表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/275

第十七話「クローズドサンセット」③

(ご明察の通り、戦闘中ですね。どうも宇宙海賊の残党がいた様子で、軌道警備艦隊と交戦中の模様です。それと、所属不明の地上軍とセキュリティのスターウルフ社とで交戦が行われた模様です)


 エルトランの返答が即座に返ってきた。

 あの調子だと、色々物騒な事になっているのではないかと思ったら……案の定。


(……地上戦……なのですか? そう言うことはちゃんと報告するのですよ)


 エルトランと交信してる中、皆は先輩が出してきたポータブルTVを見始めてる。

 内容はクオンでやってるのとまるっきり同じ。

 

 なんでも、クオンからの電波を中継しまくって、このキャンプ場で見れるようにしてるらしい。

 さすがに、タイムラグが20分位あるみたいなんだけど……なんともまぁ。

 

 聴力強化で、聞き耳を立てる。

 風向きの関係で、交戦音はここまで聞こえてこない……環境保護ナノマシンを吸音モードにしているのかもしれない。

 よく見ると、向こうのテント村も先程よりも明らかに人影が少なかった。

 

(上空のブルゾン号と私の方で、セキュリティ側に情報提供を行いましたからね。衛星軌道からの情報支援があるのとないのでは、全く勝負になりませんよ。なので、お知らせするまでもないかと判断いたしました。宇宙側も軌道警備艦隊の方が戦力でも上です。どうも、海賊側の捜索隊……もしくは、増援だったようですが……)


(はぁ、そう言うことはちゃんと知らせてほしいのですよ?)


(お邪魔するのも野暮かと思いまして……私としては、このような些事で、せっかく楽しんでらっしゃるところを水を刺すような真似したくはなかったのです。では、戦闘情報を転送します)


 さっきの鉤十字の200m級の海賊艦と、機動警備艦隊の無人戦闘艦二隻がクオン、重力圏付近で激しく交戦中のようだった。

 

 警備艦は、100m級のハウンドドック級軽戦闘艦。

 エスクロン製の格闘戦重視の軽装高機動型戦闘艦……即時展開能力が高い上にローコスト、色んな星系で航路警備や即応戦力として採用されている、ベストセラー戦闘艦のひとつ。

 

 無人艦だから、その戦闘機動はもうハチャメチャ。

 遠く離れた後方に、管制艦を置いて、オートマチックで獲物を追い立てる文字通り、宇宙の猟犬達。

 

 エルトランから、あの海賊艦との戦闘記録を提供されているらしく、確実にレーザーを当てていって、熱容量を飽和させる事で耐レーザーシールドを無効化させる戦術を取っているようだった。

 

 一隻が囮となって、正面から牽制しつつ、もう一隻が別方向から攻め立てることで、数の優位を有効活用しているようだった。

 

 なかなか、悪くない展開のようだった。


(……宇宙空間戦は、優勢みたいなのです。これなら撃退は時間の問題。衛星軌道の制宙権を取られたら、危うい状況だけど、増援も出てるし、大丈夫そうなのです)


 すでに、クオンステーションから、10隻単位の増援艦隊が続々と来援中。

 こう言う時は、一般の輸送艦なども武装していれば、参戦すると言うのが、航宙艦乗りのしきたりらしく、その手の艦も合流予定なので、一時間もすれば惑星クオン上空は随分と賑やかになりそうだった。


(あの敵艦は、ステルス性能に頼り切ってる部分があるようで、防御力に難があるのですよ。耐レーザーシールドくらいは装備してるようですが、どうも反応速度も遅いようで、奇襲さえされなけれな、どうと言うことも無い相手のようですね)


 エルトランの情報によると、どうも他の星系でもこの鉤十字のステルス戦闘艦は、色々無法な戦闘行為を行っているようで、あちこちで被害が続出しているようだった。

 

 さっきのユリ達みたいに、気がついたら、上を抑えられて、一方的にやられる。

 そんな感じで、好き放題されていたような感じ……。

 

 でも、ステルスっても、その外装や残骸を分析すれば、対策も可能。

 どうもエスクロン本国も本格的に動いているようなので、あの鉤十字戦闘艦も、今までみたいに好き勝手できなくなると思うのですよ。


(エルトラン……色々、ありがとなのですよ。でも、ユリとしては、訳が解らないまま、戦いに巻き込まれるとか嫌なのです。情報共有は忘れないようにするのですよ? それと向こうのキャンプ村の人達……人数が減ってるのは、もしかすると、もしかするので?)


 向こう側の会話とか聞く限りだと、残ってる人達は、後方支援と最終防衛ライン受け持ちっぽい。

 ほとんどの人は、危険を承知で謎の武装集団の迎撃戦に参戦してるっぽかった。


(さすがに、誤魔化せませんか。あの方々の多くがセキュリティ側に助っ人として、参戦したようです。兵力では襲撃者側の方が多かったのですが、助っ人の参戦と我々の情報支援と、私の方で広域ジャミングを実施いたしましたが、それが決め手となったようで、敵はすでに総撤退に追い込まれつつあるようです)


(……犠牲者とか怪我人、出てなきゃいいのですけど)


 さっきのスナダさんとか、ダンさん、シュワさん。

 名前と顔を知ってる人達が戦って、犠牲になったとかなったら、流石にそれは辛い。


(この手の無法者との戦いというのも、彼らにとっては日常のようですからね。意外と手慣れているようで、軽傷者程度は出ているようですが、問題にはならない程度かと。なにより、ユリコ様いる場所は、セキュリティに守られた安全地帯ですから。むしろ、守られて当然と思うべきかと。今はつまらない事に気を取られずに、皆様と地上世界の夜をお楽しみいただくことを、オススメします)


 守られるべき者と戦う者は、きっちり分ける。

 

 この宇宙では、それが当たり前。

 

 エーテル空間なんか、その辺徹底してて、銀河連合軍はその戦いに一般人を巻き込むことを潔しとせず、戦闘用の艦艇頭脳体とその指揮官ユニットだけで、戦闘を遂行している。

 

 彼らは、一般人を逃がすために、平然と自分達を犠牲にしたりする。


 今、エーテル空間では、銀河連合軍と黒船が激しくあちこちで戦っていると言う話だった。

 物流や人の交流に、さしたる問題が起こっていないのは、彼らの犠牲によるものが大きかった。


 ……ユリ達、地上世界の住民は彼らによって、守られている。

 誰も意識してないけど、それは確実な話だった。


 ユリは……こんな事していていいのかな? 思わず、そんな事も思ってしまう。


(……解ったのですよ。でも、何かあったらちゃんと知らせるのですよ?)


(畏まりました……では、良い夜を)


 エルトランとの通信終わり。

 

 ひとまず、問題もなさそうなので、ユリも忘れるのですよ。

 

 けど、こんな目と鼻の先みたいな所で、戦いが起こってる……これは紛れもない現実だった。

 

 銃後の民、守られる側が出来ること……か。

 とりあえず、キャンプ村のお兄さんたちには……朝ご飯でも差し入れすればいいかな?

 

 皆にも少し事情を話して、手伝ってもらって……うん、そうしようっと。

 

 それから……。

 皆で色々おしゃべりしつつ、TV見て、盛り上がったり、トランプやってみたりと時間を潰す。

 ついでに、材料追加で買ってきて、明日の朝ごはんの準備も……フレンチトーストいっぱい焼こっとっ!

 

 テント村の人達も一段落ついたみたいで、続々と戻ってきて、お風呂行って「風呂上がりのビール最高っ!」だの「よっしゃっ! 完封勝ちー」とか、テンション高めな感じで、ワイワイ騒いだりしてる。

 

 本当に、片付いちゃったみたいなのですよ?

 エルトランからも、敵対勢力の敗走のお知らせ。

 

 さすがに、今夜はもう仕掛けてこないだろう。


 ユリも安心して寝れそう……なんか、嬉しいな。

 

 そして、そんな事をやってるうちに、時刻は21時半をまわり、いよいよ待望のお風呂タイムなのですよ!

 

 露天風呂とか初めてだし、皆とお風呂とかも初めてなんだけど、とっても楽しみ! 

 そんな訳で、皆でお風呂レッツゴー! なのです!

 

宇宙駆け本編は、完結しましたけど。

こっちは、当分続けます。


もっとも、更新頻度は控えめになるとは思います。

週一更新くらいはしたいもんだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ