表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

266/275

エピローグ「恋に恋する彼女の物語」⑤

 ちなみに、こっちの対銀河連合軍の想定戦略は、銀河連合艦隊を如何に無力化するかという一点に尽きる。


 基本的に、エーテル空間戦での拠点制圧は、周辺の敵勢力艦隊戦力を殲滅した上で実施することになるので、艦隊戦力との戦いを制するのが、拠点制圧の前段階になるのです。

 

 もっとも、銀河連合艦隊も軽く千隻以上はいるから、まともに正面から戦ったら厳しい相手。

 ユリも実際に演習で永友艦隊と戦ってるから解るけど、歴戦のスターシスターズの操る艦艇は本気で手強い。

 

 こちらも実戦艦隊として、帝国近衛艦隊を編成し、急ピッチで戦力化してるけど、永友艦隊レベルを向こうに回して互角に戦えるようになるのは、しばらく先の事だと思う。


 だからこそ、遥提督が言ってるように、武装輸送艦群が本命。

 武装輸送艦と言っても、機動力は低いし速力も低いので、まっとうな艦隊戦では戦力にならないのだけど。


 これらを機動兵器プラットフォームとして使うことで、圧倒的な数の暴力を実現し、ゲリラ火力戦を挑む……それが帝国艦隊の戦闘ドクトリンとされている。


 要は、艦隊同士視認範囲内で向き合わせて、まっとうな砲雷撃戦なんて始めからする気もない。


 圧倒的な戦略機動力を持つ高速航空兵器群と汎用性を重視した機動兵器の二本立てで、主攻を担う。

 

 もちろん、対潜警戒艦や近接護衛艦と言った小型艦艇や広域索敵機、それに潜航艦と言った艦艇戦力も整備してるけど、それらはあくまで補助兵器であり、主力ではない。


 要するに、機動兵器を主力と据えた数の暴力戦略。


 スターシスターズ艦には、実在した艦艇の数と言う上限があり、同じ艦は作れないと言う制約がある為に、銀河連合艦隊の総艦艇数には、必然的に上限が存在するのですよ。


 反面、帝国軍にはそんな縛りはない。

 その気になれば、万単位の宇宙戦闘艦の運用を実現する能力もノウハウもあるから、機動兵器を主力とした機動艦隊運用については、一切問題もない。


 たぶん、この戦略を取る時点で、銀河連合軍の従来型戦闘艦艇は、為すすべ無いだろうと言われてる。


 この辺は、スターシスターズ艦でも空母系の艦艇が多数存在するので、前々から機動艦隊戦術として有力視はされていたのだけど、機動艦隊戦術と言うのは、要するに盛大な消耗戦と同義なのですよ。


 もちろん、向こうも無人機だから、いくら落とされてもさしたる痛痒ではないんだけど。


 ……こっちもそれは一緒。

 消耗戦に持ち込めれば、時間の問題で帝国軍は勝てる。


 技術開発や後方生産力も含めた総力戦に持ち込めば、個々の戦力に劣っていても、いずれ勝利に持ち込める。

 帝国軍はそんな発想のもとに、急速に体制を整えつつある。


 このあたりは、ドラゴンフェイズ2との戦闘データで、本命の想定敵……帰還者リターナーは、量より質のドクトリンによる戦闘戦略を取っていると考えられている事もあるのですよ。


 実際、セカンド銀河のシュバルツや桜蘭では、向こうのエーテルロード上で発見された遺跡や、黒船の根拠地跡で、帰還者の残した「守護者」と接触し、いくつもの交戦事例が発生している。

 

 対黒船に関しては、こちらより洗練された戦術、兵器を持ち、高い技術を持つ彼らをもってしても、尋常ならざる損害を被ったり、苦戦する例が続出していて、フェイズ2呼ばれる特異個体群もまた遭遇頻度が増えているようだった。


 従来の黒船はとにかく、数で圧倒……そんなドクトリンだったのだけど。

 セカンド側の報告をまとめると、明らかに黒船のドクトリンに変化の兆しが見えていた。


 少数、かつ強力な戦力による一点突破戦略。

 その戦略の前に、幾度もの攻勢が頓挫し、セカンド銀河がまとまりつつあるにも関わらず、一進一退の攻防を繰り広げざるを得ないと言うのが、向こう側の現実だった。


 セカンド銀河側とこちらの銀河の遺跡構造の共通性などから、恐らく両者は根源と同じくする、それどころか同一勢力の可能性が高く、帰還者はすでにセカンド銀河に帰還を開始しており、一連の戦いは、そう言うことだったのではないかと言うのが最も有力な仮説となりつつあった。


 そうなると、こちらにも時間の問題で帰還者が訪れる。

 二つの異世界銀河……向こうで起きていることがこちらでは起きないと思うほど、私達は楽観的ではない。


 これまで起きてきた事象の数々を正確に的中させてきた預言者の言葉。

 未確定の未来を垣間見る……そんな特異能力者だったと言われている預言者の言葉は、これまでも違えることがなかった。


 そして、最後の予言の日は、刻一刻と迫りつつあった。


 もちろん、こちらも数頼みに留まらず、質で対抗することは考えていて、その一端を担うのはユリ達強化人間達が本命とみなされている……。


 実際、質重視のハイエンド決戦兵器「白鴉」と強化人間の組み合わせは、ドラゴンフェイズ2にも十分対抗できると実証されている。

 

 けど、ドラゴンフェイズ2の対戦でも明らかだったように、精鋭だけが戦いを担うのは、あまりにリスクが多い……長期戦ともなると、こちらは疲弊するし、律儀に一匹づつ襲来すると考えるほど、こっちも馬鹿じゃない。

 

 そのために、犠牲を覚悟の上で援護のための足止めや時間稼ぎを行ったり、数頼みで少しでも削って、決戦兵器や精鋭の戦いを楽に進めるという戦略も想定しているのですよ。

 つまるところ、ハイローミックス戦略……。

 

 ちなみに、中継港の籠城戦、そして中継港が陥落し、戦闘の舞台が通常宇宙へと移行する可能性もこちらは想定している。

 

 なにせ、対人類戦なら中継港陥落の時点で降伏すれば受け入れてくれるだろうけど。

 帰還者に関しては、ドラゴンフェイズ2もそうだったように、交渉の余地はないと思ってよかった。

 

 つまり無条件で殲滅戦、お互い徹底的に滅ぼすか滅ぼされるかの戦いとなる……。

 ここが、これまでの戦争と決定的に違う点なのですよ。


 黒船に関しては、真空宇宙に適応できず、ゲートを超えられても勝手に死ぬだけだったから、通常宇宙側は一切問題なかったのだけど……。


 ドラゴンフェイズ2の残骸分析の結果、ドラゴンフェイズ2は通常宇宙空間でも平然と活動し、生存が可能だと言う恐るべき事実が判明しているのですよ。


 それに、ゲート発生器官のような器官も確認されており、単独でゲートを生成し通常宇宙へ侵攻していた可能性もある……そんな風に考えられているのです。


 あのドラゴン……ユリ達が思っていた以上のトンデモ生物兵器で、人類をエーテル空間のみならず、通常宇宙まで追いかけていって、根絶やしにする……どうも、ソレくらいの事を想定してたようなのですよ。


 あそこで仕留められなかったら、もっと酷い状況になっていたのは、確実で……!

 ユリと遥提督の決死の奮闘は、嫌が応にでも高く評価されることになったのですよ。


 なんにせよ、この事実が判明した時点で、従来の対黒船戦略も見直しが必要になった。


 通常宇宙に乗り込んでくる可能性もある以上、人々を守るためにも通常宇宙や地上での時間稼ぎの戦いも視野に入れて、艦艇や機動兵器もエーテル空間、地上、通常宇宙、どこでも戦い得る兵器を開発しなくていけなくなったのですよ……。


 おまけに、これまで、エーテル空間によって隔たれてきた各国家群もエーテル空間の中立化が有名無実化した以上は、自国の権益を守るために、エスクロンのように、独自武装化を始めている。

 ……要するに、人類同士も至るところで激突を余儀なくされる……そう予想されていた。


 もはや、この時点で、従来の枠組み……銀河連合では、もはやとても対応しきれないのは明白で、銀河人類を守るための新しい枠組が必要とされていた。


 であるからには、人類世界最強国家となりつつあるエスクロンがその担い手になる。

 そんな決意のもとに、ユリ達は銀河辺境帝国を名乗り、新たなる時代の旗手として歩み始めた。


 この道のりは、おそらくは血塗られた道となる。

 相応の無理を通すのだから、必然的にそうなる。

 

 ……それでも、なるべく穏便に、相応の時間をかけてでも、従来の枠組みを崩さずになんとかしようと皆、思ってたんだけど……。

 

 現実はそう甘くなかった。

 ぬるま湯の中で数百年を生きてきた人々の意識は、私達の想像を超えて、頑なものだった。

 

 けれど、もうそんな事は言っていられない。


 だからこそ、私達は銀河連合をぶち壊す。

 なるべく、跡形もなく……古き時代に決別を告げるがために。


 私達は、今後銀河の過半数を席巻することを目指す事になる。


 来るものは拒まないが、拒むものへは容赦しない。

  

 エスクロンは、銀河人類の未来を守るために、敢えて茨の道を歩む選択をしたのですよ。


 そんな訳で、帝国傘下星系の各星系ゲートは、キロメートル級の巨艦がそのまま抜けられるような大型化改装が順次進められてて、エーテル空間戦闘艦についても、武装輸送艦の大量生産だけでなく、通常の宇宙戦闘艦にフローティングモジュールと呼ばれる浮き輪みたいなのを付けて、エーテル流体面に浮かべることで、お手軽簡単に宇宙戦闘艦をエーテル空間に投入……要するにどこでも戦えるようにする。

 

 もっとも、この試みはあまりうまく行っていない……そもそも、宇宙戦闘艦は真空、無重力空間を想定している。

 想定していない使い方をする以上、どうしても無理が生じる。


 もっとも、分解せずにシームレスに移送するくらいは出来るようになりそうなので、エスクロン本国に山ほどいる艦隊を戦闘発生星域へ増援として運び込むと言った運用は可能になりそうではある。

 それだって、かなりの進歩だと思う……いかんせん、通常宇宙の守りも固めないといけない以上、兵力はいくらあっても、困らない。

 

 もちろん、鴉シリーズのエーテル空間制圧戦闘機も怒涛の勢いで増産されてるし、それに加えて、エーテル流体面を滑走し飛行戦闘も可能な汎用人型機動兵器……通称ナイトボーダーと言う新兵器開発も行われてるのですよ。


 ナイトボーダーは、空間航行モジュールとエーテル流体面滑走モジュールを兼用した大型シールドモジュールを装備した人型機動兵器で、シールドモジュールにサーフボードみたい乗っかって、エーテル流体面上に長時間居座ることが出来る上に、シールドモジュールに高機動ブースターを内蔵することで、宇宙空間や大気圏内航行も可能として、単独大気圏突入すらもやってのける汎用性の高い機動兵器なのですよ。


 空間機動力については、本職の戦闘機にはさすがに劣るものの、エーテル空間での戦闘機の問題点でもある長時間戦場に居座ることが出来ないと言う問題をクリア出来るのです。

 

 その上、艦艇甲板上に乗り込んでの盾役や砲台代わりになったり、待ち伏せ戦術や敵戦闘艦艇への揚陸制圧など、戦闘機よりも戦術的柔軟性が高いのが特徴で、次世代主力兵器の大本命と言われてるのですよ。


 要するに、帝国軍が目指してるのは、通常宇宙も含めた広域的かつ、包括的な戦術的柔軟性や戦略機動性を重視した軍勢の構築。

 

 来たるべき、帰還者達との戦いに備えて、新たなる戦争の形を模索してる……そう言う段階なのですよ。


「こっちも割と積極的に情報公開してるから、そう無茶はしないって思ってたんですが……。実際はそんななのですか? ……と言うか、想定敵の戦力を甘く見積もって、自分たちの戦力を過大評価するって……それに何の意味があるのです? ユリ達が嘘情報流してるとか思われてるんですかね?」


「そうだねぇ……。君達って、エネルギー馬鹿食いするようになるゲートの大型化改装とか本気でやってるし、将来的には帝国の宇宙艦艇がゾロゾロとエーテル空間に出てくるようになりそうなんだよね。帝国が公開してる所有宇宙戦闘艦艇総数が以前と変わってないなら、その潜在戦力は軽く数万隻……こんな数字、いつぞやかのブリタニア軍が霞んで見えるほどだよ……。実際、エスクロンが本気で銀河連合軍に肩入れしてくれるようになってから、物資に困らなくなったし、黒船を質で圧倒出来るようなったしねぇ……。私みたいな兵站畑の人間にとっては、万単位の艦艇運用なんて実現できてる時点で、途方も無い話だと実感できるんだけど……」


「例の備えの一環だとは思うんだけど、アタシもエスクロン本星の衛星基地にびっしりとモスボール艦が並んでるのをこの目で見てるから、あの数字は誇張でもなんでも無いって言えるよ……。まったく、20世紀に作られた十万規模の宇宙艦隊同士の決戦とかやってる大スケールを誇る長編アニメ見たことあるけど、本気であれに出て来た銀河帝国と戦えるくらいの戦力あるよね? まったく、凄まじい話だよ」


「それに、こないだの合同VR演習に出て来たロボット兵器? アレやばいねー。あれって、空飛ぶシールド持ちの海上歩兵みたいなもんで、とにかく見つけにくいし、やたと頑丈でさ。待ち伏せとかされたら相当怖いよ……。あれが大量生産されて、100機単位とかで出てきたら、手に負えないかも知れないな」


「……まさかLFO? まじか……あれを本気で出して来たのか。鴉も相当やばかったが、別次元のヤバさだぞ、それ」


 LFOって何って聞きたいんだけど。

 大方、21世紀の古いアニメとかそんなだと思う。


 ナイトボーダーも何もないところから出てきたんじゃなくて、大昔のロボットアニメ参考にしたって話も聞いてる。

 けど、それだけに遥提督はその脅威を即座に理解したらしい。

 さすがなのです。


「ごめん、何の話か良く解らないけど、君にはそれだけでどう言うものか解ったみたいだね。なんにせよ、帝国に本格的にエーテル空間で戦力整備されたら、我々じゃもう勝ち目なんてゼロだよ。そのくせ、司令部は相変わらず、我々最前線への支援ケチってきてて、とにかく、物資不足と物資の質の悪化が顕著でね。もしも、いつぞやかみたいな100匹単位の黒船との会戦が勃発したら、多分一戦交えるのがやっとだろうね。別に銀河連合自体が困窮してるわけじゃないのに、こんな補給もままならない状態になってる時点でおかしいのに、それで帝国に喧嘩売ることを考えてるなんて、私達最前線の人間は、上層部は皆、狂ってると思ってるよ……。前々から司令部は駄目だとは思ってたけど、いよいよもって、末期症状なのかもしれないね」


 うーん、帝国制に移行してからも、別にシリウスとかとの交易は制限してないし、相変わらず重水素燃料とかは帝国製がぶっちぎりのシェアだし、銀河連合軍が一回の大規模会戦で音を上げるほど困窮してるってのは、本気で意味が解らない。


 物はあるはずなのに、現場に届いてないとなると。

 ……派手に中抜されてるとか……?


 多分、そう言う事なんだろな……。

 なんと言うか、腐ってるのですよ。

 

 永友提督さん、いっそ帝国へ亡命した方が良いんじゃないかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ