!!


ヒャッフーーーっっ!!! レベルアップすんごいンぎもちぃ〜〜!! 殺伐として乾いた心に染みるぅ〜〜!! 


 あと途中の触手プレイはアレです。


 その者青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし。



 以下ステータス(記号の使い方が何度考えてもわからん)

___________________________________________


 or

 

―――――――――――――――――――――

 【名前】 ラクミヤエイ

 【レベル】  2

 【ジョブ】 冒険者見習い

 【HP】  68/68 (6up!)

 【MP】 892/917 (86up!)


 【ちから】   9 (3up!)

 【かしこさ】 23 (8up!)

 【まもり】  11 (3up!)

 【せいしん】 28 (10up!)

 【きようさ】 17 (7up!)

 【びんしょう】17 (5up!)


 【スキル】

 《いつか真の冒険者になるんだ》

 《死の超克/スタンドアップ》

 《暗視》

 《無属性魔法》

 《グリッターボール》

 《シールド》

 《アロー》

 《オーラフィールド》

―――――――――――――――――――――


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