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第十六話「ランドバケーション」①

 ……そんな訳で、やってきたのです!

 トコロザマキャンプエリア!

 

 こないだの荒野の片隅にちょろっと緑があるだけの森とも言えない緑地帯と違って、とっても文明の香りがするところ。

 大きな山がそびえ立ち、青く澄んだ水を湛えた湖。

 

 酸素濃度も20%近く、気温も18度と温かいと思えるくらいの快適さ。


 こないだと違って、晴天に恵まれて、どこまでも広がる青い空!

 ログハウスがあって、牛や馬が放し飼いになってて、見渡す限りの草原!

 

 まさに、大自然っ! ユリはこう言うのを求めていたのですーっ!


「あはは、ユリちゃん大はしゃぎやねー」


 思わず、エトランゼから降りるなり、意味もなく走り回っていたのだけど、アヤメさんの一言で我に返って立ち止まる。

 

「わーっ! ここが地上世界っ! なんなんだろね! この開放感っ! でも、なんか臭くない? なんだろ、この匂い……」


「牛とか馬が放し飼いになってるからねぇ……多分、これ草と動物のウンコの匂いだよ。まぁ、そのうち慣れるから気にするなっての! いやぁ、でもこれは駆け回りたくなるよーっ! ユリちゃん、待て待てーっ!」


 リオさんが両手を広げて、走り込んでくるので、ユリもダッシュッ!

 リオさん結構俊足なので、本気走りで逃げる!

 

「私もーっ! ユリちゃん、リオっち! まってよーっ!」


 マリネさんも嬉しそうに追いかけてくる!

 

「三人共、気持ちは解るけど、落ち着きなさーいっ! あと、ユリちゃんスカートっ! さっきからチラチラ見えてる! もうちょっとスカート降ろしなさい!」


 冴さんが、叫んでる。

 スカート……オシャレにミニにしたので、駆け回ると確かに結構な勢いで、チラチラしてるような。

 

 でも、制服の下に着てるのは簡易パイロットスーツだし、下着じゃないもんっ!


 ちなみに、太ももとかとってもナマ足っぽく見えるけど、極薄のシールド繊維で覆われてるから、レーザー照射にだって、3秒くらいなら耐えられるし、衝撃吸収素材でもあるから、転んだって平気っ!

 

「冴ちゃん、ええんやで! こう言うのは若い子の特権じゃよ……ワシらは、年長者らしく微笑ましく見守ろうぞ」


「そうね。わたくし達にもああ言う時代があったのよね……って言うか、本気で楽しそうね! わたくしも行ってきていい?」


「ふぉふぉふぉ、エリーも加わってくるとええぞ」


 アヤメさん、謎の老人キャラで微笑ましいって感じでこっち見てる。

 エリーさんも我慢しきれなかったみたいで、楽しそうに駆け出すと、マリネさんやリオさんと一緒にはしゃぎまわってる。


「先輩……その謎の老人キャラはなんなんです?」


 冴さんが、呆れたようにアヤメさんにツッコミを入れてる。

 冴さんって、基本ツッコミキャラなんだよね。


「いや、なんて言うか、若い子のはしゃぎっぷりを見てると、なんだか年寄りっぽい気分にならへん?」


「まぁ、そうですね。私、同学年なのに引率教師にでもなった気分です。と言うか、他のお客さんにも注目されてるし……ユリちゃん、ちょっとこっち来なさいっ!」


 冴さんがそう言いながら、手招きするので駆け寄ると、腰の所に手を突っ込んでスカートの丈を長くしてくれる。

 確かに、太ももラインまで上げたから、やりすぎたかも。


 とりあえず、バンザイしてなすがままになる。


 視線を感じて、周囲を見渡すとなんだか思いっきり注目されてる。

 でも、ユリが振り返ると、何故か皆視線をそらす。

 

 双眼鏡を持った人達は、珍しい鳥について、話をしてるっぽいけど。

 さっきまで、こっち向けてたのを、ユリは見逃さなかったのです。

 

「あははっ! ユリちゃんつーかまえたっ!」


 そんな事やってたら、マリネさんが抱き着いてくる。

 

「マリネ、ナイス! 確保! 確保だよーっ!」


 マリネさんはあくまでソフトタッチで抱き着いたって感じだったけど。

 リオさんの腰の入ったタックル食らって、思わずひっくり返る。

 

 冴さんが頭を抱えるのを見ながら、視界が逆さまになって、一面青空になる。

 

「ごめーん……勢い付けすぎた! てか、マリネもユリちゃんも、スカート気をつけないと。ここ学校じゃないから……その……なんか、ごめん」


 お腹の上で馬乗り状態になってるリオさんに言われて気づく。

 倒れ込んだ拍子に、思いっきりスカート全開状態になってる……リオさんが慌てて、直してくれるけど。

 おもいっきり……手遅れ。

 

 巻き込まれたマリネさんも尻もち付いちゃって、スカートぺろーんとめくれてる上に、足も開いちゃってるから、もろ見え状態。


「だ、大丈夫なのです! 下に着てるのはさっきのパイロットスーツなのですよ」


 言いながら、スカートを直して、立ち上がる。

 パンツじゃないから、恥ずかしくない! 恥ずかしいと思うから恥ずかしいのですよ!


「……うう、いきなりやっちゃったよ。も、もしかして見られた?」


 マリネさんも素早く足を閉じると正座状態であたりを見渡す。

 ポカーンとした表情でこっち見てた男の人達が慌てて、視線を逸らすのが解った。

 

 ……確実に見られたっぽい。

 なんで前かがみになってるのかは、良く解らない。

 

 ユリは平気だけど、マリネさんは……結構、ダメージ受けたっぽい。

 真っ赤になって、俯いてる……可愛い。


「私ら、思いっきり注目されてたからね。まぁ、ムービーとか撮るような不躾なヤツは居ないみたいだけど、しっかり色々見られたっぽいね……。まぁ、あれだよ……サービス、サービスってやつ? てか、二人共……ごめん、調子乗りすぎた!」


「……ううっ。そう言われるとなんか恥ずいっ! ユリちゃんもなんかごめんね!」


「ユリは、パンツじゃないから、恥ずかしくないのですよ? リオさんみたいにスパッツ履いてるようなもんなのです」


 リオさんは、膝まである黒いスパッツ履いてる。

 そのせいか、スカートめくれとか一切気にしてない様子。


 ユリのパイロットスーツも一緒だと思うんだけどなぁ……。


「ユリちゃんのそれ……色が白いから、下着にしか見えないんだって! 二人共、厳重注意だよっ!」


 マリネさん……恥ずかしそうに、いそいそと腰回りをゴソゴソやって、スカートをちょっと長くしてる。


 ちなみに、本来は膝どころか脛くらいまである野暮ったいデザインなんだけど、皆、織り込んで膝上丈のミニスカートにするってのが半ば常態化してる。

 階段とかで、しょっちゅうチラチラ見えたりしてるんだけど……誰も気にしてない。

 

 ……女子校なんて、そんなもんなのですよ。

 

 けど、結構な人数がこの降下船の駐機スペースにいて、ユリ達は注目の的って感じなのです。

 なお、圧倒的に男性が多い……いつものような女子校感覚だと、要らないサービスしまくりってのは、避けた方が良いような気がする。

 

 管理事務所の建物の方から、見覚えのある人達が電動カートに乗ってこっち来るのが見えたので、手を振る。

 んっと、こう呼べって言われてたっけ。

 

「ダンお兄ちゃん、シュワお兄ちゃん! お久しぶりなのですーっ!」


 そう言った瞬間、二人がギクリと言った様子で固まる。

 良く解らないけど、周囲の人達がものすごい目で二人を睨んでる。

 

 電動カートには、もう一人。

 割と鋭い目つきで、ワークキャップ被って、迷彩服着たライフル銃を担いだ女の人がいて、二人をポカリとぶん殴ってる。


 電子戦ゴーグルなんて、本格的な装備まで持ってる様子から、どうもここの警備員か何かっぽい感じ。

 

「や、やぁ……ユリちゃん、なんか色々大変だったみたいだね。あははっ!」


 ダンさん、引きつったような笑みを浮かべてる……どうしたんだろ?

 シュワさんの方は周囲にやたらと申し訳なさそうに、ペコペコしてる。

 

「え、えっと……あの……その。私、スナダ・ケイ……。こいつらのダチなんだ。一応、ここの警備員として雇われてる。怪しい野郎とか迷惑な奴が居たら、私に言ってくれれば、きっちり対処するよ」


 ワークキャップのお姉さんが、何故か照れくさそうに自己紹介してくれる。

 スナダさん、覚えたのです!


「……もしかして、軍隊経験者なのです?」


「いや、そこまで御大層なもんじゃないよ。この装備はあくまで趣味で揃えた自前っ! でも、銃火器免許持ってるし、一応VRFPSの経験者だから、実戦だってこなせると思う。ファイナルコマンドーって知ってる? ガチすぎるVRFPSって有名なんだけど、それのそこそこの上位プレイヤーだし、ここらの警備を担当してるスターウルフ社で一通りの軍事教練だって受けてるし、地上に半ば住み着いてるようなもんだから、ここの環境にもバッチリ適応済み」


 ……女子FPSゲーマーさんとか、初めて会う。

 

 けど、装備なんかも結構本格的。

 軽装備のように見えて、ライフルは外観古臭いだけで、レーザーライフルだし、パワーアシストスキンスーツ着込んで、最新型の戦闘支援システムなんかも装備してる。

 

 ファイナルコマンドーって、本物の軍隊の使ってるVR演習システムとまるっきり同じVRエンジン使ってるから、あれやりこんでるってことなら、実戦も難なくこなせると思うのですよ。

 

「知ってるのです! ユリもファイナルコマンドーやってるのです! 今度、一緒に遊ぶのです……ユリの神スナイプ、きっとびっくりするのですよ! ユリはゲームの中じゃユーリィって名乗ってるです。ちょっと有名らしいのです!」


 思わず、スナダさんの手を握る。

 同好の士発見……なんだか嬉しい。

 

 ユリって、基本あのゲームじゃ無言ソロプレイヤーだから、フレンドリストは真っ白け。

 

 現地でのなし崩し野良パーティとか毎度、グダグダになるからソロ活動がメインだったけど。

 お仲間とかいれば、別の楽しみとかあるかもしれない。

 

 女の人なら、うっかり下敷きにしちゃって、ログアウトとかならなさそうだし、変な下心もなさそうなのです。

 ユリも少しは社交的になってきたのですよ。

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