4.必ず買うもの
「さて、それではいよいよ副菜作りを始めましょうか」
ついに紫鶴子さんのお許しが出た――! 花夜子は小さな鞄に財布とエコバッグ、携帯電話だけを入れて家を出た。スーパーへ向かう道のりさえわくわくする。近所のスーパーや惣菜店で副菜を買う日々だったけれど、思っていたよりも味が濃く、好きなものを見つけるのに難儀していたのだ。
「それは大事な感覚ですよ。この料理でこれは甘すぎるだとか、逆にもっと甘みがほしいとか、これくらいの濃さならちょうどいいとか。出来合いのものを食べると、そういう基準が見えてきます」
「花夜子さん、飛ばしすぎです!」
目につく野菜をどんどんカゴに入れようとする花夜子に、ストップがかかった。
「野菜を扱うのって、花夜子さんの性格を考えるとかなり面倒な作業ですよ。長持ちさせるためにも気をつかわなければいけませんし、洗ったり、皮をむいたり、料理に合わせた形で切ったりという下ごしらえがあります。一度にそんなにたくさん買ってはいけません」
大きな進歩を前に、少し浮かれすぎていたみたいだ。
「スーパーで買いものをするとき、もちろん慣れてきたらたくさん買ってもいいですし、好きなものを食べるべきです。でも、今のところは3つの素材で挑戦してみましょう。青菜とにんじん、それからブロッコリーです」
紫鶴子さんは、青菜が並ぶコーナーへ花夜子を誘った。
「扱いやすいのは小松菜です。くせのない味ですし、アクもないので。まずはここからいきましょう。青菜はスーパーに来たら必ず1つは買ってください。もちろん、切らしていた場合です。最初は小松菜。慣れてきたら、このあたりにあるもの……青梗菜、ほうれんそう、水菜や春菊などをローテーションで買うと飽きません。にんじんの選び方は前にお話ししましたね。最後にブロッコリーですが……」
そう言いながら、紫鶴子さんは青果コーナーを素通りする。疑問に思いながらもついていくと、彼女が立ち止まったのは冷凍のコーナーだった。
「ブロッコリーは、とりあえず冷凍のものを使いましょう。とても便利ですよ。洗わなくても切らなくてもよくて、レンジで加熱するだけで使えます」
せっかくだから生のを……と口にしかけると、紫鶴子さんの鋭い眼光が飛んできた。花夜子は、汁物の材料とメインのおかず、それから卵や納豆のほかに、3つの野菜をカゴに入れてレジへ向かった。
青菜をローテーションする方法、飽きにくいし、迷わないのでとてもおすすめです。わが家では週2回買いものをしています。1回ごとに青菜を1種類買っておき、帰ったらゆでて、切って、冷蔵または冷凍で保存します。冷蔵で約2~3日保つので、ゆでておけば、かんたんに和え物にできて便利です。