5.青菜をゆでる
今日は土曜日。買い出しから帰ってきた花夜子は、コートをかけると、エコバッグを持ってキッチンへ向かった。紫鶴子さんはお休みだけど、スウも朝から出かけているので、ひとりで買い出しをしてきたのだった。午前中のうちに買いものに行けると、気持ちがいい。
キッチンは明るく、真っ白な光が差し込んでいた。
今日はこのまま料理をするので、買ってきた小松菜は、しばらく水に漬けてシャキッとさせておく。その間に、買ってきたものを取り出して冷蔵庫へ入れていくことにした。卵と納豆、豆腐、にんじん、椎茸、それからお惣菜がいくつか。
まだすべてを自炊しているわけじゃないから、買ってきた食材はそんなに多くない。
今週、紫鶴子さんから与えられた課題は、毎日青菜を食べることだ。
ゆでたり、蒸したりする方法はいろいろあるけれど、花夜子がこれならできそうだと思ったのは、先に青菜を食べやすく切ってからゆでる方法だった。
本当はゆでたあとで切ったほうがいいみたいだけれど、根本に切り込みを入れたりするのが面倒だったし、この家には青菜がまるっと入るような大きな鍋やざるがないのだ。だから、沸騰したお湯に切った青菜をぱらぱらと入れて、1分ほどゆでる。鍋ごとざるにあけたあとは、流水で冷やす。青菜のきれいな色を残すためだという。
小松菜や青梗菜のように、アクが少ない青菜だったら、レンジ加熱するのもいい方法だと紫鶴子さんに教えてもらった。そのときは、切らずにラップで青菜全体を包み、お皿に乗せて加熱すればいい。目安は2分くらいだけれど、量によって加熱状態が変わったりするので、自分で見て加熱を追加したりする。
ゆでた青菜は保存容器に入れて冷蔵庫へ。2、3日は保つ。
一部は今日のお昼ごはんにするので、ポリ袋に入れて、めんつゆと、ちぎった海苔で和えた。これなら手も汚れないし、洗いものも出ない。ものぐさな花夜子にぴったりの方法だ。
今日の汁物は、豆腐とわかめとネギのシンプルなお味噌汁。それにさっき作った小松菜の海苔和えと、買ってきた高野豆腐と枝豆、人参の煮物を添えた。そして、真っ白なつやつやのごはんにかけるのは卵。――そう、紫鶴子さんに教えてもらった、たんぱく質が摂れる必須アイテムが卵なのだ。料理がしたくないなあというときは、とりあえず卵かけごはんにしたり、納豆にしたりする。そうすればたんぱく質が摂れる。
ちゃんと「食事」の形になってきた気がして、花夜子はほくほくした気持ちになった。
今日はエリカちゃんと一緒に買いものに行く。しっかり食べたら、電車に乗って出かけよう。花夜子はわくわくしていた。




