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第二十話「強制電子介入(インターセプター)」②

 なんと言うか……国によっては、軽く犯罪にもかかわらず、アキちゃんは軽かった。


「……軽いなぁ……アキちゃん、少しは疑ったりしないの? はっきり言って、根拠なんて無いよ?」


「ユリちゃんの「嫌な感じ」って、私達の間ではちゃんと聞かないと死ぬって評判だったからね。実際、実弾演習で、ユリちゃんの「危ない」で命拾いだってしてるからね。そりゃ、聞くに決まってるよ! じゃあ、ちょっと潜ってきます! 息継ぎよーい!」


 実際あったからね……。

 蛸壺から出ちゃいけない気がしたから、皆を押し留めてたら、迫撃砲の流れ弾が目の前に着弾……とか。

 そっか、そんな風に皆からは、思われてたのか……。


 ……演出なのか、アキちゃんいきなり、スクール水着姿になると、深呼吸開始。

 何故か、足元が水面みたいになってる。


「あ、ユリも暇だから、便乗するのですよ!」


「じゃあ、このまま……一緒にダイブだね! それと演算力も借りるよ……さすがに、装備なしじゃ、ユリちゃんの方が総合演算力じゃ上だからね。くれぐれもドジ踏むんじゃないぞ、相棒?」


 なんだか、付き合いってことなのか、私も水着姿に強制チェンジ……同じくスクール水着にさせられる。

 ……強制お着替え……ここはアキちゃんの世界なんだなぁと妙なことで実感。


「誰に言ってるのですよ……足手まといにはならないのですよー」


 そんな訳で、アキちゃんと一緒に、ロンギヌスの中枢ネットワークへ不正ダイブ! 行ってみようかっ!

 

 

「……さすがに、最新鋭艦といえど、インターセプトシステムの前にはあっけないもんだね。上級船員権限所得に成功したよ……これなら、かなりの情報を普通にゲットできるよ」

 

 さすがアキちゃん、ロンギヌスの中枢システムにあっさり潜入に成功。

 ちなみに、ロンギヌスの対電子防壁は、三秒も持ちませんでした……さすがと言うかなんと言うか。

 

 可視化ネットワークダイブ……要するに、VR世界を旅するみたいな感じ。

 

 背景とかが幾何学模様だったり、照明がサイケデリックだったり、グラフィック化が雑だったり……そんな感じ。

 高度電子戦能力者の視界ってこんな感じだって聞いてたけど、なるほど……GUIの進化系みたいなもんか。

 

「アキちゃん、とりあえず艦内警報の理由について、マザーブレインにお問い合わせしてみて、あとこの水着の意味ってなに?」

 

 その気になれば、アキちゃんならロンギヌスの全システム掌握も可能だと思うんだけど、そこまではやらなかったみたい。

 

 ひとまず、上級船員権限を拝借するに留めたらしい……ここで、やりたい放題だーとか調子に乗るから、見つかって、手痛いしっぺ返しを受けたりする。

 

 最低限、マナーを守って大人しくやってれば、後々怒られたりもしない……そんなもんだ。

 

 でも、やっぱり水着になる意味が良く解らない。

 

 一瞬とは言え、問答無用で裸に剥かれたし……。


「えっとねぇ……どうも、ロンギヌスの護衛艦隊による輪形防御陣の最外周で、国籍不明潜行艦を探知するも、見失ったとのこと、現場の詳細情報については先方の情報開示待ち……なんなんだろ、これ。私、エーテル空間の軍事関連ってあんま詳しくないんだよね……」


 エーテル空間戦闘については、私もお姉さまのお仕事関係ならそれなりに解るんだけど……なんのこっちゃ?

 

 国籍不明潜行艦って……潜行艦って、銀河連合軍以外にあり得るの? どっかの企業の私有艦艇かなにか?


 とにかく、そんなのがロンギヌスの周りをウロチョロしてるってこと……。 

 情報開示待ちで詳細不明ってなると、エスクロン側に情報が来てないって事かな?

 

 なら、現場に直接聞けば良いのかなぁ……。

 

 ちなみに、水着の件はスルーされた模様。

 これはもう聞いても無駄っぽい……諦めよう。

 

 護衛艦群のリストに、さっき会った夕凪って子の名前を見つけたので、今度はそっちにダイレクトアクセス。

 けど、さすがにアクセス不可のエラーリターン。

 

「さすがに、軍艦にダイレクトアクセスは無理みたいなのです。残念……そろそろ、引き上げるのです?」


 上級船員権限程度では、さすがに銀河連合軍所属艦艇に遠隔アクセスとか無理があるっぽい……まぁ、当たり前だよね。

 

 ひとまず、無難にやれる範囲としては、ここまでかな。

 これ以上、知りたいならアプローチを変えるべきかなぁ……。

 

「そもそも、指揮系統も情報系統もエーテル空間戦闘艦ともなると、全然別だからねぇ……。でも、この夕凪って艦、普段はエスクロンの輸送艦なんかの護衛やってるから、エスクロンの社用ネットワークとも繋がってるみたい……ほら、ポート673987が開放中……。そう言う事なら、ちょっと頑張れば行けるかも。試していい?」


「おお、アキちゃん……さっすが、やってみてよ!」

 

「……おけー! ポート673987に接続、プロトコル解析……銀河連合軍、暗号化プロトコルWJ679-C……さすが、最新鋭の暗号通信システムとか良いの使ってますなぁ……。けど、こっちもインターセプトシステムVer63K2、最新型の対電子潜入システムなのだよ……ここをこうして、ああしてー。やった、ユリちゃん、夕凪のプロテクトウォール、スルッと抜けれたよ! 警報も出てないから、向こうにも悟られてない……ここは一気に行くよー」


 よく解んないけど、さすがアキちゃん、対電子戦エキスパート。

 

 銀河連合軍の最新鋭暗号通信システムと、夕凪の防壁を突破したようだった……さすがに私も、銀河連合軍の通信システムハックなんて、経験ないなぁ……ドキドキだよ!

 

 ブリッジ内のカメラシステムデータを元に、夕凪のブリッジの光景がデータ化されて、まるでブリッジに立ってるかのような感覚になる。

 

 さっき会った夕凪ちゃんがブリッジに立ってる様子が見えたので、ご挨拶。

 

「夕凪ちゃん、お仕事ご苦労さまなのですー」

 

 なんか単なるカメラ映像にしては、感覚がリアル過ぎる……疑似VR環境ってところかな……?

 こんな事までスタンドアロンでやってのけるんだ。

 

 さっきも、お肌のふれあいだけで、いきなりVR空間に引っ張り込まれたけど、アキちゃんもなにげに色々進化してる……凄いなぁ。


「ほぇっ! 白鳩さん、ど、どこから? いや、これは電子体侵入っ!? ど、どうやってこっちのシステムにアクセスしてるので! エスクロン側とは、通信ネットワークシステムからして、分離独立してるはずっすよ!」


「蛇の道は蛇って言いますよー。す、すみません、お邪魔してます……」


 同じ様に隣にアキちゃんがふわっとなにもないところから姿を見せる。


 流石に夕凪の頭脳体もこれには、驚いてるみたいだった。


 と言うか、通信ポートの閉め忘れって言うべきなのかなぁ。

 家でいうと、裏口の鍵かけ忘れとか、トイレの窓が空いてたとか、そんなレベルの話じゃあるんだよね。


「いえいえ、なにもないところですが……って、なんかあっしのシステムに、色々割り込みかけてません? ステータス上は正常みたいですけど、身体がなんとなく、チクチクするっす!」


「ごめんねー。こうした方がお話しやすいでしょ? なるべく、余計なところは触らないようにするから勘弁してよー」


「こ、これがエスクロンの電子戦能力者……。こうもあっさり侵入されるとは、恐るべきぞな! な、なるべくソフトに優しくお願いしまっす! それと武器管制とか勝手に動かさんでおくんなさいましー!」


「心得たー。まったく……銀河連合の標準艦艇のOSともまるっきり別物。まったくもって、ややこしいシステムだねぇ」


「そうなのです……。これがエーテル空間戦闘艦。古き世界から蘇りし艦だったかな……」


 600年だか700年も昔の戦争……。

 そんな時代の戦闘艦の模造品から始まって、黒船と独自に戦い続けて、進化を重ねていったのがこの夕凪達だって言う話。

 

 古臭い機械式のシステムを無理やり、最新テクノロジーで動かしてたりしてると思ったら、エスクロンですら解析不能の未知のテクノロジーすらも備えてたりもする……なんだか歪な感じもする。


 なんと言うか、興味深いね……これ。


「むぅ……あっしの視覚システム上では、お二人の姿がちゃんと見えてるんすよ。けど、実体反応はない……。こりゃまた……噂に聞く幽霊みたいなもんっすな」


 ……こっちもブリッジの各種センシティブ情報を元に、疑似身体感覚までも再現されて、まるでその場にいるような錯覚すら覚えてるんだけど、夕凪の反応からすると、電子の目で見る限り、私達はロンギヌスのメディカルルームにいながら、夕凪のブリッジにいるような状態になってるらしい。

 

 なんだか、随分な事やってるのですよ。

 ……そこまでやるとなると、夕凪のシステムに相当侵食してるっぽい。


「……これってファントムシステム? ユリも噂には聞いたことあるのです……でも、実際に試すのは初めてなのですよ」


 ネットワーク経由で、自分の代理情報体を現実世界側へ転送して、遠隔アクセスするシステム……だったかな?


 本来はロボットとかに転送して、ロボットに乗り移ったような状態になって、遠隔地とかで、危険な作業とかをこなす……そう言う目的のシステムだったんだけど。

 

 こんな風に、3D空間投影モニターのシステムに割り込みをかけて、仮想体を投影して、その場にいるようにした上で、その場の感覚を体感することも出来る……。

 

 まるで、VR空間に降り立つように、現実空間へ遠隔ダイブする……すごい技術なのですよ! これ。

 

「はい、そうですよー。以前、エスクロンのライブラリから拝借して、勝手に実装させてもらっちゃいました。これなら、動かなくてもどこでも行けるじゃないですか。やっぱり、いいですね、コレ! 今度、これ使ってユリちゃんとこに遊びに行っちゃおっと」


 ……アキちゃんの背中を押したのは、私だけど……アキちゃんって、元々自重しない子だった。

 さすが、電子戦適性SS! いい仕事してるのです。


「そだね……。こんな事も出来るようになってるんだ。すごーい!」


 なんかふわふわしてて、頼りないってことを除けば、ホントにそこに立ってるような臨場感すらある。

 VRシステムを応用したもので、本来は無人機の遠隔操作なんかを想定してるって話だけど……。


 それにしても、駆逐艦夕凪の戦闘ブリッジ……天井が布張りで外が丸見えで、なんとも頼りない。

 露天艦橋っていうのかなぁ……もういきなり、外って感じ。

 

 こんなので、エーテル空間を航行してるって言うんだろうか……。

 うーん、生身ではあんまり乗りたくないな……。


「……いやはや、こうもあっさり、ファントム体に艦橋にまで、スルッと入り込まれるとは……。さすがエスクロンの最高精鋭……と言うか、これじゃ、銀河連合軍も形無しですなー。まぁ、あっしはエスクロン雇われの艦なんで、問題にはしませんけど。ようこそ、夕凪へっていうところっすなー」


 夕凪ちゃん……AIにしては、とっても緩いみたい。

 割とAIってのは、頭固いんだけど、この子達って、祥鳳もそうだったけど、基本的に緩いし、とっても人間じみてる。

 

 よく解んないけど、なんと言うか……独自の進化ツリーから発展したAIって感じもする。

 

 人類製のAIって、基本的に何百年も前に自然発生したと言われてるアマテラスとか何とかって言う超AIから、派生発展してるから、皆根底が似通ってるんだけど、この娘たちって、なんか違うような気がするのですよ……。


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