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9.馬鹿しかいない

 次の日。


「ずいぶん食事の質が改善されましたね」


 ずらりと並べられた食堂の食事に、ちらりとフローラの体に入ったロイが視線を向けると一斉に使用人たちが目をそらすように顔を下にする。

 下手に目があって話しかけられるのを恐れたのだろう。

 一応いままでの自分たちの行いがどうだったのかの自覚はあるらしい。

 夕べキャロルを横領の容疑で牢に放り込んだあと、朝起きてみればいままでのフローラの時と使用人たちの態度が一変した。

 レクシスに調べさせていた報告では普段のフローラは部屋の一室に閉じ込められ質素な食事が与えられていたとのことだが昨日の件で懲りたらしい。


 食堂には豪華な食事が並べられており、使用人たちもフローラに扮したロイにひたすら媚びてくるようになった。


(まぁどのみち、この王都の館でフローラを虐めた奴は全員解雇するが、急に人材を集めることもできない。

 今はこいつらで我慢してやる。

 レクシスに頼んで本国から優秀な人材を少しずつこちらに派遣してもらおう)


 そんな事を考えながらロイは食事をする。

 隣にはセルクが控えていた。


 すると


「フローラ!! 貴様何を考えている!! 母を牢にいれたというのは本当か!?」


 ばたんと扉が開いて、キャロルの息子のジャックが乱入してきた。

 銀髪の生意気そうな男性だ。


(確かキャロルの息子だよな。

 あー、面倒だ。昨日のうちこいつも牢にぶちこんでおけばよかった)


 ロイは食べかけていたパンをさらに置いた。


「あら、まさかあなたからわざわざ来てくれるとは思わなかったわ。

 衛兵。こいつも牢にぶちこんでおいて」


 ロイが指示するとジャックの顔が青くなる。


「ま、まてなんの罪があって!?」


「本当親子そろって頭が悪くて困るわ。

 キャロルが牢に入れられたということは、あなた方一家の不正がばれていると考えるのが普通でしょ?

 乗り込んでくるなんて頭おかしいの?」


 そう言ってロイは紙の束をとりだした。


 その帳簿を見てジャックはぎょっとする。

 確かあれはファルバード家の金を流用したときのものだ。


「心当たりがおありのようで」


 ロイはくすくす笑って紙を放り投げる。


「複写したものでよかったら差し上げるわ。

 どうぞご自分の罪を自覚なさってくださいね。ジャック様」


「貴様!!ふざけるな!! こちらには王太子がついてるんだぞ!!」


 慌てて書類をかき集めながらいうジャックの言葉にロイは目を細める。


(――こいつ、馬鹿なのか)


 なぜ、わざわざ自分から切り札を言うのだろうか。

 王太子が背後にいる事をばらせばもちろん対策するに決まっている。

 高度な情報戦というわけでもなさそうだし、それだけフローラの事を下に見ているという事なのだろう。


 しかし王太子が絡んでいるとかマジで潰しがいがありそうだ。


「そう、この件には殿下も関係しているの」


 ロイがにっこり笑うとジャックがしまったという顔になる。


「フローラ貴様いい加減にしろ!聖剣が認めたからって俺は認め……」


 そう言ってフローラに飛びかかろうとしたジャックの襟首をセルクが掴んだ。


「な、なんだ貴様っ!?」


「ステキな情報を教えてくださってありがとうジャック様。

 衛兵たちこの馬鹿をさ、さっさと牢にぶちこんでおいて」


 ロイ言葉とともに、衛兵たちがジャックを引きずり部屋をでていく。


「……本当に馬鹿しかいないんですか。ここ」


 セルクが冷や汗をかきながら言うとフローラの体のロイはくすくす笑う。


「それだけ好き勝手してくれたのですから、潰し買いがあるじゃありませんか。

 この後は早速敵地に乗り込みましょう?」


 そう言ってフォークに肉を刺して食いちぎり微笑んだ。



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