一押し
誰でも一度は「背中を押してほしい」と思った事があるんじゃないか。
自信を持てない時、勇気が出ない時、パターンは様々だが今の私は後者だ。
しかし、残念なことにいつも誰かが背中を押してくれるとは限らない。それにこの場合下手をすれば罪を着ることになる。
諦めた私はため息をつくと仕方なく空に向かって踏み出した。
しかし、私の考えとは裏腹に風が私を包みこんだ。
手すりの内側に引かれた私は目を丸くした。何が起こったのか理解できなかったが心の底は清々しく澄んでいた。
メガネを整え、揃えて脱いであった上履きを履き直すと私は屋上を後にした。扉の枠に切り取られた長方形の夕日は私の背中を押していた。