新たなる世界.........的な
キーボード壊れた/(^o^)\
「っ........!!」
何か強い衝動に駆られて、勢いよく目を開ける。
何か夢でも見ていた気がする。
それが何だったのかを思い出そうとしていると、頬に涙が伝わっていることに気付く。
泣いていた......?
何故.........?
俺は根拠もなく何かを思い出そうとするが、目の前の光景を見て、そんなものなどすぐに消えてしまった。
俺は今、広場の高台のような場所に立っていた。
ほとんどの建造物がレンガでできていて、前の世界にどこか似ている中世風の街並み。
しかし、ところどころに和風の建物や中華風の建物があり、どこかおかしな印象を与えられる。
下を見下ろせば、たくさんの人々がこちらを見上げているのが見える。
「勇者様、ようこそお越しくださいました」
隣を見ると、神官っぽい恰好をした神官っぽい女の人がいた。
白い清潔感のあるローブを羽織っているスタイルの良い美人さんだ。
フードの隙間から、薄い緑色をした髪が見える。
前の世界では、異世界だというのに明るい色の髪をしている人は少なかった。
いるとしてもせいぜい金髪くらいしかいなかったので、とても珍しい。
この美人さんは、恰好から見て、そして状況から見て神官なのだろう。
だが間違っているかもしれないので一応神官(仮)さんと呼ぼう。
「どうも、神官(仮)さん。
勇者です」
自分から勇者というのはどうかと思うが、こういうのは最初から勇者と名乗っておいた方がいいのだ。
「初めまして、勇者様。
サラと言います。
それと(仮)ではなく、正真正銘の神官ですよ」
前言撤回。
やっぱり神官さんだった。
「ごめん、本物の神官さんだったか。
俺の名前は、ミサキです。
よろしく、サラ(仮)さん」
「サラでいいですよ、ミサキ様。
それと(仮)はいりません」
そうか、いらなかったか。
しかし、神官ねぇ......?
聖属性の魔法を使うことが出来る条件は、神に祈りを捧げ、神に認められることだ。
幼女神(黒)はあんな状態だし、神官なのに聖属性の魔法を使えないとは、辛かっただろうに......。
「な、何でしょう、その可哀そうなものを見る目は.........?」
「いや、聖属性の魔法を使えないのは、ちょっとあれだなーと思って......」
「いえいえ、使えますよ?」
良かったら、聖属性をではない回復魔法を教えましょうか。
そう続けようとしたところをまさかの否定で中断させられた。
「あっ、まだ私が神官だということを信じていませんね?
どうしたら、信じてくれるんでしょうか?」
ほのぼのとした笑顔で黙り込んでしまうサラ。
その顔を見ても、サラがとても嘘をついているようには感じられない。
どういうことだ......?
前の世界とこちらの世界では、そこら辺の仕組みが違うのか.......?
「聖女様、そろそろ......」
聖女様.........?
サラのことを聖女様と呼んだのは、俺たちの後ろに控えていた神官たちの一人だ。
眼鏡をかけていて、The女教師って感じがする。
サラと違って、後ろの神官たちはローブを羽織っていない。
もしかして、サラって結構偉い人なのか...?
「やっぱり、聖属性の魔法を直接見てもらうのが一番でしょうか......
貴女もそう思いますよね?」
発言をしたせいで意見を聞かれてしまった女教神官さん。
先程の発言は聖女サラには無視されてしまっているようだ。
今後ろを振り返って気が付いたのだが、この場には女性の神官たちしかいない。
前の世界だと、男の方が多かったのだがどういうことなのだろう?
やはり、前の世界とこちらの世界はいろいろな仕組みが違っているのか。
「はい。
私もそう思いますが、今はそれより.........」
女教神官さんはサラの肩を掴んで、広場の群衆の方へ体を回転させる。
「あっ、ごめんなさい。
また私ったら......」
群衆たちの唖然とした表情が目に入ったのか、本来の目的を思い出したようだ。
「これが終わったら、魔法を見せてあげますね」
サラは俺の耳元でそうささやくと、一歩前に出た。
「皆さん!
今日も、この世界に我らの希望である勇者様がお越しくださいました!!」
この広場中に響き渡るほどの大きな声で叫んだ。
案外、魔法か何かで拡声しているのかもしれない。
.........いやそれより。
今、今日もって言わなかったか?
危うく、声の大きさに驚いて聞き流すところだった。
「我々は誠心誠意、勇者様の活動をサポートし______」
群衆たちの表情をよく見れば、あまり必死さというのが伝わってこない。
興味本意で見に来た感じなのだろうか。
こちらを見ずに談笑しているものや、普段通りの生活をしているものまで見えた。
この世界にはたくさんの勇者がいて、もう既に珍しいものではなくなってしまったというのか。
幼女神(黒)......なりふり構わず勇者たちをこの世界に送っていたのかよ。
どちらかと言うと、量より質を揃えた方がよかったのに......。
「____勇者様のご活躍を共に祈りましょう!!」
群衆たちは、サラの話を聞かずに話続けている。
今回の勇者は期待できそうか、とか強そうだ、弱そうだとか話してる奴はまだいいが、全く関係ない話をしている奴もいた。
特に、後ろの方で見ているお前ら。
女じゃなくて残念だとか言ったな、顔覚えたぞ。
「今回の勇者召喚は、いつも通りの周期とは外れ______」
俺は人間離れした聴覚と視力を駆使し、群衆たちの観察を続ける。
すると、一番前にいる全身真っ黒なローブに身を包んだ人が目に入った。