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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第五十話「やさしい時間」⑤

「質問……秘匿精鋭部隊や試験艦隊の詳細については? ロンギヌスなら色々と知ってるんじゃないですか?」


 黙ってたことは責められない。


 聞かれても居ないことを、AIはホイホイ話したりはしないから。

 その代わり、ちゃんと聞けば、当人の情報権限に応じて、何でも知ってることを教えてくれるのですよ。


『はい、概念実証艦や試作機などをかき集めたエーテル空間戦闘艦のテストが少し前から本国中継港近辺にて行われておりました。それらのテストパイロットや専属ドライバーがそのまま、戦地へ派遣されたとの情報が我々の独自ネットワークには流れていましたね』


 銀河各地へばらまかれてるエスクロン製機械製品などに付随するエスクロン独自規格AI群。

 

 Tire4やTire5と言った下位クラスAIも含めると、その数は膨大な数になる。

 それらが独自ネットワークを形成し、独自情報網を作り上げているというのは、噂としては聞いたことあったけど、本当だったのですよ。


 もちろん、古来から続く超AIを頂点としたアマテラス系AIネットワークなんてのもあるから、今更問題にするようなものでもないのだけど。


 エスクロン製AIは超AIエリダヌスを頂点にしたある意味、異質なAI群。

 大本を辿れば、根本は同じなんだけど、かなり昔の時点で分岐した上でエスクロンの歩みと共に独自進化してきたらしい。


 そう考えると、この銀河には二系統のAI達が存在していることになるのだけど。


 もっとも、従来のアマテラス系AI達とは、別に衝突とかはせずに、割となぁなぁでやってるみたいではあるんだけど、価値観に関しては、当たり前のようにエスクロン寄り。


 けど、こうやって、独自に情報を入手して共有してるとなると、そのうち妙な問題起こすかも……。


 でもまぁ、そこは今は気にするところじゃないのです。

 

 ……ただ、そんな実験艦隊とかって、エリコお姉さまの担当のような。

 お姉さまは、何も言ってこなかったし、ユリにも詳細情報は降りてきてない。


 これも、知るべきではない情報……なのかも。

 

 けど、テストパイロットや概念実証艦なんて、戦闘に出せるようなものじゃないと思うのですよ。


 テストパイロットとかって、普通に虎の子のエリートだし、概念実証艦なんて、とりあえず作ってみたレベルの継ぎはぎ……動かすだけで、あっちこっち壊れたりするような代物なのですよ。


 最近は、その手の概念実証実験は、VR環境でやるってのがセオリーだけど。

 実際に作ってみて、動かして解ることも多くあるから、試作プロトの前段階として、既存の部材や試作パーツを組み合わせた上で、とりあえず動く実機を作るケースも多いのですよ。


 耐久性とか実用性も考慮されてないから、大抵は作り上げて、ある程度の動作チェックするくらいで、あちこちガタが来るから、ロールアウトして数日でスクラップになるパターンがほとんど。


 まちがっても、戦闘に投入とか出来るものじゃないのです。


 それにテストパイロットって……エーテル空間の戦場に人間を投入って……。

 その時点で結構な無茶。


 けど、それは真っ当な人間ならって但し書きが付く。

 ユリ達強化人間……それも第3世代なら、条件付きながらエーテル空間での軍事作戦も可能となる。


 ダーナちゃんにフランちゃん、ダゼルくんにケリーくん、それにアキちゃん。

 ユリといつも行動を共にしてたチームメイト達。


 アキちゃんは限りなく生身レベルの義体なんだけど、それ以外の4人は最高スペックの戦闘用義体を与えられた第三世代最高精鋭と言っても過言じゃない子達。


 それぞれ、分野特化で最高レベルの能力を持ってるから、状況次第ではユリも勝てないほどの凄腕揃い。


 最新ロットの戦闘用義体はエーテル空間での戦闘や長期生存をも想定したもので、ユリも今回の帰省でその最新型強化義体に改装するって話も来てる。


 だとすれば……あの子達が戦場に……その可能性が高い。

 

 その考えに行き当たり、もう居ても立っても居られない気持ちになる。

 ロンギヌスに確認する?


 いや、聞いてしまったら、もうユリは自分を止められなくなる。

 

「わぁっ! これって、続きみたかったアニメじゃないですかーっ! 発掘されたデータ自体に欠損があって、続きがないって聞いてたのに、エスクロンのライブラリには全話保存されてたんですね! 見ましょうっ! 是非っ!」


 初霜ちゃんの楽しそうな声に現実に引き戻される。

 見ると、よく見知った魔女っ子アニメがマルチモニターに大写しになってる。


「お邪魔マジョマジョ、ドレミファドン!」なのですよー!


 エスクロンの女の子の憧れ!

 

 魔法少女ものでも最古の作品に属すると言われる名作中の名作!

 悪い奴らは、波動魔法で薙ぎ払えーっ!


 ……スターシスターズの子がこう言うのに興味持つって、なんだかシュールなのですよ。

 この子見てると、ユリも色々イメージ変わってくるのですよ。


「……ユリちゃんも難しそうな顔しとらんで、こっちおいでや……一緒に見ようや! なんや、面白そうやで!」


 アヤメさんに、袖引っ張られてソファに座り込まされる。


 初霜ちゃんはノリノリで主題歌とか歌ってる。

 良く解らないけど、これって古典アニメで21世紀どころか20世紀末の頃のアニメらしい。


 しかも、これ……ユリが見たリメイク版じゃなくて、オリジナルだ!


 うわーっ! コマが荒いし、解像度が低くてぼんやりしてるし、音声が前から聞こえるだけのモノラルって奴だ! 色使いもなんだかサイケデリック……と言うか派手。


 でもこの時代には……すでに2Dアニメの基本は出来ていたとかで、最新のアニメとかと比べてもそこまで古臭い感じはしないのですよ。


「これって、提督さんが大好きなんですよー!」


 初霜ちゃんが教えてくれる。

 

 けど、これって子供向けアニメじゃなかったっけ?

 出てくる子達、みんな4頭身くらいで小学生みたいに見えるのです。


 うん、小学生の頃……皆、見てたなぁ。


 ユリは……お家に帰ってから、ひとりでこっそり魔女っ子変身ポーズ真似したりとか。

 ……ソロプレイ? これって黒歴史なのですよ……。


 けど、男の人なのに、女の子向けアニメ好きとか、提督さんも変わった趣味してるのですよ……。


「……このアニメって、700年も前の古典アニメなのよね。最強のラスボス魔法少女が主人公で正義の味方っぽいのがむしろ敵役で……普段は正体を隠して、敵役の子達とも仲良く遊んでたりするのよね……。大昔のアニメって、むしろ斬新な内容な事が多いですよね。けど、これってリメイク版の方が有名で、オリジナルって断片的にしかデータが残ってないはずなのに、なんでオリジナル全話が揃ってるのかしら?」


 エリーさんも、エスクロン本国データベースを見ながら、割と興味津々って感じで見てる。


 ……こんなほんわかしたタッチなのに、中身は割とハードで、ストーリー自体は結構シリアスだったと言う……。

 ハートフルアニメとか嘘ですとか、そんな感想コメントが付いてる……。


 でも、これってエスクロン国外では、そんな感じなんだ……。


 エスクロンの共有記録データベースって、割と独自の過去の記録データとかがあって、国外の人達がエスクロンのデータベースを閲覧して幻のデータを発掘したとか、大騒ぎする事があるって話はよく聞くのですよ。


 ブラックデータの流出騒ぎが起きて、大本を辿るとエスクロンのデータベースだったって話もある……。

 もっともエスクロンのデータベースは、管理者不在のとってもカオスなデータベース。


 AIボットが無作為に至る所からかき集めて来る情報の溜まり場なので、もう訳がわからない。

 アキちゃん辺りなら、自在に扱えるし、超詳しいんだけど、ユリは流石にそこまで詳しくないのですよ


 このアニメもリメイク版は知ってるし、このオリジナル版も子供の頃に普通に配信してたから、毎週のように見てた覚えがある。


 けど、エリーさんの話だと銀河共有データベースの記録では、跡切れ跡切れ状態らしい。

 アニメで全話通しで見れないとか、なかなかに悲しいのですよ。

 通しで見たいって思う気持ちは解る。


 古典アニメとか、どうせ著作権とか軽くぶっちぎってるから、遠慮なく端末ダウンロードでもして行ってって感じなのです。

 

 そんな訳で、なし崩し的にアニメ鑑賞会が始まったのです……。


 皆、なんだかんだで楽しそうなのです。


 でも、ユリは……落ち着かない。

 フランちゃんやダーナちゃん達がこの過酷なエーテル空間で戦争に……そう思っちゃったら、もう無理。


 皆は……友だちと言うよりももう、家族も同然……。


 そんな家族同然の皆が戦場に向かってるのに、ユリはこんな所で何してるんだろう?

 

 いや、それはあくまで可能性の話。

 そうと決まったわけじゃない……。


 今は皆、楽しくやってるし、ユリも平和な時間を楽しめって言われてる。

 空気読むのですっ!


 けど……だけど。

 

 思わず、溜息ついちゃう。

 昔だったら、泣いてたかもしれない……。


「……なんや、心配事あるみたいやけど、どうしたんや?」


 アヤメさんが心配そうな様子で、隣に来る。


「な、なんでもないのですよ!」


「隠さんでもエエよ。そこの子も……知っとるよ。こないだエリーのとこで永友提督の接待やった時、見かけた子……スターシスターズの子なんやろ。知り合いだったなんて知らんかったけど、そんな子が名指しで遊びに来るとか、ユリちゃんとも仲ええんやな」


「お友達なのですよ……。けど、何もなしに彼女がここに来るってのもありえないのですよ……。それになんだか……とっても不安なのです」


 それだけ言うとアヤメさんも眉間にシワを寄せると、肩を抱き寄せてくれる。

 あうあう、アヤメさん……女の人なのに、なんてイケメンな事を!


「あれか? ユリちゃんの言うところの嫌な感じ……やな? ええわ、あたしもそろそろ解ってきとるよ。エルトランからも色々と聞き出しとるし、エリーもああ見えて、色々裏話とか仕入れて来れる立場なんや。だから、あたしも色々知っとるんよ。二度目のトコロザマキャンプの時、あたしら全然気づかんかったけど、なんか海賊船だかなんだかに襲われかけとったみたいやし、こないだのクシナの時も……。なんやユリちゃんって、行く先々でなんや巻き込まれとるみたいやん」


 ……そりゃ、隠しきれないか。 

 一般公開されてないってだけで、エリーさんくらいの立場ならちょっと調べれば、一連の騒ぎの背景は解る。


 エルトランも聞かれなかったら、何も言わないけど、何があったのかって聞かれたら、正直に答えちゃうと思う。


 ユリの権限なら、質問へは回答するなと命令すれば済む話だったんだけど。

 どうも、気が進まなくて敢えて、情報ロックは掛けなかったのですよ。

 

「……ユリは、割と特別なので……黙ってても、トラブルが向こうからやって来るのですよ」


「せやろうなぁ。けど、それはユリちゃんが望んだことなんか?」


「……ユリは、出来れば穏やかに皆と仲良く、楽しくしたいのですよ。けど、ユリがのんびりしてる間に、ユリの代わりに誰かがユリの巻き込まれるはずだった事に巻き込まれる……結局、そう言う事なんだと思うのですよ」


 ユリが危険な事やトラブルに巻き込まれる。

 それはもう仕方がないような気がしてきた。


 ユリは、エスクロンの強化人間でも最高精鋭のひとり。

 もうこの時点で、戦いに巻き込まれたり、狙われるもの当たり前なのですよ。


 だからこそ、色んな人達がユリを危険から遠ざけようとしてくれてる。

 それも解る。


 けど、そうやって守られてばかりでいいのかな? って思うのですよ。

 ユリの代わりに傷つく人もいれば、命をかける事になる人達だって居るはず。


 あんまり考えたくないけど、ユリの知らない所でユリを守る為に命を落とした人だっているんじゃないかって……思うのです。

 

 ……ユリは、誰かに守られるような存在じゃないのです。


 むしろ、皆を守れる力があるのですよ。

 

 状況が……いろんな人達を危険に晒してるなら、ユリがまとめて対処する……多分、それが道理なのですよ。


 でも、遥さんやグエン提督も子供は引っ込んでろって言ってた。

 エリダヌスみたいな雲の上の存在ですら、ユリには大人しくしてていいからって言ってくれてる。


 ……ユリも、甘えちゃっていいのかな? 

 そんな風にも思うんだけど……同時にそれで良いのかって思う。


 どうすればいいんだろ?


「……ユリコさん、心配ないのですよ」


 初霜ちゃんがにこやかに告げる。


「何が……なのですか?」


「はい。このロンギヌスが本命……誰もがそう思ってる。だからこそ、マークも付いてるし、こそこそと追跡もされてます。でも、今頃……本当の本命、永友提督の秘策が炸裂して、全部まとめて解決してくれるはずです。なので、ここは楽しくのんびり行きましょう! あ、皆さん! 次はカラオケいきましょう! わたし、ちょっとノッてきました!」


 思わず呆然。

 なるほど、話が見えてきたのですよ。


 ロンギヌスは、ユリも含めて囮。

 永友提督の名前が出てきたってなると、銀河連合軍も巻き込んだ大掛かりな何かが起きる。


 ……またユリの知らない所で何かが勝手に進んでる。

 そのことだけは解る。


 ここで大人しくしてるってのが、与えられた役目だってのは解る。

 けど、それじゃ駄目だって……ユリの中の何かが告げている。


「んで……。彼女はああ言っとるけど、ユリちゃんとしては……どうしたいんや? その様子やと大人しくしてろって言われてるってとこかいな?」


 アヤメさんが真面目な顔で告げる。

 顔めっちゃ近いのですよ……ちょっとドキッとする。


 ア、アヤメさん……どこまで解ってるんだろ?


「ユリは……ユリには、大事な仲間……家族同然の子達がいるんです。そして、その子達は多分、今……戦場に向ってる。それに、これから間違いなくとっても危ないことが起きる。そんな時に、ユリはこんな事やってて良いのかなって……。けど、ユリは子供だから……安全なところにいて当然だって……皆が言うのです」


 ……正直言って、良く解らないけど。

 

 酷く胸騒ぎがする。


 何か、取り返しのつかない分岐点が間近に迫ってる。

 そんな確信めいた予感がするのですよ……。


「そっか。あたしはユリちゃんみたいに戦争とか縁ないし、良く解らんのだけど。友達が大事やってのは解るで。まぁ、こんなとこで何か出来る訳もないけど、もし何か出来ることがあるなら、あたしは止めたりはしないわ。だって、それは、ユリちゃんにしか出来ないことなんやろ? それに何かをしたいって思って行動する……それは子供だからって理由で止められる筋合いのもんじゃないやろ……違うかな?」


 ……アヤメさんの言葉。

 アヤメさんには、何も話してないから、ユリが何で悩んでるかとか解らないと思う。


 けど、アヤメさんはユリが何をやっても肯定してくれるそんな風に思う。

 それに確かに子供だから、よそ行って遊んでなさい……そんな事言われて、納得なんて出来ない!


「……ユリに出来ること。ユリにしか出来ないこと。そっか、結局……周りが何を言ってても、最終的にはユリがどうするか……なのですよ!」


「ん? なんか、ふっきれたんかな? ……まぁ、我慢は体に良くないしな。と言うか、うじうじ迷ったりするのってユリちゃんらしゅうないで! ユリちゃんは、あたしらと違ってやろうと思えば、この超巨大な船だって一人で動かせるんやろ? 良く解らんけど、失敗したらよしよしって慰めるくらいは出来るし、やらかしたら一緒に謝るくらいなら出来るから、ちょっと無茶のひとつやふたつ軽くやってみいや!」


 そう言って、背中をバンバンと叩かれる。


 アヤメさん……多分、良く解ってない。

 でも、アヤメさんなりにユリがうじうじ迷ってるのを見て、迷うな! ってエールを送ってくれた。


 ……その言葉は、ユリの中の迷いを振り切るのに、十分だったのですよ!


「そうですわね。それにクシナの件だって、普通はあんなの絶対助けられなかったって聞きましたわ。ユリコさんはわたくし達の前で軽く奇跡を起こしてくれた。今回も……事情はよく解らないけど、そんな奇跡を起こさないといけないような……そんな何かが起きる。そう言うことなのですね?」


 ……気が付いたら、エリーさんが目の前にいた。

 

 声を押し殺して、初霜ちゃんの視線遮ってくれてる様子から、彼女がユリの見張りだって事も解ってるのかも。


 エリーさんも静かに後押しするような言葉を告げてくれる。

 何だかんだで、年上……エリーさん素敵なのです!


「まぁ、あたしらはユリちゃんが何をしでかしても、驚かんし、許すで! やりたいなら、どーんとやってくればいいんやで!」


「そうですわね。貴族の誇りにかけて、わたくしは、何があってもユリコさんの味方ですわ! よく解らないけど、やらずに後悔するよりやって後悔……なのですわよっ!」


 エリーさんいいこと言った!


 やらずに後悔とかそんなのはイヤ。

 同じ後悔するなら、目一杯、今やれることをやるのです!


「ありがと……! なのです! ユリ……もう迷わないのですよ!」


 ユリも二人の言葉で色々吹っ切れたのですよ!


 もう見てみないフリして、大人しくしてるとか性に合わない!


 出来るのにやらないとか、後になって後悔するだけなのですよ!

 こうなったらやれることはなんでもやるのですよ!


 こうなったら、行動開始!

 その第一歩は……。


 笑顔で初霜ちゃんの背後に周り、その両肩に手を置くと、その膝裏をかっくんする。


 力が抜けたように、そのまま初霜ちゃん正座みたいな感じで、その場にペタンと座り込む。

 あまりの自然さに、初霜ちゃんが呆然としてる。


 人体を模してる限り、人を遥かに超えるハイパワーの持ち主でもこれには逆らえないのです。


「はにゃっ! な、なんですか……これ? ユリコさん、今何を!」


 パニックになってる初霜ちゃん。

 けど、そのまま片手で肩を抑えながら、もう片手をそっと脇腹に添える。


「初霜ちゃん。皆さんのお気持ちは良ぉくわかったのですよ。けど、ユリもいい加減、皆してダンマリで色々裏でこそこそとか、子供は黙ってろとか言われたり、もう我慢の限界なのですよ。……知ってることを洗いざらい白状してもらうのですよ」


 一応、笑ってるつもりなんだけど、ユリの笑顔を見て初霜ちゃんと皆が、凍りついたようになってる。


「……ユ、ユリコさん……そのなんか超怖い笑顔は何なんですか? そ、それにこのパワー! え? このわたしが片手で動けなくなるとか、ちょっ! まっ! いつのまにか腕ロックとか……。え? 振り払えない! シールドもいつのまにか侵食されてるって……はわあああっ! 何が起きてるのです!」


 触ったどさくさで初霜ちゃんの各種防御ハードウェアをナノマシンハッキングで侵食した。

 

 スターシスターズのハードウェアハッキングとか、前代未聞だけどこうやって触れてるだけで、システム仕様もガンガン読めていく。


 あれ? 思った以上にチョロい?

 地上最強レベルの戦闘力って聞いてたけど、ゼロ距離で触ることが出来るなら、割と何とかなるみたいなのですよ。

 

 なんだか良く解らないシステムも山盛りだけど、完全支配とかそこまでする気はないのです。


 あくまで、抵抗を排除するレベル。

 口を割らせるのにも、拷問とか酷いことはしないのです。


「大丈夫なのです。手荒なことはしないのです。大人しく知ってることを白状するならよし、さもないと……」


 手をワキワキさせると、何をされるか悟った初霜ちゃんがユリを振り払おうとするんだけど……。

 正座して肩を上から抑えられる……なんて体勢で、おまけにパワーブーストシステム周りにも侵食済み。


 ……初霜ちゃん、完全制圧完了なのですよ。


「……わ、わたし、詰んでます? もしかして」


 笑顔のままで、コクコクと頷く。

 

 状況を悟った初霜ちゃんがみるみるうちに涙目になる。


 けど、ここは情けも容赦も無用なのです!

 空いた片手を初霜ちゃんのセーラー服の袖口からズボッと突っ込む。


「あ、そこは駄目ですっ! 脇の下にダイレクトに手とか……あのなにを? 手がですねーっ! そこは駄目なんです! や、やめてーっ! う、うきゃーっ!」


 初霜ちゃんの絶叫が木霊した。

 

 ……ユリ、もう自重とかやめます。

 もう、やりたいようにやっちゃいます!

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