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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第四十六話「フルコースディナー」①

「ユリコさん、お久しぶりー! まぁ、とりあえず座って座って……。いやぁ、聞いたよー! あの遥提督と天霧なんて最強コンビの殴り込みを一蹴したんだって? まぁ、私は前から君がただ者じゃないなんて、お・見・通・し! だったんだけどねー!」


 嬉しそうに、メイド服みたいなのを着て、せっせとお料理やらをテーブルに並べて給仕役を務めているのは、スターシスターズの祥鳳さん。


 お久しぶりなのですよ。

 なお、こうやってる今も、普通に祥鳳の各種システムを運行して、偵察機を何機も飛ばしてるらしい。


 一人何役やってんだろ? この人、軽く演算力のお化けなのですよ。

 

「わたし達は、せっかくなので、手料理で歓迎って頑張ってたんですけどね……。祥鳳さんのせいで、失敗しちゃったんで、今回は提督のフルコースお料理って事になりました……」


 ちんまりメイド一号こと、初霜さんがやんわりと祥鳳さんをディスりつつ、やっぱりチマチマとお皿やお料理を並べてくれている。


 こっちもこっちで、新型砲の搭載作業と微調整作業やら、射撃シュミレーションやらを並行して行ってる。


「初霜ちゃんもお久しぶりなのですよ。良かったです……ホントは初霜ちゃんが殴り込みって予定だったそうですよね」


 ここら辺は、後から聞いた話。

 艦内白兵戦演習については、永友艦隊の子達がやる予定だったんだとか。


 でも、そこら辺は遥提督の強い要望があって選手交代となったらしい。

 演習後の事後検証の結果。


 あの時、ぶっ放したスザクⅢのオーバーブーストショットの出力は、少々洒落になってなかったらしく、天霧さんも保険として、持ってた防御磁場シールドを使い捨てにして、かろうじて防ぎきったらしい。


 推定威力としては、大型戦艦クラスでも綺麗に大穴が空くくらい……だったんだとか。

 けど、ああいう局面ともなると、持てる最大火力でってのは、当然だと思うのです。


 抜き打ちでユリを巻き込むとか無茶するからなのですよ……。


「ああ、そうですね。けど、元々あんまり乗り気じゃなかったし、天霧さんに譲っちゃいました。でも、凄いですね。遥提督って前にお手合わせしたら、あっさり一本取られちゃった位なのに……。あの人、殺気消して縮地って魔法みたいな踏み込みしてくるから、模擬戦だと手強いんですよね……見切れるようになるまでは全然勝てなかったんですよ」


 確かに、あれって思いっきり初見殺しだったのですよ。

 

 けど、あれを何度か手合わせして見切れるとか……この子も大概なのですよ。


 なお、今の所、豪華会食用テーブルに座ってるのは、ユリだけ。

 しかも、割と問答無用で上座のお誕生日席に座らされた。


 ユリは一番下座の端っこ席に座ろうとしたのに……。


「まぁ、アンタも最強なんてうぬぼれてる場合じゃないってことよ。けど、良かったわ……アンタの作ったゴミとか出さずに済んで……要らないことするからよ……まったく」


 ……この二人が険悪なムードなのは気付いてたけど。

 なんだか、二人共ピリピリした空気をまとい出したのですよ……。


「な、何かあったんですか?」


「はい、本当はわたし達の作ったメニューを一品だけお出しする予定だったんですよ。けど、祥鳳さんのは、少々スパイシー過ぎて、とてもお客様に出せるような出来ではなく……」

 

「うっさいわねー! アンタだって、至高のスイーツとか言って、ただひたすら甘いだけのゴミ作って……。あんなもん、却下よ却下! ゴミ箱送りが残当ってやつね!」


「だからって、人がせっかく作ったデリシャススイーツ盛りをちゃぶ台返しで全部厨房の床にぶちまけなくたっていいじゃないですか! あんまりですっ! 酷いです!」


「アンタだって、人の料理に蜂蜜と角砂糖大量投入とか、何やってくれてんのよ! あんな甘いんだか辛いんだか解んないモン! もう食べ物じゃないでしょ!」


「味見したら、めちゃくちゃ辛かったから、中和してマイルドな味にしてあげようとしただけじゃないですか!」


「はぁ? アンタの味覚回路、おかしいでしょ! 一度初期化して、再設定した方が良いんじゃないの?」


「再設定が必要なのは、祥鳳さんの方ですー! 辛いもの食べすぎて、味覚センサー麻痺ってるんじゃないですか? そう言うのをポンコツ舌って言うらしいですよ」


「なんだと、こんにゃろーっ! どうやら、今日という今日は決着付けないといけないようね! キシャーッ!」


「望むところですー! うにゃーっ!」


 祥鳳さんと初霜さんが顔付き合わせて、ガッツリ四つに手を組んで喧嘩してる。


 よく解んないけど、祥鳳さん辛党で、初霜さん……甘党。

 

 どっちが良いかでバトってる……らしい。

 

 うーん? この子達ってAIのはずで、仕様上は別に食べ物とか食べなくても、コンセントから充電ーってすれば、それで十分活動出来るはず。

 

 もちろん、人間に合わせるってことで、食べ物や飲み物を味わうとかも出来るし、効率悪いけど、エネルギー源にも出来る。

 

 その辺は、ユリも一緒だし、コンセントで充電ーとか味気ないから、選択の余地があれば、普通にご飯食べるってのは解る。

 

 でも、自分の味覚の好みとか、そんな理由で喧嘩するAIなんて初めて見たのですよ。

 AIってのは、もうちょっとこう……合理的で、理性的な判断をするのが当たり前なんだけど。

 

 この子達、スターシスターズってのは、色々規格外って聞いてるけど、むしろ人間寄りっぽいような?


 とりあえず、ユリはお客様らしいので、見守るしかないのですよ。

 そもそも、頭脳体同士の喧嘩なんて、ハイパワー過ぎて人間の介入の余地なんて無いのですよ。


 今のだって、例えるなら重戦車同士がガッツンガッツンぶつかり合ってるようなもの。

 

 あわわわわ……。

 床が抜けませんように……。

 

 でも、そんな仁義なき戦いをよそに、テーブルの食事の支度は着々と進められていた。

 

「すんませんなぁ……ユリコさん。この二人、ユリコさんに手料理をご馳走するって言い出して……。結果的に足引っ張りあって、厨房が戦場になってしまったんすよ……。一度は、怒られちゃったから、ノーサイドって事で休戦してたんスけど。結局、第二ラウンド開始……もうほっとくしかねぇっす! もっとも、我らが永友提督がサラッとフォローしてくれて、ご覧のように素晴らしいお食事が作られつつあるのですよ……始めっからこうしてればよかったんすよ」


 ちんまりメイド二号さんこと、疾風さんが隣に来て、給仕役を引き継いでくれたようだった。

 こっちも一応知ってる顔なのですよ。


 以前のロンギヌスのデビュー戦で一緒に戦ったから、良く覚えてるのですよ。


「え、えっと……あれは放っといていいものなんですか? なんだかすごい音が聞こえてるんですけど」


 今は、二人して、助走つけてタックル合戦の真っ最中。

 ガゴーンだのドコーンなんて、およそ人間サイズの物体がぶつかるような音じゃない異音が聞こえてくる。


 双方のウェイト差やパワー差があると思うんだけど。

 周囲に展開させた斥力場だのナノマシンフィールドだのがぶつかりあって、削り合ってる段階らしい。


「まぁ、あの二人が仲良く喧嘩してるのは、いつもの事なので、気にしないでおくんなさいまし。一応、ああ見えて人間を巻き込まないとか、それなりのルールがあるんで、問題もないでしょう。さぁさぁ、まずはオードブルでもどうぞっす!」


 後ろの人外バトルなんて気にしちゃいないって感じで、小さな花束みたいな造形のオードブルが置かれる。

 身内の疾風さんが問題ないって言うんだから、もうユリは気にしないことにするのです!

 

 オードブル……前菜と書く字のごとく、食事前の軽いサラダ的なメニューなのですよ。

 

 一言で言ってしまえば、合成食品の代名詞、お野菜シートを加工して、ドレッシングかけただけみたいなんだけど。

 

 見た目は、すごく繊細でこれが食べ物なのかって思ってしまうほどの出来栄え!


 一口食べると、予想外の美味しさで二重に驚き!

 天然物のオリーブオイルがお野菜シートに染み込んでて、絶妙な風味を醸し出している。


 合成食品のお野菜シートなのに、絶妙な歯ごたえがあって、本物のお野菜みたいにシャキシャキ言ってるし、見た目も可愛くて、最高っ!


 使ってる食材も食べた覚えがあるから、よく解る。

 

 多分……緑色のは、レタス風味の乾燥お野菜シートで、赤いのはキャロットシート。

 これを細く切って、繊細に組み合わせて花のような形に飾り付けている。

 

 それに合成サラミチップと、塩コショウで味付けしたオリーブオイルがふりかけてあるんだけど……オリーブオイルと塩コショウは、合成品じゃないみたい。

 

 何ていうんだろ? 風味が違うのですっ!


「なにこれ! これって、合成サラダシートですよね? なんで、こんなに美味しくなるのです?」


「ふふっ、これが永友提督のミラクル料理なんすよ。味気ない合成食材が提督の手にかかれば、天然食材顔負けのミラクル美味い料理に化ける。21世紀のグルメ知識を元に試行錯誤しまくって、素材の不利を覆した……まさに、芸術っすなぁ」


 なんだかもう、疾風さんが説明係状態。

 こっちもやっぱりメイド服姿……可愛いのですよ。


 他の二人は……もう触れないでおこうっと。

 

 うん、永友提督さんってお料理マイスターなんて言われてるらしいけど、納得なのですよー。


 飲み物として、レモン風の香りが付いたお水が用意されてたんだけど、まるで本物のレモンを絞ったような風味が広がる。


 けど、これもやっぱり合成レモン風香料……なんだけど、市販品の濃縮レモン風味ポーションあたりに精製を重ねて、本物に限りなく近づけた……多分、そんな代物なのですよ。


「凄いです! 天然素材なんて全然使ってないのに、普通に美味しいですよ!」


 お野菜オードブル……思わず、あっという間に平らげてしまったのですよ……。

 ガッツイてるみたいで、みっともない……不覚なのです。


 思わず、お皿に残ったドレッシングをペロペロしたい衝動に駆られるんだけど、そこは我慢ーっ!

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