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38.伝わっていない

「許さんっ!!許さんぞ!!!」


 デナウ王子は部屋の家具のツボを床に投げつけた。

 壺が大きな音をたてて割れ散らばる。

 黒の塔からの注意でとんだ大恥をかいた。


「落ち着いてください!!殿下!!!」


 部下が止めるがデナウは家具を手当たり次第に壊している。


 いつもオドオドしているあの女が大嫌いだった。

 何を言ってもびくびくしていて、口汚く罵ってやればいつも許しを乞うていた。

 ファルバード家の令嬢がひれ伏す快感。

 

 自分が大きくなった気になれたのは事実だった。

 だからいじめもだんだんエスカレートしていった。


 それなのに周りは自分の事を腰ぎんちゃくだと思っていただと?


「許さん!! 許さんっ!!! 公衆の面前で私の方が立場が上だと証明してやる!」


「と、いいますと」


「父はまだおかしいままか?」


「は、はい、奇妙な言葉を発して部屋を四つん這いに徘徊していると聞き及びます」


「いいか、そのことを誰にも知られるなよ、あの女に大恥をかかせてやるっ!!!」


 だんっとデナウは机を叩いた。


★★★


「ずいぶん嬉しそうですね。殿下」


 フローラからのデートの後、ファルバード家の自室に戻ったロイにセクスが尋ねる。


「ふふふふ。喜べ、お前らがさんざん急かした事がついに解決したぞ」


「ほう? 急かしていたとは?」


 そう言って、セルクはバリバリと、砂糖の塊のお菓子を食べながら聞く。


「妻の問題だ!フローラに告白してOKしてもらえた!?」


 どーんっと自らを指さしながらロイがセルクに顔を近づけた。


「………」


「どうした?」


「それは妃に迎えたいということでしょうか?」


 セルクが砂糖菓子を食べるのと止めて聞く。


「もちろんだ!!」


「殿下、その残念ながら……」


「うん?」


「おそらく肝心のフローラ様にその意図は伝わっていません」


「……へ?」


★★★


 話は昨夜に撒き戻る。


「セルク様! 私も殿下の配下に加えていただけると言っていただけました!」


 テレポートで城まで送り届けたフローラにとても嬉しそうにセルクに告げた。


「配下にですか?」


「はい!ともに歩んでほしいと」


 そう言って顔を赤らめる。


「これから殿下の役にたてるように知識を身に着けられるように頑張ります。

 もしかしてご迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いいたしますね」


 その笑顔がとても嬉しそうで、つられてセルクも微笑んだ。


「はい、よろしくお願いします。フローラ様」


 そう、あの時のフローラは純粋に部下に入れてもらえることを喜んでいた。

 とてもではないが妃になる気などなかっただろう。




「はい。私もフローラ様に聞きましたが、殿下の意図はまったく伝わっていませんでした」


 シャルダーク王国の王城。ロイ、レクシス、セルク、エルティルというメンバーでともにお茶を飲んでいると、レクシスが笑顔で告げた。


「なんだと!?一緒に歩んでほしいといってOKもらえたんだぞ!?」


「いつもの人材を口説くときのセリフですね」


 薄目でセルク。


「私も言われました♡」


 紅茶にどばどばミルクをいれつつエルティルがにっこり笑う。


「普段言いすぎて重みがなくなっているのでは?」


 茶葉をとりかえつつレクシスが告げる。


「く。こうなったら問題がかたづいてちゃんと元の体に戻ってから改めてプロポーズするしかない」


「その時はぜひ私も一緒に拝見いたしたく」


 エルティルが言うと、ロイが「え?なんで?」と突っ込むがエルティルは笑って「楽しそうですから♡」と答える。


「ところでロイ様、フローラ様抜きでこのメンバーを集めたというのはそれなりの理由があるのでしょう」


 セルクがお菓子を食べる手をとめてきいた。


「ああ、戦争の準備は整った。あとは婚約破棄されて、宣戦布告するだけだ」


 と、ロイがにんまり笑うのだった。




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