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14.本質

「フローラ様は書類に判を押すだけで大丈夫です。あとは私の仕事ですので」


 ロイ王子の執務室で、どっさりとおかれた書類を前にレクシスが微笑んだ。

 フローラの前にはすでにレクシスが記入した書類が山積みに置かれている。


「目は通してあり、ロイ王子にも了承を得ています。

 あとはフローラ様が玉璽に魔力をこめて印を押すだけで大丈夫です」


 そう言って、レクシスも隣に置いてあるデスクにすわり書類をチェックしだす。


「あ、あのレクシス様」


「はい。何でしょうか?」


「判を押すのはいいのですが……その……私は他国の者ですから書類に目を通してもいいのでしょうか?」


 おずおずとフローラが尋ねた。

 レクシスの話では魔法の力は体に宿る。

 そのためいまフローラがもつ魔力はロイのものだ。

 玉璽を押せばロイが押印したのと同じ事になるだろう。

 だが問題はロイが扱うのはジューゼルト王国の機密部分になる書類が多いという事だ。

 何気ない書類でも、どこに食料を多く保管しているかなどがわかってしまい、軍事機密が漏れる事にもつながってしまう。

 判を押すだけでもその気になれば内容を把握できる。


「ああ、かまいませんよ」


 さらりと言うレクシス。


「か、かまわないのですか!?」


「はい。

 王子が貴方を見て一目で信用できる方といいましたので。あなたは信用できる方です」


 そう言って何事もなかったかのように、書類にペンを走らせはじめる。


「あ、あのそれだけの理由で、本当によろしいのでしょうか?」


 あまりにも不用心な気がして思わずフローラはもう一度聞き返してしまう。

 そして、レクシスが顔をあげたところで、顔を青くした。

 一度大丈夫と言った事に対してまた質問などして、しつこい女だと怒鳴られてしまうだろうかとさーっと顔が青ざめる。


「下心があるならそのような事を何度も確認しないと思いますよ。優しい方ですね」


 そう言ってレクシスが微笑んでくれて、フローラは思わず顔を赤らめた。


 ……怒られなかった。


 それだけが嬉しくて


「も、申し訳ありません、がんばります」


 と、慌てて印に魔力をいれて仕事に専念する。


 それにしても――

 一目見ただけで大丈夫と断言するロイ王子も、王子が大丈夫といったからとそれだけですべて託してしまうレクシスもフローラには理解できなかった。


 人間の本質など一目で見抜けるものではないし、フローラは王子と話した事はない。

 それなのに王子は自分のどこを見て大丈夫だと判断したのだろう?


 そしてその根拠のない保証を信じるレクシスさんもよくわからない。


 これが、物語の中で見たお互いがお互いを信頼できる関係というやつなのかな。


 それでも、信用できる人物と言われたのはとても嬉しい。


 いまだフローラが知るロイの人物像は自分の手を握り「俺が助けてやる!」とにっこり笑う王子の姿だけ。本当のロイ王子はどんな人なのかと想いを巡らせる。


 こんなに大事にされて、私なんかを助けてくれた――きっと素敵な人なんだろうな…と。


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