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第八話「なかよしなのです」③

「言われるまでもないのですよ……。ユリは下着とかこれまで、お母さんにお任せで……色々、その辺お察しください……なのです」


 お母さんは悪くないけど!

 ユリも……おしゃれな下着欲しいのです!

 お金に糸目なんて付けないのです!


「そ、そうですわね……。うん、確かに、そう言えばそう言う話してましたものね! じゃあ、次行く所は決まりですわねっ!」


「んじゃま、防寒服一通り買ったら、次はユリちゃんのために、ランジェリーショップやなっ! その後は皆で美味しいものでも食べようか! ここちょくちょく来とるから、オススメとかお任せやで!」


 やっぱり、先輩達って素敵なのですっ!

 

 思わず、抱きつきっ!

 

「アヤメ先輩、大好きですっ!」


 アヤメさんと私だと、思いっきりそのおっきな胸に顔がホヨンってなるのですけど、アヤメさんは気にしてない感じ。

 女子高だし、女の子同士なんだから、気にしないのです!

 

「大げさやなぁ……。ちなみにアタシは下着にはうるさいで……ちぃと、見てみるか? 特別サービスやで?」


 アヤメさんが胸元から、チラリとブラを見せてくれる。

 淡いブルーのフリフリいっぱいのオシャレなのがちらっと見える。

 

 素材も光沢感のある絹系の……絶対お高いよ。これ!

 

「……こ、これがオシャレ下着! はぅわぁあああ……お、大人の女って感じなのです!」


「ちなみに、下はおそろいのレースなんやで? ちぃと透けてたりするんやけどな……さすがにここじゃ見せられんなぁ。ユリちゃんもそう言うの……興味あるんと違うか?」


 耳元でそんな事を囁かれる。


「……え、えっちぃのは駄目ですよ? そりゃ、少しは興味ありますけど……」


 ……そんな事を言うと、抱き寄せられてめっちゃ頭なでられる。


「なんや、照れとんのか? もう、めっちゃかわええなぁ……」


 あう、可愛がられてしまった! 

 

「あら、アヤメばっかりズルいですの。ユリコさん、わたくしはどうなのかしら?」


 エリーさんが両手を広げて、ニッコリ笑う。

 トテトテと走っていって、エリーさんをギュッと抱きしめる。

 

「エリーさんも大好きですっ!」

 

「……あらあら、三人共仲良しなのね……。ユリちゃん、私は?」


「ハセガワ先輩も……えいっ!」


 一通り、抱きつくと今度はユリが皆からナデナデされる。

 ……なんか、可愛がられてるのですよ……?

 

 そんな調子で、ショッピングモールでのお買い物を堪能し、素敵な下着もいっぱいゲットして、美味しいものも食べて、ご機嫌な気分でキリコ姉のマンションに帰宅……なのですっ!


 時刻は、夜の九時を回ったところ。

 クオンの人達は、夜時間に外出歩く習慣がないみたいで、ショッピングモールも八時には閉店……追い出されるように退店……。


 それでも一番遅くまでやってる部類に入るそうで、夜のクオンの街は、無人コンビニや自動販売機が稼働してる程度で、照明も所々にしか無いから、とっても暗い。


 荷物いっぱいになっちゃったけど、荷物持ちロボットを貸し出してもらえたし、皆とお別れしてからは、無人タクシー拾って帰ってきたので、問題なかったのですよ。

 

 ご飯もとっても美味しかった。

 ケーキバイキングとか始めてだったけど、もう何個食べたか解らないくらい食べちゃった。

 

 3cm四方くらいのコンパクトケーキとか、あれは罠だねー。

 小さいし色々食べれるからって、調子に乗ってると、とんでもない量を食べちゃってたり……。

 

 荷物置いたら、少しランニングでもしてカロリー消費してから寝ないと、絶対太る。

 強化素体ってむしろ普通の人体よりもエネルギー効率……燃費が悪いんだけど、油断してるとただでさえ重量級なのに、ますます重量が増してしまう。

 

 マンションのホールでセキュリティ認証。 

 ロック解除までの時間、ぼんやりとしてたら、違和感を感じて素早く振り返る。

 

 そのままエントランスの壁にへばりつきながら、顔だけを出して、表通りを見渡す。


 ……通行人も車両もなし。

 空中、建物の陰……敵影無し。

 

 視界を光学サーマルモードに切り替えて、視界内の建物内部をスキャン……窓付近でこちらを伺う不審者なし。

 

 ……けれど、今の感覚。

 何かに見られていた……。

 

 調子に乗って、丸一日街中をうろうろしてたから、何者かにマークされた可能性も考えられる。


 昼間もたびたび、視線は感じていたけど、ユリの外見の物珍しさでって思ってた。


 でも、こんな深夜に遠くから監視、感づかれたことに気付いて、即座に姿を隠す周到さ……素人のやることじゃない。


 ……この分だと、尾行つけられて自宅を特定された可能性も……迂闊。


 お父さん直伝の非常時対応マニュアルだと、こう言うケースだと速やかにセーフハウスを移動……だっけかな。

 でも、こんな事で引っ越しとかないし、キリコ姉への説明とか面倒くさい。 


「こう言うときは……治安維持局に、不審者可能性って事で通報っと……」

 

 まぁ、常識的な対応。

 治安維持局の非常通報ホットラインに接続。


 自動応答AIに現在地座標と、こっちをジロジロ見る不審者がいたと報告。


『了解、無人飛行船による上空パトロールを実施の上で、現場にパトロイドを緊急派遣します』


 パトロイドってのは……確か1mくらいのポケバイから人型に変形するロボット警官。

 一度捕捉されると、何処までだって追いかけてくる悪人泣かせの正義ロボ。


 エスクロンでは、割とお馴染み。

 

 どうもこの様子だと、同じのがクオンにも配備されてるらしい。

 と言うか、この飛行船とパトロイドを組み合わせた地上治安維持システム……これ多分、エスクロンのをそのまんま持ってきたヤツだと思う。 


 うん、曖昧な情報を元に可能性レベル程度の通報にも関わらず、すかさず動いてくれるとは、これはまた話が早い……。

 人間相手だったら、こうはいかない……動かすに足る確定情報をもっとよこせとか、気のせいじゃないの? とか言われて話が続かない。


 けど、この手の犯罪者やテロリストへの対応で、この手の不確定情報ってのは意外と侮れない。

 同じようなパターンで生活してる人達が感じた些細な違和感というのは、意外と馬鹿にできないもので、犯罪やテロを未然に防止する重要な手がかりにもなったりするのですよ。


 上空警戒ドローンが出てくるとなると、屋上で狙撃スタンバイとかやってても、一発でバレるだろうし、治安維持局の権限なら、一帯の住民の動向確認くらいやるだろうから、怪しいのがウロウロしてたら、確実に捕捉される。


 よしんば、上手く逃げ切ったとしても、向こうへのメッセージにもなる……。

 お前の存在はお見通しだ……それが相手に伝われば、迂闊な動きは出来なくなる。


 ……ユリをそこら辺の女子高校生と一緒に考えるとか、甘いのですよ。


 もちろん、近くの住民がたまたま外を見てただけって可能性もあるけれど……今のは、チラ見とかじゃなくて、ガン見の視線……良くて物好きな変態さん、最悪、敵。


 どっちにせよ、お断りなのです。


 敵意の視線……敵の気配。

 ユリには、そう言うものが一発で解るのですよ。


 それこそ、巧妙に隠蔽したステルス機であろうが、完璧に気配を消した熟練スナイパーだろうと、ユリをレティクルに捉えた瞬間、ユリはそのことを知覚できる。


 この能力の全容については、実のところ、エスクロンの科学力をもってしても、解明出来ていない。

 

 強化改造による脳の未解放領域の解放に伴うある種の超感覚能力の発現……そんな可能性が高いとも言われているけど、原理や理屈は全く不明。


 解っていることは、相手の視界に入った時点で、発動すること。

 そして、対象がこれから何をするか……その意図すらも感じ取れる。


 読心能力マインド・リーディング系の能力の可能性。


 或いは、一種の予知能力の類の可能性も考えられるようなのだけど、どこまでどの程度の気配を感知できるのかと言った限界が割と底しれないし、検証しようにも、相手が本気でユリを殺す気で挑まないとその真価も測れない。


 そこまでのリスクを負わせる訳には行かないということで、その手の検証は中断してそれっきりになってる。


 もちろん、たまたま視界に入れた程度だと、発動しないし、敵対的な感情を持ってない相手だと、ほぼ空気のようにしか感じない。


 反面、敵意や殺意を持つ相手の視線は即座に感知できる。


 この能力は、とかく戦闘においては絶大なアドバンテージとなる。


 敵の攻撃タイミングや意図、回避行動……そう言った戦闘の駆け引きが手に取るように解かるのだから。

 

 やられる前にやる。

 それが基本の戦場において、常に敵の意図を見抜いて、先手を打てるユリは、無敵の戦士となりうるとまで、言われていて……。


 演習では、ユリと同等レベルの能力を持つ強化人間……それも、瞬間瞬間を直感で戦うタイプ以外では、全く歯が立たないと、そんな風に評価されていた。


 けれど、それは諸刃の剣でもある……。

 そんな強力な能力者の存在を知られた時点で、敵は脅威を抱くだろうし、万が一奪取、解析などされようものなら一転、恐るべき脅威となる……。


 今のエスクロンでは、手に余る力……そんな風に判断されたらしかった。


 だからこそ、ユリの場合、脳の解放領域の凍結封印による能力封印措置が行われたのだけど。

 ほんの僅かな本物の殺気を浴びた結果、封印措置はあっけなく解除されてしまったらしい。


 このままではよろしく無いのだけど、クオン在住のエスクロン関係者では、その手の封印措置は出来ないし、封印も効果が無かった事が実証されてしまったのですよ。

 

 ……これは、とっても面倒な事になったのですよ。

 困った……大至急、本国に判断を仰がなければならない。


 何より、せっかくまる一日普通の人みたいに皆とお買い物をして、楽しい気分で家に帰ってきたのに……水を差されたみたいで、とっても気分悪い。


 でも、そうだった。 

 ユリは、クリーヴァの手のものに狙われているんだった……!


 いくら、普通の女子高校生として過ごしていいって言われてるからって、自分の安全まで人任せとかあり得ないのですよ……。

 

 ちょっと平和な日々が続いたくらいで、すっかり腑抜けてしまったけど。


 あのレベルの殺気を放てる相手ともなると、半端な相手じゃない。

 それこそ、本気で挑まないとこっちが返り討ちになる程度には手強いだろう。


 やっぱり、ユリは女子高校生である以前に、生粋の戦闘兵器みたいなのですよ……。


 ……とりあえず、もう油断なんてしない!

 少しは気をつけるのです!

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