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第十六話「ランドバケーション」②

「……やっぱ、そうなんだ……あはは」


 スナダさん、感激したように手のひらをグーパーして、妙に嬉しそうにしてる。

 

「あんたも、ゲーマーさんなんか。あたしもVRゲームは好きやで! あ、今度皆でエリーの家集まって、一緒にVRダイブせんか? 皆でやりゃ楽しいで!」


「やるのですよー!」


「ホントですか? いやぁ、喜んで!」


 スナダさんと、今度、ゲーム内で待ち合わせして、一緒に遊ぶ約束したのです!

 思わず、個人端末のアドレス交換までしちゃった!

 

 なんだか、とっても楽しい気分。

 結局、他の皆は誰ひとりとして、海賊船に拿捕されそうになってたとか気付かなかった。

 

 目の前で、艦体ブン回されて被弾アラートとか鳴り響くガチ実戦とかなってたら、皆、こんな風に笑えなかったと思うのですよ。

 即決で「解析機関」の使用承認を出してくれたエスクロンの運用管理責任者の方々には、感謝しないとなのです!


 お土産屋さんとかもあるみたいだから、一応お世話になりましたって、お土産送っとくのです。

 あ、実家のお母さんやお姉さまにも送っとかないと……キリコ姉は直接手渡せばいいや。

 

 荷物運びやキャンプ道具の設営は、お手伝いしてくれるっていう親切な人達がぞろぞろと来てくれたので、お任せしちゃって、エリーさんとアヤメさんと一緒に管理棟に向かうことにした。

 

 ちなみに、テントは湖畔のいい感じの所をダンさん達がキープしてくれてたので、ありがたく使わせてもらうことにしたのです。

 

「ユリちゃん! なんか出店があるでっ! どれも美味そうやわっ!」


 言われて見ると、いくつか出店が出てる。

 看板には、たこ焼きやらフライドポテト、チョコバナナにクレープ屋さん。

 なんだか、いっぱいあって目移りしそう!


「ユリはたこ焼きがいいのです!」


 たこ焼き屋さんの前で足を止めると、いい笑顔のお兄さんが対応してくれる。

 

「おおおっ! てん……じゃなかった、かわい子ちゃん! い、いらっしゃいっ! どう! 一個買ってかない? 天然タコ入り、古代地球日本のお祭りの定番! 他じゃなかなか売ってないよ? お値段、定価500クレジットのところ、半額の250クレジットでいいや!」


 なんか大幅値引きなのですよ! と言うか、めっちゃ安いのです!

 たまに、コンビニなんかでも売ってるんだけど、タコっぽい何かを使った合成品だし、値段の割にそんなに美味しくない。

 

「じゃあ、4つ下さいなのです! マネーカードでいいのです?」


「いいよー! うん、4つまとめてなら一個おまけって事で、750クレジットでいいや! もってけドロボーッ! お友達もどうだい?」


「あたしは、そっちのチョコバナナがええわっ! エリーの分も奢ったるわ!」


 アヤメさんは、隣で売ってたチョコバナナを購入。

 嬉しそうに口に咥えてるんだけど、なんだかとっても美味しそう。

 

「……甘いっ! なにこれ……天然物のバナナやん!」


「ホントですわ。良くこんなものが手に入りましたわね……」


「ここは、天然果物とか野菜とかを試験栽培してる農場があるから、そこから直に仕入れてるんだよ。魚介類もトコロレイクって地球の海を再現してる塩水湖だから、海の魚介類を試験放流してるんだ。いい感じに自然繁殖してるから、色々捕れるよ。最近は、釣り目的に来る人達だっているくらい……放流ものでも活きがいいから、結構楽しめるし、時期によっては、釣りたての刺し身や寿司だって食べられるよ」


 屋台のすぐそばのテーブル席に座ってたお兄さんが、私達のやり取りを聞いてたらしく、そんなことを言ってくる。


 なお、全然知らない人。

 エスクロンの海は、地球の魚介類はいまいち環境が合わないみたいで、惑星開拓のはるか前から、生息しているエスクロン独自の怪しげな海洋生物の宝庫になってる。


 ある意味、宇宙生物とも言えるんだけど、基本的にどれも大きくって……味とか見た目は微妙。

 有毒種も多くて、食用には向いてない。


 でも、他の国に比べたら、お魚には馴染みがある方だと思う。

 刺し身やお寿司みたいなのも、日本食に理解がある方なので、結構忠実に再現してる。


 なお、一般的には、お魚を生で食べる習慣ってない。

 

「そうなのですか……もしかして、天然いちごとかあるのです?」


「時期によっては、出ることもあるみたいだよ。今はちょっと寒いからシーズンオフ……時期によって、色々あるからね。けど、それもまた変化があって、楽しみの一つだと思うよ。今の時期だと柑橘系やりんごなんかがあるんじゃないかな」


「残念なのですよ……」


「はぁ、天然物の果物とか魚とか、それだけで、贅沢な話なんやけどなぁ……。チョコは合成品みたいやけど、普通に美味いわ……これ!」


 アヤメさんが、チョコバナナをペロペロ舐めて、バナナをハムっと口にくわえると、お兄さんが何やら熱い視線でじっと見てる。

 

 首かしげながら見てたら……何故か、慌てたように前かがみになる……なんでなんです?

 

「お兄さん、どうかしたのです? お腹痛いのです? お薬いるのです?」


「い、いや! なんでもないよーっ!」


 そんな事がありながら、受付も済ませて、簡単に施設案内を受ける。

 

「……裏手の建物は、お風呂になってます。一応、24時間開いてるけど、入る時はスタッフに声掛けしてくださいね。露天風呂もあるから、セキュリティ立ち上げたりとかあるし、時間帯で男女分けてるんですよ。一応、グループで貸し切りも出来るけど、予約制だから早めに予約入れることをオススメします。ところで、薪とか大丈夫? 凝縮酸化剤入の炭素棒あるけど、使う? 道具もレンタルで一通りあるから、手ぶらで来てたって大丈夫だよ」


 ニコニコ顔の受付の人が色々オススメしてくれる。

 露天風呂とか、ユリ経験ないけど、聞いたことくらいあるのです。

 お外でお風呂とかちょっと恥ずかしいかもだけど、凄く気持ちいいってTVでやってたのです!

 

 せっかくなので、露天風呂一時間コースで貸切予約してもらった。

 割と遅い時間なんだけど、とっても楽しみなのですよ!

 

「道具とかは一応、一式持参してきとるから平気やで!」


「そう? 足りなくなったら言ってね。追加料金いただくけど、食材なんかも用意できるよ。ここは新鮮な天然食材も売りのひとつなんだ……でも、今日は食材も人気で目ぼしいのは売り切れちゃった。ゴメンね。それとトイレや自販も24時間、この管理練開けてるから、ご自由にどうぞ」


 うーん、ほんとに至れりつくせりなのですよ。

 

 自動販売コーナーにお菓子にアイスなんかも売ってるから、なんでも調達し放題。

 電子機器用の増設バッテリーなんかも売ってるし、電動カートや核融合ポータブル発電機のレンタルすらある……。


 おまけに、貴重な天然食材なんてのもまで売ってるなんて……お値段もそこまでお高くない。

 

 もうなんでもありなのですよ!

 

 テントの設営場所に向かうと、すでに四人用テントと二人用テントが張られてて、冴さん達が椅子に座って、寛いでる。

 

「あら、もうテント立てちゃったんですか。良く一年の皆様だけで、出来たわね。わたくし達も一通り組み立てやりましたけど、軽く一時間くらいかかりましたよ」

 

「ユリちゃん、先輩、三人共おかえりっ! いやぁ、あの人達すごく手際が良いね……あっという間にテント立ててくれちゃって、私らほとんど見てるだけだったよ。やっぱり、男の人って頼もしいね」


 リオさんが嬉しそうに答えてくれる。


「焚き火台やグリルも全部セッティング済みで、あとは火をつけるだけだってさ……私ら全然わかんないんだけど……」


 マリネさんがおっかなびっくりって感じで、焚き火台に積み上げられた薪をつついてる。


 見た感じ、ちゃんと隙間を作って積み上げて、着火剤も奥の方にあって、導火線代わりのティッシュペーパーに火をつければ、すぐに焚き火が出来そうな状態になってる。


 計算しつくされた配置……なんて言うか、プロの仕事って感じなのです。


「それと……なんだか、差し入れとか言って色々置いていってくれちゃって……。断りきれなくて……つい、受け取ってしまったんですけど、あんなにいっぱい……どうしましょう?」


 冴さんが指差す方向には、なんだか山盛りの食材が……。

 お肉にお野菜……しましまのおっきいの……もしかしてスイカ?

 

 果物も天然物がたくさん……オレンジにイチゴ、みかんにパイナップル……目移りするのですよっ!

 

「……うわ、天然食材が山盛りや……これ、あたしらで食べてええんか?」


「なーんか、下心とかありそうだったけどね。でも、皆、隣にテント立てたりとかしないで、あっちに集まってるみたい……私ら女の子だけだからって、気を使ってくれたのかなぁ……なんか、向こうは男ばっかりみたいだけど……」


 ちょっと離れた所に、さっきまで無かったテント村みたいなのができてる……。

 こっち見てた人と目が合うと、笑顔とともにビシッと親指立ててる。

 

 一応、手を振ってみると、拳を突き上げて全身で喜びを示すような仕草……楽しそうなのです。

 

「いい人たちみたいなのですよ?」


「……わーっ! わーっ! エリー見てみぃこれ……天然牛肉とか、マジかいな。どれもこれも高級スーパーとかに売っとるようなもんばっかりやでっ!」


「……さすがに、これだけあると、わたくし達で食べきれませんのよ……」


 軽く見積もっても2-30人分くらいはありそう。

 親切心なんだろうけど、これはいくらなんでも……でも、天然食材とかそんな貴重品ムダにするのももったいない。

 

「……荷物はこれで全部かな? って、なにこれ……」


 ダンさん達がエトランゼからの荷物を持ってきてくれたんだけど、さすがに高級食材の山を見て呆れてる。

 

「むこうのお兄さんたちが差し入れって置いてったのです」


「……気持ちは解るが、自重しろっての……あいつら。ゴメンね……なんか、あいつらはしゃいじゃってるみたいで……。クオンの地上に女子高生が来るのが、久しぶりだからって、ちょっとテンション上がってるみたいなんだ。一応、注意しとくよ。気を悪くしたら、ゴメンね」


「それはいいんですけど、困りましたわね……。さすがに、これだけあるとさすがに食べきれませんの。わたくしたちも自前で色々用意してきてますし……。でも、返すの悪いですし……余らせるのも忍びないですよね……」

 

「せやな……。さすがに、いっぺんにこんなに食べたら、全員体重計が恐ろしいことになるで……」


 アヤメさんの言葉に、皆揃って震えるような仕草をしてる。

 もう一口がおデブの道……女子高生あるあるなのですよ。

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