2 なんでぱんつが欲しいのさ
見切り発車の2話目ですー
楽しんでいただけますように♪
「ぱんつ、くださいっ」
──は?
この女の子は、何を口走っているのか。
高校二年になって三ヶ月と数日。
ほぼ初めての女子との会話で、俺はなんと言われた?
「……すまん、もう一度言ってくれ」
「あの……志鶴川くんの、ぱんつが欲しい、です」
言った。
言ったよ。
確かに言った。
俯きながら、顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声で。
鷹匠なんとかさんに、ぱんつを所望されました。
「え、まさか……いま穿いてるヤツ?」
「ち、違います……違いますよっ!?」
何を想像したのか、鷹匠さんは顔を真っ赤にしてわたわたブンブンと手やら首やらを振りまくる。
「ああ、そう」
しかし動揺していたとはいえ、俺もとんでもない聞き返しをしたものだ。
はいそうです、なんて言われたらどうしたら良かったのか。
ちょっと待っててとか言いつつ駅のトイレで脱いできて、恥ずかしそうに顔を赤らめながら脱ぎたてぱんつ入りの紙袋を手渡したのか。
んなバカな。
まあ、とりあえずだ。
「理由を、聞こうじゃないか」
話は、それからだ。
鷹匠さんは、顔面を朱に染めたまま、ぽつりぽつりと語り出した。
曰く、最近干してある下着が無くなるらしい。
それで対策をネットで調べていたら、男物の下着を一緒に干しておけば被害は減るという書き込みがあったという。
だが家に男性の下着は無く、男友達もいないので、現時点では俺が一番仲の良い男子という事になる、と。
まあ、一応の筋は通っている。
「それで、俺のぱんつを?」
「は、はい……」
が、しかしだ。
ふと単純な疑問が湧く。
「普通に、コンビニとかで買えばいいんじゃない?」
「そ、そんなの……恥ずかしくて出来ません」
おいちょっと待て。
キミそれ以上に恥ずかしい頼みを俺にしてるからね?
なんなら遠くの店で買えば、そっちの方が恥ずかしくないよ?
「だ、だめです。それじゃ、だめなんです」
いきなり鷹匠さんの語気が強くなった。
いや声量自体は一般的な感じだったけど、なんか迫力があった。
「熟練の下着ドロボーさんは、使用済みか未使用かを、瞬時に見分けるらしい……です」
そ、そういうものか。
下着ドロボー業界に詳しくない俺には理解出来ないが。
まあ、鷹匠さんの必死な表情を見る限り、困っていることは間違いないだろう。
「わかった。さすがに俺のぱんつを献上するのは倫理的にアレだけど、代わりに買うくらいはするから」
「……それでいいです」
おーい、まず献上にツッコミ入れてくれ。
つか何故不服そうなんだよ。
ミッションの目的は、男物のぱんつ入手じゃないのかよ。
女の子の考える事は、ようわからん。
まあ、あなぱんのサイン本を欲するような女の子だ。
多少変わっていても……
いいのかな。
お読みいただき、ありがとうございます。
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では、また続きでお会いしましょう☆