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28.頼み

「ロイ殿下、どうかなさいましたか?」


 ロイの体にはいったフローラが心配そうにロイに声をかけた。

 今二人はお互いの部屋で通信機で会話中だ。


「あ、いや、なんでもない」


 フローラを虐めていたやり方を改めて実感させられて不機嫌になってしまったのだが、当人にそれを言うのもはばかられる。

 そういえば最近のフローラはよく話すようになってくれたが、最初の頃はいちいち発言をしていいのか伺うほど卑屈だった。

 それもああやって、理不尽な事も怒鳴りつけて委縮させて押し通してきたからこそなのだろう。


「フローラは可愛いなと思って」


 そう言うとロイの体にはいったフローラは一瞬赤面して


「殿下の身体ですから」と微笑んだ。


 ……たしかに。自分の体に口説いても単なるナルシストなだけだったと、ロイは思いなおす。


「いや、頭のいいところとか、洞察力のあるところとか」


「レクシス様が手伝ってくれているから答えを導きだせるだけです」


 ニコニコ笑いながら言うフローラにロイは心の中でため息をついた。


 前は「私なんて……」と卑屈だったのがいまでは卑屈にならなくなったのだが、どうもフローラは褒められても、全部その手柄を他人の物にしてしまう癖がある。


 自己肯定力が低すぎて、自分が誉められているという発想がないらしい。


 ……これはもしかしたらエルティル並みに口説き落とすのが大変かもしれないな。


 ニコニコ微笑むフローラを見てそう思うのだった。


★★★


「……毒騒ぎ、ああなるのわかっていたんだろう?」


 次の日。


 護衛もつれずにひょっこり現れたエルティルにロイが薄目で突っ込んだ。

 聖女が倒れた時、エルティルは特に気にした風もなくたんたんと回復魔法を使っていた。

 大したことにならないと高をくくっていた部分がある。


「はい。大体の予想はついていました。

 ですがロイ様がせっかくお楽しみだったので邪魔をしたら申し訳ないかと」


 優雅にティーカップにミルクをいれて答える。


「あの後少し調べさせていただきましたが、この国の腐敗はもう手の施しようがないでしょう。

 今回嫌がらせをしてきた貴族たちを見ればわかると思いますが、氷の騎士にすべて頼り切っていたため、優秀なものを追いやってしまった。彼の損失を埋められる人材がいません。」


「安心しろ、俺が平定してやる」


「中立な立場なので聞かなかったことにしておきますね」


 エルティルがミルクを入れすぎて真っ白になったお茶を飲みながら言う。

 もうそこまでするならミルクを直に飲めばいいのではと思ったがロイは突っ込まないでおいた。


 どうして俺の知り合いは普通に茶が飲めないのだと思いつつ、


「お前のそう言うところが好きだぞ」


 と、口説いてみる。


「……はい、わたくしもですよロイ様♡

 しかしこのような事がまかり通っていたとなるとなると問題ですね。

 こちらも豊穣の聖女の処遇を考えなければなりません」


「それで一つ頼みがある」


「はい、なんでしょうか?」


「いったん豊穣の聖女を見逃して聖王国に帰ってほしい」


「はい。わかりました」


「理由は聞かないんだな」


「何をするおつもりなのかは想像はつきますから。

 豊穣の聖女はいつでも裁けますのでご心配なきよう。

 では準備が整いましたらお教えください」


「あー。やっぱりそう言うところが好きだぜひうちに」


「私は神にお仕えする身なのでお断りさせていただきます♡」


「いつか絶対、落としてやる」


「氷の貴公子を落とすためにご令嬢に乗り移るお方に目をかけていただけるとは光栄です。

 その日を楽しみにしておりますよ」


「おう、任せとけ」


 そう言って優雅に微笑むエルティルにロイは意味不明なかっこいいポーズをとるのだった。


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