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第十九話「電脳妖精秋葉ちゃん」⑤

「べ、別に服越しにおっぱい触られるとか、女子校じゃ普通なのですよ……。アキちゃんとだって、一緒の布団で抱きあって寝たりしてたじゃないの……」


 うん、アキちゃんと一つ布団でラブラブな感じで、お昼寝とかよくやってた。


 冬の寒い夜も、人肌の温もりがあれば、凍えずに済むからね。

 と言うか……強化人間は、簡単に凍死とかもしないからって、夜、氷点下なのに暖房止められたりとかしてたんだよね。

 

 なので、男の子たちとも一緒になって、ごっちゃって、皆で固まって寝るとかは、よくやってた。


 あれが、案外暖かいんだけど、地上演習で似たようなことやってたら、古参の軍曹さんに、お前らそんな団子になってたら、まとめて全員吹っ飛ぶぞ! なんて言われた……確かに、それは悲しい。


「そ、それは小さい頃だったし、収容所が寒かったからじゃない……。でも、私も女子校どころか、普通の高校生活とかすら、よく知らないからね……。やっぱ、女の子だけしか居ないと、そんなもんなのかなぁ……。あ、でもでもっ! くれぐれも、おっぱいとかお尻は男の人に触らせたら駄目だからね! もしも、そんな変態さんに襲われたら、悲鳴あげてガツンとぶん殴ったっていいんだから!」


「ユリは、丸腰に見えて、色々武装してるから、変態さん相手でも余裕なのですよ。と言うか、通学してても男の人ってあんまり見ないのですよ……。先輩なんかも、良くトースト咥えて遅刻、遅刻ーってやってても、何ごともなく、学校に着いちゃうって言ってたのです」


 通学路の関係で、通勤通学ラッシュなんかには全然巻き込まれないんだけど。

 同じ学校の生徒としか会わないという……他校の生徒との接点とかもないしなぁ……。

 商業区にでも行かないと、他校の生徒なんて合わないのが実情なんだよね……。


「知ってるよ! トースト咥えて遅刻、遅刻ーってやると、素敵な人とぶつかって出会いイベントが起きるんだよね! ユリちゃんもやってみれば?」


 あれって、そんなんだったんだ……オマジナイみたいなモノなのかな……?


「ユリは基本、15分前行動だから、遅刻なんかしないのですよ。いかんせん、敵性工作員のストーカーに監視されたり、治安維持局のパトカーが送り迎えとかしてくれるとか、そんな調子なんで、そう言う甘酸っぱいイベントは起きそうもないのですよ」


「……そ、それは、なんとも夢のない話で……。って言うか! やっぱ、そんな事になってるんだ。ホントに大丈夫なの?」


「ユリは、自前でレールガンくらい撃てるし、レーザーで撃たれたってへっちゃらなのですよ。誘拐とか襲撃とかして来たら、教訓ってものを与えてやるのですよ……ふふふっ」


 エスクロンの強化人間に手出しするとどうなるか。

 一度、存分に味わってもらえば、もうウザったい監視とかもなくなるかなぁって真剣に思う……。

 

「……さすが、戦闘用強化人間……。私、ベースは一般人と大差ないから、そこまでじゃないんだよね。あんまり戦闘適正も高くないから、一人で敵対国家への潜入工作とかホントに大丈夫なのか、不安だよ……」


「……コロニーの街中で、レールガン撃ったりはしないし、レーザーで撃たれるとかって、あんまりないのですよ?」


「あんまりってなに? そこは絶対ないって言い切るところでしょ?」


 なんだか、アキちゃんに呆れられてる。 

 でも、実際問題……いきなりレーザーライフルで撃たれたりとか、あり得るのだよね。

 

 携行可能なレベルのレーザーとかなら、目にさえ当たらなければ、致命傷にはならないし、実弾系でもハンドガン程度なら脅威にもならないんだけど……。


 クオンって、武器の所持には、制限ないからね……。


 人に当てて死なせたり、怪我をさせたら、当然犯罪になるし、銃火器取扱免許持ってないと、そもそも、所持自体が許されないんだけど……。

 扱いとしては、ナイフや包丁なんかと、大差ない。


 けど、いついかなる時も常在戦場の心意気でいるべしって、お師匠様も言ってたしね! 油断なんかしないのですよ。

 

「……100%無いと言い切って、油断するほど、ユリは甘くないのですよ……」


「そんなんだと、モテないと思うよ? そういや、相変わらず夢はお嫁さんなの?」


 アキちゃん……たまに直球で酷いこと言うんだよね……。

 ちょ、ちょっと刺さったよ? でも……ユリの夢……うん、やっぱお嫁さんっ!

 ウエディングドレス着てーってのが、昔から、憧れなのですよ!


「なのです! 素敵な旦那様と出会ってぇ……。子供はデザインチャイルドになるけど、見た目とかは、ユリそっくりにして、一緒の服着て、一緒にお出かけとかしたいなぁ……」


 自分をちっちゃくしたような女の子と、ちょっと年いって、エレガントな感じになった私と、隣を歩く素敵な旦那様。


 そんな光景を思い描いてみる……ちびユリが走っていって、待て待てーって追っかける私。 

 それを優しそうな笑みを浮かべて、見守る旦那様……うん、素敵っ!


「出たっ! 妙なところで乙女なユリちゃん……。でも、私も、普通の男の子とかと仲良くしたいなぁ……ねぇ、誰か紹介してよ! あ、最初は文通……メールのやり取り、とかでもいいよっ!」


 なんだか、妄想全開中に引っ張り戻された……。

 でもまぁ、女の子ならこう言うのって……多分、共通の憧れなのです。


「紹介出来るような男の子はいないけど……アキちゃんなら、きっとモテるのですよ! 絶対……ユリが保証するのですー! アキちゃん、いつものアレやろうっ! おいでっ!」


「解った! ユリちゃん、私の思い……受け止めてっ!」


 椅子から、立ち上がって両手を広げると、すかさずアキちゃんが助走つけて、勢いよく飛び込んでくるので、ガッツリ受け止めて、お互いをギューっと抱きしめる。


 ユリ達の友情は、とっても篤いのです!

 

 とまぁ……こんな調子でアキちゃんと、とりとめのない話を続ける。

 

 アキちゃん……昔は、もうちょっと口数も少なくて、暗い表情してることが多かったんだけど……。

 表情もクルクル変わって、すごく可愛らしくなってるし、なんだか、スゴイおしゃべりになってる……口調もとっても明るい感じになったし……。


 ユリも口数増えたなーって思うけど、多分お互い様。

 

 強化人間だって、ちゃんと人間扱いしてもらうだけで、随分らしくなるもんだって……ホントにそう思う。 

 社のお偉いさん達も、そう言うの少しは解ってくれたのかもしれないね。

 

「……あ、そうだ! 今度、私……研修で星間旅行行くことになってるんだよね……。さすがに、初めてだから、もうドキドキ! エスクロン傘下星系に第三課の人と同伴で行くらしいけど……どんな事するんだろう。ちなみに、親子って設定なんだって! でも、そんな設定……私、お父さん居ないから、どうすればいいのかなぁ……」


 そっか、そう言えばそうだった。

 強化人間も、専用設計を施されたデザインチャイルドベースの方がどちらかと言うと主流だから、ユリみたいにちゃんとした家族がいるってケースは意外と少ない。

 

 とりあえず、あんまり参考にならないかもだけど、お父さんとの旅行の事でも説明してみようかなぁ。

 

「えっと……ご飯食べて、ホテルとか旅館泊まって、ご飯食べて、お土産買ってくる? お父さんも良くあちこち行って、色々お土産買ってきてくれてたのです。親子って設定なら、色々ワガママ言って良いんじゃないですかね、アレ食べたいとか、コレ食べたいとか」


「なんだか、食べてばっかりじゃない……。そんなんでいいのかなぁ……」


 アキちゃん、鋭いっ! 私、ご飯食べるとしか言ってないっ!

 でも、旅行の思い出って、美味しいもの食べたとかそんなのばっかりなんだよね。

 

 観光地なんかも、XXを食べたトコロとか、〇〇が美味しかったとか。

 食べ物とセットで記憶してる感じ……あちこち行って、色々食べたなぁ……。


 合成食材中心といえども、国によって、結構個性ってものがあって、甘いのが充実してる国とか、やたら辛いのが出てくるとか……。


 そう言えば、ジャンクフード天国みたいな国もあったっけ……最終日辺りでは、お父さんとご飯が食べたいってやってたもんだよ。

 

「お父さんも旅行の醍醐味は、旅先ご飯って言ってたのです。ユリも実際にお父さんの星間旅行に付いてった時は、そんな感じだったのですよ」


 お父さんとのお出かけ。

 泊まりでの星間旅行もなんどか行ったけど、概ね食べ歩きだったような……。

 

「それって、プライベートの旅行だよね? え、まさかお仕事で……?」


「お父さんが言うには、半分お仕事、半分お遊びって言ってたのです……。街の中を歩いて、街の人とお話して、適当にお買い物して、ご飯食べて帰る……当局に尾行とかされてもお構いなし。潜入工作とか言っても、やってることは、普通に観光して帰るだけって……。第三課のお仕事って、どうもそんな感じみたいなのです」


「ええっ、そうなの……もうちょっと、こう……貨物船に紛れ込んでとか、ステルス降下船で人知れず、侵入とか、特定人物を探し出して、尾行したり、潜入現地工作員から符丁受け取ったりとか、そんなんじゃないの?」


「そんな事したら、目をつけられてあっさり、捕まっちゃうのですよ。そもそも、銀河連合加盟国なら、どこも観光目的の入国は、普通に受け入れてくれるのですよ。堂々とビザ申請して、パスポート持っていけば、どこも普通に入国できちゃうんで、そんな映画みたいな事しなくても平気なのです。アキちゃんなら、見聞きした情報を全部データ化出来るから、丸一日街中をプラ付くだけで、相当な情報を持って帰れると思うのですよ……」


「……ああ、確かに情報分析とか言って、ただ街中歩いてるだけのムービーから地図作成とか、雑踏の会話の中から特定単語を含む会話だけピックアップして、データベースに入力とか……そんなのやったよ。でも、第三課のお仕事ってそんな感じなんだ……。もっと、こう……映画のスパイみたいな事でもするのかと思ってたよ」


「お父さんもあんな派手なことはしないって言ってたのですよ。技術レベルとか軍事力とかって、その国の街中を歩いたり、家電屋さん見て回ったり、無人タクシー乗ったりするだけで、ある程度解るもんなのです。売ってる食べ物の値段の相場や質から、経済力とか交易相手も解るし、流通や物資相場の動きから軍事作戦の兆候とか規模を把握出来たりするのですよ。公開情報って割と嘘混じりだったりするし、実態を把握するには、そう言う方法が一番早かったりするんだって……」


 この辺はお父さんの受け売り。 

 親子旅行だって、当局の目を誤魔化すためってのもあったみたいだけど、お父さんと一緒なら、公式ミッション扱いになって、堂々と一緒に遊びにいけるので、お父さんなりに気を使ってくれたのかなとも思ってる。

 一応、肩書は記録係兼護衛役……って感じではあったけど。

 

 誰にも怪しまれない常時稼働高性能カメラみたいなもんだから、一緒に連れ歩くだけでも、十分役に立ってたらしい……。

 

 お父さんも今は、クリーヴァ社に捕まってるけど、実際は嬉々として、向こうの情報を抜き出して、こそこそと第三課にあの手この手で送りつけてるんじゃないかな。

 

 無事を知らせるビデオレターだって、時々変な目配せとか、指をくるくる動かしてたりしてたし……。


 クリーヴァ社って、これまでも割と閉鎖的で、秘密主義的なところがあって、あまり細かい情報がなかったから、きっとお父さんとしては、宝物庫に入れてもらえたようなもんだって気もする。

 

 大人しく捕まってるように見えてても、お父さんが敵地で大人しくしてる訳がない……クリーヴァさんも、とんでもないのを捕虜にしたって、言われてて、むしろ誰も心配なんてしてないらしい。

 

 実際、お父さんなら一人で逃げるくらいは出来たと思うし……絶対、わざと捕まったんだと思う。

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