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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第五十二話「エスクロンの守護女神」②

 ちなみに、今更ながらユリは……と言うと。

 

 エリコお姉さまの最高傑作「白鴉」の機上、現場上空一万メートル!

 まさに、真打ちとうじょー! なんてっ! てへぺろっ!


 あれからやったこと。

 初霜ちゃんをくすぐり地獄と言う名の拷問にかけて、洗いざらいを白状させたのですよ。


 それで知ったこと。


 現状、ケスラン星系を巡って、エスクロンはギリギリの攻防を強いられていること。

 これはロンギヌス情報で知ってはいたんだけど、そして、案の定第3世代強化人間の皆が動員されてる事も解った。


 ユリは……関係者一同から、ユリをこの件に干渉させないように、色々手が回ってて、初霜ちゃんもユリが暴走したら、力づくで止める役割として送り込まれてた事が判明したのですよ。


 ……もちろん、悪意じゃなくて、皆好意からなのは解ったんだけど……。


 何も知らされずに、君はよそで遊んでていいよとか言われてもねぇ……。

 ユリがアホの子でニブちんだったら、見えない所で何かが起きてても、気付かずスルーで済んだかもだけど。


 ユリは、人よりいろんな事解ってしまうし、この手の修羅場は昔から慣れっこなのですよ……。


 なんと言うか、修羅場が呼んでる……みたいな?

 今回もそんな感じがしたから、駆け付けたんだけど……案の定、大変そうな事になってた!

 

 どうも皆して、色々と手の込んだ真似をして、ユリを蚊帳の外に追い出そうとしてたみたいなんだけど……。


 ……解っていて見えているのに、見えないふりをする。

 それはある意味、無難な生き方なのだけど。

 

 ユリには、そう言う器用な事は出来ないのですよ。

 ユリは……いつだって自分に出来ることを全力で目一杯やるのですよ!

 

 ……アキちゃん達ともコンタクト済み。

 

 案の定……皆むしろ志願しての参戦。

 CEOさんに直談判して、無理やりねじ込む形で総動員になったんだとか。

 

 でも、ユリ達は、それが当たり前……さすが、皆!

 やっぱ、それでなくちゃ……なのですよ。


 そこが危険な戦場なら、むしろ喜んで赴く。


 たとえ絶望的な戦局でも……命を捨ててでもそれをひっくり返す。

 困難な状況こそ、ユリ達の出番。


 それこそが、ユリ達強化人間の存在意義。

 不可能を可能にする……普通じゃないことを普通にやってのける。


 それが、人類の進化系たる強化人間ってもんなのですよ!


 まぁ、アキちゃん達ファーストロット組とダゼルくん達セカンドロット組はともかく、それ以降のナンバーの子達は皆、中学生くらいで、ユリ達から見てもお子様ばっかり……。


 危ない最前線任務はさすがに任せられないってことで、情報収集任務やCEOさんの補佐任務に回されてるらしく、皆、文句たらたららしい。


 ……気持ちは解るけど、さすがにチビちゃんズはまだ早いでしょ。

 もっとも、皆素直な子達だし、年長組の言葉は絶対って教え込んでるから、無茶はしないと思う。

 

 エスクロンが窮地に立たされていると知り、アキちゃん達も自主的に志願して、試験艦隊での参戦を実現したみたいなんだけど、トラブル多発の上に、散々っぱら妨害されまくって、ギリギリで間に合いそうもないって話も聞いた。


 遥さんや永友提督の配下の人達がこの紛争を仲介すべく動いてくれてたみたいなんだけど。

 

 ユリの予想では、どうしてもあと一手足りないか、誰も手がつけられないような状況に陥る……そんな風に予想したのですよ。


 ただユリ自身……どんなにやる気があっても、戦場にはとても間に合わない。

 

 ……そう思ったのだけど、唯一間に合いそうな手段が一つだけあったのですよ。

 

 ロンギヌスに密かに搭載されていた「白鴉」

 この機体……音速の4倍という重力圏戦闘機として、桁外れの速度が出る。


 自重しないで、エーテル空間で地上機並みの超音速飛行を実現する……。

 プラズマジェットエンジンの性能限界にチャレンジしたお化けエンジン「天魔Ⅴ型」


 一応、プラズマジェットエンジンはゼロ・スナイパーでも採用済みではあるんだけど。

 ゼロ・スナイパーは基本はレシプロ機で、高速展開時や緊急増速用としてプラズマジェットを使うハイブリッド機。


 量産機前提だから、パワーもコスパも妥協してるし、空力的にも微妙なんで、音速がやっとくらいの性能なんだけど。


「天魔Ⅴ型」はその辺、一切妥協せずエスクロン本星を5時間位で一周できる成層圏エアロプレーンなんかで使われてるスクラムジェットエンジンを応用し、惜しみなく新開発超耐熱素材を使用し、最新技術を投入した結果、理論上マッハ15まで行ける……それ位のハイパワーエンジンに仕上がった。

 

 必然的に、それを積んだ「白鴉」は史上最速のエーテル空間戦闘機となったのですよ。

 

 フル装備なら単独で惑星降下して、そのまま大気圏離脱も可能とするほどのオーバースペック戦闘機。

 その気になれば、エーテル空間の端から端までたった三時間で突っ切れる。


 現場まで2000kmくらいあるみたいだったけど、白鴉なら一時間もかからない。

 燃料消費の関係で、片道切符になるのは確実だけど、燃料が切れる頃にはアキちゃん達が駆けつけてくれる。


 保険もあるから、落とされたって生還の見込みはある。

 なら、何の問題もない。


 白鴉も段階としては、機体の限界性能を探る実験機レベルなんだけど。

 完成度自体は元々強化人間のユリが乗る想定で、VR環境で練り込んでるから、致命的な問題は起きないと予想されたのですよ。


 かくして、ユリは全部まとめて問題を解決すべく、エーテルの空をかっ飛んで、たった今現場に到着したところだったのですよ。


「……天霧とコンタクト。状況把握しました。どうも、あの大砲積んだ船が無差別攻撃をすると脅していて、遥さんは撃ったら、即座に沈めると脅迫して押し留めているようです。要するに、お互い脅迫しあってて、膠着状態になってしまっているみたいですね」


 ……同乗してる初霜ちゃんが告げる。


 なるほど、そっち筋でも情報提供あったんだね。

 概ね、解釈も一致してるみたい。

 

 ハルマ叔父さんからのデータは、無作為拡散送信された暗号データとして、ユリに直接届いたんだけど、初霜ちゃんは初霜ちゃんで、天霧からデータ送ってもらったらしい。

 

 初霜ちゃんもユリが一人で戦場に向かうようなら、力づくでも止める……なんて命令を受けてたみたいなんだけど。

 

 くすぐり地獄であっさり降伏宣言……。


 本人も内心では、それってどうかなーとか思ってたみたいで、その上で負けを認めた以上、もう好きにしてって話になっちゃって、色々心配だから、ナビユニット代わりになるから同行したいと言いだしたのですよ。


 もっとも、白鴉は一人乗り仕様機。

 結局、白鴉のウェポンラック内と言う人権もなにもない場所に詰め込まれての同乗と相成ったのですよ。

 

 本人は、重量軽減のために投棄されたり、爆弾代わりに敵艦特攻もおっけーとか言ってたので、荷物扱いでも問題ないらしいのです。

 

 もっとも、ナビ代わりとしてはとっても優秀で、ここまで最短ルート、最小燃料消費で到着できたし、今も即座に天霧さんと連絡を取り合って、状況把握してくれたみたいなのですよ。

 

 途中でなんか妨害とか出てきてたっぽいけど、ステルス機でありながら、マッハ3余裕で出せる白鴉なら、気が付いたら通り過ぎてたとかそんな感じだったみたいで、全部まとめて振り切ったっぽい。


 初霜ちゃん情報だと、どうもシュバルツの艦隊がこそこそ動いてて、邪魔しようとしてたみたいなんだけど。

 別にシュバルツの艦艇っても、凄くもないんだよね。


 Bf-109って旧式戦闘機がいっぱい出てきてたけど、こちとら最新鋭のジェット戦闘機。

 レシプロ機なんて軽くブッチギリなのですよ。


 実のところ、この白鴉もまだまだ全然未完成で、ナビコンすらもまともなものが出来てなくて、長距離連続高速飛行も割と怪しかったのですよ。

 

 ここら辺もエリコお姉さまが反対してた理由だったんだけど……。


 ユリのナノマシンハードウェアハッキング機能と初霜ちゃんの高度演算機能やらで、飛びながら無理くり調整しつつの弾丸飛行……実際、なんとかなった。


 万が一墜落しても、初霜ちゃんのパーソナルフィールドと強化人間の環境防護能力なら、半日以内に拾ってもらえば生還は可能……ここまでやって、やっとエリコお姉さまの許可が降りたのですよ。


 エリコお姉さまもだけど、皆さん、本当に過保護過ぎなのですよ。

 いや、これはユリが愛されてるって思うべきかな……?


 心配かけることになってごめんなさいなのですよ。


「……なるほど。銃口突きつけあって、にらみ合い。こうなると、別の第三者が介入しないと状況も動かないのですよ」


「そうなりますね。どうすべきか……なかなか、困った状況ですね。早打ち勝負なら、相手の弾を全部叩き落としてから、沈めれば済む話なんですが」


 ……初霜ちゃんが変なこと言ってる。

 

 エベレストの片舷64門のレールガン。

 大きな船だけに、副砲だけでも128門とかある。

 

 その砲弾をあの距離で全部捕捉して撃ち落とすとか、さすがに無理だと思うんだけど。


 どうも、それくらいの実績あるらしい。

 意味が解らない。


 さすが、未来予測システム「ラプラスの魔」のオリジナルなのですよ。

 一応、納得。


「初霜ちゃん、初霜ちゃん! 相手はこっちを認識してるんでしょうか? 一応、最新型のステルス機だし、プラズマ雲の上にいて、音も出してないはずなんで、気付きようがないと思うんですけど」


「はい、各種パッシブ情報からも相手からは未発見だと断言できます。実際、天霧さんもこちらの位置が解らなくて困ってるみたいですからね。ただ精密射撃などで照準波を出すと向こうも気付きます。そうなると攻撃と判断されて、相手が撃つ可能性も……これは簡単じゃないですよ」


 確かに単独で不意打ち狙撃ってなると、一度プラズマ雲の上から出て直接目視の上での光学照準ってなる……。

 

 それか、プラズマ雲越しで撃つか。

 そうなると完全ヤマ勘で撃つか、レーダー照準射撃ってなるんだけど、それだと気付かれちゃう……。


 中継港からの撤退もまだ完了してないから、今撃たれるとかなりの被害が出るし、天霧もほぼ確実に沈む。

 うーん、事実上遥提督が人質に取られてるようなものなのですよ。


 でも……天霧からの光学情報があれば、こっちから視認出来なくても、相対座標情報を元に照準補正かけるだけだから、関係ないと思うのですよ。


 それに叔父さん達も次々と観測ドローンを打ち出して、周辺環境情報をこまめに集めてくれてる。


 さすが……痒いところに手が届くようなサポート。


 あの人達もユリとの付き合いが長いから、ユリが何を要求してるのか、何も言わずとも解ってくれて、出来る限りのバックアップ体制を構築してくれるのですよ。


 こう言う味方ってとっても頼もしいのです。

 ユリとしては、始めてのエーテル空間戦……手慣れた人達のサポートがあるのは、心強い。


「……簡単なのですよ。ユリがこのままスナイプして、一撃で沈めちゃえば済む話なのですよ。照準データも天霧さんや辺り一帯にばら撒かれた観測用ナノマシン群からもらえば、十分なのですよ」


 こう言う膠着……フィクションなんかでもありがちだけど。


 解決策はシンプルなのですよ。

 ……敵の認識範囲外から撃って、一撃必殺で仕留める。


 どんな最強の戦士も歴戦の勇者も後ろから頭撃たれたら即死する。

 死んだら、どんなにやる気があっても引き金は引けない。


 簡単な解決方法なのですよ。

 何より、そうすれば人質取ってようが、爆弾持ってようが関係ない。


 カウンターテロの基本は、正々堂々気付かれないように、後ろからスナイプ……なのですよ。


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