第十二話「放課後ティータイム」④
でも、実際そう言う事例もあるんだから、仕方ない。
……遺伝子合成とかだってやるようなお国柄だから、それくらいならいくらでも前例がある。
もっとも、女性同士の組み合わせの場合、染色体の関係で女の子しか作れないらしいけど……。
でも、自分で爆弾発言しておきながら、なんか顔が熱い。
マリネさんと思わず、顔を見合わせてしまう。
向こうも、色々想像してたらしく。
ポッと頬を赤くして、俯く……。
あ……なんかちょっと、可愛い。
マリネさん、スマートで、女子力もあって、普通に可愛いのです。
ユリもこんな感じになりたいのですよ。
思わず、じっと見つめていると向こうも、ぼんやりと見つめ返してくる。
そっと手を取って、軽く頬ずりなんかしてみる。
うん、暖かくて柔らかい……女の子って感じの手。
「いやいや、それはともかく! つーか、なにお前らもいい感じになっとるんやっ!」
アヤメさんが顔を真赤にして、こっち見てる。
マリネさんも、こそこそと手を引く。
……ユリとしては、もうちょっとスリスリしてたかったのですよ?
「……なんか、今、完全に二人の世界に入ってたよね。マリネとユリちゃん……と言うか、エスクロンってそう言うのもありなんだ……。さすが外国って感じよね」
「そ、そうね……ユリちゃん、さっきの女の子同士で子供作るとかいう話……詳しくっ!」
「マリネ……戻ってこーい!」
リオさんがツッコみながら、容赦なく膝裏を蹴ると、マリネさんもはっとした顔になる。
「リオっち、マジキックは止めて……痛いから。と言うか、リオっちもユリちゃんのほっぺた触ってみてよ! このすべすべ感……やっばいって!」
マリネさんが誤魔化すように、ユリの後ろに回り込んで、ユリのほっぺたをクニュクニュと撫で回す。
たまに顎の下を触られると、なんともくすぐった気持ちいい。
「どれどれ……こ、これはっ!」
リオさんもユリの手を握ると驚きの声を発する。
「どう? やばいでしょ……」
「……うん、ヤバイね。この肌触り……しかも、妙にヌクいし……」
マリネさんとリオさんに二人がかり、触られまくり。
「ユリは、モテモテなのです?」
その様子を見て、アヤメさんが苦笑する。
「めっちゃ、モテモテって感じやで……いっつもそんな感じなんか?」
「あはは、触らせてくれるようになったのは、割と最近なんだよね……」
「ちょっと前までは、寄らば切る……みたいなオーラ発してたのよね……。でも色々あって、お友達になったら、この子の方がむしろ積極的に身体触ってくるんですよ」
……そんなだったのです?
思い当たるフシも無きにしもあらずなので、ちょっと反省。
「皆、話してみたら、とっても優しいのですよ? 大好きなのです!」
マリネさんとリオさんが嬉しそうに、寄り添ってくる。
なんか、両手に花って感じなのです。
「せ、せやっ! マリネちゃんとリオちゃんやったっけ? 二人とも良かったら、宇宙活動部に名前だけでも貸してくれんかな? うちの部、あと二人集めないと、マジでお取り潰しくらいそうなんや……どうや?」
……アヤメ先輩が唐突にそんな話をしだす。
でも、確かに……生徒会長一派を返り討ちにしちゃったから、二人が名義貸ししてくれたからと言って、不当な圧力がかかったりする心配はなさそうなのです。
「ユ、ユリからもお願いするのですよ!」
ユリ達の唐突なお願いに、マリネさんもリオさんも少し考え込む。
「わ、わたくしからもお願いします。もちろん、名前だけじゃなく、こんな風に気軽に遊びに来てもらっても全然構いませんのよ?」
エリーさんもハンモックから降りて、頭を下げる。
と言うか、土下座しそうな勢い……。
「えっ! い、いきなりですね……リ、リオっちどうしよう?」
「そうだねぇ……どっちみち、私ら帰宅部員だしね。私は別に構わないよ。家の手伝いとかあるから、毎日顔出せとか言われたら、さすがに無理だけど……」
「あ、私、毎日だって構わないよ。だって、ここに来れば、放課後ずっとユリちゃんと一緒なのよね? なら、良いかな……むしろ、入りたいっ!」
マリネさん……なんだか、とっても嬉しいっ!
「マリネさんっ! 大好きなのですっ!」
思わず、抱きつきっ!
「私もーっ! ユリちゃん、愛してるわっ!」
マリネさんも負けじとばかりにギュッと抱き返される。
「……だ、駄目よっ! ユ、ユリコさんをあなたに独り占めなんてさせないんだからっ!」
これまで、黙って皆のやり取りをみてた冴さんが、突然ユリに抱きついてくる。
ユリ……サンドイッチ状態でもみくちゃ。
「なんや、ユリちゃん……モテモテやなぁ。二人共甘いで……ユリちゃんはあたしが先に目をつけとったんや! どやっ! いっただきや!」
アヤメさんが割り込んできて、お姫様抱っこで抱きかかえられてしまう。
と言うか、初お姫様抱っこなのですっ!
「せ、先輩……無理しない方がいいのですよ?」
先輩、かなり無理してるみたいで、手足がプルプルしてる。
ドッグエリアは重力係数が低いからと言って、ユリが重たいって事実に変わりはないわけで……。
「お、重たぁっ! でも、このお尻の感触は堪らんなぁ……フヨフヨやっ! あたしも最近は、毎晩寝る前に筋トレとかやっとるんや……これくらい、軽い軽いっ! ふんぬぅううううっ!」
もともと背丈はある方だし、それなりに鍛えてるってのも事実みたいで、アヤメ先輩結構頑張る。
「せ、先輩ずるいですよ!」
「そうよっ! なんで、先輩までっ!」
腰とかお尻ザワザワされて……思わず、変な声が漏れそうに……。
と言うか、先輩ヨタヨタしてて、とってもおっかない。
「せ、先輩っ! もう降ろしてーなのです!」
先輩、膝カックンってなりかけたっ!
これは怖いのです……この体勢でおっことされたら、とっても痛いのですっ!
「大変! 先輩の腕はもう限界よっ! マリネっ! こうなったら身体張って受け止めるのよっ!」
冴さんの読みは正解。
その直後、力尽きた先輩がポロッとユリを落とした瞬間、冴さんとマリネさんが走り込んできて、キャッチしてくれる……のだけど、受け止められる訳がなく、もう4人ごちゃごちゃになって、倒れ込むっ!
冴さん……ユリの下敷き。
アヤメさんは完全に力尽きて、ユリの胸に顔埋めた状態でダウン。
マリネさんは……ユリのスカートの中に顔突っ込んで、もぞもぞとしてる。
「ひやぁああああんっ! マリネさん、動いちゃ駄目なのです!」
思わず、スカートを押さえる。
これはいくらなんでも、いくらなんでもなのですーっ!
「はぇ? どうなってんの? なんか真っ暗なんだけど……く、苦しい!」
言いながら、顔にかかったスカートを払おうとジタバタされてる。
思わず、太ももでロック!
「め、めくっちゃ駄目なのです! アヤメさん、目を覚ましてーっ!」
動こうにもアヤメさんが乗っかってて、動けない。
冴さんも下敷き状態だから、早くどいてあげないと……へ、へるぷみーっ!
「……うわぁ、大惨事だ。これ……エリー先輩、これどうしよう?」
「た、助けましょうか……。あはは……皆、仲良しですわねー」
……結局、エリーさんとリオさんに助け出されたんだけど……。
マリネさんには、思いっきりスカートの中見られた……。
「あはは……。ユリちゃん紐パンとかセクシー!」
……ううっ。
出来れば、そこに触れないでほしかった。
これもあって、今日は頑張ってスカートめくり攻勢を死守したのに……。
いいんですけど……。
とにかく、部員は増えたのは良いけれど。
……こんな調子で、ユリは大丈夫なのです?
とまぁ……これは放課後の1シーン。
ユリの日常はなんだか結構、充実してるのですよ。