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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第五十一話「静かなる戦い」④

「……アンタ、思ったよりいいヤツじゃないか。それならば、助太刀の甲斐もあるというものさ。で、さっきの話の続きなんだが、彼女はどうやらこちらに向かうつもりのようだ。どうも色々と面倒なことになりつつあるみたいだな」


「なんだと? ユリコはロンギヌスからは途中で降りて、別便でエスクロンへ帰還する手はずのはずでは?」


「ああ、そっちの手はずはよく知らないけど。ちょっとこっちも色々あったからね。予定が変わったんだ……。まぁ、アタシらとしても、彼女は出来れば大人しくしていて欲しいとは思ってるから、出来る限り管制出来る状況に留めるべく、手を回させてもらった。一応、情報共有しておいたほうが良さそうだね。……アンタはなかなかの切れ者みたいだから、判断材料にでもするといい」


 ユリコ達は、安全のためスタージョン中継港で待機していた高速客船へ乗り換えて、銀河連合軍の護衛付きで、エスクロン本星系へ移送する……そう言う予定だったのだが。


 スタージョン周辺が戦場になり、残党の可能性もゼロとは断言でき無かった為、警戒コードがオレンジにまで上昇してしまったのだ。


 必然的に、合流予定だった旅客船も身動き出来なくなり、ランデブーも不可能となり……次善の策として、ロンギヌスに乗せたまま、最終的にエスクロンへ目指す……護衛を引き受けてくれた辺境艦隊の提督たちとの話し合いで、そう言う決定となった。


 そして、その護衛として、腕利きでなるグエン艦隊がその役目を買って出て来た。

 

 遥とグエンは結託していて、護衛名目でその周囲をグエン艦隊で固めた上で、個人戦闘力でユリコを圧倒出来そうな初霜をその身辺警護として付けることで、ユリコの動きを封じ込めた……つもりになっていた。


 もっとも、その思惑はユリコ自身の手で覆されつつあったのだが。

 その情報はまだ二人には入ってきては居なかった。

 

 だが、ハルマには、何か直感めいたものがあった。


「……なるほどな。遥提督……一つ聞くが、その300匹の黒船の残党だが、強すぎて手に負えず、取り逃がした個体などは含まれていなかったか?」


 ユリコの直感……敵を探し出す、超索敵能力。

 これについては、もはや理屈や道理も無視して発動するもの。


 ハルマはそう言うものだと理解していた。


 何を見つけたのかわからないが、彼女が敢えて戦場に向かうという選択をしたとなると。

 何かが起こる……その可能性が高かった。


「……突然だね。まぁ……そうだな。黒船の大群と言っても旧式の見慣れた連中ばかりだったからな。ただ一匹だけ母艦タイプでレーダーや目視でも識別不能……そんなステルスタイプの奴がいて、危うく取り逃がしかけたんだけどね。エスクロン製の対ステルスレーザーレーダーで捕捉できたし、見つけてしまえば大した脅威ではなかったよ。何か気になることでも? 悪いけど、こっちも民間人には言えないことはある……そこら辺はお察しだよ」


「……いや、どうも妙な胸騒ぎがしてならなくてな。それにユリコがこちらに近づきつつあるのは気になる。あれは理屈や道理を軽く無視して、敵を見つけ出して最短ルートで粉砕する。そう言う特技がある。どう考えても偶然としか思えないタイミングにも関わらず、しれっと爆弾テロの爆心地に居て、爆破を阻止するとか、あれは普通にやってのけたからな」


「なんだそれは? 何を言ってるのか解らんぞ……。要するに、その後を左右するようなクリティカルなイベントが起きると、決まって何故かそこに居るとかそんな話なのかい?」


「そうだな……その認識で間違っていない。私は長らく陰で彼女の身辺警護をしてきたが、そう言う例をいくつも見てきた。いいか? あれが動くとしても決して、妨害したり、制御したりしようとするな。流れに任せて、むしろ彼女の為に道を作る。それくらいで丁度いいはずだ」


「……すまん、ハルマ大佐。実体験からの言葉なんだろうが、言ってる意味が解らない。そもそも、アタシは子供が戦場に出て来る時点で気に食わないんだ。まぁ、今回はシュバルツのバカ総帥がこっちをかき回そうと、少々派手にブッコミ過ぎた……そんなところだな。そのせいでこれから、ちょっとひと騒ぎ起きるだろうが……実際は大山鳴動して鼠一匹……そんな結果になるだろうさ。多分、そこまで派手な騒ぎにはならない。まぁ、色々と風通しは良くなるだろうけどね」


「……なるほどな。そう言うややこしい状況で、ややこしいのが勝手に動かれると困る。そう言うことか。だが、君達、銀河連合軍としては、ユリコをむしろ危険人物として認識しているのか? 確かに戦場にイレギュラーをもたらす要因はむしろ、危険と言えるからな。だが……彼女をコントロールしようとするとなると、相応のリスクを覚悟した方がいいぞ。なぜ、我々が彼女を野放しにして、好きなようにさせているのか……。先に言った事も含めて、その理由を良く考えて欲しい」

 

「うーん? 別に彼女に危害を加えるつもりはないんだがな。あれに喧嘩を売って、危うくあの世に舞い戻るところだったから、アレが並大抵の手合じゃないってのは認めるさ。だが、君達こそ、ちょっと過保護が過ぎるんじゃないか? そもそも、彼女一人を奪還するのに、銀河連合の意向も何もかも無視して、シュバルツに総力戦挑む構えだったって……。アタシですら、耳を疑ったよ」


「コードβの件か? まぁ、あれは止むを得まい。彼女がシュバルツに捕縛されたとなれば、宣戦布告の上で敵地強襲の上での奪還……最悪、そこまで想定すべきだったからな。敵地に人質として、連れ去られたとなると、秘密裏に取り返すことは難しい……。だからこそ宣戦布告の上で例え敵地に乗り込んででも取り返す。我々は彼女にその程度には借りがあり、彼女の価値を認めているのだよ」


 実際のところ、仮に捕縛誘拐されたとしても、ほっといても逃げのびてくるのは確実……エスクロンの上層部はそんな風に判断していたのだ。


 彼女のスペックならは、その程度は容易くやってのける。

 VRシュミレーションで試された敵地からの帰還シミュレーションは、防衛側としてはむしろ、本拠地に人間爆弾を打ち込まれ、それにどうやって対処するかの様相を呈していたのだ。


 エスクロンを遥かに超える技術力を持つ超文明でもない限り、彼女に中枢に入り込まれた時点で負け……それが結論だった。

 

 その結果を踏まえると、必然的にユリコの捕縛ともなると、敵国中枢壊滅と言うおまけも付くのは確実で……その重責を彼女一人には負わせるのは、むしろ言語道断と言えた。


 実のところ、それも含めての宣戦布告……と言うのが、実情ではあったのだ。

 

 国家レベルでの宣戦布告となれば、敵国の被害については、最前線の個人の責は問わないと言うのが戦時の不文律でもある。


 要するに、彼女がしでかすであろう敵国の壊滅的被害を国軍総掛かりでフォローする。

 コードβには、そう言う意味も含まれていたのだ……。


 もっとも、この時点で常軌を逸した話である上に、常識的に考えて、たった一人の少女がそこまでやれるなんて、誰も信じない。


 ハルマ大佐は、彼女の能力を正確に把握しているものの一人なのではあるが。

 部外者に正直に言っても、信じさせる自信はなかった。


 だから、ハルマの言葉はいわば対外用の言い訳……プロパガンダだった。


「……確かにそうかもしれんが。実際はそこまで深刻な状況になった訳でもないんだろう? 率直に言って君等のその考えは危険だよ……まぁ、味方としては頼もしいことこの上ないけどね」


「我々は常に最悪を想定して動く。むしろ、当然の対応だとは思うのだがな。まぁ、その後の総力戦については、言ってみればもののついでだな。どのみち、宣戦布告し、国家レベルでの全面交戦に入る以上、半端に済ますなんてありえんだろ。一線を超えてまだ引き返せると考えるほど、我々も戦争について甘く考えていない。やるからには、徹底的にやりあって、相手が白旗を揚げるか、跡形も残らず消え失せるまで戦い続ける。至って、シンプルな話だと思うがな。そもそも、かつてはそれが当たり前だったのだろう?」


 ハルマが口にしているのは、エスクロンでは当たり前の価値観ではあった。


 国同士とは、本来相容れないもの。

 価値観が近く、互いに利益があるならば友好を結び、取引相手と言う利害が共通するものならば、国を問わず受け入れる。

 

 そこまでは、問題ないのだが……。


 それ以外については、無害ならば放置するが、敵対するとなると容赦しない。

 度が過ぎる相手には、宣戦布告した上で、跡形もなく消し飛ばしても何ら問題ない。


 この辺りについては、エスクロンでは至って普通の考え方とされている。

 なにぶん、彼らには敵と認識したものを、人間という括りで同胞扱いすると言う考えが一切ない。

 

 エスクロン人にとっては、基本的に自国民と取引相手、友好国については人間と認めるのだが、テロリストや犯罪者、敵対関係国家の国民などは、基本的にモノ扱い……人間扱いしないのだ。


 古来から、そう言う価値観の国で「全人類は普遍的な価値観を共に懐き、互いに手を取り合い繁栄を築き上げる」……銀河連合の理念とは、全く相容れない価値観を持つ国なのだ。

 

 その上で、他の国の数百倍レベルの軍事力を持ち、それを平然と運用する国力を持っている。

 

 国と国とがエーテルロードで隔てられている事と、侵略国家的な性格を持ち合わせていないことで、その猛威が全人類世界を席巻するような事にはなっておらず、あくまで銀河連合の一員として、本人達の感覚では大人しくしているつもりではあるのだ。


 それが銀河随一の戦闘国家にして、超大国エスクロンの実体だった。

 

 遥提督も、実際の国民……それも最前線の特務隊の指揮官と言う国際感覚を持ち合わせているであろう大物から、そんな言葉を聞くとさすがに唖然とせざるを得なかった。

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