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第一話 繋がりの糸

初投稿です、興味が出たら読んでやってください。

その日が来るまでは、自分は一般人のはずだった……




「はぁ……今日も残業で終電逃して退勤か……やってらんね」


 そう一人呟き、タイムカードを押し会社の外へ出る。俺は詩島大護(しじまだいご)、しがないサラリーマンだ。仕事ができない訳ではないが、これといってバリバリできる男って訳でもない。人並みでいいと思い、マイペースでこなしているとまあこんなもんかと思う。


「歩いて帰るか…………幸い明日は休みだしな」


 家への道を線路沿いの道をくたびれながら歩く、何度も歩いた道だ。


「……?ここ、こんな道だったか?」


「ひでえなこれ…帰れなくね? 別の道探すか。」


 いつも歩いていた道だった場所は見る影もないほどめちゃくちゃだった。コンクリートが抉れていたり標識がひしゃげて倒れているのは誰がどう見ても異常な光景だ。


「歩けなくはないがうーん……めんどくさいしなあ、疲れてるし早く帰って休みたい。」


 疲労に疲労を重ねている状態で遠回りするのも流石に辛いかと思った時聞き慣れない音が聞こえてきた。例えるなら自転車や風船から空気が抜けるような音だ。

 そんな中、ごうごうと燃える炎を身にまといながら、ひときわ抉れた地面からゆらりと立ち上がった何かがいた。 


「どカーん、愚しゃ愚しゃ……ちゃんと……ちャんとお別レしないカらこういうこトになる……ナる……?」


「なんだ、あの人……」


 少なくとも、頭一つに手足四本──人の形はしているように見えた。女性的な身体の起伏もある気がする。だが、それ以外が人間には見えない。

 身体の所々に空いた穴から炎が吹き出ていて、それが人間に見える程、俺は疲れ果ててはいなかった。

そして、爆発と炎にまみれたその女の子の右手には男性の腕らしきものが見えた。その人のような何かがゆっくりとこちらを見てつぶやく。


「あなたもニんげン?もしそうナら…こイつと同ジで……お別レね……この世かラ……ッ!!!!」


 唐突な爆発、たまらず爆風に吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられる瞬間、不思議な光とともに何かに優しく抱きとめられた。


「だ、大丈夫??死んでない?腕とか飛んでない?呼吸はできる?」


「あ、ああ…………」


 白い髪に二本の特徴的な角……見ていると酔ってしまいそうな螺旋状の瞳。どこかで見たことがある気がした、そうして、彼女は続けてこう言った。


「き、君は何なんだ?それにあれは一体…。」


「あとで色々説明するし、なんとかする方法は私が知ってる、だからまず貴方はどこかへ逃げて、お願い。貴方が怪我でもしたら私はすごくすごく嫌なの。」


「それはわからんがわかった、でもあれはなんなんだよ!炎も出てるし爆発もしてるぞ!!!」


「ガスボンベの化け物!!!!!!!!!!!!!」


 そのままだ、だってシューシューいってて引火してるもんな。これ以上ないわかりやすい説明だった。


「逃げるってったってどこへ!?あいつの狙いはおそらく俺だろッ!」


 爆風や炎から庇ってくれている女性へ俺はそう叫ぶ。


「私があいつを止めてもとの道具へ戻す!!だから大人しく逃げてどこかへ隠れてて、ね?お願い!いい子だから!!」


「大の大人をガキ扱いすんな!!君一人をここに残して俺だけ逃げるなんてできるわけないだろ!」


「分からず屋なのは変わらないんだね、だけどガキ扱いするより何より貴方が死ぬ方が嫌、だから早く逃げて!」


「ふタりともい無くなレッ!!!!」


 爆発とともに瓦礫がこちらに飛んでくる、人間がまともに食らったら終わりだ。あの子とも少し距離が離れている。飛んでくる速さ的に庇うのも間に合わないだろう。


「伸びて!!!継腕ツギウデ!!!!」


そう彼女が叫ぶと庇おうとした彼女の右腕が異形の形に変化し、瓦礫を弾き飛ばした。


「うぐッ……」


 無理に自分より大きいものを弾いたからなのか、その伸ばした腕は酷く傷を負っていた。


「だっ大丈夫なのか!?」


「大丈夫……死ななければ……貴方が生きていれば…………必ずなんとかするから……!」


「ど、どうすればいい?今の俺には何ができる!?」


「とりあえず……一旦仕切り直すから、私の身体につかまってくれる?」


「わかった!これでいいのか?」


 彼女からの指示を正直に受け止め腕の下から自分の腕を通ししがみつく。


「……色々言いたいことはある抱きつき方だけど行くよ!!」


 そして傷ついていないもう片方の腕を変化させ遠くのビルの屋上へ伸ばし、続けて自らをビルに引き寄せる。静まり返った夜の街の空に一人の男の絶叫がこだまする。


「ああああああああああああッ怖えッ高いとこ苦手なんだよッ!」


 これがしがないサラリーマンが一般人ではなくなったきっかけだった。

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