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《第3部完》幽霊の花嫁修行  作者: 三條 凛花
第3部 - 弥生
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17.家事の定期試験(上)

 いつの間にか三月も終わりに差しかかっていて、少しずつ暖かい日が増えてきていた。相変わらず外には出ていないけれど、たまに降りるエントランスの中庭にある桜の木にもつぼみがついていて、季節の移ろいを感じている。

 今月も定期試験の日がやってきた。前回は、花夜子が他のことに気を取られていたせいで気分を害した紫鶴子さんが帰ってしまったのだけれど……。花夜子は、設問を書き写した紙を手に、紫鶴子さんに視線を向ける。


「それでは、はじめてくださいね。――あら、そういえば前回はどうしたのかしら……」


 やはり、紫鶴子さんには記憶の欠如が見られる。気になったものの、前回のようになってはいけないと、今はとにかく目の前に集中することにした。




「それでは、答え合わせをはじめていきましょう。――とはいっても、家事には答えのないものも多いのですが」

 紫鶴子さんが言う。


「じゃあ、まずは1問目の『洗濯の工程を書き出す』という問題についてです」


「花夜子は、

 ①洗濯ものの仕分けと点検

 ②洗濯機のセット

 ③干す前の仕分けとたたむ作業

 ④干す

 ⑤取り込む

 ⑥たたむ

 ⑦しまう

 の7工程で書いたよ」


「いいですね。でも、もう1工程追加したほうが良いと思います。『②洗濯機のセット』のあとで『洗剤を入れる』という工程です。工程を細かく把握すればするほど、改善点を見つけやすくなりますよ。

 また、洗濯を苦痛に感じなくなってきたらでいいのですが、③の工程のあとに洗濯機の手入れも入れると良いと思います。毛玉やごみを取る作業です。こまめに手入れする習慣があれば楽になります」


「なるほど……。

 ①洗濯ものの仕分けと点検

 ②洗濯機のセット

 ③洗剤を入れる

 ④干す前の仕分けとたたむ作業

 ⑤洗濯機の手入れ

 ⑥干す

 ⑦取り込む

 ⑧たたむ

 ⑨しまう

 で9工程になるのね」



「第2問の『洗濯をはじめる前にやっておくこと』はどうでしたか?」

「ええと……

 ・ポケットの中身を確認する

 ・裏返しになっている衣類を直しておく

 ・ズボンは裏返してポケットを引き出しておく

 ・ファスナーはしめておく

 ・汚れがひどいものを分けておく

 ・淡い色の服を分けておく

 ・一部の衣類をネットに入れておく

 かな。こう考えてみると、点検がたくさんあって面倒くさく感じる……かも」

「まあ……! でも、こうした小さなところを丁寧にやることが大切なのですよ」

「でも、裏返しになっているものを直すのとかは、別に乾いてたたむときでもいいのかなあって」

「――それは確かにそうかもしれませんね。洗濯をする上で、何かしらの影響があるものはしっかり点検したほうがいいと思いますが、そうでないものはそこまで気にしなくてもいいかもしれません」



「第3問の『洗剤の種類』についてはどうですか?」

「中性洗剤、弱アルカリ性洗剤、酸性洗剤の3種類がある。そして、洗濯に使われるのは、中性洗剤と弱アルカリ性洗剤……だったかな。少し自信がないかも」

「そうですね。液の種類についてはそれで合っていますよ。洗剤そのものについては、わたくしは3種類用意していました。一つは普段使いするもの、次にデリケートな衣類を洗うもの、それから汚れを落とすための少し洗浄力の強い洗剤です。この3つがあれば、大体何でも対応できますよ」

「洗浄力が強い洗剤、花夜子は要らない気がする。子どもが汚した服とかに使うんでしょう?」

「まあ、それだけではありませんよ。飲みものや食べものをこぼしたり、月のもので衣類が汚れたときなんかにも使えます。ただ、たしかに子育て中じゃなければ出番は少ないかもしれませんね。それでは、一旦休憩にしましょうか」


 紫鶴子さんが言うので、花夜子はキッチンに立ち、ほうじ茶を淹れた。


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