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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第四十五話「未来へと続くお話合い」②

「まぁ、身内の視点だとそうなるんだろうけど、君達はこの銀河のたった一割の圧倒的少数派なんだよ? 実のところ、アタシも不思議でならないんだ……。こんな外敵も百年単位で居なかったような環境だったのにも関わらず、君達エスクロンはたった半年足らずで、独力で銀河レベルでの戦争が出来る態勢を整えて、黒船のみならず、シュバルツやクリーヴァ相手に一歩も譲らず、アタシら戦争屋共と肩を並べて戦うところまで来ている。一体何があったら、こんなガチガチの戦闘国家がぬるま湯に浸かりきった平和な銀河に誕生するんだかね……」


 まぁ、確かにエスクロンってのは変な国ではあるのですよ。


 ここ数百年、エーテルロードと言う人類の接続ハブを中立化することで、この人類世界は大きな争いも起きず、外敵も存在しない中、人類史上もっとも平穏な時代を謳歌してきたのですよ。


 強いて言えば、100年くらい前に起こったセブンスターズの宇宙革命戦争と、エスクロンのAI大戦くらいかなぁ……。

 

 アレクサンドロス・レキサス一世の起こした宇宙革命軍と当時の銀河連合盟主国のシリウスとの長い争い。


 と言っても、実際に宇宙艦隊同士が戦うなんて機会は殆どなくて、シリウス傘下の惑星国家に押しかけて、武力を背景に戦争か恭順のどちらかを選べってやっていって、一つ一つ自分達の配下にしていった……そんな感じで割と平和的な革命だったらしい。


 と言うか、このレキサス一世って人。

 

 基本的に、争いを好まずとにかく話術が巧みで、話しているうちにこの人の力になりたいと自然と思ってしまう……人心掌握術の達人とか、カリスマ魔王とかそんな感じの人だったのですよ。


 そんな調子で、ちまちまとシリウスから諸侯を離反させたり、争いは極力回避して、割と気長な長期戦になりそうだったんだけど、レキサス一世が唐突に早逝してしまい宇宙革命は頓挫。

 

 結局、シリウスの亜種みたいな感じになって、パッとしないまま、年月が過ぎて……そんな感じ。


 クリーヴァは、エスクロン同様企業国家でエスクロンとは長年のライバル関係ではあったのだけど。

 セブンスターズの宇宙革命のどさくさで、宙に浮いた小国家群に食い込み足場を築き、盟主を失って空中分解しつつあったセブンスターズの新参者達の受け皿になる形で、一気に勢力を伸ばしたのですよ。


 極端な秘密主義で、何をやってるのかとか、何がしたいのか解らないまま、静かに動いて百年単位の月日が過ぎたところで、その正体を表した……。


 シュバルツとかって、昨日今日で突然、湧いてきたんじゃなくて、百年単位でこちらの世界への侵略を目論んでたみたいなのですよ……。


 今の銀河の情勢は、概ねこんな感じ。

 はっきり言って、エスクロン以外まともな勢力が一つもないのですよ……。


 エスクロンも大概、おかしいんだけど。 

 今の銀河人類ももうめちゃくちゃ……黒船が出てこなくても、近い将来、大きな変化が起きたら、適応出来ずにあっさり滅亡するかもしれないって、そんな風にも言われてた……それが現実なのですよ。


「エスクロンは……確かに、シリウスなんかから見たら、異端ではあるんですけどね。けど、少数派であるだけで、自分達が間違ってるなんて、国民は誰ひとりとして思ってないですよ……。今の銀河連合の多数派は、本当にそれで良いのかって、私達は思ってますよ」


「なるほど……。アタシもこの未来世界……今の銀河連合を見て、正直絶望していたんだよ。けど、これもアタシらの理想の果て……そう思ったら、何も言えなくなってしまった……。けど、そんな環境で異端であることを良しとし、かつてのように人類世界を二分する覚悟で相争っていた頃の気概を持ち合わせた国家が存在した……。それはアタシらにとっては、希望とも言えるけど、その理由が解らない。君達は……何故、ここまでの備えをしていたのだ? 君の持つ力だって、尋常ではない……スターシスターズ相手に生身で圧倒し、最も苛烈な戦争を生き抜いた撃墜王すら地に落とす……。何者なんだ……君達は?」


「常に未来の脅威に備え続ける……。目の前に立ちはだかる困難ですら試練と捉えて、決して立ち止まらない。エスクロンってそう言う国是の国なんですよ……。それこそ、銀河連合黎明期からずっとそんな事を続けてます。だからこそ、銀河連合では、異端児呼ばわりされつつも、意に介さず我が道を来た……。例え、自らの備えに牙を剥かれようとも、それすらもエスクロンは試練と捉え、更なる進歩を続ける……ユリ達強化人間は、あの大戦で実証された人の力の可能性の追求……その過程で作られました」


「……そう言う事か。その戦いで幾人もの英雄と言える者達が生まれて、散っていったらしいね。君達はその人達の人工的な後継者……のようなものなのかな?」


「詳しくは知りませんが。戦闘用AIの理詰めの戦略を上回るには、人の可能性に賭ける。それが最善だとエスクロンはAI大戦で教訓を得たそうで、それが強化人間の開発の理由だそうです。ユリ達は第3世代ですが、すでに次世代第4世代の育成プログラムは始まっていますし、第5世代の基礎設計にも着手しているそうです。けど、それらの備えが間違いじゃなかったと言うのは、今の状況が証明してると思いますよ」


 エスクロンは、間違っていなかった。

 自分達こそ、銀河を守り、未来を切り開く希望となる。

 

 これは、国民の誰もがそう思ってる事。


 だからこそ、相当な予算を注ぎ込んで、相応の犠牲を出しながらも、エスクロンはこのエーテルロードの戦争に介入を続けている。


 強化人間計画についても、第4世代は更に人数を増やし、エーテル空間戦闘を想定した調整が行われるらしい。

 ユリ達第3世代もテストケースとして、参戦……そんな日も遠くないだろう。

 

 でも、この強化人間計画についても、すでに国民の多くが知るところなのですよ。

 エスクロンは、超AI「フォーチュンテラー」との戦いで、この時代の戦いの趨勢を決めるのは、人の意思と力だと学んでいる。


 エーテル空間の戦闘も過去の人々の再現体とスターシスターズ任せにするのではなく、人の意思による介入を進めるべきだと言うのが、国民の総意でもあるのですよ。


「やれやれ、その最先端たる君が言うと説得力が違うねぇ……。そう言えば、同じような事を言っていたヤツが過去にも居たな……。今にして思えば、ヤツの言っていたことも、あながち間違ってた訳でもなかったのかも知れない……そんな風に思う」


 そう言って、酷く悲しそうな顔をする遥提督。

 ……意味が良く解らない。

 

「……同じような事……ですか?」


「かつて、居たんだよ。人類世界から争いの火種を絶やしてはいけないと、平穏へ向かうはずだった世界を騒乱の渦に巻き込んだヤツがな。だが……実際に、争いのない平穏な世界が実現された結果が、この時代の銀河人類の体たらく……。幾多の犠牲を出しながら、争い続ける混沌とした世界よりも、穏やかに管理された平穏なる世界の方が遥かに価値があると……信じていたのだけどね」


「……明日が今日と同じ様に平穏無事であるとは限らない。だからこそ、可能性に、明日に備える……。ユリ達はそう思ってるんですけどね。シリウスの人達とかって、明日も今日と同じく平穏だと信じてる……そんな感じなんですよね……。そんなの誰も保証してくれないのに……」


「そうだね……。アタシらですら、まさかあの平穏な時代が百年単位で続くなんて思ってもなかった。けど、こうなると、あれは一体何のための戦いだったのかと思わずには居られないよ。あの途方も無い犠牲の果てに勝ち取った平和は何だったのか……。ヤツはある意味正しかったのかも知れないな……」


 この幾つもの戦場を超えてきた歴戦の戦士が何を思うのか。

 

 ユリには、解らないし、そんな大勢の犠牲が出たような戦争……。

 あったとすれば、空白の半世紀。


 激動の時代だったというのは想像に難くない。 

 ……そんな遥さんが抱いている思いは……後悔……?


「……遥提督は……何を見てきたのです? 貴女は何を知っているのです?」


 この人は、ユリ達の知らない過去の歴史を知っている。

 今の言葉は多分、その過去の出来事の片鱗なのは間違いなかった。


「ははっ……どうやら、喋りすぎたらしいね。繰り返しになるけど、これ以上は何も言えない。……難儀な話だとは思うけどね。あたしがこの人類世界の過去について、多くを語らないのも相応の理由があるんだ……その様子だと、君達も何も知らないようだね。悪かったね……今のはいわゆるカマかけさ」


 それっきり、遥提督も押し黙る。

 言外にこれ以上は深入りするなと言われたようなもの。


 けど、これは多分、核心に迫るような話なんだとは思う。

 

「……そうですか。興味深い話ではありますけど、教えるつもりもないんですね」


「悪いね……。でも、君達はある意味、この銀河の希望でもある……。君と直接戦い……それは確信に変わった。もしかしたら、君ならこの世界の真実にもたどり着けるかもしれないし、最高のハッピーエンドに導けるかもしれない。アタシには、多分無理だな……アタシは所詮灰色の正義にすぎないし、所詮はよそ者さ。この銀河の問題は本来、君達が解決すべきだとアタシは思うよ……」


「灰色の正義ですか……? ユリにはよく解りません」


「理解は出来なくてもいいさ。ただ、これだけは言っておくよ。正義を志すならば、決して黒に染まってはいけない。いいかい? ただの一度でも黒に染まると、未来永劫白には戻れないのだからね。とにかく、アタシが言えるのはここまでだ……。そんな訳で、この話はここまでにしたいんだが、異論はあるかい?」


「ありません。遥さん……貴女に心からの敬意を」


 彼女へ送る言葉があるとすれば、ただそれだけだった。

 

「面と向かって、そう言われると悪い気持ちはしないね。ああ、そうだ。永友艦隊の祥鳳から、君宛てに招待が来てるはずだよ。ひとまず場所を変えたいんだが、ご同行願えるかな? ちなみに、永友提督もこの艦内白兵演習の話は知ってる。本来はあの初霜辺りが出て来る予定だったんだけどね。さすがにアレ相手ともなると……あれは我々から見ても些かオーバースペックだからね。空気を読んでもらって、今回はご遠慮いただいたんだよ」


「……はぁ。けど、あんなちっこい子が出て来たら、さすがに気がひけると思いますけどね……」


 ……想像してみて、さすがに無理。

 

 全然知らないならともかく、一緒にお茶したりしたような相手と本気の殺し合いとか……無理だなー。


 この二人は、戦闘用のライトパワースーツ姿でIFFタグも真っ白にしてた上に、顔も何も解らないから、容赦も何も……だったけど。

 

 天霧さんとか、非視認射撃だったから、ちょっとシルエットが小さいかな? くらいの感覚だった。

 普通は直撃したら人間なんて軽く蒸発するくらいの出力だったけど、まっ黒焦げになる位で済んだ辺り、スターシスターズって、半端ないのですよ。


 けど、半ば冗談で言ったユリの言葉に遥さんは、ひどく生真面目な顔をしている。

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