7.2人の休日(2)
今回も家事ネタはありません。
「それじゃあ、あのときの人と一緒に暮らしているの?」
花夜子が驚いて言うと、エリカちゃんは頬を染めてうつむいた。大晦日の夜に出会った年下の青年と同棲しているのだという。
「年の差が気になるときもあるんだけどね…… それでも、一緒に居たいって思うんだ」
エリカちゃんは花が咲くようにふわりとほほ笑んだ。花夜子は羨ましく思った。スウのことは好きだけれど、恋をしていたことがあるのだろうか? と、ふと思ったのだ。
生まれたときからずっと一緒に過ごしてきた。恋が実ったばかりのころは甘いというけれど、そういう感情に思い当たる節がなかった。
そう話すと、エリカちゃんは口を尖らせる。
「あのねえ、花夜子と佐々木くんのことは、みんなが羨ましがっていたんだからね。芸能人のような美男美女で、生まれたときからの幼なじみ。2人とも頭が良くて、何でもできる。どんな少女漫画だよって。――私は、花夜子と友だちでいるために自分を磨いてたような面が多いのよ。隣にいても最低限恥ずかしくない程度にはって」
「でも、エリカちゃんのほうこそ美人じゃない」
「……花夜子は忘れてるかもしれないけど。私は化粧を落とした状態では人前に出られない。誰も気にしなくても自分が耐えられない。それくらい顔が違うの。この地味な顔をどうやって華やかにするか、日々研究してきたの!」
ぽかんとしている花夜子を見て、エリカちゃんは急にくつくつと笑い出した。
「なんていうか、隣の芝生は青いっていうやつなんだろうね。でも、花夜子に羨ましがられていたなんてとても思ってもみなかったけれど」
「いつも羨ましいと思ってるよ」
「あのね、美人は自分で作れるんだよ。花夜子は素顔も綺麗だけれど、きちんとメイクをしたら、誰もが振り返るような美人だと思う。もし気になるんだったら、私みたいにメイクを覚えればいいんだよ。今の時代、ネットでかんたんに調べられるよ。花夜子の好きな勉強を、メイクにも当てはめればいいの」
エリカちゃんの言葉には、がつんと衝撃を受けた。私は努力しないことを恥じていたけれど、そんな暇があるならば、動き出せばよかったのだ。
エリカちゃんと別れたあと、もう一度百貨店に戻った。ちょうど人の切れ目だったので、さっき立ち寄ったお店でしっかりと必要なものを買い、その後書店に行って、メイクの本を見繕ってから電車に乗って帰った。