第四十話「最後のジョーカー」③
『フラッグシップの撃沈を確認。只今の勝負……クオン高校生連合チームの勝利です!』
通信回線が皆の歓声で埋まる。
力を合わせての勝利……今回は結構ギリギリ、歯ごたえあっただけに、喜びもまたひとしおなのですよ!
ソロでの勝利なんて何回もあったけど、お友達となら……すっごい! 嬉しいのです!
「ううっ、なんてこった。SSR機を三機も揃えていったのに、まさか負けるとはなぁ……。俺たちダサすぎるだろ」
「んだなぁ……。つか、エース三人衆。お前ら反省しろ! 今回の戦犯だれかってなったら、お前らだ! こっちは皆、雑魚機体だったんだ……お前らが駄目だったら、どうしょうもねぇよ!」
「ええーっ! 俺とか、めっちゃがんばったよーっ! でも、ギリで届かなかったー! あと三分あれば……。つか、ヤマト相手にケルベロスであそこまで粘るとか、何者だったんだよ……アイツ」
「あのケルベロス凄かったよなぁ……。やられてもやられても、食い下がって行って……。なんか敵だったのに思わず応援したくなっちまったくらいだった」
「ええいっ! 何でもいい! 俺達の負けだ! 負けーっ! お前らお見事っ!」
相手チームとのボイスチャットが解禁となるなり、相手チームの人達からのボヤキが聞こえてくる。
「……いきなりなんですの? これ」
「エリーは知らんだろうけど、対戦終わったら、敵味方関係無しでワイワイとあれは凄かったとか、あそこでしくじったのが敗因だったとか、反省会みたいなのをやるのがこのゲームの定番なんや。ユリちゃん、あたしらも仲間に入れてもらおうや」
スタークラスターPVP対戦の恒例……なのですよ。
ユリは……だまーって、隅っこでこそっとしてるのが常だったのです。
「なるほど、負けた方はさっさとさよならとか、そんな殺伐とはしてないんですね。ユリコさんもご存知で?」
「ユリは……無言ソロプレイヤーだったから、勝負が終わったら、ピューンと居なくなっちゃう子だったのです……」
「それは、なんともやね……。おーい、相手チームの人達……お疲れさんやで! って言うか、このチーム名「山賊ブロッカーズ」ってなんや?」
そう言えば、そんな名前だったのですよ。
「おう、おつかれさん。うん、俺らもともと野良プレイヤー連合だったから、チーム名は結構適当。けど、これでもフラッグシップ戦ランカーチームだったのに、あっさり負けちまったよ、君等強いねー!」
「手強かったのですよ。ヤマトに追いつかれてたら、負け確だったのです。ぎりぎり逃げ切ったのですよ」
「……うわ、君ら女の子だったの……しかも、高校生? ってことは女子高生?! いーなーっ!」
「あはは、女性ばっかりで僕は肩身狭いですよ」
「お、勝負を決めたMVPクンだな。ちっくしょー、フラッグシップの守りが妙に手薄だと思ったら、あんな絶妙なとこに伏兵置いてたなんて……まんまとやられちまったよ」
「いやはや、このゲームであんな戦術……僕も初めてでしたよ。けど、なんで最後まで僕らに気付かなかったんです? あんなあからさまな所に伏兵敷いてたんだから、大回りして避ければよかったんじゃないですか」
「そうだなぁ……俺、デストロイヤーのドライバーなんだが。そっちのクルーザーの吶喊がこっちの想定以上の勢いでなぁ……。こっちの主力があんなあっさり粉砕されるとか思ってもなかった。重力凪もちゃんと解ってて、伏兵の可能性も認識はしてたんだが。あのコースで逃げる以外に選択肢が無かったんだ。伏兵も警戒してて一発くらいもらうのは覚悟してたが、エルフィ5機での一斉狙撃で全弾命中とか決められちまったら、どうしょうもなかったよ」
「まぁなぁ……。緒戦でエース機諸共1チームごっそり撃破とかあんな状況……普通、守りに入ると思うんだが、まさかのフラッグシップ突撃でのフラッグシップ一点狙いとか……。クルーザーってあんなバカみたいな火力だったんだな……。半端な性能だから、微妙とか嘘ばっかりだ」
「あのアウトレンジで、ハイマニューバミサイルしこたま撃ち込んでくるってのエゲツなかったなぁ。あれグルグル回ってるだけなのに撃ち落とそうとしても全然当たらねぇし……おまけにコレいつ止まるんだって思ってたとこに、今度はレールガンで榴散弾の雨あられとか……きっついのなんの! 鬼かよっ! って思った」
「だなぁ、散開しようとしたら今度は撃ち漏らして遊んでるように見えたハイマニューバミサイルが一斉にすっ飛んでくるし。あんな使い方ありかよ……ミサイルなんて大抵小出しにするから、対応なんて簡単なのにあんだけ撃たれると通常装備だと無理だわ。こっちも対ミサイル装備の迎撃機用意しとかないとアレに対抗は難しいぞ」
「と言うか、たまにこっちの弾避けまくって、すっげぇエグい誘導かけてくるのが混ざってたよな。まぁ、俺もブラックもそれでやられたんだがな。あ、俺ファルシオンのパイロットね。いいトコ無しでいきなり落ちた。あれで流れ変わった気がした。間違いなく俺がA級戦犯! 皆、ごめんなさい」
「アレは手動ホーミングなのですよ。カメラ誘導。割と古い技術なんだけど、宇宙空間戦闘では一番確実な誘導方式だから、実戦でも結構使われてるんですよ」
「実戦って……まぁ、このゲーム……ガチ軍人とか混ざってるらしいから、たまにそんな事言うやついるよな。って……アンタのコールネーム! よく見たら伝説級のソロエースプレイヤー……ユーリィじゃないか! いや、これ……負けて納得だわー。つか、声初めて聞いたけど、超かわいい声じゃん! ねぇ、年いくつ?」
「マジ? と言うか、ユーリィさんってソロしかしない無言プレイヤーじゃなかったの? お、お会いできて光栄っす! ファルシオン使ってて、あんなあっさり撃ち落とされるとか訳解かんなかったけど、そう言うことだったのか……。これむしろ自慢できるな! ひゃっほぉおおーい!」
「俺は、ナイトストーカーの運用ヘマったからって自覚はあったけど……。あの詰め将棋みたいに一手一手確実に追い込んでいくヤツ……ハイマニューバミサイルのマニュアル操作での変態誘導とか。どっちもあのユーリィのやり口だな。うーむ、聞きしに勝る凄腕だ。まいった!」
あわわわ……バレちゃったのです。
「ええっ! ユリコさんってあのユーリィだったので!」
更に、クシナさんが食いついてきた。
そりゃ、結構年季入ってるし知ってるよね……。
でも、今気づいたのです?
ゲームネームも隠してなかったから、とっくに気付いてるとばかり……。
「私思いっきり、ユーリィに出会い頭に撃ち落とされた事があって、いつか打倒するって誓ってましたのよ……」
知らないうちに撃ち落としたりとかしてなきゃいいんだけどって、内心思ってたけど、案の定……。
いつの話だろう……ランカーで「オリンピア」使い?
……じぇんじぇん、覚えてないのです。
「そ、そんな有名じゃないのですよ……ユリはただのボッチゲーマーで……」
「銀河共有ネットの非公式ゲーマーランキング知らないの? ユーリィなんて言ったら、あのH・ルルカとトップ競い合ってるお化けゲーマーじゃない! でも……納得は出来るわ」
そこそこ、有名になってるっぽいとは思ってはいたけど、そんなんだったんだ……。
ルルカさんも……妙に縁があったんだけど、ホントにライバルだったのですよ……。
どおりで、どこ行っても絡まれた訳ですよ……。
「ラ、ランキングとかよく知らないのですよー! あ、ユリはお腹すいたのでログアウトするのですよ! 皆さん、お疲れ様なのですよー! さよならーっ!」
それだけ言って、ログアウト。
……いつもこうなのですよ。
皆、対戦終わるとわぁーっと話しかけてきて、ユリもアワアワ……ログアウト。
あんまり進歩してないのですよ。




