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【魔神転生】 〜無限の螺旋に挑む者たち〜  作者: 暗黒のグミ
第二章 白き怪物のアギト
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第一話 金ちゃんと行く、ダンジョンライフ・二日目

第二章が始まります。「ダンジョンライフ・二日目」です!


「エイくん、起きて」


 ―――まぶたが重い。身体がポカポカと温まる、心地よい微睡みと電車の座席に深く沈んでる。


 そうした早朝の眠気に抗うことは容易ではない。だが肩を揺らされても反応のなくなった僕の耳にしっとりした吐息がかけられた。


「フゥ〜〜。エ・イくん起きて」


 うわっ!


 こしょこしょ、と耳元でささやかれて鳥肌が立つ。

 とっさに体を起こして左手で首元を抑える。


「フフっ」


 見れば、口元に手を当て目を細める小悪魔がいた。

 その美貌と振る舞いからは目を離せず男の純情をもてあそぶ、悪いマナだ。


「ハァ…………心臓に良くないって」

「でも眠気覚ましにはたったでしょ? それで――」


 学園に向かう電車の中。隣り合った席を確保できて、うつらうつら、と寝こけていたのがついさっきの話。


 昨日は、朝から晩まで密度の濃い体験の連続だった。夜は七時間半ほど熟睡したにもかかわらず疲れが抜けていない。


「――この子の名前、つけてあげないの?」

「あー、そうだった」


 窓際にいるマナとは反対の通路側に視線を向けると、所在なさげにたたずむ手乗りサイズの天使がいた。


『はいはーい。初日にチュートリアルの名付けクエストを放置したのは、あんたくらいかもねー』


 ハッとして、僕はいそいそと昨日ぶりに【メニュー】を開く。


『デイリークエスト【メニューを開こう!】を達成したわ』

『クエスト【ダンジョンライフ・二日目】を達成したわ』


 『デイリークエスト』は、毎日更新される。メニューを開くだけのクエストの報酬はささやかなもので、『100G』だ。


 【クエスト】の欄には、達成したクエストの分だけ数字が増えるマークがあって、未受け取りの報酬がいっぱいある。


 僕ってこういうのって溜め込むタイプだからなぁ……と考えながら画面をタップする。視界いっぱいに大量の紙吹雪が舞い散った。大勢の歓声や拍手も聞こえる……。


___________________________________________

 クエスト【ダンジョンに入ろう!】

 達成報酬:EXPポーション 勇気の証

___________________________________________



 メニュー画面上部に新設されたプレゼントボックスに『EXPポーション』と『勇気の証』が送られる。


 それをタップして受け取ると、シリアルナンバーが発行されたが現物はギルドに行かねば貰えないらしい。


 『EXPポーション』は、飲めば"経験値"を『10』もらえる。

 『レベルアップ』は、主にモンスター討伐で得られる経験値からなる。けれども、ゲームなどとは違って、サクサク上がることはないため、その補助として与えられるアイテムだ。


 ステータスを見れば必要な経験値量が表示される。僕の場合は――『あと94』。だから、EXPポーションが10本もあれば、レベルアップする計算だ。


 昨日倒したはぐれゴブリン換算だと、見習いのジョブスキル《いつか真の冒険者になるんだ》の効果で、取得経験値が『+50%』となり、ゴブリン一匹につき『15』となる。そこからマナと一緒にレベルアップを目指すなら半分こ。

 だから二人合わせて、はぐれゴブリンを10匹以上倒す必要があるな……。


 ――モンスターは負ければ、僕たち冒険者の"餌"となるのだ……。


『その逆も、言えるんでしょうけどね?』


 さて。

 アイテム《勇気の証》は、一度だけ死に至るダメージを無効化するバッジ。保険として誰もが身につける。


 とりあえず今日のダンジョンにも影響するので、現在達成したものをパパッとタップしていこう。


___________________________________________

 クエスト【チュートリアルをクリアしよう!】

 達成報酬:ウッドバングル

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___________________________________________

 クエスト【モンスターを倒そう!】

 達成報酬:EXPポーション

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___________________________________________

 クエスト【パーティを活用しよう!】

 達成報酬:フレンド機能解放

___________________________________________



『【フレンド】が解放されたわ』


 これは―――


『登録した『フレンド』が最後にダンジョンに入ったのがいつか、リアルタイムでの健康状態が分かるほか、メッセージのやりとりも可能になったわ』


 こうやって情報をアップデートするのが大変だから、放置したくなるんだよなぁ。


「hey、私と『フレンド』になってみないかい?」

「いいよ〜」


 さっそくマナとフレンド交換する。

 アイコンはどちらも初心者マーク。前回の入場は『18時間前』とある。


 誰がいつどれくらいダンジョンに入っていたのかギルドはすべて把握しているらしい。



 【ダンジョンライフ・二日目】は、いわゆるログインボーナス。

 【メニュー】画面を開くだけで達成扱いとなる。


 一日目は、『EXPポーション』と『1000G』。

 二日目はそれに加えて、『武器ガチャチケット』なるものが貰えて、なかなか豪華だった。


 昨日の探索成果は『100G』のワンコインとか言ってたけど、こういう細かいクエスト報酬を集めれば、結構なものだ。


___________________________________________

 【ガイドエンジェルに名前をつけよう!】

 【レベルを上げよう!】

 【スキルレベルを上げよう!】

 【宝箱を開けよう!】

 【罠を回避しよう!】

___________________________________________


 といったふうに……。クエストと達成報酬によって冒険者の活動を後押しする仕組みが備わってる。死の危険と隣り合わせの冒険者だ。モチベーションアップにつなげよう!


 それにしても―――


「名前…………名前か……。迷うなぁ。………金髪、金ちゃん、ゴールド、緑の目、グリーン、エメラルド、やっぱり『金ちゃん』かな」


『う、ウソでしょう?』


 信じられない、という顔で首を振る天使。その場でバタバタと暴れ回り、しばし混乱していたが……。


『―――よ、よかった。まだ命名されてないッ!』

『両者が同意したら決定されるものだポン』


 前の席のシートに乗りふんぞりかえるエイポンが言う。

 あっちはすぐ決まってたっぽいしなぁ。


『じゃあ"ミカ"っていうのはどう? さっきこう、ビビッときたのよ。……あ、アハハっ』

『なんとしてでも、"金ちゃん呼び"を回避しようという必死さがうかがえるポンね』

『うるさい! もちもち大福ッ』


 うーん。じゃあそれで。


『………や、やったわ!! 私はこれから"ミカ"よ。二人ともよろしくねっ!』


 達成報酬は『500G』のみと雀の涙だったが、いつまでも天使天使と呼ぶのは確かに可哀想だった。


『♪〜』


 喜んでクルクル下手なダンスを披露する"僕の天使"ミカを眺めてから―――僕は再び眠りに落ちた。




***




「ハァァッ、はぁっはぁっ、じぬ……じぬぅ……」



 午後の体育の授業では、へとへとになるまで校庭を走らされた。


 魔法を使って身体強化をしても――用意されていた『ネックレス型の魔道具』に魔力を打ち消された。基礎的な持久力を試すためだ。


「大丈夫、エイくん? ちょっとペース落とそうか?」

「……ハァッ、いやっイイ……」

「フーン? そっかぁ」


 魔法が使えない無能と成り果てた僕に並走したマナは、心なしか嬉しそうに見えた。……いや、これはひねくれすぎか。


 純粋な体力では学年下位に間違いなかったが、同じようなウィザード志望の生徒が何人もいたことが救いと言える。


「はぁっはぁ……」


 あと少しっ! あと少しだ。マナのペースに合わせて……。


「………あれっ……?」


 だが、走ってる途中。いきなり視界がパチパチと弾けて真っ青に染まり始めた。――そして、僕は校庭に頭から突っ込んで倒れた。脚がもつれたことに気づけなかったのだ。


「エイくん〜!!!」


 そこからの記憶はなく、マナに連れられた保健室では、貧血の疑いがあるとしてベッドに身を預け――授業をサボった。


「…………」


 知らない天井を見上げながら、僕は得も言われぬ幸福感に包まれていた……。




***




「《ウッドバングル》と《勇気の証》は装備した? しっかり固定しないと効果が発揮されないから」

「うん」

「――トイレは? ちゃんとスマホと財布はロッカーに入れた? 鍵は私が持とうか? ―――やっぱり今日はもう帰る?」


 放課後、ギルドのロビーで心配性なマナが僕の髪を手櫛で整えてくる。ぐっすりと眠って寝癖だらけだからである。


「もう帰ろう?」


 以前までは、貴重品の保管から何から、されるがままだったので、少しだけ反発してみたのだ。更衣室は、男女で分かれているからだ。


 マナに『えっ……? むりむり! エイくんにはムリだよ!』と断定口調で言われた。


 いまだに街中もろくに一人では歩けない雑魚だから……仕方ない……。マナの後ろを着いて行かなければ、今だってギルドに来れてないはずだ。


 そして、純白の戦闘服に身を包み、学園のマントを羽織ったところまではよかったが、再びロビーでマナと合流するまでに、他校の生徒に絡まれて道順を忘れた。好奇心からギルドの関連施設との連絡橋なんかを通ってしまい迷子になったのも原因だろう。


「―――帰ろ?」


 そういうわけで、マナはダンジョンに乗り気ではなくなってしまったようだ。


 だけど、ダンジョンに行かなければ、僕はきっと強くなれない……。


『そうは言っても! マナも強くなりたいんだポンね〜。ラクミヤを守り切る強さがほしくて冒険者になったんだポン』

「え………うん」


 そこで、いつもはふざけているエイポンが真面目な表情でマナと会話した。

 途中から、僕には聞こえなくなったので、秘密の会話だろう。


「…………」


 あ〜! 萎えるよね! ……みっともない。情けない恥ずかしい……!!




こんな感じで進みます。

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