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I am alive.
静かな教室の中で小さくて哀れむような声が聞こえた。
その声の元には、焼けるような窓から差し込む夕焼けに照らされ、大小二つの影が伸びていた。
「やっぱり君は君なんだね」大きい影は言う。
「何を言いたいんだ?」小さな声がぶっきらぼうに言う。
「いや、なんというかさ、リセットされても何も変わらない気がして」
「それはもとの私が子供っぽかったってことか?」
「そうかも知れないし、そうじゃないのかもしれない」
「訳のわからない人だな君は」少し呆れた声だった。
「ははっ。子供の君も昨日までの君も両方君なんだ。たぶん、僕も」楽しそうなのか、悲しそうなのか分からない声だ。
「当たり前のことじゃないか」
「その"当たり前"に皆気づかないものなんだ」
「それは違うぞ」小さな影が首を揺らした。
「どういうことなんだい」
「皆気づいているさ。自分の全てが自分なんだって。けれどみんな忘れたいんだよ。何故なら純真無垢は怖いからね」
「やっぱり姿は変わっても君は君だ。ひねくれてる。」
「お前さんもだろう?」意地悪だがキレイな声だ。
「だろうね。」
日が沈んだ教室は何も見えなくなった。