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作者: *sho

1. プロローグ


冬の冷たい風が街を吹き抜け、夜の帳が降り始める頃、かけるは駐車場へ向かうあおいの背中を見つめていた。葵がふと振り返り、「寒いね」と呟きながら、彼のポケットに手を滑り込ませる。彼は驚きつつも、葵のその仕草が彼にとって心地よく、いつものように微笑んだ。


「たまには、私に運転させて」と葵は笑いながら、彼の手から鍵を取り、キーホルダーと鍵を指で鳴らす。その小さな音が夜の静けさに響く。彼女の指先から伝わる暖かさに、翔の心はほっとした。


車内に乗り込むと、カーステレオから流れてきたのは切なくも甘いラブソング。二人の過去を思い出させるような歌詞が、翔の胸に響いた。



2. 日々のすれ違い


二人は高校の頃から付き合い始めた。最初の頃は、お互いが一緒にいるだけで幸せだった。しかし、大学に進学し、それぞれの生活が忙しくなるにつれて、二人の間には次第に微妙な距離が生まれていった。


授業、バイト、友達との付き合い。二人の時間は減り、メッセージのやり取りも徐々に少なくなっていった。翔はそれに気づきながらも、どうすることもできないもどかしさに苛まれていた。葵もまた、同じように感じていたが、口に出せなかった。


「最近、あんまり会えてないね」とある日、葵が言った。


「そうだね。忙しいけど、また時間作ろうよ」と翔は返すが、その言葉にはどこか空虚さが漂っていた。お互いに、心の奥底では何かが変わり始めていることを感じていたが、それを認めるのが怖かった。


3. 小さな衝突


ある日、二人はささいなことで言い合いをしてしまった。些細なことだったはずなのに、二人の間に溜まっていた不満や疲れが一気に噴き出したのだ。


「最近、なんだか翔が遠い気がするの。私のこと、もう興味ないの?」


葵の言葉に、翔は言葉を詰まらせた。彼はそんなつもりではなかったが、彼女がそう感じていることに気づけなかった自分に苛立ちを感じた。


「そんなことないよ。ただ…最近いろいろ忙しくてさ…」


「でも、忙しいからって、私のことを疎かにしていい理由にはならないよね」


二人の間に、しばしの沈黙が流れた。翔は言い返すことができなかった。彼女が言っていることは正しい。けれど、自分でもどうしてこんなふうになってしまったのか、答えを見つけられないままでいた。


4. 再びつながるための希望


その夜、翔は葵と話し合おうと決意した。お互いに本音を伝え合うことが、今の二人には必要だと感じたからだ。彼は自分の気持ちを整理し、葵に向き合おうと考えた。


翌日、二人はいつものカフェで待ち合わせた。葵は無言でコーヒーを飲んでいた。翔はその姿を見つめながら、静かに切り出した。


「葵…最近、俺たち距離ができてたよね。でも、俺はやっぱりお前のことが大事だし、失いたくないんだ」


その言葉に、葵は少し驚いたようだったが、やがて静かに笑みを浮かべた。


「私も同じ気持ち。お互いに忙しいけど、もう少しお互いのことを大切にしよう」


二人は手を取り合い、再び繋がりを確認した。その瞬間、翔は言葉では伝えきれない何かが自分の中にあることに気づいた。それは、言葉にしなくても伝わる温かさと信頼だった。


5. 未来に向けて


寒い冬の夜、二人は再び車に乗り込んだ。車の中では、また新しいラブソングが流れていた。葵は静かに翔の肩にもたれかかり、安心したように目を閉じた。


「この先、もし何かが起きても、俺たちはきっとやり直せるよな」と翔は思った。葵のぬくもりを感じながら、彼は未来への希望を抱いた。


彼らの関係は、これからも試練に直面するかもしれない。しかし、二人はその度に新しいきっかけを見つけ、再び歩み寄ることができる。お互いの気持ちを大切にし、これからも共に歩んでいこうと誓った。


「忙しい毎日が俺たちの距離を作ることがあっても、そのたびに俺はお前を探しに行くよ」


翔のその言葉に、葵はそっと微笑んだ。


「私も…いつだって、翔を待ってるよ」

時が流れ、季節が変わっても、二人の関係は深まり続けた。言葉にすることの難しさを理解し、行動で伝え合うことで、二人はより強い絆を築いていく。そして、どんなに離れても、必ず再び繋がることができるという信頼が二人を支えていた。


未来がどうなるかは分からないが、二人は共に歩むことを選んだ。それが、たとえ言葉にできないとしても、二人には確かな絆があった。

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