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11.両手に花

「これはまじでやっているのか」


 フローラの妃教育に出席してみるとそこには大量の仕事があった。


 王城の一室の執務室に大量に仕事がおいてあるだけで、教育係など誰一人いない。

 領地の収穫の集計やら騎士団の予算編成やら、とてもではないが妃がやるような仕事ではないような書類が山になっているのだ。


「これをフローラ嬢一人でやっていたというのか!?この国は!?」


「そうですね。こちらにすでに集計済みのものがありますが、間違いなくフローラ様の筆跡です」


「この書類を全部一人でやったのか……」


「はい。周辺に聞き込みをしましたが、どうやら王子は嫌がらせで仕事をかなりの量押し付けていたようです」


「見てみろセルク」


「はい?」


「この書類分野は多岐にわたるのにちゃんと適切に処理しいてる」


 そして執務室の本棚に大量に並べられた本を指さした。


「適当に処理せずちゃんと調べて適切な判断をしているんだ。

 多岐にわたって広く知識をもちそれをちゃんと指示できるのは素晴らしい能力だ。

 フローラ嬢はまだ18歳だったよな?」


「はい。ご自分の身体を見ればわかるとおもいますが」


「……惚れた」


「はぁ」


「親子両方俺の嫁に迎え入れる!!」


「はぁ、そうくると思いました。好きにしてください」


「なんだもうちょっとこう感動を二人でわかちあってくれても!?」


「いつもの事でしょう、もう付き合いきれません」



★★★



「フローラ様、ご気分はどうですか?」


「なんだか夢のようです」


 朝食をすませたあと、「それでは今のうちマッサージをしましょう」と、レクシスそのまま花の香のたかれた部屋に寝かされ、美しい女性たちにマッサージを受けている。


 レクシスの話では体内に眠る魔力を整えたり体のこりや悪いものをとるための魔法のマッサージらしく、全身が解けるように気持ちがいい。

 

「王子は魔法の使い方が荒いのに面倒がって受けてくださいませんから、フローラ様がお体にいるうちに、徹底的に体のケアをさせていただきます!」


 とレクシスが燃えていたのでフローラも断ることができず、そのまま大人しくマッサージをされている。


(大事にされてるってすごいな……)


「どこか痛かったら言ってくださいね」とマッサージしてくれる女性たちをぼんやりと見ながらフローラは思う。


 常に周りに人がいて、大丈夫ですか痛くないですか?と優しく声をかけてくれるだけで自分に言われているのではないとわかっていても、嬉しくて仕方ない。


(こんな大事にされる嬉しい事なんだ)


 領地の屋敷に暮らしていたときは乳母が優しかった気がするけれど、優しかった乳母が死ぬと家庭教師以外との会話もなく常に一人だった気がする。


 王城にあがってもなじられるばかりで優しい言葉なんてかけてもらったことがない。


 王子様は不思議な人。


 父のためとはいえ私を命がけで助けてくれて、こんな夢のような体験をさせてくれている。

 まだ男の人の身体には慣れないけれど、それでも国にいたときとは違いすぎて幸せすぎて泣きそうになる。

 

「あの……レクシス様」


「はい?」


「私の身体にいる王子は大丈夫でしょうか? 

 ……その私は……待遇があまりよくなかったので……」


 フローラの言葉にレクシスが苦笑いを浮かべた。


「ご安心ください。あの方はふてぶてしいですから。今頃盛大にやっていると思いますよ」



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