19. 家事の定期試験(下)
あれから数日が経ったけれど、紫鶴子さんが来ることはなかった。見捨てられてしまったのだろうか。そう思うと恥ずかしくて悲しかった。
はっと気がつくと、西の空が暮れている。――紫鶴子さんが来る前は、そういえばいつもこうだったなあと思い出す。毎日をどうやって過ごしていたかわからない。ただテレビを観て、ぼうっとなにかを考えて、ごろごろして過ごしていた。温かい巣の中で守られているひな鳥のように、自分のためだけに過ごしていた。
でも、――ふと周りを見渡して、花夜子は胸が熱くなった。
部屋は散らかっていない。やりかけのものは、無意識のうちにまとめられている。そういえば、掃除機もかけた。窓も拭いたような気がする。そして、手元を見ると、ほかほかと湯気の立ち昇る味噌汁がある。豆腐と油揚げ、それからえのき茸の入った味噌汁だ。
家事は、誰もが当たり前にやっていることだ。そして、かんたんなはずなのに、花夜子にはできなかったこと。いや、やろうとしなかったこと。でも今は、無意識のうちにできている。
この進歩は間違いなく紫鶴子さんのおかげだった。紫鶴子さんが来る気配はないけれど、今できることをやろう。そう決めると、花夜子はクリアファイルを出してきた。
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問1:毎回買うのにおすすめの野菜3つを書きなさい。
問2:和え物「7種の神器」について書きなさい。
問3:ぱっと思いつくスープの具材の組み合わせを3つ以上書きなさい。
問4:青菜の種類を3つ以上書きなさい。
問5:家事が「面倒だな」と思う原因を3つ以上書きなさい。
問6:ストックしておくと便利な具材を3つ以上書きなさい。
問7:掃除の順番について書きなさい。
問8:おいしい青菜の選び方は?
問9:たんぱく質源となる食材を3つ以上書きなさい。
問10:ものを増やさないために大切なことを書きなさい。