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漫才シリーズ

漫才「家族同然」

作者: まさかす

ボ=ボケ

ツ=ツッコミ

二人「みなさんこんにちはー」


ボ「早速ですが」

ツ「はい、何でしょう」

ボ「人には7つのクソがあるのをご存じでしょうか?」

ツ「7つのクソ? 聞いた事無いですねぇ。しかしいきなりクソの話ですか? 汚い話なら聞きたくないんですけど」

ボ「ですが大事な話です」

ツ「大事な話ねぇ」

ボ「はい、大事な話です」

ツ「まあ、良いですけど……。で、その7つのクソとは何なんですか? 聞いたことないので教えて貰えますか?」

ボ「宜しい、では教えて差し上げましょう」

ツ「何故に上から目線」

ボ「それは目クソ鼻クソ耳クソ歯クソ、爪クソ肌くそリアルクソ、の事です」

ツ「…………」

ボ「目クソ鼻く――――」

ツ「いやちゃんと聞こえましたんで2回言わないで結構です……しかし最初の4つと最後のはまあ分かるけど……。爪クソ? 肌クソ? ですか?」

ボ「はい」

ツ「…………」

ボ「肌クソというのは一般に垢と呼ばれるものであり、爪クソも爪の垢と呼ばれる物の事です」

ツ「ならクソと言わずに垢と言った方が良くないですか? クソという言い方は如何なものかと……」

ボ「人の肌はターンオーバー(新陳代謝)により常に新しく生まれ変わっています」

ツ「は? ああ、そうらしいですね。それが?」

ボ「そして古い肌は目クソ鼻クソ耳クソ歯クソ同様、常に体に付着している状態で、通常それは垢と呼ばれています」

ツ「ふむふむ」

ボ「目鼻耳歯のそれらも垢と言えますが、それらは総じてクソと言われている訳ですので、爪や肌のそれらもクソとなる訳です」

ツ「なるほどね。まあ、仰りたい事は分かりますが、ならば逆に全てを垢と言った方が綺麗なんじゃない?」

ボ「確かに耳垢や爪の垢とは言いますね。しかし目垢鼻垢とは言いませんよね?」

ツ「う~ん、確かに聞きませんね。むしろ目だと目ヤニって言い方が一般的かな?」

ボ「『目クソ鼻クソを笑う』なんて諺的な言葉を聞いた事ないですか?」

ツ「ああ、ありますね。ならば全部クソで統一した方が良いのか」

ボ「はい」

ツ「しかし改めてそう聞くと、私達って脱皮に似た事を日常的に繰り返しているって事なんですね」

ボ「ですね。人は排泄物というリアルなクソをほぼ毎日直接体外へと排出しています。そしてその他のクソについてはターンオーバー(新陳代謝)により常に生成され常に体表面に付着している状態でもある訳です。そしてそれは体内の組織が常に生まれ変わっているという事であり、常に新しい自分に生まれ変わっているという事なのです」

ツ「おおおお! 何かそういう言い方だと格好良いですね! であれば大事な話でしたね。汚いなんて言って失礼しました」

ボ「いえいえ」

ツ「で、それがどうかしましたか?」

ボ「はい、ここからが本題です」

ツ「ほほー」

ボ「私はそのクソを見せあえる関係こそ、家族と言えるのではないかと言いたいのです」

ツ「は?」

ボ「医療や介護の職にある方々は別として、そういった物を見せあえる関係こそが家族だと言いたいのです」

ツ「いやいや、いやいやいやいや、流石にそれは違うでしょ?」

ボ「いいえ、違いません」

ツ「いや、その、目ヤニとかは見られてもチョット恥ずかしい程度で済む話だけどさ、それ以外は家族でも見られたくないなぁ」

ボ「何故ですか?」

ツ「いや何故って……」

ボ「それは仲の良い証拠とも言えるのではないでしょうか?」

ツ「いやいや、流石に仲の良い家族でも見せあう事はしませんよ!」

ボ「ではお聞きしますが、あなたに子供が産まれたとしても、それを見る事はしないのですか?」

ツ「子供?」

ボ「ええ、子供が出来たらそれら全部を見ますよね? そして拭いてあげて処理してあげますよね? 目も耳も鼻も口も、そしてオムツもやってあげますよね? それとも自分では何もせず人任せですか?」

ツ「いや、それはそうだけどさ、それとこれとは話が違うと思うんだけど……」

ボ「あなたが子供の頃、耳くそはどうしてましたか?」

ツ「まあ、親に取って貰ってましたね……」

ボ「御親族の誰かを介護する機会があれば、きっとそれらを見る事も処理する事もありますよね? それとも自分では何もせず人任せですか?」

ツ「いや、そんな事は……」

ボ「愛する人が両手の骨を折ったとして介助が必要になったとしたら、恐らく見ますよね? それとも自分では何もせず人任せですか?」

ツ「いや、そうなったら率先して私がしますけど……」

ボ「ですよね?」

ツ「…………」

ボ「ですよね?」

ツ「結局、君は何が言いたいんですか? そもそも何でそんな話を始めたの?」

ボ「鼻」

ツ「鼻?」

ボ「鼻の頭」

ツ「鼻の頭?」

ボ「今日の君の鼻クソは、目視出来る位置にいますね」

ツ「早く言えよ! つうかその言い方は何だよ! 鼻の頭に鼻くそ付いてるって言えよ!」

ボ「私にとって君は家族同然ですからね。直ぐに気付きましたが特に気にならなかったんです」

ツ「気付いた時点言ってくれるのも家族でしょ!」

ボ「家族だからこそ気になりませんでした」

ツ「じゃあ他人の鼻くそは気にもなるし教えてもあげるって事?」

ボ「いいえ、気にしませんし指摘もしません」

ツ「どういう事?」

ボ「若しかしたらファッションの可能性もあるじゃないですか」

ツ「いや、鼻くそがファッションって……」

ボ「人の価値観は千差万別です。それを自分の価値観に合わないからと安易に指摘するつもりはありません」

ツ「いやでもさ――――」

ボ「若しかしたらそれは自らの意志で無く、何らかの環境と云った物が影響し不可抗力といった状況の可能性もあります。他人には見えないバックボーンとも言える環境を知らずして安易に指摘したとしたならば、時にそれはその人の心を傷付けかねませんからね」

ツ「鼻クソの話だよね?」

ボ「はい」

ツ「いや、君の言いたい事が分からなくもないよ? だとしても、それをそういう理由で以って一切指摘をしないってのは……」

ボ「私は一切指摘するつもりはありません」

ツ「じゃあ何で私に言ったんですか?」

ボ「私は直ぐに君の鼻くその存在に気付きましたが気にはなりませんでした」

ツ「気にして欲しかったし、直ぐに指摘して欲しかったなぁ」

ボ「しかし家族である君のそれを目にした時、ふとクソの大切さを伝えたいと、そう思った次第です。その話の切っ掛けとなった鼻くそを家族だからこそ口にしたまでで、話の本質は『クソは大切だ』という事です。そもそも他人だったら何も言いません」

ツ「なるほど……それなら仕方ないか……」

ボ「ええ」

ツ「そっか、どうもありがとう」

ボ「いいえ、家族ですから」

ツ「ありがとう…………って、ならねぇよっ! 次からは直ぐに教えろよ!」

2021年02月25日 初版

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