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第十八話「放課後うぉーず」④

 それにしても、イチゴパフェ……それも、本物! いいなぁ……それ!


 イチゴもどきパフェなら、食べたことあるけど、肝心なイチゴがグミとかゼリーみたいな食感で、クリームも妙に重たくって、なんともB級スイーツって感じなんだよね……。

 

 本物のイチゴは、誕生日にお父さんが買ってきてくれたケーキの上に乗ってて、食べた覚えがある。

 フルーティーかつ、ワイルドな風味で甘酸っぱくて芳醇で……ああ、また食べてみたいなぁ。

 

 ちなみに、お値段は……ちょっと調べただけで、さすがに気軽に買ってきてって頼めるような額じゃないってのは、すぐに悟った……。


 どれもこれも、万単位のクレジット額が並んでるような有様……それをわざわざ予約してホールで買ってきてくれたお父さん……最高のお父さんなのです。

 

 でも永友提督って、本来はずっと昔の、20世紀生まれの人の再現体だって話を聞いてるから、食べ物にうるさいってのは、なんか解る。

 

 きっと、合成食材とかよりも天然食材の方が馴染みあるんだろうな……。


 もっとも、合成食材と天然食材とじゃ、お値段軽く10倍とかする……そもそも、手に入れようと思っても、簡単には手に入らない……。


 天然食材って、古来農法とかにこだわるとイチゴなんかでも収穫に半年はかかるって言うし……収穫して数日で鮮度が落ちて食べられなくなっちゃうとかで、ホントに貴重……。


 そう、天然食材ってこの鮮度の問題ってのが付きまとうからこそ、高級品なのですよ……。

 

 特にお魚を生で食べるお刺身とか言ったら、海洋系惑星で現地まで行かないと食べられるような物じゃない……。

 海洋系惑星自体がレアで、魚介類の育成条件に合うとなると……数える程度しかない。

 エスクロンも海は広いけど、地球系魚介類の育成条件に合わないから、やっぱりお刺身とか滅多に食べられない。


 地球由来の天然食材を食べる……それは、まさに至高の贅沢とも言われているのですよ。


 それがしょうもない理由でお預けってなったら……普通に怒るよね……。

 うん、その初霜ちゃんの気持ちも解るかな……デモ隊を砲撃……解る。


 古今東西、食べ物の恨みってものは恐ろしいのですよ……。

 

 でも、あのファンシー偽装でノリノリのご機嫌になったって話も、何となく解る。

 自分の身体が砲塔とか魚雷満載の無骨な姿ってのは嫌……解る……そんなもんなのです。

 

 私だって、自分の身体がゴツゴツした戦闘機械歩兵みたいだったら、きっと悲しくなる……。


 第二世代強化人間も外装はハードスキンや装甲やらで割とゴツいんだけど、女性陣は外観を女性らしくしようと色々工夫してるって話だし、同期の第三世代の子達もお洒落したいーって皆言ってた。

 

 女の子達もせめて、髪の毛くらいおしゃれにって言って、お互い髪の毛編み編みしたり、カラチェンとかしてたもんだよ。

 

 こないだのブルゾン号の艦載AIだって、船体にアニメの女の子の絵が描かれてるのすっごい嫌がってたし。

 艦艇の外装デザインもAIに任せっきりにすると、やたら丸っこくなったり、カラーリングがパステルカラーになったりするって話も聞く。

 

 過去に、人型機動兵器の開発が試みられた事もあったらしいんだけど、それを実際に動かす事になるAI主導の設計にすると、もれなくフリフリスカート付きだったり、ピンク色だったりの、やたらと乙女チックなデザイン案が出て来て、軍人さん達もとっても困ったらしい……。

 

 かと言って、軍人側の要望に沿った無骨なデザインでの設計を人間がやっても、AI設計機体には全然及ばず……。

 結局、どこでも同じ状況になって、人型兵器とかロマンだよねって結論で、立ち消えになったとか……そんな逸話もあるくらい……AIって意外と兵器の新規開発に関しては、向いてないところがある……。


 ベースがあって、改良とか性能向上とかやらすと、人間なんて足元にも及ばないくらいの適性を見せてくれるんだけど、ゼロからってなると、割と迷走しがちと言う難点がある……まぁ、これは昔からなんだけど。

 

 エーテル空間航行艦にしたって、外装偽装はAI側が勝手にやりだして、利用者側にも好評だったからって話を聞いてる。

 

 この子達、エーテル空間戦闘艦は、自分達が旧時代の艦艇を元にしてるってのが、アイデンティティの主要な柱になってるから、その外観に凄い拘りがあるみたいなんだけど。

 

 その初霜って頭脳体は、ちょっと変わってるのかも知れない。


 私だったら、自分があのフワモコな巨大ボディ……とかなったら、ちょっと楽しいかもとか思うから、むしろこっちに近いような……。

 

 ……あれなら、まさに平和って感じだから、反戦団体だって絵面が悪いってんで、お引取りいただけるんじゃないかと。

 

 永友提督さん……実は、結構策士? カッコいいね!

 

「交渉、上手くいくといいですね……あ、お姉さま、そろそろ時間なんでは?」


「ああ、そうね。施術チーム側の準備も整ったみたいだし、そろそろラボに向かいましょうか……。夕凪ちゃん達は、周辺警備をよろしくね。ホントは、中継港で落ち着いてからにしたかったんだけど。この調子じゃ、入港は無理そうだしね……。ただやっぱり、このロンギヌスが動いたってのは、クリーヴァとかも注目してるみたいでね。なんかちょっかい出してくる可能性もあるから、警戒は厳重に頼むわね」


「お任せあれっすよ。あっしらは護衛戦は得意中の得意なんでさ」


「ふふん、この歴戦の勇士、疾風様が護衛に付いてるんだから、ここは大船に乗った気持ちでいてくだせぇよ。永友艦隊って言えば、初霜さんが有名っすけど。この疾風も負けないくらいの古株っすからな!」


 オレンジ色の夕凪の後ろから、同じ顔した緑の子が腰に両手を当てたポーズで、豪快に笑う。

 

 データベース参照。


 駆逐艦疾風……永友艦隊でも最古参、数々の激戦をくぐり抜けた古強者。

 

 ……なんかすごい。

 見た目は古臭い上に艦橋むき出し仕様とか、クレイジーな艦だけど、装備はレールガンやら、最新センサー群やら惜しみなく使った最新鋭。

 

 まぁ、エーテル空間の軍事関係って良く解んないけど、守りはお任せなのです!

 

 ちなみに、今回は、半年に一度の身体の機械部分と生体部分の相互調整手術と、ソフトウェア・アップデートが実施されるはずだった……ホントは、もうちょっと後の予定だったけど、緊急メンテのついでにやっちゃおうって話になった。

 

 本来、ソフトウェア・アップデートは、オンラインでも出来るんだけど、そこら辺も機密との兼ね合いがあるので、基本的に社のクローズドネットワークに接続した上でか、暗号圧縮化されたリアルメディアを専用のデコーダーに接続した上で実施するようになっている。

 

 と言うか、強化人間の基幹ソフトウェアは、原則クローズドシステムになってるのですよ。

 無線経由での電子浸透アタックとかで、基幹ソフトウェアがハッキングとかされちゃうようじゃ、強化人間なんて即座に無力化されるし、最悪命取りになる。

 

 だから、内蔵通信モジュールなんかと、身体の基礎システムは、完全に切り離されてる。

 電子戦仕様の強化人間とかだと、自前アップデートとか出来るらしいんだけど、私はそこまで器用じゃない。

 

 それと今回は、惑星クオンに降下した際、想定外の惑星環境下で、ハード的な問題がなかったかとか、未知のウイルスや細菌に対して、免疫系が正常に機能したかと言ったチェックもある……これが緊急、前倒しメンテになった理由の一つ。

 

 いかんせん、クオン政府が、惑星クオンの正確な環境データをエスクロンに寄越さないので、ユリの身体チェックで、問題なかったどうかを直接確認する……そんな回りくどい方策が取られる事になったんだとか。

 

 別に熱とか出てないし、喉が痛いとかそんなのもないし、セルフチェックデータ上は問題はなさそうなんだけど……万が一を考えて、身体チェックを念入りにしたいって話だった。

 

 そう言うのは、先に注意してほしかったなぁ……。

 

 別に本格的な戦闘行動とかもしてないし、ホントにご飯食べて、温泉入って、寝たって感じだったから、密林探索とか大冒険なんてしてないし……。


 むしろ、体重が規定値超えとかで、怒られたりしないかなぁって、そっちが心配……。

 

 基礎骨格ユニットとかは、高重力環境でも機能するように、大幅な強度マージンを設けてあるけど、生体部分はカロリーを過剰摂取すると、結果的にリザーブ……人体同様、脂肪という形で、あちこちに溜め込んでしまう。

 

 合成細胞での人体の再現に拘りすぎて、そう言ういらないところまで生身と同じってのは、どうなのって思うけど……仕様なんで仕方がないのです。

 

 うん……メンテやるって聞いてたら、少しはご飯控えたと思う。

 

 でも……あんなたくさんの高級天然食材で作った豪華お料理やスイーツ。

 知ってても、やっぱり誘惑に負けてたかも知んない……実際、とっても美味しかったです!

 

 ちなみに、今朝、体重計に乗った時、キャンプで色々食べ過ぎたせいで、普通にガッツリ増えてたんだけどね!


 具体的な数字は、もうお墓まで持っていきたいレベルで……急遽、学校までランニングしていったんだけど……まぁ、焼け石に水だったのは、確か。


 ええ、ほっぺとかプニった自覚あります。 

 ちなみに、他の皆もその辺は一緒だったらしい……。

 

 教訓:キャンプもいいけど、食べ過ぎ注意……だねっ!

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