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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第四十九話「チーム・ユリコ出撃!」⑥

「ダゼル君も正直だね。解る……けど、ハーレムとか言われて、僕はどう応えるべきだったんだろう? 一応CEOってのは、他所で言うところの王様みたいなもんだとは思うんだけど……。お風呂で女性からお背中流しますよって言われて、普通はどう対応するんだい?」


「……僕らに聞かないでください。もっとも、ゼロ兄さんは言わばエスクロンの絶対権力者ですからね。そこは王者として、皆まとめて可愛がってやるぜ! とか言ってしまっても良いのでは? ユリコ姉さまを巻き込まなければ、僕は問題にしませんよ」


「そ、そうかな? 確かに考えてみれば、逃げるんじゃなくて、ダゼルみたいにビシッとお説教でもしとけば良かったのか。……今度からそうするよ」


「アイツらも別に悪気とか無かったみたいだからな。まぁ、俺達はこの国に尽くす事、ゼロ兄者の助勢となることが存在意義だからな。その辺は、ちゃんと言い聞かせといたんだがなぁ……。あいつら、反省しましたとか言っときながら、全然反省してねぇじゃねぇか……」


「ははは、ありがとう……ダゼル。……と言うか、こんな話してる場合じゃないんだよなぁ……。クリーヴァのハゲオヤジ……なんで、この状況であんな強気に出るんだか。確かにあの人達にとって譲れない一線だってのは解るけど、オール・オア・ナッシングなんて論調で迫られたら、こっちだって妥協しようがない。なにあれ? 本気でうちとやりあおうっての? 確かに準備不足は認めるけど、総合力ならエスクロンは、うち以外の全銀河人類が相手でも圧倒できるんだけどなぁ……。まぁ、銀河連合ぶっ潰して、銀河帝国建国とか別にやりたいとか思わないけどね」


 ……この辺りの話については、エスクロンも想定ケースの一つとして、自分達以外のすべてが敵に回ると言う状況シュミレーションを実施しており、それでもなんとかなると言う結論を出していた。


 もちろん、相応の準備期間を設けた上で、エーテル空間軍事力の大幅拡充が前提条件となるのだが……。


 もっともその場合の銀河全域での死者総数は、経済的な混乱や通常空間での戦闘や地上戦なども考慮すると、銀河連合の総人口の2割から3割が犠牲になると試算されていた。


 エスクロンの国民も軽く見ても一割は犠牲になる……これは軍関係者のみならず、民間人の犠牲者が不可避だと言う結論から出た数値だった。


 過去の戦乱の前例でも、どう転んでも、一旦戦争状態ともなるとすべての民間人を守り切ることは難しいと言うのは明らかだった。


 ましてや、エスクロンも商業国家である為に、銀河各地に自国民が点在しているのが実情で、如何に全体主義国家としての性格の強いエスクロンと言えども、短期間に全国民を保護下に置くのは至難の業と言えた。


 いずれにせよ、エスクロン一国とその他大勢の銀河人類の争いともなると、間違いなく数百億単位の犠牲が出るのは明白だった。


 ……現在の地球人類が5-6回滅亡してもまだ足りないと言えば、その数値の途方のなさが理解出来るだろう。


 それに銀河連合軍の存在もネックになる事が予想されていた。

 評議会から銀河連合の敵として認定されるとなると、必然的に銀河連合軍も敵に回すことになる。


 相応の長期戦となれば、生産力と資源力、技術力の優位から、銀河連合軍の殲滅も不可能ではなく、銀河平定も不可能ではない。


 だが……結局、面倒ばかり背負い込むことになる以上、その道は他に選択肢がない限り、積極的に選ぶべきではないと言うのが、総論と言ったところだった。


「極論を言えば、それが一番手っ取り早そうなんですけどね。けど、冗談でも兄上ともあろう方が、そんなことを口走るとは、かなりお困りのようですね。心中お察し致します。かくなる上は僕らも一刻も早く現場にたどり着き、僕たちの不退転の意思を示すとしますよ。まぁ、すでに一戦やりあってますし、ここは軽く蹴散らしてご覧に入れますよ。戦闘になって決定的な敗北を喫すれば、さすがに奴らも折れるでしょう」


「すまないねぇ……。本当は君達を戦場に送るなんてしたくなかった。それにロンギヌスも現場に向かうように指示を出している……。この状況、恐らく向こうが挑んできてるのは、チキンレースだと言うのがこちらの分析結果だ。つまり、双方ベットを釣り上げていって、先に根負けしてブレーキ踏んだ方が負け。向こうの手札も残りはそう多くないはずなんだが……何故、降りようとしないんだかね。なにか秘策でもあるのかな?」


「なるほど、チキンレースですか。だからこその僕達の戦線投入、そしてロンギヌスと言うことですね。こちら側の持てるカードを最大限に投入……向こうが降りるか、こちらが降りるかのハッタリ勝負。さすがにこの陣容で本格的な実戦となると、正直覚悟が必要だと思っていましたが……。なるほど、僕たちはあくまで見せ札と言う事ですか……悪くない采配です。そう言うことであれば、僕も納得です。敵はこちらにまともなエーテル空間戦力がなく、銀河連合軍も介入してこない……そうタカを括った上での強気と言うことでしょうからね」


「まぁ、そう言うことなんだろうね。……我々も舐められたものだよ。けど、連合評議会はこの期に及んで逃げ腰で、本件については、こちらに譲歩するように言ってきてるし、問題が起きても一切関与しないなんて通告してくる始末だ。あれじゃ、敵に塩を送ってるようなものだよ……無能な味方ってのは、ホント……度し難い。それとも案外、連中は銀河連合自体を奴らに売り払うつもりなのかも知れないね……だとすれば、妙な前例を作らないためにも、なんとしても、ここは阻止しないといけないな」


「ですな! それにしても、評議会のクズどもめ! どこまで恥知らずな……まさに内患とはこのことですな! ゼロ兄者……この交渉、一歩も譲らず押し切るべきです。何より正義は我らにあります……我らが退けば、ケスランの民衆は悲惨なことになりますし、結果的に脅しに屈して、罪なき人々を見捨てたとなると、我らの名声も地に落ちることになりますぞ! この一戦、勝利にためならば、我ら喜んで犠牲となります!」


「ダゼルの言うとおりです。僕も同じ思いですよ。なぁに、向こうの戦闘艦隊の戦力なんてたかが知れてますよ。今も軽く敵の警戒空母と防空機を蹴散らしましたが、この「鴉」の性能は、向こうの機体を遥かに凌駕していました。仮に本格的な戦闘になっても、楽に勝てると断言いたしますよ」


「全く頼もしい弟妹ていまい達だ……君達のおかげで、僕も勇気づけられた思いだよ。ああ、言われるまでもなく、ここは絶対に譲れないってのは承知の上だよ。正直、ロンギヌスを最前線に出すなんて、御免被りたかったけど。こちらの動かせる戦力でも、あれは最大級の大駒だからね。出せるものは何でも出す……その心積もりでないと、この戦いに勝てない。けど、問題はユリコちゃんが暴発しそうって事なんだよね……悪いことにエリコさんが最終調整してる関係で、ロンギヌスに白鴉の実機が積みっぱなしになってるんだよね」


 白鴉の実験機については、エリコが担当しており、エスクロンの勢力圏に入り次第、エーテル空間での実機フライトテストを行う……エリコ自身そう言う心つもりで、最重要格納庫に実機をしまっていたのだ。


 けれど、その気になれば、ロンギヌスを自由に従えることが出来るユリコは、いざとなれば、白鴉を使っての出陣も可能……そう言うことだった。


「なんだと? その事にユリコ姉さんは気付いてんのか?」


「エリコさんが上手く誤魔化したみたいだし、色んな人達が彼女にストップをかけたいみたいで、色々動いてくれてるんでね。この紛争のことも含めて、彼女は気付いてないんだけど。彼女の勘……あれはもう魔法みたいなもので、論理とか常識ってものを軽く超越して、決して知り得ない情報も彼女は識り得る。これは、君達には言うまでもないことかも知れないけどね」


 ゼロのその言葉に、誰もが無言で押し黙る。

 かつて、常にその身近に居たがゆえに、その言葉は大いに頷けた。


 何を根拠に知り得たのか、誰にも理解できない予知能力じみた異能。

 自らの敵を正確に探り当てて、その急所にいとも簡単にたどり着く独特の嗅覚のような何か。


 そんなユリコの異常性に、長年身近にいた誰もが気づいていた。

 そして、その異能こそが彼女をオンリーワンに仕立て上げている。


 それもまた、彼らの共通認識であった。


「沈黙は雄弁なり……だね。なんにせよ、彼女に隠し事は無理だろうって僕は思ってるんだ。だから、恐らく彼女は最終的にこの件に介入してくるだろう。まぁ、そうなると……ユリコちゃんが出るって言い出したら、多分白鴉を出さざるを得なくなると思う……。なにせ、ロンギヌスは自分達の最優先命令者にユリコちゃんを登録しちゃってるからね。ユリコちゃんがこの紛争への介入を希望したら、迷わず白鴉を差し出すだろうね」


「……宇宙最強の機体と最強の強化人間の組み合わせか。見てみたい気もするが……彼女が出るとなると、もうチキンレースとか見せ札とか関係なくなるな。なんもかんも軽くふっとばして終わりだろう……あの人はそう言う人だからな。ややこしくなると、全部なぎ倒すとか極端に走るんだよなぁ……あの人。なぁ、ゼロ兄者……ロンギヌスをどっかの中継港にでも留めることは出来ないのか?」


 ダゼルの述懐。


 ユリコは都合の悪いことはさっさと忘れると言う習性があるので、良く覚えて居ないのだけど。


 ダゼルを含めた第3世代の仲間達が荒みきって、クーデター計画を実施しようとした事があったのだ。

 それ自体は、ユリコの説得で丸く収まったと言う話にはなっているのだけど。


 実際の所、ユリコはダゼル達との話し合いの最中に色々面倒くさくなったのか、キレた。


 そんなにやりたければ、自分を倒してその屍を乗り越えていけ! ……と。


 結果は、ダゼルを含めて10人ほどの戦闘系強化人間がたった一人相手に、まとめてなぎ倒されると言う恐るべき結果に終わった。


 以来、ダゼル達はユリコにだけは絶対に逆らわないと誓ったのだ。


 今回の状況もややこしさでは、あの時と同様極めてややこしい。


 そんな状況を目にしたら、武器を持ってるものを全部なぎ倒す……それ位、やってのけるだろうとダゼルは確信していた。


「いや、ダゼル……それは難しいと思う。ロンギヌスの動きは敵にも伝わるように銀河共有ネットにも筒抜けにしてるんだ。事実、敵はロンギヌスが動いてることで、かなり焦っているみたいなんだ。見せ札という意味では、ロンギヌスのプレッシャーは今の時点で外すわけにはいかないんだよ」


 ケリーの説明は至極合理的だった。

 なお、ケリーはクーデター計画には参加せず、むしろ諌める側だったから、キレたユリコの恐ろしさはダゼルほどは思い知っていない。


 少なくともダゼルは、ユリコを震源地に少しでも近づけないこと……それが無難な選択肢だと思っていたのだが。


 この様子では、とても無理そうだと悟り、思わず天を仰ぐ。


「……さすがケリーだね。そこまで理解してるんだ……やるね! ところでさ、一応確認なんだけど、君等ユリコちゃんを最前線に出すのってどう思ってるのかな? 皆、ユリコちゃんを神様か何かみたいに思ってるみたいだけど……そこら辺、どうなのかなって思ってさ。僕の本音を言うとはっきり言って、気が進まない……。彼女にはもう少し優しい時間が必要だと思うんだ……僕の勝手なワガママなんだけど」


「姉さんが最前線に立つのは当たり前……と言いたいところですが。ここは敢えて、反対と言わせていただきたいですね。ユリコ姉さんは、僕らの背後でゼロ兄さん共々僕たちの指揮を取ったり、後進を導くべき立場でいるべきかと思います。僕らには替えがいますが、姉さんの代わりになる者などどこにもいませんし、その手を血で汚すなど可能ならば避けていただきたいです。まぁ、これは僕の願望なんですけどね」


「そうだな。俺もケリーと同意見だ。リスクを負うのは俺達だけで十分だ。ユリコ姉さんは、安全な所でどっしり構えてて、俺達が慢心したり、暴走しないように時々軽くブチのめしてくれる……そう言う役どころでいいって思うぜ。なにせ、俺達の誰も姉さんの代わりなんて務まらねぇし……姉さんは問答無用で最強。それだけで十分だと思うぜ」


「替えが効かないってのは、君達もなんだけどね。エーテル空間ってのは、宇宙空間以上に簡単に人が死ぬ場所なんだから、命を大事に……これは何度だってしつこく言うからね? 実際、うちの戦闘艇で黒船とやりあってるPMCの人達とか……公になってないだけで、現場じゃガンガン殉職者が出てるみたいなんだよ。シュヴァルツやクリーヴァの連中も完全無人戦闘艦とかってあんまり使わないから、相当な人死出してると思うんだよね……。正直、それが連中とスターシスターズが相性が悪い理由の一つではあるんだよ」


「……ここは死と隣合わせの空間だからな。だが、実際問題……ユリ姉さんが戦場で落とされるとか、それこそありえねぇと思うけどな。俺も白鴉のシュミレーションデータと戦ったから、そこら辺は断言するぜ。ありゃ、俺らとは格が違うぜ!」


「だよねー。実戦経験豊富なスターシスターズでも、ユリ姉さんに一方的にやられたって聞いてたけど。とんでもなかったよ……僕らなんて、軽く秒殺だったし、あのダーナ姉さんですら、秒殺が分殺になった程度で、似たようなもんだったよ。白鴉の実機なんて、触った事もないと思うけど、同じくシュミレーター経験しかない僕らでも、すんなり初陣で鴉を乗りこなせてるのを考えると、ぶっつけ本番だろうが、軽く無双出来ると思うよ」


 二人は別に本職の戦闘機乗りでもなんでも無い。


 けれども、この二人が駆る宇宙戦闘機は、本職の強化サイボーグパイロットを軽く蹴散らし、化け物呼ばわりされる……その程度には凄腕なのだ。


 ダーナに至っては、エスクロン宇宙軍最強アグレッサーと呼ばれるほど。


 それが、まるっきり子供扱い……その程度にはユリコと三人には超えられそうもない壁があった。

 二人の言葉は大げさでもなんでも無かった。


「遥提督から、抜き打ちの実戦テストの提案が来て思わず頷いちゃったけど、驚愕すべく結果だったからねぇ……。「あれは戦の申し子にして銀河連合の切り札になり得る。可能な限り後方で温存することを推奨する」なんて評価が返ってきたよ。これは喜ぶべきなのかなぁ……正直、複雑だったよ」


「そうだねぇ……ユリコちゃんがあそこまで好戦的だったのも驚きだけど、スターシスターズを軽くのしちゃうとか、冗談みたいな結果ですよね。それで、最前線なんて出ちゃったら、もう修羅モード発動ってなって、敵はまとめて皆殺しとかなっちゃうと思いますよ。でも、私達としては、出来れば大人しくしてて欲しいところだよね……」


 しれっとアキの声が三人の秘話回線に紛れ込んできたことで、全員揃って絶句する。


「あ、あれ? アキちゃん? ねぇ、ケリーくん、これって密談モードじゃなかったの?」


「そ、そのはずですが……。僕らの個人回線に暗号化を掛けた上で、後方ネットワークに拡散化して、ひっそりと紛れ込む形で相互接続してるので、割り込みなんて不可能なはずです」


 ついでに言うと、このケリー。

 電子戦に関しては、かなりの腕前の持ち主だった。


 個人戦闘力、機動戦闘、操艦全てにおいて死角なしと、割とオールマイティな実力者なのだが……。

 

 電子戦についても、スペシャリストのアキには及ばないまでも、簡単には出し抜かれない……そう自負していたのだった。

 

 だが、その自負はもはや、過去形になりつつあった。


「甘いよー? バニラアイスのように甘いっ! 後方ネットワーク通信とか、このアキちゃん経由で通信してるようなもんなのに、秘匿とか出来る訳ないじゃないの……暗号化するなら、もうちょっと凝った方法でないと、私クラスの電子戦特化強化人間相手だと秒殺だよ? ねぇねぇ、男の子同士何の話してたの? 猥談でもしてたの? アキにも聞かせて欲しいなぁ!」


「はい、フランも興味津々です」


 男子専用秘匿回線は、もはやオープン回線同様となっていた。


 ケリーも諦めたらしく、スクランブルを解除する……無駄なことはやらない。

 ケリーはそう言う主義者だった。


「なに、なに? ボクなら、喜んで一緒にするのになぁ……エロ話! ちなみに、フランちゃんはさっき紐パンに履き替えたそうです。その理由がねー」


「ダーナちゃん、それ以上言わないの……。ここは戦場、流れ弾が飛んでくるのも当たり前。流れ弾に当たる所にいる方が悪いのです。ターゲットロック……ここで手が滑ったらフレンドリーファイア確定っ! ああ、なにかしらこれ……ゾクゾクキュンキュンですわっ!」


「あはは、それってユリコちゃんの名セリフ! なんか、エスクロン製のAIの子達も同じセリフ言って、邪魔くさいクリーヴァの監視船とか沈めてるって聞いたよ。もうユリコちゃんって、エスクロンの戦闘AIの神様みたい感じなんだよねー。まぁ、本人、そのへん、全然解ってないみたいなんだけどね……。と言うか、フランちゃん、悶えてないっ! ……ゼロ兄さん、ドン引きだよ!」


「フランちゃん、やめてーっ! ロックオン警報とか心臓に悪いし! うにょーっ! はっがれねーしっ! フランちゃん! なんで、このボクの戦闘機動を正確にトレース出来んのよっ!」


「うふふ、ダーナちゃんの機動予測なんて、お手の物ですよ。余計な事は言わない……教訓にしましょうね! うそっ! この私のロックオンを外すの? ダーナちゃん、何そのキモい動きっ! カクカックーンって曲がりましたよっ! それにそんな超低空飛行とかヤバいですよっ!」


「うははーっ! ユリ姉必殺のバーチカルスクリュードライブ! 鴉の可変翼を使っての揚力操作による超回転による超絶マニューバからの流体面ギリギリ飛行! 荷重とかエッグいけど、なんとか許容範囲かな……うぉ、ちょっと鼻血出た。けど、さすがユリ姉の無茶振りに鍛えられただけあって、機体剛性とか素材レベルで半端ないね……。もっとも、シミュレーション上のユリ姉の動きはもっと鋭かったんだけど……修行が足りないのかな……」


 ダーナの機動を一言で言えば、稲妻のようなジグザグ機動を描きつつ直滑降でまっすぐ落ちていき、流体面ギリギリでほぼ直角に向きを変えて、そのまま流体面ギリギリを滑るように飛行すると言う無茶苦茶な機動だった。


 そこまでやって、鼻血出たで済むのだから、強化人間のG耐性も半端じゃなかった。


「はぁ、ダーナちゃん……素敵。すっかり美味しそうになっちゃって……。獲物の質としては、野良AI艦なんて比じゃないですね……。あ……失礼、ちょっとよだれが……」


「うわぁ……。フランちゃん……相変わらず肉食系! フレンドリーファイアは厳禁だから、撃ちたければ敵を撃とうよ! 敵だったら、別にいくら撃ってもいいから! つか、早く出てこないかなー! あ、そうだ! ゼロ兄さん……なんで、フランちゃんがパンツチェンジしたのかって、解説要ります?」


「……要らないって言っとくよ。いや、君達ってホント、頼もしいよね。もう余計な口出しもしないけど、下ネタとフレンドリーファイアはやめようね……うん! 健全、安全路線でよろしくね! ケリーもダゼルも皆を頼んだよ! でも、皆無事に帰還すること、遠足は帰るまでが遠足って言うからね。戦争も同じだよ?」


「……了解だ、兄者」


「了解です。CEO……。帰ったら、飲みでも付き合いますよ。僕らはアルコール抜きですけど」


「男子は皆、仲いいねーっ! 全く尊いですなー!」


「……だねぇ。イケメンXイケメンXイケメンとか最高だよね!」


「男同士の友情は女子にとってはロマンですからね……。悪くないですよ」


「「「いや、だから、なんでそうなるのっ!」」」


 男性陣3人の抗議の声が綺麗にハモった。


 ……なんともお気楽な調子なのだけど。


 エスクロン最高精鋭、第3世代強化人間トップチーム。

 通称チームユリコは何もかもが不足している中、自ら望んで戦場に足を踏み入れつつあった。


 彼女達の戦いはすでに秒読み段階にあった……。

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