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戦略的撤退のその後ーとある事件の結末についてー

ギルドの有能受付嬢ミラリアちゃん

クソ兄ことフェルナンド様

クソ女ことマルチェラちゃん

とある令嬢視点でのお話となります。

sideとあるギルドの受付嬢 ミラリア


「正義は我にありー!!シネークソ女!あははははーー!!」


私はミラリア。

ギルドの受付嬢です。


新進気鋭のルーキー【宵の逃亡者】のお2人、ラゼルさんとルーシーさんとは歳も近いことから仲良くさせてもらっています。


今日は熊の手亭で夜通し晩酌とお話されていたので業務後合流したのですが…


「やっときた!ミラ!ミラリア!こっちよこっち!早くお酒たのんで!祝勝会なんだから!!」


姉のラゼルさんはもう出来上がってますね…


「ミラ!早く!今日はとことん行きますよ!私も今日はブレーキ外しますからね!」


珍しい!いつもはブレーキ役の妹、ルーシーさんまで完璧に酔ってらっしゃいました。えぇ…どうしちゃったの?


「珍しいですね、お2人して全開なんて。なんかいい事ありました?…そーいえば新聞読んでからルーシーさん楽しそうでした?」


「さっすが!ギルドの有能受付嬢!変化を見逃さない!」


「当たりよミラ、ここ!ここ読んで。私たち姉妹の勝利報告がここに書いてあるのよ!!」


ニコニコ顔のお2人が指し示すそこには


ーーゴート伯爵家の泥沼劇ーー


と、なにやら不穏な見出しが書いてありました…ほんと、何なんですか?


読み込んでみると、伯爵家嫡男の泥沼三角関係にはじまり、冤罪にて家から破門された姉妹と義理の妹との確執、その義理の妹の母親が過去にやらかしたアレコレなどがセンセーショナルに書き出してあった。

なかでも驚いたのは、破門された姉妹が自分達がいかに家の中で冷遇され、実の父や兄に冤罪を訴えても、嘆く義妹の涙にやられた彼等には一切言葉が届かなかったこと。

姉妹はこのままではあらぬ罪を捏造され続け、罰として良くて修道院、悪ければ何処ぞの悪辣な貴族へ妾として売られるかもしれないと恐怖していたと記載があった。

過去に起きた全ての義妹絡みの事件を記し、もし自分達が去った後の次なる生贄は兄の婚約者である令嬢になるはずで、助ける力がなく逃げる自分達を許して欲しい…その事だけが唯一の心残りであると記事は締めくくられていた。


「えっと…この姉妹ってもしかして…?」


「「はーい私たちでーす!やほーい!」」


あ、やっぱりですねー???

お酒をぐびぐびと飲みながら肩を抱き合いとても楽しそうな姉妹は笑いながらこう語る。


「いやー上手くいったよねほんと!あのままじゃ悔しすぎるからって感じで、ちょっとした嫌がらせ程度でお土産をあちこちに配ってよかったわぁ〜」


「あー!やっぱり!姉さん、私と同じ事してた!私もあちこちにお土産くばったもん…」


「「やだーー♡私ら仲良しすぎー!!」」


アヒャヒャと笑う姉妹達。


「あのぉ…お土産って?というか力なく逃げる事しか出来ない可哀想な姉妹??」

恐る恐る聞くと、酷いわねー?可哀想な姉妹なのよ!と笑いながら姉が続ける。


「お土産はねー私たちの直筆報告書よ」

とのこと。


「悔しかったですからね。戦略的撤退とは言え逃げるわけですから。でもちょっとした心からの嫌がらせでね?こう心底嫌な気分を味わってもらえたらなぁ〜と。あと逃げる事により、新たな槍玉にあがる兄の婚約者であるコートニー様が不憫で…だから私コートニー様に味方が増えるようにって、私たちが今まであの子にされた事を細かく、より歌劇的に文書にしたためまして…ゴシップ専門の新聞社数社と小話雀って有名なマルチネス伯爵夫人へ送り付けたんですよね。マルチネス様、社交界の噂マニアでしたから。さぞ色んな人へ話してコートニー様を援護してくれたと思うんですよね。」

とルーシー様。


「あ、私はコートニー様本人とそのお父様へ手紙おくったわ。あとフォローお願いします!って事で仲良くしてた公爵令嬢のチェルシー様にもお手紙出したなぁ〜普通の新聞社にも2社ほど同じ内容の手紙送ったもん…あ、コートニー様へのフォローが行われてるか気になるな…あ、ミラ!ギルドへ依頼出していい?チェルシー様に追い討ちでフォローのお願いと私たちは国外でひもじくも元気で暮らしております…オヨヨ…って手紙出したいのよね!」


いやラゼルさん?あのですね…??


「…受付はしますけど、お2人ともどこがひもじいんですか!我がギルドのエースで稼ぎ頭のくせに!嘘つきぃ」


「いいの!いいの〜あのクソ女的に言うとこの…そんな…つもりなくて…ってやつよ!ひもじいってのはちょっとした言い間違いよねぇ?ね?ルシ??」


「ええ、姉さん。そうですとも。まぁ私たちよく言い間違いで罰せられましたからね?ちょーっと手紙に力が入って可哀想気味に書いてしまうかも知れませんがまぁ筆が乗っちゃった事故って事ですからね。あの子的には誤差でしょう。許してもらえますよ。」


アヒャヒャヒャと笑う姉妹たち。

いやはや…怖いなぁ。。

まあ物理でボコされなかっただけでも渦中の方々はマシなのだろうか?

この人たちが本気を出したら…一瞬で綺麗なお花畑が浮かぶ所へ旅立てる。


そんな事を考えていたらドカっと近くに座る音がした。

「よー?どうしたラゼル!今日はやけに愉快そうじゃねーか?なんかいい事あったか?」


「ルーシー、君が酔ってるなんて初めて見たかも。珍しいね…ほんと何があったの?」


この人たちは我がギルドのエースパーティーの1つ【白雷】のダントン兄弟だ。

兄のライゼルと弟のミゼル。大槌使いの兄と魔法士のパーティーでこの兄弟も滅法強い。

時間が合うと仲良くなったこの姉妹を連れて大掛かりな迷宮攻略へ行ったりするのだ。


怖くて突っ込めなかったが兄は姉と、弟は妹と…その…


「やっとよ!やっと!やっと目標達成したわ!返事が出来る!ライ、結婚してあげる!」


ええ!?なんだって!??


「おぉ!ほんとか!ラゼル!!!」

「わぉ、姉さんおめでとう」

「おめでとうお2人共…えーいいなぁルシ、俺への返事は??」

「2人が落ち着いたらね…まぁ悪い返事はしないよ?」

「兄さん聞いた!?あのルシから!!やっと返事が!!5ヶ月だよ、5ヶ月!」

「よかったなぁミゼル?でも俺は7ヶ月かかってるんだ!」


あ、やっぱりお2人ともそーゆー事でしたか。

なんか両カップルとも良い感じ…


そろそろお暇しますかね。



いーなぁ…私も彼氏欲しいなぁ。。



あの後、宵の逃亡者から依頼が入った。

内容は隣国への、手紙の配送とお返事をもらってくること。

また調査対象者である、とある令嬢の行く末を半年に渡って調査報告して欲しいとの事だった。

調査対象者はマルチェラ・ゴート伯爵令嬢、余裕があったらその家族との事。報告書の内容にて追加報酬あり。

長期に渡る調査との事で前金ですら大金となった。

こんな金額をポンと出せるとか…凄いなー、エースパーティーは。





半年に渡る調査の結果が今ここにある。

調査対象者:マルチェラ・ゴート

追加対象者:ライモンド・ゴート、フェルナンド・ゴート、コートニー・エバンス

………

…………

………………


※※※※


sideフェルナンド



「もう終わりだ…あの子たちがここまで本気で怒っていたなんて…あぁシルフィ…助けておくれ…私は一体どうしたらいいんだ…」


嘆く父を横目に、私自身も絶望していた。

連日ゴシップ記事にのる我が家の名前、マルチェラの他方へのやらかしが日々発掘され記載される。


自分も過去にマルチェラからあらぬ事で騒がれ被害を受けた。

失踪まで追い詰められた姉妹が可哀想だ…


別の日には、

上手くいきかけてた縁談をぶち壊された。

じゃあくっつくのかと思ったら当の本人はそんなつもりなかった言いがかりだと泣く始末…破談騒ぎになった姉妹の気持ちがよくわかる。なのに一番親身にならなければいけない家族から攻撃されるとは…逃げ出すしか方法がなかった姉妹が不憫でならない…


こういった記事が毎日…毎日。

全ての原因はマルチェラだという。


そんな…そんな…


そういえばまだ妹達がいた時によく訴えられたっけ…

自分達はそんなことしていない。

マルチェラが大袈裟に言っているだけだ!

なんなら言ってすらいない。

父と俺が騒ぎ立てているだけで何もそのような事実はないのだと。


あの当時は、2人がマルチェラに嫉妬して虐めており、嘘をついているのだと…そう思っていたんだ。

だけど本当は…マルチェラ…なぁ本当は何だったんだ?

我が家はもう終わりだよ…

先日、エバンス伯爵家から正式に婚約破棄の連絡が入った。

我が家の…俺の浮気による有責とのことだ。

多額の慰謝料も請求されるらしい…

コートニーはチェルシー公爵令嬢と最近仲が良く、公爵家の分家であるアルファン侯爵家の嫡男と数回お茶を楽しんだとかなんとか。


ははっ…。

婚約破棄はいいんだ…

俺の気持ちが離れたのは確かな事だったし。


でもさ…?マルチェラ…


あんなに熱い瞳で見つめてくれていたのに…どうしたんだよ。

いざ俺が気持ちを伝えると

「フェル兄様…わっ私…兄様の事…そんな風に考えたことなくて……」

え?あの空気感で?

そんなことなかったと言うのか??

嘘だろマルチェラ!


マルチェラ…過去に行った君の悪行を今更訴えてきて金銭を要求してくる家もあるんだ…

こんなに…こんなにも迷惑を掛けているのに!


父さんなんて心労で倒れてしまったよ。

なのに、なのに君は僕を選ばず、ここを出ていくと言うのかい?


なぁマルチェラ…君は一体何がしたかったんだ。



教えてくれ…マルチェラ…。



※※※※※


sideマルチェラ


なんだろう…最近とっても周りが騒がしいの。

会う人、会う人、皆が私を責めるのよ?


コートニー伯爵令嬢もあんなに兄様と仲が良かったのに破談となってしまわれて…


しかも何故だか私が2人の仲を引き裂いたって言うのよ?

私…私そんなこと絶対にしていないわ?


でも…何故かしら私の周りって破談になる人達が多くて…

その人達からいつも私のせいだって言われるの。


私…誓って何もしてないのよ…?むしろ初々しい2人を盛り上げようと励ましたりして応援したのに。

本当に酷いわ皆…。


酷いことはこれだけじゃないの。

バラ園を散策しましょう?とお約束していた令息からは

「君ってとんでもない悪女だったんだね。危うく私も被害に遭うところだったよ。告発をして去っていった姉妹達に少しは悪かったと詫びたらどうだい?」

なんて言われて、お約束自体が無くなってしまったの。


酷いでしょ?


あと、お義父様から

「もう家に置いておけない…亡き親友の忘れ形見と君を受け入れたが、これ以上は君を庇ってあげられない。居なくなったあの子たちが家に帰って来られるようにしたいんだ。わかってくれ、すまない。」

そう言って僅かなお金をくれたかと思ったら家を追い出されてしまったの!


え、嘘でしょう?


私は何回も家の門の前で入れて欲しいと泣き叫んだわ。

でも…誰も助けてはくれなかったの。

仕方ないから暫く門の前でしゃがんでいたんだけど、1台の馬車が通りかかってね?

その馬車の中に綺麗なご令嬢がいたんだけど、その方がこう言うの。


「困ってらっしゃるのね?私、貴女にぴったりの場所を知っているわ。是非、ご招待したいの。こちらにいらしてくれる?一緒に行きましょう?」


やっぱりね!日頃の行いって自分に返ってくるのよねぇ!

私は皆が言うような悪い子じゃあないわ。

だからこうやって手を差し伸べてくれる人がいるのよ。


ふふふっ…

ねぇ?お姉様達元気にしているかしら?


お姉様達はひもじい思いで生きてらっしゃるとの事でしたが、私はお姉様達みたいにはならないわ。

幸せに豊かに暮らしていけるの!

だって私はこんなにも良い子なんですもの!


ふふっ…


うふふふ……



※※※※※



sideとある悔しい公爵令嬢



私の親友は妹と一緒に家を捨てて消えたわ。

貴族令嬢の失踪事件…1年ちょっと前、新聞は謎の失踪を面白おかしく書き立てたの。

虐めを行ってた罰だとか、天罰がくだって消えざるを得なかったとかなんとか。


ふざけないで!!


ラゼリアは罰が下るようなことしてないわ!!

妹のルシアだって、そんな子じゃない!

新聞に憤慨していたらまさかの当事者から手紙がきたの。

彼女いわくヤバい義妹に家族は洗脳された、実害が出る前に妹を連れて行方をくらますから達者でとのこと。


達者で…ってなに!?


私たち親友よね!!?なんで…なんで消える前に助けてって言ってくれなかったの…!


手紙には他のことも書いてあった。

彼女たち姉妹が今までされた事、またこれからコトが起きるであろう兄の婚約者であるコートニー嬢が不憫でならないこと。

自分達では父や兄を諌めることが出来ず、逃げ出すしかすべがないが、力のある公爵令嬢である私ならコートニー嬢が酷い目にあった際に手を差し伸べられるのではないかと…出来るのであれば助けてあげて欲しいと、そんなことが書いてあった。


助けるわ、貴女の頼みだもの。

でもね、本当は貴女自身を助けたかったわ…。

手紙には宛先がなく旅の途中で出したものだと推測できる。


私は返事を書くこともできないのね…いいわ。


ラゼリア、私の親友!見ていてね、貴女のお願いを完遂するから。


コートニー嬢を社交界での噂から守ってみせる。


彼女は何も悪くないのだから。





1年後、貴女から手紙が来るとは思わなかったわ!


え、何?隣国で冒険者になってるですって??

え、本当に!?た…楽しそう!

羨ましいわ!もしまだ私の事を親友と思ってくれてるのなら…返事をくださいだって!

えぇ、ラゼリア!私の親友!お返事を書きますね!!


あと聞いてね、私の親友?

貴女がここを離れたが故出来なかった復讐を、勝手ながら私がすることにしたの。


え?ズルいって?


だって貴女だって遠いかの地で楽しく暮らしているのでしょう?

伯爵令嬢時代よりひもじい…って絶対嘘よね?

手紙に使われてた便箋はとても上質なもので金銭的な苦労なんて少しも見えないわよ!


もう、ほんと嘘つきなんだから。


ふふっ…いい?

そんな嘘つきな貴女へのちょっとした罰よ。


復讐は私がやるわ。


手始めにクソ女(マルチェラ)の昔の被害者を洗い出して、訴えるようにお願いしたの。

かかる費用は私がだすからって。

そしたらね?出るわ出るわ被害者が!


もう多くて笑ってしまったわ。


新聞社へリークしつつ訴えの準備をして…

そんなことをしてたらね?

あの女、家から追い出されたのよ!

貴女の元ご実家ってほんと薄情よね。


びっくりしたわ。


でも、これで復讐がやりやすくなるわね?

私、追い出されてシクシク泣くあのクソ女の手を引いて差し上げたの。

もう、寒気がして大変だったんだから。


同じ馬車に乗るのだってほんと嫌だったのよ!


お金がない、こんな少しのお金じゃ生きていけない…と目を潤ませて縋ってくるあの女を…最適な場所へ案内してあげたわ。


お金が稼げて男の人にちやほやして貰える…

ふふ?あの女にぴったりな職場にね。

今頃楽しんでもらえてるかしら、ちょっと肉体労働だけど…天職だと思うのよ?


でもあの子、協調性がなさそうよね。


どこでも問題を起こして…きっと職場でもそうだわ。


夜の華の世界はルールがとても厳しいの。


とてもじゃないけど一流が集うあそこで、ずっと働いてなんていけないわ。


だからね?私お店の方へお伝えしておいたの。

問題を起こしたら即座に1つ下のランクのお店へと落としてあげてくざたいなって。


ふふ…いつまであの綺麗なお店で働けるのかしら?


1つ落ち、1つ落ち…


最後はどんな所で生きるのかしらね?


ねえ、親友?

私貴女の代わりに見届けますからね。


これが終わったら会いに行くわ!

待っていてね?ラゼリア!!

天然悪い子マルチェラは、ラゼリアの親友である公爵令嬢チェルシーにしっかりと罰をくだされました。

夜の肉体労働で苦労するエンドとなります。


伯爵家はマルチェラ絡みの賠償金で破産寸前…というか破産予定です。姉妹を蔑ろにした父も兄もしっかりと天誅となります。


悪いことダメ絶対( ˙꒳˙ )

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― 新着の感想 ―
[一言] 堕ちる「予定」で終わっているのが残念です。 チェルシー氏、最底辺に堕ちて野垂れ死ぬところまでレポート頑張って?
[一言] 勝利の美酒に酔ってはっちゃける姉妹の様子が最高に面白いw でもクソ女が出てくる部分は読むとイライラしますね。 なので落ちる所まで落ちたクソ女のシーンが読みたかったです。
[良い点] とても面白かった、やはり勧善懲悪系の物語は良い。 [一言] こういう女じゃないけど、世の中本当に同じ人間か?と言いたくなる程に話が通じない人はそれなりに居るからな。
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