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三度目の人生.........的な

ようやくプロローグ的なのが終了です。


 それで、聞きたいことってなんだ? 


「君にとっても結構重要なことなんだけどね______。






 _________君は、どこまで覚えている?」






 .........。

 いきなり核心をついてくるとは。


 幼女神(黒)は、真面目な、それでいて憐れむような表情で俺を見た。


神話(イミテーショ)再臨(ン・ゴッズ)

 それは神によって力を与えられている魔王たちにとってかなり有効なものだね。」


 それはそうだ。

 あれは魔力を強制的に神力に変え、神による奇跡を起こすものだからな。

 神でないものには勝てない。

 というか、場合によっては神に勝てるほどだ。


 と、俺は自信満々に幼女神(黒)を見た。


「今のでちょっと身の危険を感じたんだけれど......。」

 

 それだけ強い技なんだよ、ということをアピールしたかったのだが逆に怯えさせてしまったようだ。


 安心しろ、ここには魔力がないからな。


「まぁ、それなら.........。

 じゃなくてっ!」


 それで、有効だから何だ?


 俺が話を戻すと、すぐに暗い表情に戻ってしまう幼女神(黒)。


「その、君の記憶を覗いたと言ったよね」 


 あぁ。


「私が君の記憶を見た限り、君は、かなり短い時間しか神話再臨を使えなかった。

 君の記憶から推測するに、それは人間には使えない技なんじゃないかな?」


 そうだ。


「神力は絶対に人には使えないものであり、だからこそ人は魔力を使っている。

 だから君は、それを使うために、少しでも神に近づくために一時的に自分の存在を進化させている。

 そうだね?」


 .........そうだ。

 まあ、不完全にしか進化が出来なかった、という方が正しいんだがな。


「生物が進化をするには、何千、何万年もの時間がかかるもの。

 ましてや、神に直接創られた人間が進化をするのは不可能なんだよ」 


 だが実際、進化をしたじゃないか。

 

「そう、君は自身の記憶を犠牲にして存在を進化させたんだろう?

 生物が進化していく中で、犠牲にしていくものが必ずある。

 君はその中で記憶を選んだ。

 それは何故だい?

 もっと別のものを犠牲にしようとは思わなかったのかい?」


 幼女神(黒)はこちらから視線を逸らしてそう聞いた。


 俺の断片的な記憶でよくそこまで考えついたものだ。

 だが、最後のところが少しだけ違う。

 俺は、記憶だけを犠牲にしてきたわけじゃない。


「それはどういう......?」 

 

 別にそれはどうでもいいんだ。

 記憶を犠牲にしてるってことは合ってはいるからな。

 それとも、長くて難しい説明を聞きたいのか?


「.........やっぱいいや」 


 その方がいいだろ?

 というか、何で今更その話を?


「.........君の記憶を見て、気になったっていうのもあるんだけど......。

 強いて言うなら罪悪感、かな?」


 罪悪感?

 

「君の記憶を更に無くそうとしてしまっている事に対してさ」


 .........別に俺はそんなこと気にしていない。

 幼女神(黒)に生き返らせてもらえなかったら、そこで死んで終わってたわけだしな。

 生き返らせてもらう代わりと思えばかなり安いものなんじゃあ?


「最初は私もそう思ってたんだよ。

 でも、そう思おうとしても、なんというか、その.........」


 そう言ったまま黙ってうつむいてしまう幼女神(黒)。


 ふむ.........。


 幼い子どもに悲しい思いをさせてはいけない。

 幼女神(黒)の悲しそうな表情を見ていると、どうしてもそんなことを思ってしまう。


「.........幼女神(黒)は強いな」


 俺はそう()()()()()、幼女神(黒)の頭に手を置く。

 座っている状態から簡単に手が届いてしまい、小さく、頼りなく、すぐに壊れてしまいそうな印象を覚えてしまう。


「強くなんかないよ.........」


 弱々しく否定した幼女神(黒)の頭を優しくゆっくりと撫でると、目を涙で潤ませながらこちらを見てきた。

 黒いにも関わらず、恐ろしいほど透き通った瞳だ。


「いいや、強いさ。

 俺が今まで見てきた世界では、優しい奴はみんな強かった。

 もちろん、幼女神(黒)もその中の一人だ」


 俺はその瞳を見て、どうしても、悲しみの涙で濡らしたピンク色の瞳を思い出してしまう。


「強いってのは、別に意味が一つだけしか無いって訳じゃない。

 それに、俺はそんな優しさが好きだ」


 だから俺はこんなことを言ってしまったのだろう。


「約束をしよう。

 俺が必ずこの世界を救ってみせる」


 俺は何故か、約束を異常ともいえるほど大事にしている。

 幼女神の時もそうだったが、俺は何となくそれより前の出来事が原因なのではないかと思っている。

 転生する前に、約束がらみで何かあったのだろうか.........。


「俺がする約束の重さは分かっているな?」


 幼女神(黒)は驚き、目を見開きながらも頷く。


「世界を救うことが出来たら、またここに来る。

 それまで待っててくれるか?」


「.........分かった。

 待ってる」


 微笑みながら俺の方を見てくる幼女神(黒)の目を、俺は逸らさずに受け止める。

 自然と俺の顔にも微笑みが浮かぶ。 


 俺は幼女神(黒)の頭をポンポンと撫で、勢い良く立ち上がる。


「さて、幼女神(黒)。

 そろそろ下に送ってくれないか?」


「.........」


 俺が立ち上がった途端、顔を真っ赤にして顔を勢いよく背ける幼女神(黒)。


 そうか、俺裸だったわ。


「そ、そうだね。

 長話をしすぎたかな.........」


 最初に何も反応しなかったから大丈夫だと思ったが、羞恥心はあったらしい。


「と、というか、私のことを頭の中だけじゃなくて、幼女神『かっこ黒』と呼ぶんだね」


 幼女神(黒)は恥ずかしがりながらもチラチラとこちらを見ながら文句を言ってきた。

 

 恥ずかしいなら俺を裸の状態でここに呼ばなかったら良かったのに。

 まあ、隠さない俺も大概だけどな。


 俺は幼女神(黒)に背を向け、言う。


「世界を救ったら、また会おう」


「うん。

 .........勇者ミサキ、君の未来が明るく、幸せなものとなるように、ここからずっと祈っているよ」


 .........全く。

 ありがたすぎる応援だな。


「神が何に祈るってんだよ?」


 俺は振り返り、笑いながら言葉を返す。


「ふふっ、そうだったね。

 ......行ってらっしゃい」


「.........ああ、行ってくる」






 俺を、この真っ白い空間よりも白い光が俺を包む。






 俺は守るべき約束を1つ増やし、また異世界に降りる。 


 今回は異世界転生ではなく、異世界召喚だ。

 前回よりは、時間的には短いかもしれないが、決して楽な道のりではないだろう。


 だが_________


 今度こそ、今度こそ生きて、世界をすくってみせる。






 落ちていく意識に身を任せ、召喚までの時間、眠りについた。



  



 



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