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10. 7種の神器(2)

「以前、青菜をのりとめんつゆで和えたでしょう。同じように、混ぜるだけです。


 梅、胡麻、海苔、おかか、ピーナッツ、ツナ、きのこの7つ。これをいつも用意しておけば、具材と一緒に和えるだけで一品になります。青菜をゆでて、これらのどれかと一緒に和えて、味つけをする。これならかんたんでしょう?


 しかも、小松菜やほうれんそう、水菜、春菊など、青菜の種類を変えればバリエーションが増えます。これだけで28種類。ほかにも、ブロッコリーやきゃべつ、白菜に和えてもおいしいです。


 きのこだけはひと手間ひつようで、ゆでておくか、レンジだったら1分30秒から2分ほど加熱しておきます。ピーナッツは粉末タイプのものを買っておくといいですよ」


「味つけって、どうしたらいいの?」


「そうですねえ、かんたんなのはめんつゆか、ポン酢でしょうか。いろいろ混ぜなくても使えるので便利です。それから昆布茶も。和えるだけでしっかり味がつきます。


 ものによっては組み合わせてもいいでしょう。たとえば、きのことおかか。海苔と黒ごま。ツナと白すりごま。梅と海苔……。いろいろやってみて、自分の好きな味を見つければいいと思います。そうして自分の味が決まったら、レシピを見なくても一品作れますよ」


「好きな味、かあ」


 花夜子は考える。近所のお惣菜店をいくつか回ってみて、いつの間にか自然と足が遠のいたところがあった。なんとなく美味しく感じられなかったからだと思う。ちょっと甘ったるいなあとか、塩辛いなあとか。そういうのが味の好みなのかもしれない。




 紫鶴子さんが帰ったあと、味噌汁をつくりながら、ふと思った。


 人にはいろいろな役割があって、それによって顔つきも言葉遣いも変わってくる。花夜子は、結婚してからの5年ほど、この家からほぼ出ないで過ごした。エリカちゃんとも、実はメールでのやりとりくらいしかしていなくて、年に1度会えばいいほうだった。


 そんな生活だったから、花夜子の役割は「妻」だけだった。――だからこそ、その役割を果たせていないことをあまりにも恥ずかしく感じていたのかもしれない。今もそうだ。

 花夜子には、もっと外の世界が必要なのではないだろうか。そうしたら、思いつめることも減るのかもしれない。



 ふと気がつくと、くったりと煮えた白菜と油揚げの入ったお湯に、味噌を溶き入れているところだった。考え事をしている間に、無意識に手を動かしていたらしい。ずいぶん上達したようで、花夜子はうれしくなった。

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