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第八話「なかよしなのです」②

「さ、寒っ! なんやこれっ!」


 気温……約10度……確かに寒いのです。

 ユリなんて、夏仕様ワンピース一枚なので、これはさすがに堪えるのです。

 

 特に足元が寒い……完全に油断してたのです。


「よろしければ、こちらをどうぞ」

 

 けど、店員さんが壁に吊るしてあった防寒ジャケットを手渡してくれる。

 サービス精神に富んだ素敵な店員さんなのです。


 ……なお、足元の寒さは、全く解決してない。


 けれど、その怪しげな別室には、ユリの探していたアウトドアブランドの防寒、防水ジャケットなどがずらりと並んでるのですよ!

 

「これです! これなのですよ! あったか装備っ!」


「も、もこもこがいっぱいやっ!」


「入り口のくまさんの着てたやつですね……。なるほど、本格的に寒いところではこう言うのが必要なんですね」


「エスクロンでは、寒い日と暑い日が交互に来たりするのですよ。なので、分厚いの一枚じゃなくて、三枚くらい重ね着するのが基本なのですよ。おまけに雨が多いから、防水性能も重要なのです」


「レイヤーって奴ね? クオンの地上でも、恒星との最接近の時期は結構暑くなったりするからね。確か、分厚い肌着と中間着、防水性の高いアウターって感じだっけ?」


 ハセガワ先輩……うん、解ってるね! さっすが!


「なのですよ。さすがに詳しいのです」


「一応、先輩だしねー。地上世界での経験は十分積んでるし、私らもクオンの地上なら局地探検とかもやってたくらいだから、ベテランよ。けど、こんな風に地元で防寒服選べるとかいい時代になったわね。私らの頃は、一か八かの通販個人輸入ってのが基本だったのよ。でも、なんだかんだでエスクロン製は評判良かったわよ。あんまり可愛くないって言われてたけど……デザインも少しは良くなってるのね」


「エスクロンは、過酷なので要求性能も高いのですよ……。見た目は二の次……なのです」


 質実剛健……まさにそんな感じ。

 

 とりあえず、色々選ぶのです。

 上はダウンパーカー、下は……ダウンのショートパンツみたいなのがあったので、それを選択。

 

 中間着は……後回しにして、とりあえず試着かなぁ……。

 とりあえず、こんなの選ぶって感じで皆の見本になるのですよ。

 

「なんや、ユリちゃん……ダウンってのにするんか?」


 厳密には鳥の羽の構造を再現した合成ダウンなのです。

 天然物もあるけど、羽根むしられるアヒルさんが可哀想……なんて言われてるのです。

 合成羽毛と言っても、天然物より若干劣る程度でそこまで遜色ないのですよ。

 

 下も踝までのロングパンツ仕様もあるんだけど……。

 制服の下に履くとなると、絶望的にダサくなるのは目に見えてるのです。

 

 ここは、敢えて見栄を張って、ショートパンツに挑戦するのです!

 

 目指せ、オシャレ女子っ!

 

「山に登るとかだと動くから、放熱性能とかも重要なのですけど、キャンプでってなるとあんまり動かないから、防寒性能重視でいいのですよ。あったかですよ?」


「確かに……うわっ! 超温いやん!」


 アヤメ先輩がダウンジャケットの裏地に手を突っ込んで、その暖かさに驚く。


「なのです! 試着して見るので、見て欲しいのですよ」


 そう言って、試着室へ。

 ワンピースだから、一瞬で脱げるのです。

 そう言うのも考えて、こう言う格好をしてきたのです!

 

 薄いピンクのショートパンツとダウンジャケット。

 

 本来は、下にシャツくらい着るんだけど、ワンピースの下は下着だけ。


 シャツくらい着てくればよかったんだけど……下手なの着ると模様とかが透けちゃってなんとも野暮ったくなるので、別にいいかとばかりに着てこなかった。

 下着も白だから目立たないし……多分、大丈夫なのですよ。

 

 いつもの通学カバンだったら、長袖Tシャツくらい常備してるけど。

 今日は、手荷物もシンプルに小さなポシェットにお財布とハンカチ、あれとかこれとかそんな感じ。

 

 とりあえず、着るだけ着ちゃえとばかりにショートダウンパンツとダウンジャケットを羽織る。

 

 あと可愛らしいボンボン付きの耳まで覆えるカバー付きの毛糸の帽子。

 赤と黒のまだら模様だけど、ユリの銀髪だと結構似合うのです。

 

 生足部分が寒そうだけど、一応これで完璧なのです!

 

「……先輩、どうなのです?」


 試着室から出て来て、とりあえず胸を張る。


「おお、かわええやん! 色はちょっと派手やけど、ユリちゃん髪が銀色だから、むしろ派手な色が映えるなぁ」


「そうですわね。普通に可愛いかと……でも、足がちょっと寒そうですよ」


 なお、膝から下は生足状態。

 けど、これくらいなら問題ないのですよ。


「足元は、もこもこ膝丈靴下なり、防寒ストッキング履けばなんとかなるのですよ」


 ……その辺、確か普通の売り場に売ってた。

 女の子は、足元冷やしちゃ駄目ってお姉さまやお母さんも言ってたのです。


「あら、ロングにしなかったのは、制服着ることを考えてるってところかな。でも、別に校則なんて生真面目に守らなくてもいいのに……私らの時も、記録映像撮る時だけ着替えたり、ジャージスカートみたいな感じにしたりしてたのよ。まぁ……ジャージスカートは見た目がちょっとアレなんだけど」


 気温一桁台で生足ミニスカートってのは、なかなか根性あると思ってたのですけど。

 アレは、学校提出用の偽装だったと言うことなのですね……。


 でも、そう言う事なら、パンチラそのままにしたりとか、温泉浸かってるところでカメラ回したりってどうなんだろう?


 と言うか、そんな形で記録が残ってるって、ハセガワ先輩知ってるのかな?


「確かに校外部活動でそこまで校則とか守らなくて良いかも知れないけど、一応決まりですからね。けど、冬物ってそれなりにオシャレなんですのね。実用一点張りかと思ったのに……これなんか、とっても可愛いです」


 言いながら、エリーさんが毛糸のケープみたいなのを肩から羽織る。

 ……普通に可愛いし、発熱素材だから、普通に暖かそう。

 

 側にあった同じ模様の円柱型の帽子を被せてあげると、とってもいい感じ。


「あら、ありがと。これ悪くないわね。冬のおしゃれ……なんと言うか、新鮮な感じですね」


 言ってる矢先にマフラーまきまき。

 なんか、他人を着飾ってあげるのって、とっても楽しい!


「エリーいいじゃない……それ。ユリコちゃん、センス良いね!」


「にゅふふ……それほどでもーっ!」


「……確かに、今までのクオンでは、こんな暑苦しいカッコなんてしようとも思いませんでしたからね……年中似たような格好で、代わり映えせず……けど、季節や気温に応じて服装を変えるとなると、色々とオシャレに目覚めそうですわね」


「まぁ、確かに……皆、服装のオシャレっても、年中気温変わりないとなると、めんどくさくなって、マンネリ化もするだろうからねぇ……。でも、これからはクオンも、暑い寒いのメリハリ付ける四季設定とかもやってくみたいだから、皆もっとオシャレになるんじゃないかしらね……。でも洋服代がかさんじゃうのが悩ましいところよね」


「ですが、物が売れるようになると、景気も良くなりますから、そう言う経済効果も狙いなんじゃないんですかね。政府も冬設定対策助成金とか出すって言ってますからね。と言うか、本来どこも四季があるってのが普通なんですよね……。わたくし達クオン人って、外国にもあまり行かないから、その手の感覚は忘れがち……確かにこんな調子じゃ、地上にすむようになってから苦労しそうですよね」


「せやな……。ところで、ユリちゃん……そこまできっちり首元までチャック上げると、暑苦しいし可愛くないで……。ここはちょっとセクシーに胸元もガッツリあけてみん?」


 言いながら、アヤメ先輩の手が首元に伸びる。

 

「せ、先輩……ちょっ! 待って……」


 当然ながら、アウターの下は何も着てないわけで……。

 止める間もなく、チャックがお腹の辺りまでガッと降ろされ、ユリのモブ白ブラが丸見え状態に……。

 

「…………」


 アヤメ先輩が無言になって、ゆっくりとファスナーを戻してくれる。

 

 他の二人は、困ったような感じで苦笑。

 店員さんは……あらぬ方向を見て、何も見てなかったと言いたげな様子。

 

 ここで、あたふたと慌てたり、叫んだりとか無いのです。

 無言でチャックを戻す……とりあえず、しまっとこ。

 

「……ユ、ユリには、セクシーさとかまだ早いのですよ……? 先輩、セクハラは駄目なのです」


「ご、ごめんな……。まぁ、せやな……うん。けど、もうちょっと下着はオシャレなのにした方がええで?」


 がーん……はっきりと言われてしまった。

 やっぱり……オシャレじゃない=ダサダサ。

 

 クラスメートにもお着替えでちらりと見られて、その時は何も言わなかったけど、きっとアヤメ先輩と同じことを思ったはず。


 あのランジェリーショップがどうのと聞こえるように、話してたのは、彼女達なりの目一杯の助言だったのかも知れない。


 なにせ、何処にあるのかとか、どんな感じのが売ってるのとか、凄く説明ちっくな感じで、話をしてて、よっぽどユリも話しかけたかったけど……ついつい、話しそびれてしまった。


 あれは、良かったら一緒に行かないって意味だったのでは、なかろうか?

 だ、だからこそ、ユリはモブ下着からの脱出を強く……強くっ! 希望するのですよっ!

この作品、デイリー更新とか諦めました。


気分転換にダーッと書いて、ある程度文字数溜まったら、アップとかやってるんで、

もう不定期連載ってことにします。(笑)


日常ものって話、地味な割に盛り上がらない……。

続きは……ないよ?


ついでに言うと、GLタグ付けるか検討中。(笑)


ちなみに、ユリちゃんは見られただけで、視線を感じて反応するような子だったりします。

狙撃なんかしようものなら、ターゲットスコープに収めた瞬間にカウンタースナイプされても文句言えない。

……恐ろしい子。

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