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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第四十七話「美味しく焼けましたーっ!」②

「……うん? ユリコちゃんはどうだい? 一応、君が今回の主賓だから、是非感想を聞きたいんだけど」


「美味しいです! でも、何か足りないって感じもするんですよね。地上キャンプで食べたワイルド直火焼き肉……あれが美味しすぎて、すっごい印象に残ってて、こっちはちょっと上品かなーって」


 そこまで言って、失言に気付いたのですよ……。

 けど、永友提督もそこまでショックって感じでもない様子で苦笑してるのですよ。


「そうか、そうか……やっぱりね。残念ながら、電気オーブンじゃ、火力が足りなくてこれが限界なんだよ。直火焼きか……エーテル空間は直火厳禁だから、無理な相談じゃあるんだけど。私もどこかの惑星に降りて、思う存分直火使って料理したいもんだ。料理ってのは火力が大事なんだ……解るかな?」


「解るのです! ユリのチャーハンも直火だと5割増しで美味しかったのですよ!」


「おお、解るのか……。確かにチャーハンみたいな中華料理は火力が命だからねぇ……。そんな経験もしてるとは、羨ましい限りだ……。クスノキ家ってのは、子供たちに良い教育をしているんだね。エリコさんもこの世界の常識を外れた発想力と、その柔軟な思考に感心したけど、妹さんもしっかり似た者同士のようだね」


「そうですね……。うちはクスノキ家の分家ですが。お父様からして、異色の経歴の持ち主ですからね」


「……タイゾウさんか。元は銀河各地を渡り歩く自由貿易商人と称する風来坊だったんだっけ。あの人も変わった人みたいだし、たった一人、虜囚の身でシュヴァルツをかき回してるからねぇ……。そんな人を平然と婿養子にするってのもすごい話だね。あの人のことも身内の視点で聞かせてもらっていいかな?」


 遥提督も一目置く……さすがお父さんなのですよ。

 こうなったら、お父さん自慢やっちゃうのですよ!


「お父さんは、銀河最強お父さんなのですよっ! クリーチャーごろごろのエスクロンの秘境島で何日も暮らしたり、修行に来てる武術の達人に挑まれても、全員戦わないうちに負けを認めさせたりと無敵なのですよ!」


「ああ、さっきのアレか。なるほどね……達人同士、切った張ったするまでもなく、結果が解る。なかなかすごい世界に生きてる人なんだね。けど、そんな人がクスノキ家の当主に迎えられたってのは、どんな経緯だったんだい? まぁ……やっぱり、興味は湧くね。あの人、なかなか渋くてカッコいいからさ。そう言う男が家庭に入るってのはどう言う心境だったんだろうね」


 お父さんが婿入りした経緯? お母さんと結婚した理由……なのですよ。

 うーん? あんまり真剣に聞いたこと無いなぁ……。


「……ユリが聞いた話だと、ある日突然、お祖父様が家に連れて来て、お母様に「なかなか見込みある若造だから、もし気に入ったら、コイツを婿にしてやってくれ」って言われたってのが馴れ初めらしいのですよ。ユリにもそんな感じで素敵な旦那様がある日突然、やって来ると思うのですよ!」


 ちなみに、クスノキ家ってのは本家も分家も、割と代々女系家族で、歴代の当主は外からの婿養子ってパターンが大半。

 

 もっとも、今の時代は男子直系なんて事に拘るような習慣はとっくに廃れてるのですよ。

 

 古来から続く血統ってのは、それだけで社会的なステイタスになるので、少なくともエスクロン人同士の結婚の場合、より歴史があり、家格の高い家の名字を名乗ると言うのが主流なのですよ。


 クスノキ家はと言うと、過去にCEOを輩出した事もあって、古代日本史上最高と謳われる武将の子孫と言われる名家中の名家だから、実はクスノキ家ってのは、分家だけで三桁余裕くらいいるのですよ。


 エリコお姉さまの名声につられる形で、エスクロンの各部署にクスノキ家の人々が優先配置されつつあって、クスノキ家と言えば、結構な勢力になりつつあるみたいなのですよ。


 当然ながら、玉の輿狙いや婿入り出世を狙ってる人なんてのもいて、ユリも適齢期になったら、お見合いの話とかジャンジャン来ると思うし、お父さんがきっと見どころのあるいい人を見つけてくれるのですよ。


「……ユリちゃんって意外と乙女なんだ。けど、そう言うのはむしろ、悪くないと思うよ。アタシみたいに戦争ばっかりやってるうちに行き遅れて、生涯独身とか悲しいからね……。アタシの前の人生の後悔の一つではあるよ」


 そう言って、寂しそうに笑う遥提督。

 一瞬だけ見えた素顔……そんな気がして……。


 なんとも、しんみりとした空気が流れるんだけど。

 

「はっはっは! まぁ、再現体で前世は平凡で妻子に恵まれて……なんてヤツの方が少ないからね。けど、子供の前ではそう言う話はしないんじゃなかったかな?」


「そうだね……。不思議とこのユリコちゃんと相対してると、つい要らないことを口走ってしまうんだよなぁ……。まぁいいさ……つまらない話さ。忘れてくれると助かる。けど、この銀河が平和になって、無事生き延びていたら、そう言うのも悪くないって思わなくもないね。それくらいの役得があってもいいって思わない?」


「平和になったら……か。そうなったら、私もどこかの地上世界で永住でも希望してみるかね。我々再現体も耐用年数と言う意味では、軽く100年くらいは寿命があるらしいからね。このエーテル空間が平和になったら、退官して普通の民間人として生きるって言う選択肢もあるって話は聞いてる。もっとも、そんな実例まだ一人も居ないのが実情なんだけどね……」


「それを言ったら、私も本来だったら、今頃気楽な年金ぐらしのはずだったのだがね。何の因果か、この年になっても未だに最前線で戦場の日々だよ。しかし、平和になったら……か。ついこの間まで、我々人類に果たしてこの先があるのか、そんな絶望的な気持ちで戦っていたのだがな。よもや再現体の君達の口から、そんな言葉を聞けるとは……。ユリコくんに会わせてみた甲斐はあったようだな」


「確かに……な。俺達が守るべきものってのは、まさにこのユリコお嬢ちゃんみたいな子であるべきだよな。おまけに、この場の誰よりも強いと来れば……。こりゃ俺らも負けてらんねぇだろ」


「ユ、ユリは守られてるだけじゃないですよ! ユリは……負けず嫌いだし、エスクロン最強最高精鋭でもあるのですよ!」


 そう言い切ったところで、唐突にお腹がキューと鳴く。


「まぁ、それは結構だけど、お腹は正直なようだね……。皆も、そろそろ黙って食べようか」


 そう言って、遥提督が笑うと、皆揃って笑われる。

 ちょうどローストビーフさん食べかけだったから、なんとも締まらなくなってしまったのですよ。


 大失敗……と言うか、純粋に恥ずかしいのですよ。

 こんなのまで、人体準拠にしなくたっていいのに……なのですよ。


「まぁ、そうだね。ユリコちゃん、先も言ったけど、我々は君を戦わせたくないんだ。そこは出来れば受け入れて欲しいな。けど、なんだかんだでローストビーフは気に入ってくれたのかな? 君のお腹はもっと寄越せと告げているようだね」


「今のユリはリミッターカット状態なんで、お腹空きやすいんです。空きっ腹は最高の調味料なのですよ! えっと、お代わり欲しいなぁ……みたいな」


 空っぽになったお皿を見つめながら、そう答えると、永友提督が豪快に大笑いして、疾風さんがもう一枚お皿を持ってきてくれる。

 

 ……先回りとは、疾風さん気が利く子なのですよ。


「素直でよろしい! エリコくんもどうだい。君も気に入ってくれたかな? ローストビーフは脂肪分も控えめでヘルシーな食べ方だから、女性にもお勧めだよ?」


「そうですね……。これならエスクロンの一流シェフ達と張り合えるどころか、連中裸足で逃げ出しちゃいますよ。私も提督のご料理はよくご相伴させてもらってますけど、毎回新メニューが出てきたり、味が改良されてたり、確実に腕を上げてらっしゃるようで、さすがです」


「いやぁ、はっはっは! エリコさんは相変わらずお世辞が上手いねぇ! まぁ、今度マスコミの取材があったら、本当に美味いものはこれだ! って、私の料理を是非賞味させたいものだね」


「ったく、永友ちゃんはいつも戦闘になると毎度毎度及び腰なんだが……。人心掌握に関しては、天下一品だし、なんだかんだで連戦連勝の常勝提督だからな。今回の大艦隊だって、手伝ったら、永友ちゃんの美味い飯が食えるって話が独り歩きしてたみたいだからな。そのおかげで、これだけの大艦隊が集まってくれたようなもんだ。ユリコちゃんも気をつけろよ。ぶっちゃけ美味い飯食わせるから、一戦付き合えって言われたら、グラつくだろ? それがこのダンナの人たらしの手口なんだぜ?」


「……美味しいご飯に勝るご褒美は無いと思うのですよ……。うーん、そう言う事なら……やっちゃうかも?」


 フルコースご馳走するから、一戦参戦よろしく……なんて言われたら、ユリだって、頑張っちゃうのですよ!


「いやいや、駄目だってば! 今、お断りって言ったばっかりじゃないの」


「まったく、タチがわりぃよな。知ってるかい? 永友ちゃんの艦隊……基幹戦力は12隻たらずだが、ダンナが声かければ、すぐに駆けつけてくれるような艦隊を3個艦隊も抱え込んでんだぜ? リチャードの野郎と赤松の嬢ちゃんは自称弟子。ベリフォードのダンナもアンタに心酔して、盟友を自称してるからな。辺境艦隊の再編成で一人頭の傘下艦艇数が増えてるから、それだけでざっと50隻近くになるな。ったく、ちょっとした軍閥じゃねぇの……そりゃ、中央の奴らも足引っ張りもするだろうさ」


 ……リチャード・ロウ中佐の第363駆逐隊、赤松文枝中佐の第508駆逐隊。

 どっちも三個駆逐艦隊、12隻編成の駆逐艦隊なのですよ。


 リチャード中佐は、グリーブス級駆逐艦ばっかりで、赤松中佐はフレッチャー級ばっかりで12隻……。

 如何にも艦種だけ合わせた数合わせ艦隊って感じなんだけど、二人共永友提督の傘下提督みたいな感じで、提督の指示やお願いを聞いて、あちこちに出張って、結構戦果を挙げてる。


 戦闘指揮もどちらも堅実、かつ卒なくこなす優等生指揮なんだけど。

 戦果の拡大とかよりも、与えられたミッションを確実にこなす仕事人って感じ。

 

 ベリフォード大佐に至っては、重巡オーガスタと空母ホーネットを主力とする即応機動艦隊の指揮官なのですよ……。

 

 これもやっぱり、12隻編成で戦力的には、グエン艦隊に匹敵するような強力な艦隊なのですよ。


 そうなると……永友提督はひと声掛けるだけで、あっと言う間に48隻もの大艦隊を編成できると。

 独自に揃えた無人輸送艦なんかも何隻も持ってるみたいだから、補助艦艇込みだと軽く百隻を超えるかも……。

 おまけに、色んな民間企業や中央の兵站部にもシンパがいて……。

 

 自分の名前のグルメブランド持ってて、銀河レベルで展開してるから、莫大なパテント収入もあって、知名度も高いから支援ファンドもいくつもあって、相当な資金力も持ってる。

 

 物資なんかもその気になれば、自給自足で調達して、一声かけるだけで集まってくれるお友達が何人も居て、中央の意向を無視して自由に動ける……そりゃ危険視もされるよね。

 

 もっとも、その周到さのおかげでいくつもの危機的状況で勝利して、銀河の平和に貢献してるのも事実で……その行動力と先見性は、やっぱり現代人には無いものだと称賛もされてるのですよ。

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