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第七話「お買い物行くのですよ?」④

「……アヤメ、この方々……おっちゃんって、年じゃないんじゃありませんか?」


 無線ネットワークライン検索……上空の電波中継飛行船と接続可能。

 クオンのお役所住民データベースにアクセス、二人の名前検索で基本個人情報呼び出し。

 

 それぞれ、24歳と25歳。

 社会人だけど、普通に若者と言っていい……30代くらいかなーって思ってたけど、違った。


「そ、そうねっ! こいつら、どっちもこう見えて二十代……お兄さんって呼んであげたほうがいいかなー」


 ハセガワさんがフォローする。

 ユ、ユリもフォローしないと……なのです!

 

「お、お二人ともいいお兄ちゃんって感じ……なのです」


 ユリがそう答えると、お二人ともパァッといい笑顔で振り返ると、今度は二人がかりで手を握られる。

 

「ユリちゃん、もう一回言って! 出来れば名前付きでお兄ちゃんって……」


「あ、ああっ! 頼むよっ!」


 謎の食い付きに、ユリもビックリなのです。


「ダ、ダンお兄ちゃん……? それに、シュワお兄ちゃん……こ、これでいいのです?」


 一応、頑張って笑顔作って、そう呼んで見る。

 なんか、名前も一緒に呼ぶと妙に照れるのです。

 

 けど、なんかもう二人共、感極まったようになって、唐突に泣き出す……。

 

「……ダン、これは思った以上の破壊力だな……」


「そうだな……シュワ……ゴメン、ユリちゃん……。年下の女の子からお兄ちゃんと呼ばれる……思わず感動のあまり涙が……」


 ……面白い人達なのですよ?

 

「はいはい、二人共はしゃぎ過ぎ! ユリちゃん、ドン引きじゃないの……。ゴメンね……こいつら、あんまりモテないから、ちょっと女の子と縁が出来たくらいで、大はしゃぎ……大人げないよねぇ」


「ユ、ユリは……女の子扱いされて嬉しかったのですよ?」


 女系家族に、特別ぼっちコース、女子高の三連コンボ。

 これまで、モノの見事に男の子と縁なし。

 

 軍事教練だって、女の子チームだったし、ソロ訓練ばっかりだったから、結局出会いの一つもなかったし……。

 恋愛モノの漫画やドラマみたいな恋とか……憧れなのです。


「エリー、アヤメ! この子、男に全然免疫ないみたいだから、変な虫が付かないように、ちゃんと見張ってないと駄目よ! 二人も変なこと吹き込んだりしない……大人なんだから、自重しなさい! 自重!」


「そ、そうだな……。ハセ姉さんに言われちゃ、仕方ない」


「そうだね……アネさんには、逆らえないからね。確かにこんな素直な子……珍しいよね。僕らは適当に店の商品見て回ってるけど、地上世界のこととか、道具のこととか聞きたかったら、いくらでも教えてあげるから、いつでも声かけてもらってかまわないよ? ごめんね、変なこと言わせちゃって」


「ああ、俺達は紳士だからな。困ったり、相談事ならいくらでも乗るぜ?」


 ……ハセガワ先輩、強いのです。

 この二人のほうが歳上なのに、アネさん呼ばわりなのです。


「あ、ありがとなのです!」


 お礼を言って、頭を下げるとお兄さん達も優しげな笑顔を浮かべると、がらくたの山の方へ向かっていく。

 

 普通に、いい人なのです。

 

「とりあえず、座って座って! いやぁ、地上活動部も私の代で終わりかと思ってたけど。エリー達がエトランゼ受け継いでくれて、いよいよ地上降下までこぎ着けてくれたなんて、私もOBの一人として、嬉しい限りよ!」


 ナイロン製のキャンプ椅子が並べられて、勧められたので皆で、お座りするのです。

 

 ペラペラで頼りない椅子にも関わらず、何故か座り心地は抜群にいい。

 肘掛けやジュース置く所まであって、身体にフィットする感じがして、めっちゃくつろげるのです。


「うわっ、なんかええな! この椅子」


「で、ですわね……。コーレルマンのキャンピングチェア……でしたっけ?」


 お値段ネット検索……送料込みで2980クレジット? 意外とお安いのです。

 

「そうよ……地上世界アウトドアマンの標準装備よ? メーカー小売標準価格2980クレジットだけど、今なら4脚セットで一万クレジット……どう? なんなら備品として、まとめて買ってかない?」


 ちょっとだけお得なのです!


「良いお値段じゃないですか。いいですわ、部の備品として四脚まとめて買いますわ……。送り先はエトランゼで、よろしくお願いしますわ」


「おお、言ってみるもんね! さすが、エリー気前いい! 毎度、お買い上げありがとうございまーす!」


「去年は全く活動できなかったから、部費に余裕ありますからね……。こないだも何気に座る場所に困りましたからね……地上世界は寒いし、砂っぽいのですわ」


「石ころ椅子は、おしりが風邪引くのです……」


 ユリは次回参加の時は、毛糸のパンツ履くつもりなのです。

 お母さんが買ってくれて、送ってきたんだけど……履いてみた時の自分の姿が絶望的にダサくて、封印してたのですけど……使うしかないのです。

 

 ちなみに、宇宙活動部は基本制服でと言う謎の掟があるのですよ……。

 一応、学校の部活なので、部活である以上、行動時の服装も校則に準ずるとかなんとか。


 一応、運動用のジャージなんかもあるけど、恐ろしくダサいと評判で、実用性にも難があってあんまり着たくない。

 

「……せやな、部費……去年の分がまるまる残っとるんやったっけ……。あたしら、結局去年一年、何も出来んかったからなぁ……」


「そうなのよね……。私達が卒業して、一時完全に部員がゼロになっちゃったからね……。学校側の好意と名義だけ貸してくれた子達のおかげで、かろうじて部活として存続してたけど。あんた達が正式に引き継いでくれなかったら、とっくに廃部だったでしょうね……」


「せやな、今回はユリちゃんって助っ人外国人が入ってくれた良かったけど、今後を考えるとそんなレアな留学生頼みってのは、困るわなぁ……」


 確かに問題は、全然解決してないのですよ。

 そもそも、クオン自体割と排他的なところがあって、ユリの留学もエスクロン側のゴリ押しだったんだとか……。


「そうよねぇ……。一応、降下の時だけ私らみたいなOBがエトランゼのドライバーとして参加するって手もあるし、定期降下便に混ざるって手もあるんだけど、出来れば部員だけの手で、航宙プラン作るところからやってみて欲しいのよね……。そう言うのも含めての宇宙活動なんだからさ」


「そうですわね。結局、航宙プランなんかもエルトランとユリコさんにお任せでしたからね。次は軌道計算や航宙プラン制定も自分達でやりたいですわ」


 意外と本格派なのです。

 ユリもエルトランにお任せだったので、人のことは言えないのです。

 

 特に大気圏突入は、完全おまかせフルオートなので、何がなんだかだったのです。

 と言うか、重力機関を使ったフリーフォールダイブでの大気圏内飛行とか、経験者なんて数えるほどだと思う……。

 

 もっとも、レシプロ機での大気圏内飛行とか、ラムジェット機なんかで超音速空戦とかなら、VRで経験あるけど……実機となるとさすがに……。


 あんな箱型形態の機体での大気圏突入とか……言ってみれば、綱渡り……職人芸の世界。

 エルトラン凄い……この一言に尽きるのです。

 

 ちなみに、エルトランも次回は大気圏内モジュールを装備するとか言ってたので、ユリも大気圏降下のマニュアル操艦、チャレンジしてみようかな?

 

「宇宙活動部のモットーは、出来る限り自分達の手で、かつナチュラルに……だからね! まぁ、出来るだけ、自分達で問題解決しないとね。でも、操艦免許の問題はやっぱ厳しいねぇ……。他の高校にも似たような部活あったんだけど、もう軒並み廃部……昔は、他の高校の子とかも一緒になって合同キャンプとか、スタンプラリーなんかやって順位競ったり、割と色々イベントやったりしてたんだけどね」


 他の高校にも宇宙活動部ってあるんだ……。

 そんな部活が成立する辺り、やっぱり異文化って感じがするのです。


 でも、ハセガワさん……OBらしく、ちゃんと今後のことも一緒に考えてくれてるのです。

 もっとも、クオンの女子高生が操艦免許取るってだけなら、問題ないと思うのですよ?

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