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第十話「冴さんと一緒……なのですっ!」①

 パワーアシストも何も無いノーマルママチャリ。

 今時珍しい位潔いアナログ自転車、二人乗り、そして後ろのヤツはヘビー級。

 

 こんな悪条件では、冴さんあっという間に力尽きてしまって、ヘロヘロと自転車押しながら、坂道を登ってるところなのです……なんだか、とっても申し訳ない。

 

「……ご、ごめんなさいなのです。ユリ、重たかったです?」


「わ、私がヘナチョコってだけだから……やっぱり、少しは身体鍛えるべきよね……。でも、強化人間ってそんななんだ……。ごめん、とってもペダルが重たかった……」


「ぐ、具体的な数値は言えませんけど……骨格とか頑丈なぶん、ちょっと重たいのです!」


「うん、体重何キロとか聞かないから安心して……。女の子にとって体重はトップシークレットだしね。私も太りやすい体質なんで、色々大変なのよ……油断してると、顔がぷにったり、お腹がぽっこり出たりしちゃうの……」


 ちなみに、ユリも今朝体重測ったら、微増してた。

 さすがにこれは由々しき事態だと、衝撃を受けたので、良く解る。


 余計に食べた分は脂肪になって、要らない所に蓄えられる……そこら辺の事情は、普通の女の子と同じなのですよ……。


「わかりすぎるのです……。強化人間も食べすぎると太るのです……」


 生存性向上のためのリザーブと考えれば、納得は出来るんだけど。

 リザーブなんて、もうちょっと別の方法が良かったのです。


「だよね……でも、なんなんだろね。今日は……パトカーやパトロイドがやけに多くない?」


「……た、たまたま、だと思うのですよ?」


 ……ちなみに、冴さんが気付くのも当然で、治安維持局のパトロールカーとか、パトロイドとかがたくさん、付いてきて、その辺を意味もなーく行ったり来たりしてる。

 

 今朝も、偵察インセクトドローンにまんまと出し抜かれたので、いよいよ以って本腰入れたような様子。

 住民視点だと、かなり物々しい……。

 

 向こうの本音としては、さっさと家に帰ってくれってところだと思う……。

 警護対象がノロノロと動き回る……一番、やりにくい状況だとは思うのですよ。

 

「最近、何かと物騒みたいだからね。お兄ちゃんもボヤいてた。なんでも、外国の要人がクオンに来てて、その人が正体不明のテロリストに狙われてるんだとか……。まぁ、私達には関係ないと思うけど……こうも物々しいと参っちゃうよね。さっきも二人乗り怒られるかと思ったし……」


 ……この様子だと、冴さんのお兄さんって治安維持局の関係者っぽい。


 その外国の要人とやらは、多分ユリのことです……。

 

 やだなぁ……変なことで、妙な偏見持たれても困る。

 と言うか、この状況……早いとこ、なんとかするのです!

 

「ちょ、ちょうどよく、タクシーが来たのです! 乗っちゃうのです!」


 さっきから、そこの人、乗ってくれないかなーと言わんばかりに、行ったり来たりウロウロしてた無人タクシーを捕まえて、乗り込む。


「でも、自転車……。タ、タクシーとか高校生が使うようなもんじゃないと思うけど……」


「自転車くらいなら、トランクに収まるのですよ。ユリは、留学生割引が使えるから、お安いし、安心安全なのです! 楽しましょー!」


「そう言えば、他の星系って移動手段は、無人タクシーとかが多いのよね……。クオンって、なるべく人の力でって事で、自転車や徒歩が多いんだけど……あ、半分出すよ、料金いくらくらいになりそう?」


 冴さん、自転車をトランクに積み込みながら、そんな事を言ってくる。

 

「……ここから宇宙港までなら、200クレジットくらいなのですよ?」


「え? なんで、そんなに安いの? もっとするって聞いてるんだけど……」


「ユリは外国人割引の対象になるので、安上がりなのです。でも、エスクロン本国なんかでも、むしろそんなもんですよ? クオンのタクシーって、実はとってもボッタクリなのですよ……」


 クオンでの一般料金だと、5km程度乗せてもらうだけで、1000クレジットくらいかかる。

 その値段だと、外国の人から苦情が来るので、外国人は大幅値引きしてるみたいで、こんな事になってる。


 元々、人件費のかからない無人タクシーの運用コストなんて、大してかからないし、エスクロンなんかだと、24時間、皆入れ代わり立ち代わりで使われるから、5kmで200クレジットとかでも十分黒字になる。


 クオンの方針が、なるべく歩きや自転車を使おう……なんて方針なので、こんな事になってるのですよ。

 おかげで、自家用車なんかもあまり普及してないし、無人タクシーもあまり活用されてない。

 必然的に、稼働率も低いから、料金設定も高くしないと商売にならない……どうも、そう言う理屈みたい。

 

 ……もっぱらトラムとか電車、自転車で移動するってのが普通なのですよ。


 もっとも、通勤時間の自転車レーンとか、割とごった返してむしろ危なかったりする……。

 

「し、知らなかった……。でも、なんかタクシーでとか、ちょっとお金持ちになった気分ね。私、こう言うのって普段使わないから、緊張するわ……。なんだか、フヨフヨして落ち着かないのね……車って……」


「お気楽でくつろいでて、全然、構わないと思うのですよ……あ、行き先はクオン宇宙港の第31番ターミナルまでお願いしますね」


『ご利用ありがとうございます。行き先、了解致しました。ルート提示、認証どうぞ』


 モニターに選定ルートが表示され、予想到着時刻と料金が表示される。

 10分しないで到着の予定、料金も200クレジット。

 

「そのまま、おまかせでお願いなのですよ。認証!」


『お任せ了解、安全運転で参ります』


 ちなみに、このタクシー……治安維持局の偽装車両で、防弾、防諜仕様。


 朝も見かけたし、自転車乗ってる時も見せつけるように、何度も追い抜いてったから、気づいてた。

 

 料金メーターは、それっぽい感じの数字を出してるけど、請求額はゼロクレジットのまま動かない。 

 送り迎えサービスするから、むしろ車両に乗って欲しいとでも言いたかったらしい。


 車両に乗ってるなら、イザという時はフルスロットルで安全圏までたやすく離脱できるし、防弾仕様だから生半可な火器では、ダメージすら与えられない。


 こうなると、警護する側も断然楽……もっと、早くこうしてあげればよかったと思うけど。

 二人乗りで、自転車の荷台に載せられるとか、何度経験してもいいものだったんで……つい。

  

 どうもユリの警護計画については、AI主導らしく、基本的に直接あれこれ行動指示とかはしてこない。


 AI達はAI達で、こんな風にあの手この手で警護対象の自由意思を尊重しつつ、自分達にとって効率的な手段をさりげなく提示してくるのですよ。

 

 そのへんを上手く読み取るっってあげることで、お互いにとってWinWinな関係になれるのですよ。

 AIさん達と仲良くするコツ……かなぁ。

 

 駐留中は、ゴムボールみたいなので支えてるけど、路面に埋め込まれた電磁加速体との反発を利用したリニアフライトモードになると、ふわりと浮き上がってスゥーッと音もなく加速していく。

 

 一見、どこの星でも普及してる一般的なリニアカーと呼ばれる車両に見えるけど、この車両は車体下部にエアロスラスターを内蔵してるから、その気になれば、空だって飛べるし、防御兵装のレーザーキャノンとかも付いてる……限りなく軍用車用だよね……これ。 

 

「わぁっ! とっても早いのねっ! すごーいっ! 自転車なんか比べ物にならないのね!」


 なんだか、微笑ましいくらいのはしゃぎっぷりの冴さん。

 本当に普段、車使わないらしい……実際は、時速40km程度のとろとろ運転。

 

 今頃、前の方ではルートクリア工作として、歩行者や一般車の締め出しとか、色々やってると思うのです。


 ある意味、大迷惑って気もしないでもないのですけど……ここは敢えて、気にしない。

 

 いくら狙われてるからって、こっちが萎縮したり、自重しなきゃいけないなんて、道理はないのですよ。


 それに、ユリが派手に動くと、その分向こうも動かないといけないから、ボロを出しやすくなる。

 正体がわからない上に、一向に動きが見えない……それがあの敵の一番厄介なところ。


 ユリはなるべく、普段どおりに行動して、敵を釣り出す餌になる。


 敵が動けば動くほど、痕跡を残すから、その痕跡を追って、じっくりゆっくりと追い詰められる。

 諜報戦ってのは、そんなもの……要人警護ともなると、要人をガードするのみならず、攻撃者側をあぶりだして、追跡して大本を叩くと言うのが基本戦略になる。


 そう言うのもあるから、治安維持局も無理に行動制限をかけたりとかしない……そう言うことなのですよ。


 なんと言うか、平和な国の治安組織だから、微妙かもって思ってたけど、なかなかどうして手際いいね!

 


「……という訳で、お友達を連れてきちゃったのです!」


 そう言って、冴さんをエリーさんとアヤメさんに紹介する。

 

「ど、どうもっ! 先輩方……す、菅原冴と言います。あ、あの……いきなりお邪魔しちゃってごめんなさいっ!」


 冴さんは、慣れない宇宙港の三次元トラムに乗って、無重力体験とかもする羽目になって、割とヨレヨレ。


 それでも、背筋を伸ばしてきっちり挨拶。

 ……いい子なのです。


「ユリちゃんのクラスメートかいな……歓迎するで! あ、あたしはチカマツ・アヤメ……二年生や!」


「わたくしは、エリザベート・ユハラ……エリーでいいわよ。あれ……貴女どこかで見たような……?」


「た、多分、生徒会でだと思います。一応、クラス委員の一人なので……。生徒会の会合で何度か……お久しぶりです。エリー副会長……そっか、この部活ってエリー副会長の部活だったんですね」


 エリーさんって、生徒会の関係者だったんだっ!


 それも副会長って……なんか凄い。

 

「……元って付けて下さいまし。もうわたくしは、生徒会とは関係ありませんの」


「あん時は、悪いことしたなぁ……。あたしをかばったばっかりに……」


「かまいませんの。アヤメはわたくしの幼馴染にして大切な友人……。そんなアヤメにつまんないイチャモンつけて、退学に追い込もうとか……こっちから、願い下げですのっ!」


 なんだか良く解らないけど……。

 生徒会とトラブルがあったらしい……。

 

「……な、何があったのです?」


 冴さんに小声で聞いてみる。

 すると冴さん遠い目をして、ボヤき始める。


「はぁ……生徒会に……タムラ会長って、人望無いのに規則ばかりうるさいのがいるんですよ。……で、そこのアヤメ先輩と色々揉めちゃったんですよ。具体的には、先生に有る事無い事でっち上げて、吹き込んで、挙げ句に退学させようと追い込んだりとかして……。当然、アヤメ先輩の友人でもあるエリー先輩と真正面から衝突。とりあえず、色々あって、その一件がきっかけで、エリー先輩、生徒会から抜けちゃったんですよ……おかげで、今の生徒会はグダグダで……」


 良く解らないけど、ややこしい裏事情があるっぽいのですよ?

 確かに、アヤメ先輩のカッコは色々とフリーダムな感じではあるのです。

 

 スカートは短いし、うっすらお化粧もしてるし、ピアスなんかも付けてる。

 胸元のボタンも2つ目くらいまで外してるから、見せブラ状態……けしからんと言えばけしからんのです。

 

「で……生徒会の子が、うちに何の用なの? 様子を見てこいとか言われたのかしら?」


 エリーさんが、機嫌悪そうな感じで冴さんに視線を送ると、冴さん……ユリの背中に隠れる。

 ついでに、手も握られる……エリーさん、小さいのに意外と威圧感あるのですよ?

えーと、ストック皆無に近い状態で、かろうじて連載続けてます。

隔日とか、それくらいのペースでないとキツくなってきたので、そのつもりで……。

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