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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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エピローグ「恋に恋する彼女の物語」⑨

 おまけに、そのサーフボードみたいなシールドは、惑星大気圏への降下戦闘も想定してるだけに、滅多やたらと頑丈で、ドラゴンフェイズ2の荷電粒子砲の直撃すら、弾くような強力なものに仕上がってる。


 この辺は、白鴉でも使われてた超高融点素材の量産化に目処が立ったのが大きいのですよ。


 もちろん、まともに直撃すると赤熱化して、いずれ本体も燃えちゃうんだけど。

 赤熱化しても融解しない装甲ってのは、メリットとしてはとても大きい。


 レーザーや荷電粒子砲と言った加熱兵器ってのは、装甲を融解させて溶かして、貫通させるものだから、被弾しても融解せずに盾としての形が残るなら、冷却システムフル稼働で放熱すれば、持ちこたえることが出来るのですよ。


 要するに、高機動兵器の天敵と言える、レーザー系加熱兵器対策としては、まさに最適解……。


 強力な防御力とエーテル空間の流体面上機動力を併せ持ち、様々な状況に合わせて、装備換装することで戦場に最適化出来る……それがナイトボーダーと言う機動兵器の強み。

 

 何よりも、自分の体を動かすような感じで、搭乗者の白兵戦技量とか反射速度がダイレクトに出るのも良いのですよ……ゼロ陛下も言ってたように、強化人間との相性も抜群。


 おかげで、ダーナちゃんみたいな白兵戦特化型強化人間が乗ると、強いのなんの。

 フランちゃんみたいな機動兵器乗りでも、ナイトボーダーのガンナーモードだと、とっても厄介。

 砲塔遠隔操作するよりも、手に持った銃型の砲を撃つ方が良く当たるんだよね……。


 まだまだ、実戦投入は先になるだろうけど、実機演習の結果も上々。

 

 それに、この調子だと、あちこちの技術屋さん達が眼の色変えて、切磋琢磨しそうな様子だから、本気でエーテル空間の戦争の形態が変わってきそうなのですよ。


 もっとも今の所の問題点はコストかなぁ……。

 一機作るのに、無人廉価仕様の鴉なら10機は作れるくらいのコストがかかるみたいなので……。

 

 それにパイロットへの負荷が想定以上に高く、普通の人間ではとても乗りこなせそうもないのですよ。

 今の所、強化人間部隊御用達のハイエンド特殊戦機と言う扱いなのですよ。


 けど、そうなると他の技術者チームが作ってる同系統兵器って、どんなパイロット乗せるんだろう?

 永友提督が漏らしてた話だと、スターシスターズの遠隔操作っぽいけど、無人運用を想定してるって思っていいかもだけど……。


 人型兵器の性能を引き出すとなると有人でダイレクトリンク方式での操縦が一番いいと思う。

 

 エスクロン以外では、人間自体を強化したり、サイボーグ兵とかってあんまりいないみたいだし……。

 ユリも実機に乗ったことあるけど、あれ生身だと絶対キツい。


 今の所、10mくらいの大きさの機体で運用してるんだけど。

 ユリ達強化人間だと、機体と直結して自分の体みたいな感覚で機体を動かせるから、コクピット自体は棺桶みたいな身動きも出来ないようなので割となんとかなるんだけどねー。


 それで、普通の人間の兵士を乗せることを想定すると、最低限でもサイバーコネクタのインプランティングは必須。


 従来機みたいな操縦桿やジョイスティック操作となると、操作系統が複雑になりすぎるから、AIアシストと組み合わせた上で、レバーやボタン操作の組み合わせて、プリセット動作を行う……コマンド式かな?


 でも……それだと、サイバーコネクタによるダイレクト操作に致命的に劣るし、いっそ無人機でよくない? ってなるし……。

 

 それなら、いっそ人間は指揮官みたいに指示コマンド出すだけで、いっそ後方でのリモート制御にでもした方がまだましなんだけど、それだと完全無人制御の方が早い。


 大型化した上で、パイロットの体の動きをトレースするモーショントレース方式案もあるんだけど。

 そうなると、コクピットを大型化しないと自由に動くなんて出来ないから、必然的に20mくらいの大型機になる。

 

 さすがに、20mともなると正面投影面積の問題も出てくるし、コストも一気に跳ね上がる。

 何より、重力圏下では大型機は色々と問題が大きい……空飛んだりもだけど、エーテル流体面上を船みたいに動くとなると、なるべく軽量化した方がいい。


 量産前提の機動兵器としては、やっぱり10mくらいの大きさがバランスが取れてて現実的とも言われてる……宇宙だと、大きくてもそんなに問題ないんだけど、やっぱり重力圏内ともなると制約も多いのですよ。

 

 けど、カドワキエンジニア……アドモスの主管エンジニアさんだったっけ?

 エリコお姉さまも認めるような天才エンジニアって話だし、斑鳩といえば、あの初霜ちゃんもそこで作られたって話なんで、その異次元級の技術力には期待大! 案外、ものすごい画期的なの出てくるかもっ!


 ちょっと楽しみかもー。

 確か招待客リストに載ってたから、挨拶くらいしとこうかなーと。


 そんな事を考えていながら、歩いていると唐突に声をかけられる。


「……失礼いたしますわ。あの……クスノキ・ユリコ殿……ですわよね?」


 声の主は、茶色の髪のツインテールの若い女の子……。

 ユリとあんまり変わらない年の子かな?

 

 その後ろには黒髪の長い髪で背の高い女性が立っている。

 如何にもお姉さんって感じで、20代半ばくらい? なんとなく、保護者か何かっぽい感じ……。


 ……でも、どっちもユリは見覚えないから、多分初対面。


 ツインテールの子は、人懐っこい笑顔で割と豪奢で綺羅びやかなドレス姿。

 どころどころ発光する自光素子なんかも入ってて、とにかくビカビカキラキラと派手!

 

 これ……一着数百万クレジットとかするようなのじゃないかな……。

 

 でも、後ろの黒髪の人は、銀河連合軍の士官服姿……それも、色が赤基調だから多分、中央艦隊所属。


 なんともちぐはぐな感じの二人組……なのです。

 

 でも、公式の場ではユリは、クスノキ・ユリコではなく、帝国嚮導近衛騎士……ナイトワンと名乗る。

 そう決めたばっかりなのですよ!


 どうしよう……返事すべきか、スルーすべきか。


「あれ? 後ろの君、確か中央艦隊の月夜つくよ中佐じゃないか……。そっちのツインテールの子はツクヨ伯爵だったかな。ああ、ナイトワン卿……せっかく挨拶してもらったのだから、ここはお相手するのが礼儀だろ? よかったら、私から二人を紹介しようか? 一応、知らない相手でもないからね」


 どっちもツクヨ? ややこしいのです。

 遥提督はどっちの事も知ってるっぽい……さすが情報通なのです。


「天風提督、お手数おかけするには及びませんわ……。えーと、そうですわね。クスノキ卿は、本日は帝国嚮導騎士ナイトワン卿と言うことで、ご紹介されてましたからね……。失礼しました……わたくしは、シリウス連合ツクヨ辺境伯領領主ツクヨ・マイカ辺境伯でございます。どうぞ、お見知りおきを」


「えっと、辺境伯さんなのですか? ごめんなさい、シリウスの情報には疎いので、あんまり詳しくないのですよ」


 そもそも、辺境伯ってなに?

 一応、シリウスでは男爵とか伯爵とか爵位ランキングみたいなのがあって、上位爵位は偉いって事は知ってる。


 伯爵から上は、上級貴族とされていて、この人達は大抵有人惑星の領主とかだったりするので、はっきり言ってとっても偉い。


 ちなみに、帝国も色々と爵位で上下関係分けるって話にはなってるけど、一部門の部長さんが街に出て、無条件で尊敬されないのと一緒で、部長改め伯爵さんもそんなに偉い人扱いされてないのですよ。


「あら、このわたくしをご存じないので? 我が辺境伯領は、古来よりシリウスでもエスクロン……帝国に最も近い流域をその領地としておりまして……。お父様の時代には、度々エスクロンの勢力圏に無断進出したり、色々とご迷惑をおかけいたしましたが。この度、わたくしが正式に辺境伯の称号を受け継ぎ、領主となりましたし、辺境帝国の発足に合わせて、安全保障の取り決めなども行うべきかと存じ上げまして……」


 んーと、ツクヨ辺境伯領。

 エーテルロードマップ参照……。

 

 あー、解った……この辺境流域に出っ張った盲腸みたいなシリウスの領域の事なのですよ。


 うーん、ここは……帝国軍事関係者で知らない人が居ないくらいの所だね。 

 要するに、それなりの理由があって、恐らくシリウスの領域でも一番有名なところなのですよ。


 そこの領主さん……それも安全保障の相談をしたいと?

 あ、これ……ユリの手に負えない案件だ。


「なるほど。つまり、外交案件交渉ということなのですね。であれば、私には外交権限がないので、担当者へお取り次ぎするのですよ……少々お待ちなのです」


 ひとまず、内部通信システム起動。

 えーと、外交官相当の権限の持ち主で、暇そうなのとなると……まぁ、ここはアキちゃんにでも丸投げかな。


 アキちゃんなら、正式なCEO補佐官だし、色々と実績もあるみたいだしねー。


「い、いえ……そ、そうではなく……ですね? と言うか……クスノキ卿は、近衛騎士団のリーダーと言うことでしたが、外交権限をお持ちでなかったのですか?」


 なんともバツが悪そうな顔をされる。

 けど、無いものはしょうがないのですよ。


 ちなみに、厳密には外国との交渉権限を持ってるのは、皇帝陛下ただ一人なのですよ。

 他の人はある程度の権限を持ってるけど、最終判断はゼロ陛下にお伺いを立てるのが基本。


 小さな案件……輸出入品の関税交渉とか、国外の通行税の価格交渉とか、そんな感じの軽めの案件は担当者に権限を貸与した事にして、お任せってなってるんだけど。


 国家戦略を左右しかねないような重要案件については、皇帝決裁が必要になる。

 この辺は、昔と変わってないのですよ。


 まぁ、話的にユリが関わるような話でもないし、これはどう見ても、国家案件級の重たい話。

 右から左へスルーパスが正解なのですよ。


 念の為、来場招待客リストを照会すると、この人、シリウス本国より欠席する旨、連絡ありとの注釈付きで欠席者扱いになってる?


「えっと……。ツクヨ辺境伯さんは、欠席者扱いになってるのですよ……。なんで、ここにいるのです?」

 

「ええ、一応、この度は、帝国より正式にご招待いただいておりましたのですわ。ですが、シリウス連合評議会からは欠席するように要請が来ておりまして、ただ、どうやら本国が私の了承無しで勝手に欠席する旨連絡していたようでして……。受付でも同じこと言われましたが、だからと言って、追い返すなんて非礼な対応、ありえませんよね?」


 なんだか良く解らない。

 招待者リストの注釈欄に続きあり……読んでみるのですよ。


「……『本人確認が取れたので、お通ししましたが、シリウス本国への照会連絡の結果、本人の身勝手な独断による出席につき、一切の外交権限がない一般招待客として取り扱うように強い要請あり』……って! なんですこれ?」


 なんだか、すっごくトラブルの予感。


 現状、シリウス連合と帝国の関係ははっきり言って、よろしくないのですよ。

 なにせ、銀河連合にとって、エスクロンが抜けた穴は致命的にまで大きかった……。


 そりゃ、そうなのですよ。

 議会の一割しか議席がなくても、銀河連合という枠組みの中で、エスクロンの果たしていた役割はとてもつもなく大きかったのですよ。


 必然的に、足りなくなった部分を補うためにシリウスも国家体制の大変革を余儀なくされてて、既得権益が消し飛んだ人達からは怨嗟の声が上がってるとかなんとか。


 ぶっちゃけ、今まで楽できたのにそれが出来なくなったり、安かったものがバカ高くなったりで、皆プンスカ怒ってる感じなのです。

 

 でも、そんなの知らないよって言いたいのですよ……。


「つまり、シリウスは国を挙げて、今回の建国式典への参列を拒否した……そう言う事なのですわ。要するに、暗に銀河辺境帝国の建国を認めないと言う大人げないメッセージのつもりなのでしょう。何より、建国式典と言う重要な式典に、大国シリウスから一切の参列者がいないとなると、帝国としては赤っ恥をかかされるようなもの……全く失礼な話ではありませんか」


「なるほど……それで、シリウスの関係者の姿がほとんど見えないのですね……。納得なのです。でも、ツクヨ辺境伯……来ちゃってますよね? 本国決定で全員不参加なのに、そんな勝手な事をしては問題になるのでは?」


 もちろん、交易などの関係で、シリウスの民間人や男爵さんみたいな下級貴族などはそれなりに参列してるんだけど。


 シリウスの軍事関係者や上級貴族や大貴族と言った代表格と言える人達は、尽く欠席となってるみたいで、確かにシリウス関係者の席はすっからかんだったような……。

 

 ……なんと言うか、大人げないのですよ。


「まぁ、仰るとおり、本国では問題にはなるでしょうね……。けど、そんな大人げない理由で、国を挙げてケチな嫌がらせをするって、そっちの方がこっ恥ずかしい話だと思いますわ。わたくしは、あくまで自分の判断で、シリウスに恥をかかせないためにここにいるのです……少なくともスジは通ってるのではなくて?」


 確かに、銀河連合でも最大人口を抱える大国の招待客全員に欠席されたとなると、こっちはいい面の皮なのですよ。

 

 けど、辺境伯と言う上級貴族のひとりが、非公式ながらシリウスの代表として顔を出してくれたなら、帝国としては一応は面目が立った事にはなる。


 帝国最寄りの最前線を領地とするからには、彼女にとって帝国との関係は文字通り死活問題。

 それ故に、本国からの非難を承知で緊張緩和の為に、この場に来た……なるほど、このお嬢様……かなりのやり手なのですよ。


「事情は解ったのですよ。ようこそ、ツクヨ辺境伯殿……この帝国嚮導近衛騎士ナイトワン。陛下に代わりまして、歓迎の意を表すのですよ。大歓迎なのですー!」


 そう言う事なら、歓迎の意思表明くらいいいよね?

 と言うか、シリウス人なのにちゃんとスジを通してくれた辺り、ちょっと好感持てるのですよ。


 思わず、その両手を握ってブンブンする。

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