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17.奴隷

「デナウがそんなことを?」


 七賢者セルクの抗議書をもってきた部下の報告に国王デテルは頭をかかえた。

 いままでフローラを父親憎しでないがしろにしすぎていた。

 アレスが魔獣討伐でまさか命を落とすとは。

 アレスはデテル国王の命令を聞かねばならない理由があった。

 だがフローラは違う、彼女が独立するといいだせば、ドムテラムド王国は周辺諸国に狙われるだろう。

 ファルバード家の領地が他国に渡れば盾をなくしたドムテラムド王国など小国にすぎない。


「今すぐデナウを呼びつけろっ!!!」


 苛立ちながらデデルは叫ぶのだった。



 ★★★



「嫌がらせをやめなさい」


 デナウを呼びつけて玉座に座ったまま開口一番国王デデルが告げる。


「ですが聖女に無礼を働いたのですよ!? それに私に生意気な口を!!」


 青筋を浮かべながら反論する息子のデナウにデデルはいらだちを覚えた。

 憎き氷の騎士アレスへの当てつけで、一番愚鈍な息子をフローラの婚約者にしたがここまで頭が悪いとは思わなかったからだ。


「聖女がなんだ!?

 多少農作物の実りがよくなったところでなんになる!?

 魔獣の脅威がなくなった今、共通の脅威がなくなり次は国同士の争いになる、氷の騎士が死んだ今、この領地を守る盾になるのはファルバード領地だ。これ以上不利益になるような事をするな!!」


「父上はあの女をかばうのですか!?」


「そういう問題ではないだろう!?そんなこともわからないのか!?

 それにお前が王位を継げるのはフローラの婚約者だったからだ!!

 これ以上無能をさらすなら別の王子を王位継承者にする!!」


 この馬鹿は周囲の空気すらよめないのか。

 戦局の話をしているのになぜかばう・かばわないの話になるのだ。

 と、デデルは舌打ちする。

 アレスに嫌がらせをして満足していたため、その他の事をおろそかにしすぎたと後悔する。


 もともとアレスは国王デデルの父の弟子のひとりだった。

 剣にも魔法にも優れ、デテルより人望があった。

 父の愛でさえアレスはデテルから奪い去った。

 それが故、彼に嫌がらせをすることに執着してしまい、アレス亡きあとの事を考えてなかった事に気づかされる。

 せめて娘のフローラにはもう少しまともな息子をあてがうべきだった。

 フローラが蔑ろにされ、心を痛めるアレスをいたぶる事に執着してしまった自分のミスだ。

 目の前にいるデナウを見ながら国王デテルは舌打ちする。


「全部!!全部フローラが悪いのです!!」


「もうよい!!下がらせろ!!」


 兵士に連れられて渋々出ていくデナウを見送って、王はため息をついた。

 捜索隊を派遣したにもかかわらずアレスの死体は見つからず、フローラが聖剣を召喚したことからアレスは死んだと思っていいだろう。


 氷の騎士の庇護下なしではこの国は生き残れない。


 ……だが。


 フローラが強力な魔力の持ち主とわかっただけでも収穫だ。

 正直キャロルではファルバード家の当主としては魔力不足、フローラは気弱すぎて役立たないと思ったが、いまの強気になったというフローラならアレス同様の働きをみせるだろう。


 次はフローラを奴隷にしてしまえばいい。

 死んだアレスも自分の次は娘が奴隷にされていると知ってさぞかしあの世で喜ぶだろう。


 国王はにやりと笑うのだった。



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