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第九話「それは、当たり前の日常」④

 10人中、1人しか超えられない厚い壁。

 

 サクラダ高校……小中高と女子オンリーでの一貫教育だから、ますますもって男の子との出会いなんて無い。


 ……正直、一割ですら怪しいんじゃないかって気がする。

 少なくともうちのクラス二〇人ちょっといるけど、彼氏が居てーとか言ってる子は一人も居ない。

 

 どおりで、女の子同士でイチャイチャとかしてるのを良く見る訳なのです……。

 と言うか、クオンに限らず、銀河全体で人口比率は女性の方が多い傾向にあるらしい。


 そりゃ、高校生の分際で男の子とイチャラブとか、早いんじゃないかって思うけど……。

 女性人口のほうが多い以上、モタモタしてるとアブレちゃうんじゃないかって、気もしてくるのです。


 一生独身とか、そんな悲しい人生送りたくないのですよ……。

 

「まぁ、ユリコちゃん……。そう言う訳だから、焦らなくても良いよ。皆、思いは同じなんだからさ、男の子だけが青春じゃないでしょ。と言うか、私も男の子とお付き合いとか、経験無くってさ。お店のアルバイトさんとかとお話する程度かなぁ……」


 リオさん……家がお店だと、そう言う機会もあるのか。

 ユリの場合は、アルバイトって言っても、真剣勝負ガチンコに近いから、確かに同じテスターさんに男性もいるっぽいけど……。


 話す機会も殆どないから、そんな甘々な話なんて、あり得ないような気がする……。


「そうよね! 私はむしろ、男の子って苦手……。女の子って、見てよし、触ってよし! 可愛いは正義! その点、男なんて臭いし、乱暴だし……バカばっかり!」


 マリネさん、どうも男嫌いっぽい。

 でも、世の中にはいい男の人もいるのですよ? 恋愛感情とかは別にして。


「そ、そうね。男の人って、粗暴な人ばかりだし、何かと言うと、人の胸とかジロジロ見て……。巨乳メガネってなんなのよ……。私って、そんななの?」


 冴さんが何やら、愚痴りだした。

 確かに、それは酷い……。

 

 冴さん、確かに胸大きいし、メガネっ子だけど……。

 それ以外の特徴がないと言ってるようなもんで、人を馬鹿にした話だった。

 

 まぁ、ユリは……胸に関しては、大抵スルーされるのですよ。

 実際、寝っ転がるとほぼ真っ平らになるのですよ……悲しい事に。


 でも、世の中にはAAとか、そんなサイズあったんだって人だっているんだから、ユリは恵まれてる方なのですよ……。

  

「くらぁっ! お前ら、くっちゃべってないでペース上げろ! ちんたら、走ってんじゃないぞー! もう、1周追加ぁーっ!」


 ダラダラと走りながら、おしゃべりしてるのが目に入ったのか、キリコ姉の怒声が響く。

 

 ……なお、キリコ姉も男っ気は皆無。

 そもそも、そんなのがいたら、部屋だってあんな汚部屋になってる訳がない。

 

 エリコ姉さまも研究一筋で、そんな話ちっとも聞かない。

 今の職場も最初の頃はキリッとして、お化粧とかしてたのに、どんどん、野暮ったくなっていって……。

 今やすっかり、猫背で髪の毛とかもボサッとしてて……お母さんも心配してたよ。


 言わせてもらえば、あまり旗色よろしくないような……。

 分家筋とは言え、由緒正しきクスノキ家……ユリ達の代でお家断絶しませんように……。

 

 でもまぁ、エスクロンでは、イザとなれば会社が相手くらいなんとかしてくれるし、デザイナーズベイビーとかもありだから、独身のまま子供を授かるってケースだってあるのです。

 

 かくいうユリもデザイナーズベイビー……エスクロンじゃ、さほど珍しくもないのですよ。

 

 でも、愛のないデザイナーズベイビーとか、その子が可哀想。


 まだ見ぬ、素敵な旦那様……いつか、巡り会えると良いなぁ……。

 ユリは……夢見がちな乙女なのです。

 

 ……ランニングは結局、ガンガン追加されて6周くらいになった。

 一周、500mってところだから、3kmほどを走り回った計算になる。

 

「皆さん、大丈夫なのです?」


 とりあえず、ランニングのノルマ消化して、お水飲んで木陰で休憩中。

 30分ほどかかっちゃったけど、まだまだ授業時間の半分程度。

 

 皆、地面にひっくり返って、ジャージの上をはだけたり、Tシャツ姿になって、涼んでる。

 

 そよ風が吹く……木陰にいると、むしろ涼しいくらいで気持ちいい。

 やっぱり、コロニーって良いなぁ……過ごしやすくって……。

 

「ユ、ユリコちゃんって、タフなのねぇ……私、もう無理ー! しかも、ペース早いのなんの……」


 マリネさんがひっくり返って、お腹丸出しにして、パタパタと風を送り込みながら、叫んでる。

 思いっきり、ブラとか見えてるけど……気にしてないみたいなのです。

 

 この辺の感覚は、女子高ならではだと思うのですけど……さすがにこんなお外でやったら、駄目なような……。

 

 とりあえず、キョロキョロと見渡してみるけど。

 誰も見てないっぽい……うん、慎みは大事、大事なのです。


「エスクロン人は、身体の作りが違うってキリコ先生で思い知ってたけど、ホントなのね。と言うか、むしろ、私達がひ弱なのよね……我ながら情けないわ……」


 冴さんが、ボヤいてる。


「そうだよ。二人共、これくらいでバテバテとか、雑魚すぎるって」


 リオさんは、とっても元気。

 

 豆タンク……なんてあだ名が付いてるらしいんだけど、小さい割にユリと同じペースで走ってケロッとしてる。


 そもそも、ユリもそんなハイペースじゃない……時速7kmくらい? ここって重力が一割減だから、とっっても楽に走れた。

 

 ちなみに、他のクラスメートはソフトボールしたり、サッカーしたり、好きなように運動してる。

 体育の授業と言っても、基本こんな風に身体動かす時間ってだけなので、半分遊んでるようなもの。

 

 キリコ姉って基本、フリーダムだからねぇ……。

 

「と言うか、ユリコちゃん……息も切れてないし、汗もかいてないって、どれだけなのよ……」


「ユリは人よりハイパワーなのです。これでもクオン用に少しデチューンしてるのですよ」


 大体、パワーは大分控えめにしてて、当社比1/2くらいにしてる。

 もっとも、エスクロンでも出力は7割程度が普通だった。

 

 フルスペックモードなんかにしたら、めちゃくちゃお腹空くから、基本的にあまりやらない。

 元々普通の人体と比較するとエネルギー効率は良くないし、強い力を短時間でってなると必然的にエネルギー消費が増える……要するにお腹ペコペコな感じになるのですよ。

 

 ちなみに、フルスペックモードでの運用時は、高カロリーな凝縮栄養剤でエネルギー補給したり、外部パワーユニットなんかを追加するようになる。

 

 ユリ専用のパイロットスーツには、外部パワーユニットも込みだから、あれがあるとフルスペックモードでの運用も楽になる……まぁ、そんな機会、しばらくなさそうなんだけど。


 でも、状況がどう転ぶか解らないから、フル装備モードの試験運転くらいはしないといけないから、いずれパイロットスーツも一式送ってもらわないと……なのですよ。


 ちなみに、ソフトボールに誘われたので、参戦しようとしたら、キリコ姉にやんわりと止められた。

 ユリみたいな強化人間が普通の子達に混ざってスポーツとか、チート過ぎて勝負にならないらしい。


 実際問題、その気になれば、100mを5秒フラットとかで走れたりもするし、3階くらいの高さまで飛び上がったり、屋上くらいから飛び降りても多分なんともない。


 ソフトボールくらいなら、軽く投げても250kmとか出せると思う……そんなの誰も打てない。

 確かに、ユリが混ざるのは……駄目なような気がする。

 

 ソフトスキン自体も衝撃を受けると瞬時に硬化するので、拳銃弾程度なら撃たれても問題なかったりするし、素手でコンクリートの壁を粉砕……なんて真似もできる。

 

 なお、体力測定なんかは一切禁止されてる……学校にそんな身体能力の記録なんて残しちゃうと、そこから機密情報漏えいの可能性も出て来るから。

 

 そこら辺の機密情報処理は、念入りにするように言われてるのですよ。

 

 マリネさんと冴さんは、キリコ姉のシゴキとも言える追加周回で、ユリのペースに合わせようと頑張っちゃった結果、どっちもグロッキーになってしまったので、木陰での休憩が認められた。

 

 それに付き合うと称して、リオさんも付いてきて、皆で体よくサボり中。

 キリコ姉は、文句言いたげだったけど、自分からハブ扱いした手前、文句も言えないようだった。

 

「あはは……皆、サボってていいのです?」


「体育の授業って、半分遊びなんだよね……。キリコ先生が来る前は、もっといい加減だったらしいし……。学校側も政府カリュキュラムに従って、とりあえず、身体を動かして体力をつける時間を設けたって感じ。たまに、体力平均値調査とか言って、体力測定なんかもやらされたりするけどね」


 リオさんが説明してくれる。

 確かに、テストなんかでも、運動能力とかの試験なんてない。

 

 でも、基礎体力はあるに越したことないし、運動習慣が身につけば、健康にもいい。

 チームでのスポーツとかだと、色々団結力とか役割分担とかみたいなのを実地で学べるいい機会にもなるから、どこでも割と推奨されてる。

 

 ちなみに、エスクロンの学校では、クラス対抗とかなると、めっちゃ盛り上がるらしい。

 ユリはよく知らないけど……。

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