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第十六話「ランドバケーション」④

「皆、いい人達なのですよ」


「ユリコちゃん、どうかしたかな? ん?」


 思わず、口に出てたみたいで、隣で手伝ってくれてたスナダさんが、ニコニコ笑顔でこっち見てた。

 

「なんでもないのですよ! じゃあ、最後の仕上げっ! ユリちゃんチャーハン、完成なのですっ!」


 最後に中華鍋を思いっきり振って、チャーハンがごっそり宙を舞うのを、中華鍋でナイスキャッチ!

 周りで見てた人達から、拍手が巻き起こる。

 

 うん……クオンコロニーじゃ、いまいち美味しく作れなかったけど、強火でご飯がパラっとこんがり焼けて、とってもいい感じに仕上がった!

 

「おおお、お見事っ! 美味そうっ!」


 スナダさんが拍手してくれた!

 思わず、Vサインで決めっ! お料理してて注目されるなんて初めてだけど、拍手とかされるとなんか嬉しい。

 

 小さな紙皿に取り分けてると、追加のご飯が炊けたみたいなので、第二ラウンド分を開始。

 

 ちなみに、本来はお米で炊いたご飯が理想なんだけど、今回は合成ライスを持参してきてた。

 ……合成炭水化物をお米の形に固めたような代物なんだけど、お水を混ぜて10分ほど温めるだけで、ほかほかご飯になる便利な代物。


 エスクロンみたいな日本の文化を受け継いだ国では、これが主食になってるんで、割とお馴染み。

 味や食感も長年の改良で、天然のお米とほとんど変わりない。

 

 一応、こだわり派の人達が最高のご飯を炊いて食べさせてくれるそうなのですけど……ご飯焚くのって普通にやると、一時間位かかるのです……。

 

 とにかく、やっぱり直火焼きはサクッて焼けるからやっぱり、お料理も捗るのです!

 じゃんじゃん作るのです!


「うわっ! これ美味しいっ!」


「ホントだ! 私の知ってるチャーハンと全然別物! ご飯が凄くパラッとしてて、めっちゃ美味しいよ! ユリちゃんすごーい!」


 スナダさんとマリネさんが早速食べてくれて、口々に感想を漏らす。

 

 ちなみに、味付けはシンプルに醤油と塩コショウ、具材は卵とフリーズドライのミートチップ……通称「謎肉」って呼ばれてお肉のような何か。

 

 他の皆は、リオさんとエリーさんが即席ピザ窯の前で、リオさんが器用にピザ生地を伸ばしてるのを何人かが囲んで見物してる。

 かまどオジサンも色々手伝ってくれてるらしい。

 

 冴さんとアヤメさんは、シュワさん達と串焼き肉を作ってる。

 その傍らでは、なんだか大きな肉の塊をぐるぐる回しながら、盛大な焚き火で豪快に焼いてる。


 他にもラーメン作ってる人達とかもいて、なんだか、とってもバリエーション豊かなのです。

 

 果物なんかも、器用に皮剥いて、凄くキレイに盛り合わせとか作ってる。

 どう見ても、プロ……男の人も侮れないのですよ。

 

 ちょっと離れた所で、ダンさんと何人か集まってて、そっちは別の理由で歓声上げてるようだった。

 

「よっしゃぁっ! クリーヴァ社から涙目コメント発表とか言ってるぜ! 俺たちの! 完全勝利だーっ!」


「おいおい、外務大臣のシンカイドウ議員が贈収賄罪で緊急逮捕だってよ。もしかして、こいつが黒幕? マジかよ……なんて言うか、世の中に正義があるって知らしめたようなもんだな」


「まさに大正義! 正義は勝ーつ!」


「まったく、敗北を知りたい……って奴だな」


 スナダさんがチャーハン第二ラウンドを引き受けてくれたので、ユリもちょっとダンさん達の所に顔を出す。

 

「って、うわぁっ! ユ、ユリコちゃん……もしかして、聞いてた?」


 ダンさんが大慌てで、携帯端末を閉じてる。


「ユリは、耳も良いのですよ。何の話してたのです?」


「ああ、その……ちょっと言いにくいんだけど、君ら……変な海賊船に襲われそうになってただろ? でも、それを君らは軽く撃退した……。一応、俺ら一部始終見てたから知ってるんだけど、他の子は気付いてない……そう言うことなんでしょ?」


「……そう言う物騒な話は、皆にしたくないのですよ……。宇宙キャンプは楽しい思い出だけで十分なのです」


「うん、解る。だから、俺らは色々裏事情知ってるけど、他の子には言わない。ただねぇ……政府のバカ共、よりによって被害者のユリコちゃん達を悪者に仕立て上げようとしててさ。でも、安心して! 俺らがネットにムービー公開して、デタラメ言ってんじゃねぇって、ボッコボコにしてやったから!」


「まぁ、実際の所、俺らは映像データの提供したり、掲示板とかで騒ぎ立てただけなんだけどな。治安維持局とかも頑張ってくれたみたいだし、それ以外にもなんだか、いろんな奴らが後押ししてくれたみたいなんだ……。まぁ、誰がどう見てもおかしかったからな。なんで、海賊行為をしでかそうとした奴らが被害者ヅラしてて、被害者側が悪いって話になるんだっての」


「だな! けど、やっぱり正しいことやってれば、自然といい流れみたいなのが引き寄せられるもんなんだな。なんか、そんな感じがしたぜ!」


 なんか嬉しくなってくる。

 クオンの人達って、何処か主体性がなくって、コロニーのぬるま湯みたいな環境で、外国にも出ないで、ぼんやり暮らしてるって印象だったんだけど。

 

 こんな風に、よそ者のユリなんかのために、頑張ってくれたり、こんな風に大歓迎してくれたり……。


「……皆さん、ありがとうなのですよ」


 そう言って、ペコリと頭を下げる。

 ホントは、嬉しくて泣きそうなんだけど、泣いちゃったら皆、困っちゃう。

 

「いやいや、いいって! 俺達、当たり前のことをしただけなんだから! よっし、皆! さすがにちょっと腹減ったから、飯食おうぜ! 食材もいっぱいあるから、食いまくりだぜ!」


「じゃあ、ユリはせめて皆さんの為に、頑張って御飯作るのですよ! チャーハン出来てるから、食べて欲しいのです!」


「……え? ユリちゃん手作りってマジ? こ、これは食わずに死ねん! 者共、遅れをとるな!」


 ダンさん、太めなのにびっくりするほどの俊足。

 一緒に居た人達も、猛烈な勢いでダッシュ。

 

 そんな調子で、皆で地上ご飯パーティが始まったのですよ!

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