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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第四十七話「美味しく焼けましたーっ!」①

 今の所、拠点防衛の固定砲台や警戒システムとか迎撃戦闘機。

 近隣防衛用の警備艇程度のお粗末なものしか作れてないのですよ……。


 もちろん、急ピッチでスターシスターズの戦闘艦に匹敵する戦闘艦の生産も進められてるんだけど。

 現状、まだまだ試作艦を作ってみたとか、その程度……。


 それでも、戦う事が出来るだけマシと言えるかも知れないけど。

 

 戦闘で、受け身に回ることしか出来ないと言うのは、要するに時間稼ぎしか出来ないと言う意味なのですよ……。


 黒船は全滅するまでがむしゃらに突っ込んでくるだけ……なんて、戦い方だったから、対処は出来てたけど、クリーヴァやシュバルツの戦闘艦隊ともなると、そんなお粗末な戦い方はしない。


 銀河連合軍を当てにしない……エスクロン単独で、となると今の所、かなり厳しいのですよ。

 

「確かに、現状、各星系配備の防衛戦力程度では本格的な侵攻艦隊相手に守り切るのは、厳しいだろうな。だが、そう言う事なら、我々も少しはユリコくんに恩返しが出来そうではあるな……。当面は駆逐艦隊程度になるだろうが、クオン星系中継港に駐留艦隊を派遣するように、こちらで手はずを整えておくとするよ」


「おお、そりゃいいね。一個駆逐隊程度と言えど、機動戦力が常駐してるとなると、格段に攻めにくくなるからね……。そりゃ確かに悪くない手だ」


「……4隻編成の駆逐艦隊一個艦隊がそこまでの戦力になるのかい? まぁ、私の艦隊も最初の頃は4隻の駆逐と軽空母しか無かったけど……。あの戦いも今から思うと、奇跡みたいな薄氷の勝利だったなぁ……」


「永友提督……たった4隻の駆逐艦隊に何が出来るかなんて、アタシの実績じゃ証明にならないかな? ユリコさんは答えが解ってるみたいだから、説明してあげてよ」


 ……なんだか、いきなり話振られたのですよ?


「えっと……。中継港などに配備されてる要塞砲や迎撃機などでは、侵攻艦隊相手に負けない戦いは出来ても、絶対に勝てないのですよ……。相手は不利になったら、射程外へ逃げてしまえばいいし、そもそも、戦いのイニシアチブが取られっぱなしになるのですよ。宇宙空間戦闘でも、宇宙の戦力が壊滅して、増援の当てもない……なんてなると、地上にどれだけ戦力があっても、絶対に勝ち目なんて無いから、白旗を上げるってのが常識なのですよ」


 古今東西、籠城戦ってのは、後ろが味方の勢力圏で、増援が当てになる状況なら、勝ち目はあるのだけど。

 孤立した状況で籠もっても、ジリ貧で負けるだけ……なのですよ。


 拠点防衛戦ってのは、得てしてそんなもので、拠点にいくら戦力があっても時間稼ぎしか出来ないと思っていいのですよ。


 実際、惑星地上軍と宇宙艦隊との戦いなんてなると、惑星の地上からだと、本気で何も出来ないのですよ……。

 

 大型ミサイルとか打ち上げても、あっさり撃ち落とされるし、対軌道荷電粒子砲とかも射程の問題で、撃ってもまず当たらない。

 

 大口径レーザーですら、当たるまで1秒とかかかるし、今日日のAL装甲相手だと、傷も付けられない。

 そもそも、宇宙戦闘艦なんて亜光速で動くのが当たり前……そりゃ、勝ち目なんて無い。


 けど、拠点攻略戦の際、防衛側に自由に動ける戦力が残ってると、それだけで状況は格段に難しくなってくる。


 防御側は、機動戦力を補給を断つのに使ってもいいし、拠点防衛部隊に拘泥してる間に、後背を付くのもいい。

 ゲートががら空きなら、ゲートを牽制するだけでも敵はゲートと言う生命線を守るために戦力を割かないといけなくなる。

 

 寄せ手は、常に防衛側の機動戦力への対応を考えなくてはいけなくなるので、負担が格段に増えるのですよ……この辺は、軌道防衛戦闘の教科書にも書いてあるような基本なのですよ。


「なるほどね。単純に籠城しても勝ち目は薄いってのは、確かに理解は出来るね。けどその上で、たとえ小勢だろうが、自由に動ける戦力があると、攻める側は格段にキツくなるってことか。確かに、それは大いに納得だ」


「本来、辺境艦隊のドクトリンがそれなのだよ。広大な辺境域のすべての拠点に戦力を置くのは現実的ではないからな。拠点の防衛戦力が粘ってる間に、即応艦隊などが急行して、侵攻軍を撃破する。もしくは手近な駆逐艦隊などがいればそれが急行して、遅滞戦闘を挑み本格的な戦力の来援までの時間を稼ぐ。その為の高速艦や小型艦中心の編成なのだよ。もっとも、総司令部は小型艦は、運用コストが安くつくと言った、そんな事ばかりに着目して、むやみやたらと動かして、無意味に疲弊させてしまったり、いざ戦いになると戦力の逐次投入の末、次々と壊滅させてしまったり……。明らかに間違った戦略で戦わせていたのだよ」


「確かに、前はよくそう言うグダグダな戦はよくあったな。近場に居た駆逐艦隊が足並み揃えずに、単独でドンドンぶつかっていって、次々と全滅していって……なんて調子でな。永友ちゃんの初陣のケプラー21防衛戦は、あの頃にしては、奇跡みたいに戦力の集中も出来て、圧倒的不利な状況下にも関わらずそれを跳ね返して、敵戦力を引きつけて、俺らが突入する時間を稼いでくれたからな。ありゃ、防衛戦としてはかなりいい線いってたと思うぜ」


「そうだねぇ……。あの戦いはアタシも参戦してたけどね。あの状況で中継港が陥落しなかった上に、ネストの守りががら空きになるまで、派手に戦力を削ってるのを見て、驚いたものだよ」


「そいや、あん時は遥ちゃんが俺らの背中を守ってくれてたんだよな。こちとら、ネスト突入で艦隊も半壊に近い有様になってな。あそこで振り切った残敵に来られてたら、全滅してたんだが……。敵の足止めを初陣のたった4隻の駆逐艦隊がやったって聞いて、ブッたまげたもんだぜ」


「なに、アタシがやったのなんて、ほんの一時間程度の足止めくらいさ。実際の掃討は後続の艦隊がやってくれたし、駆逐艦隊の出来る仕事なんてそんなもんだ。けど、そのたった一時間の足止めが戦場では値千金ともなる。そう言う意味では、一個駆逐艦隊の常駐配備ってのは、かなりの良手だと思うよ」


「……うむ、解りやすい解説をありがとう。まぁ、ユリコくんは言うまでもなく理解しているようだがね。まったく、中央の素人軍人共よりも、よほど解ってるな……。どうだね? 少し話が逸れてしまったが……。クオンについては、我々の誇りにかけて、守らせてもらうから、安心して学生生活を送って欲しいんだが……少しは安心できるかな?」


「はい、大丈夫です。囮の件も聞いてましたけど、皆さんがきっちり守ってくれてたから、ユリはのんびり普通に暮らしてましたから。要は今まで通り……そう言うことですね?」


「そう言うことさ。君が今まで通りのんびりと暮らせるようにする。それこそが、アタシらの願いであり、仕事なんだよ。まぁ、キナ臭い話もそろそろ、ここまでにしようか……例のデュラハンとか、気になることは色々できちゃったけど、君には関係ない話だしね」


 遥提督……優しい人なのですよ。

 

 けど、確かにユリもデュラハンってシュバルツの協力者の件は気になるのですよ。

 ユリも無関係じゃないし、なんだか妙に気になるのですよ。


「あはは……やはり、気になりますか」


「そりゃもちろん。アタシもこれでも諜報畑の人間だからね。デュラハンはシュバルツにとっては裏切り者って事になる……おまけに、提供情報の適切さからして、諜報に携わってる人物だってのは伺える。それでいて、相応の立場の人物となると、何かがあった上での変節だとは思うんだけど……。一体どう言う経緯で、そんな人物がこっちに味方してくれるようになったんだろうね。ユリコさんを廻るシュヴァルツとの水面下の攻防で、デュラハンと繋ぎを持てたんだとは思うんだけど、やはりその経緯は気になるところだし、そうなると是非、アタシもそのデュラハンとの繋ぎの一つも欲しいところだね……」


 遥さんがそう言うと、何故かエリコ姉さまはチラッとこっちに視線を送る。

 ……意味が良く解らないのですよ?


「まぁ、そうですね……。こちらのとある人物のスーパーファインプレイの成果ってところですかね。我々エスクロンは、通常宇宙でもシュバルツと裏でしのぎを削ってますから。あなた方、辺境艦隊ばかりに苦労をさせる気は毛頭ありませんよ……今後も裏に表に皆様を全社を挙げて、応援させていただきますよ」


 エリコ姉さまの言葉に遥さんも何故か、ユリをじっと見つめてる。

 

 良く解らないから、ニコリと笑って誤魔化す……なのです!


「まぁ、いいよ……何があったかなんて、野暮なことは聞かないし、なんとなく見当も付いた。それにしても、君達クスノキ一族は大したもんだね。エリコさんやタイゾウさんも大概だけど、そこのユリコさんも……まったく、この戦争、アタシらだけでやってるつもりになってたけど、君等エスクロンが事実上参戦してきたせいで、様相が変わりつつあるね。全く頼もしい限りだ」


「まぁ、そうさな。実にありがたい限りだ……ところで話は変わるんだが、永友のダンナ……。さっきから、美味そうな肉の焦げる匂いがしてるんだが、そろそろメインディッシュと行かねぇのか? 俺はこう言うお上品なフルコースとか好かねぇんだ。おしゃれな前菜だのミートボールスープも美味かったが、ボリュームって面では全く物足りねぇ……ぶっちゃけ、腹減ったんだがよー。肉食わせろよ、肉っ!」


「はっはっは! 実にグエン提督らしい。安心してくれ、今回のメインディッシュは天然牛肉のローストビーフなんだ。冷凍品だったけど、いい感じで熟成解凍させたから、グエン提督には是非食べて行って欲しかったんだ。なんでも最高級レストランでステーキ頼んで、こんなモン食えるかって暴れて、出禁になったんだって?」


「だって、しゃあねぇだろ……こんがりガチガチウェルダン、それも調味料なしで食えとか、ヒデェ代物だったんだぜ? 何が最高級天然食材レストランだ。素材の味を生かしたとか言ってたけど、そうじゃねぇだろっての。けど、いいね! 血の滴る赤身たっぷりローストビーフ! 永友ちゃん、俺のは特盛で頼むわ!」


「こっちの人達って、天然食材に余計な味付けとか飾り付けるのは、邪道って言ってるみたいだからね。サラダとか頼まなくてよかったね。私も高級レストランでサラダを頼んだら、まるごとレタスとトマトがそのまま出てきて驚愕したよ。魚も肉も冷凍したのをいきなり電気オーブンで焼いちゃうから、表面パサパサ、真ん中生とか酷い出来だったしね。正直、食事情については明らかに劣化してるんだよなぁ……」


 やっぱり劣化してるんだね……昔と比べて。

 なんだか、現代人としては悲しい。

 

 ……そう言えば、クオンの地上キャンプでも似たような話聞いたっけ。

 

 ダンさんとか皆で、デッカイお肉の直火丸焼きってやってたけど、あれは超美味しかったのです。

 

 そう言えば、解凍もラップに包んで、水に漬けてじっくり解凍……とかやってたのですよ!


 焼き加減も生焼けみたいで、正直大丈夫かなって思ってたんだけど。

 赤みが残ってるくらいの焼き加減でも、ちゃんと火は通ってて、すごく柔らかくて美味しかったのですよ!


 宇宙の電気オーブンじゃここまでのモノは出来ない、地上キャンプの直火調理こそ、宇宙最強って言ってたけど、案外そうなのかも。


 なお、ユリが知ってる天然食材高級料理……。

 

 お父さんに連れて行ってもらった高級レストランでは、お魚一匹全部まるごと焼いたのが出てきて、表面焦げ焦げで身は半生で、生臭くって、その上味も薄塩味オンリーで、あんまり美味しくなかったのですよ……。

 

 それでも、お値段一人二万クレジットとか聞いて、高級お料理ってこんなものかって思ってました。

 合成フィッシュフライやお父さんキャンプでのクリーチャーご飯の方がよほど美味しいって言ってたんだけど。


 永友提督の時代を超えた古代料理の片鱗に触れた今なら解る。

 

 アレは、天然食材の無駄使いだったのですっ!

 

 シリウス最強の銀河シェフさんとか、明後日の方向を驀進するダメダメ料理人!


 そう考えると、クオンの地上キャンパーさんたちって凄かったのかも……。

 

 屋外で直火使い放題な上に、キャンプ中って割と暇だとかで、皆、それぞれ色んなこだわりを持って、美味しいご飯を追求してて……どれもこれも、めちゃくちゃ美味しかったのです。


 ああ、今度……皆で、キャンプご飯のメニューとかも考えてみるのですよ。

 美味しいものは万国共通、時代をも超える正義なのですよ!


 そんな事を考えてるうちに、疾風さんがカートに乗ったデッカいブロック肉を持ってきて、器用にお肉を切り分けて、ワタワタと祥鳳さんと初霜さんがお手伝いに回る。


 永友提督はニコニコ笑顔でその様子を見守りながら、お誕生日席を引いて、こちらにどうぞと言わんばかりにユリに着席を促す。


 ここで突っ立ってるとか無いんで、大人しく座ると待ってましたとばかりに目の前にローストビーフの乗った大皿が置かれる。


「さて、本日のメインディッシュ。天然牛肉のローストビーフ。タレは定番どころでデミグラスとにんにく醤油の和風ソースを用意したから、好きな方を使って食べると良いよ。ほんとは、直火使って、豪快に焼きたかったんだけどねぇ……電気オーブンじゃ火力が足りなくて、出来としては今一歩。色々頑張ったんだけど、私としては及第点ってところだから、お手柔らかに頼むよ」


 メインディッシュのローストビーフさん!

 

 もう見るからに美味しそうで、まるで花びらみたいに綺麗に並んでて、食べるのがもったいないくらい!

 早速ナイフで一口大に切り分けて……と思ったら、グエン提督が一口でツルって食べて、プルプルしてる。


「くぅーっ! やっぱウメェなぁ! 永友ちゃん、アンタ最高っ! この絶妙な焼き加減! ソースの味も完璧じゃねぇか! ったく、こればっかはうちの奴らでも再現無理って言ってたからなぁ……。今度、派手に天然高級肉山盛り買ってくるから、永友ちゃんに焼いてもらうか。電気オーブンでここまでやりゃ、文句なんてねぇよ!」


「そうですね。レシピや作り方は解っても、私達では、ここまでの味は再現出来そうもないです。確かにグエン提督に連れられて、私達もあちこち高級レストランとか行きましたけど、永友提督の領域には誰もが程遠いと言った様子でしたからね。いやはや、私も食事出来る機能があってよかったです! ああ、美味しいっ!」


 グエン提督と島風さん。

 手放し絶賛。


「……これは、予想以上だな。天然食材と言えば、生肉を焼いて塩を振るとか、そう言うものだと思っていたが。こんな調理方法があったのか……。まったく、古代の知恵と言うのは本当に侮れないな」


「そうですね。確かにお父様も言ってましたね。現代人の天然食材の調理方法は色々間違ってるって……。実際、高級レストランで食べるよりも、お父様の手料理の方が美味しかったんですよね。ああ、なんかすっごく損してた気分……。これはうちのCEOとかにも食べさせて、エスクロンの天然食材料理に革命を起こさせるべきですよ」


 うん、解るのです。

 これは、とっても美味しい。


 焼き加減もソースの味も絶妙。


 けど、直火焼きにはやっぱり及ばないかも。

 あの炭の香り、香ばしさが足りないのです。

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