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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第三十九話「ユリのトリガーハッピーセット」①

「ユリコさん、こっちは指定ポイントに到達……。これより隠蔽待機に入る。通信も居場所がバレる事があるから、以降は基本パッシプになる。現時点で作戦方針に変更はないかい?」


 ……ライゼン工業高校チームから隠蔽モードの準備完了の報告。

 

 隠蔽モードってのは、伏兵モードとも言って一切動けず攻撃も出来ないけど。 

 至近距離まで接近されない限り、敵にも見つからないようになってるのです。


 ただ、隠蔽状態ではちょっとの移動もアクティブシールドの使用も厳禁、自分から通信の発信もしない方が良いし、レーダーもパッシブと目視観測のみになる。

 

 それなりに制限が多いのですよ。

 変なところで、隠蔽に入ると戦力外になったり、索敵能力の激減で、逆に奇襲されたりしかねないので、隠れる場所もよく考えないといけないのです。


 隠蔽待機してたら、風に流されて、気が付いたら変なとこにいた……なんてこともよくあるのです。


 その点で言うと、イマザワくん達の潜伏ポイントは最上級のポイント。

 

 なんだけど……そこが待ち伏せポイントとして最適だって事はマップの重力風の流れを見れば一目瞭然。

 出来る相手なら、当然そこを警戒すると思うのです。


 もっとも、先にイマザワくん達のところへ殺到するようであれば、逆にこっちが鉄床のハンマー役に回るだけの話なのです。


 一塊の相手に、二手に分かれると言うのは一見兵力分散に思えるのだけど。

 連携さえ上手くやれば、相手を翻弄できる……この状況では、一番勝率の高い作戦……なのですよ。


 なんにせよ、こればっかりは相手がいる以上、どう動くかは相手次第。

 悩んでても仕方がないのです。


 なお、フラッグシップについては一部の特殊艦艇を除いて、常時オープン。

 両軍の戦術マップには、常にお互いのフラッグシップの居場所が表示されっぱなしになってる。


 例外として、全動力カットによる漂流状態になることで、隠蔽同様の状態にはなれるんだけど。

 光学観測では即バレするし、再起動にも相応の時間がかかるので、見つかったらほぼ終わり。

 

 フラッグシップを隠したり、逃げ続けるってのは、あんまり現実的じゃ無いのですよ。


「……ユリコさん! レーダーに感あり! 敵影捕捉しましたわ……先頭はエース機「ファルシオン」みたいですわ。やっぱり敵のフラッグシップは一番後ろに回ってるみたいですわね……」


 うん、イマザワくん達には目もくれずに、まっすぐ突撃。

 一番、可能性が高いと思ってた戦術なのです。


「あわわわ……。アタシ知ってる。コイツめっちゃ早くて、良く動くヤバいヤツや! アタシに当てられるかなぁ……」


「大丈夫なのです。アレは変形中に無防備になると言う欠点があるのですよ。幸い長射程兵器も無いみたいなので、いきなり撃っちゃうのです! アヤメさん、まずは先制攻撃! 多弾頭ハイマニューバミサイルを全弾まとめて発射。敵の機先を抑えます。ソリッドの19番を使ってください」


 ソリッドの19番。

 ハイマニューバミサイルの機動アルゴリズムにユリ独自の改良を埋め込むと言うものなのです。


 普通のハイマニューバミサイルとは一味違う動きになるのですよ。

  

「……良く解らんけど、打ち合わせどおりにやれってことやな。19番のソリッドチップを1番スロットにツッコんで……と。これでええかな? あたしもこれよく解らんのやけど……なんや、上級者向けのカスタムプログラムなんやったけ? 売買掲示板によく売りに出とるのは見るけど、使い捨ての割にめっちゃ高いんや。ホンマにええんか?」


「大丈夫なのです。このソリッドは全部自前なので、そこら辺は気にしなくていいのです。こんな感じでどんどん指示出ししますから、ソリッドの入れ替え作業も頼みますね!」


 ソリッドの面倒くさいところ。

 基本的に手作業での入れ替え……管理も自分でしないといけないから、あまり多く用意すると訳が分かんなくなる。

 

 こんなの本物だったら、仮想領域に展開して、AI任せにするんだけどなぁ。


 それでも巡航艦を三人で動かせる辺り、結構無茶な話ではあるのですよ。

 

 本物の巡航艦は様々な任務に対応するマルチロール艦として運用されることが多く、護衛艦の統率艦や艦隊旗艦になることも多くて、軽く100人くらいの乗員が乗るのが普通なのです。


「任せとき! けど、こっちはフネとPS3機だけ……相手は軽く10機以上おるで……ホンマに勝てるんやろなぁ……。ミサイルもいきなり全弾まとめて撃っちゃったら、リロード終わるまで次撃てんから、小出しにした方がええんやないかな? つか、結局、この19番ソリッドってのはなんや? なんや、やたらといっぱいソリッド用意してくれたみたいやけど、何がなんだかって感じなんやけど」


「そのソリッドはユリが専用にチューニングしたミサイル誘導アルゴリズムプログラムなのです。並の誘導ミサイルとはわけが違うものになるのですよ。なので、敵は初撃にまともに対応できないはずです。だからこそ、ここは景気よく撃てるだけ撃っちゃうのです。実戦でも開幕ミサイル全弾ぶっ放しは艦隊戦のセオリーなのですよ?」


 ちなみに、今日日のミサイル戦闘は、亜光速でかっとんでいって、目標に近づいたら自爆して爆散円に巻き込む大型ミサイル……亜光速爆雷が空間戦闘の主流なのです。


 大規模艦隊決戦なんて、ここ何年も起きてないけど、亜光速爆雷の飽和爆撃戦術は、極めて有効な戦術とされていて、宇宙戦闘艦の大型化と小型宇宙機動兵器の衰退も概ね、これが原因だと言われているのですよ。


 要するに、宇宙戦闘機とかで無理して近接戦闘を挑むくらいなら、亜光速で飛んでいく大型爆雷の爆散円に巻き込んでダメージを与えるのが確実。


 小指の爪の先程度の破片でも直撃を受ければ、戦艦クラスでも致命的なダメージを受ける。

 レーザーやプラズマフィールドによる防御も亜光速で飛んでくる大小様々な弾片を防ぐとなると、完全ではない。

 迎撃側の戦術としては、自爆される前に破壊する……それがベストなのだけど。

 最近の亜光速爆雷は、20mくらいの大型が主流で、50mと一昔前の戦闘艦並みのものすらある。

 

 亜光速爆雷を大型化すれば、射程も伸びるし、生半可な攻撃では迎撃も出来ない……。

  

 そう言う発想で巨大化した亜光速爆雷は、ALシールドに分厚い正面装甲、迎撃対策のレーザー砲なども装備していて、もはや特攻用の戦闘艦……なんて言われるような代物になっている。


 もはや、決戦兵器……こんな調子で超長距離用の補助兵装から主力兵装へと進化を遂げるとともに、この亜光速爆雷戦術は、宇宙戦闘艦のカテゴライズにも大きな変化を与えたのですよ。

 

 戦闘艦も亜光速爆雷の大型化に伴い亜光速爆雷運用専門の超弩級雷撃艦と言ったkm級の超大型艦種が生まれ、戦艦や空母と言った艦種は廃れつつある。


 この辺は理由は簡単で、戦艦については、亜光速爆雷のほうが戦艦の主砲よりも射程が長く、そもそも砲撃戦自体があんまり起こらなくなった。


 宇宙空母も戦闘機飛ばすよりも、亜光速爆雷積んだほうが早いと言うことになり、宇宙戦闘機自体も拠点配備の大型機が主流になった事で、艦載用の小型機では亜光速爆雷や大型宇宙戦闘機に刃が立たなくなり、役に立たなくなってしまったのですよ。

 

 もっとも大型雷撃艦と言っても、空母と同じく図体ばかりのドンガメで武装も装甲も最低限なので、ステルス能力を強化し重力弾を装備した襲撃艦と言った天敵に弱いのも相変わらず。


 亜光速爆雷の対抗手段についても、同じ亜光速爆雷をぶつけて相殺する対抗雷撃って方法が主流になってきた。

 

 要するに、今時の戦争は単純な物量勝負……。

 

 もっともそうなると、今度は大型雷撃艦を襲撃艦や亜光速爆雷、大型亜光速戦闘機から守らないといけないという話になってきて、敢えて前に出てそれらに対抗する火力重視の近接護衛艦という艦種が出来てきて、今の宇宙艦隊の数的主力はそれ。

 

 今の宇宙戦闘艦が200m級の小型艦とkm級の超大型艦の両極端になってきてるのは、そう言う背景もあるのですよ。


 もっとも、これはエスクロン宇宙軍が始めた戦闘ドクトリンなのですけどね。

 

 ドンガラ船と小型艦と言う組み合わせは、シンプルなだけに現地生産もやりやすいので、人知れず紛争地の片隅に生産拠点をこっそり建設し、攻撃艦隊を用意して、宣戦布告の上で現地の防衛艦隊に決戦を挑む。


 従来式の重武装大型戦艦による少数精鋭主義の防衛艦隊では、このエスクロンの最新戦闘ドクトリンに全く対抗できないとすでに証明されており、各地の宇宙軍もドクトリンの変更を強制されている……と言うのが実情みたいなのですよ。


 この辺は、本来非公開情報だったんだけど、ロンギヌスの中央AIに接続したら、この辺の情報が解禁されてて、ドバーッと入力されちゃったのですよ。


 いやはや、ユリが知らない間にめちゃめちゃ進化してたのですよ……。

 こうなってくると、さすがに個人レベルの職人芸とか兵士としてのハイスペックとか……そんなの通じないような気もする。

 

 例えば、戦術予想、複数AI群の統括指令塔とか、特殊兵器の運用、そう言う代わりが効かない方面での有効な利用方法とか検討してるのかも知れない。

 

 そこら辺もあって、ユリもしばらく遊んでていいよって話になったのかも。


 そう言う観点で考えると、このスタークラスターの宇宙戦闘は、一昔前の様式……って気がしないでもないのです。


 スタークラスターの戦闘は、あくまで個人戦闘に重点が置かれてるのですよ。

 チーム戦とか、集団戦とかは、割と最近になって出て来た形式。


 ミサイル戦術については、どっちかと言うと集団戦向けで、非主流とされる戦術なんだけど。


 この戦術に対抗するには、事前の装備選定とか機種選定……対策が重要。

 それも対策して無ければ死ぬだけだけど、使わない相手だと完全に無駄になる系。

 

 個人の集まりの野良チームとか、適当に仲間募集しての即席チームだと、対応するのは難しいというのは想像に難くないのです。

 

 ユリが強豪になれたのは、このミサイル戦術を極めたからなんだけど。

 今から思うと、ちょっとズルかったかなぁって思わなくもないのですよ。

 

 ちなみに、このゲームに出てくるミサイルは、割と一昔前のもので、細長い多段ロケット式の旧態依然とした代物。

 

 大きいものだと50mもある亜光速爆雷ほど大きくもなく、多弾頭式で細かく分かれて、目標付近では細かく分かれて超高機動でグルグル周囲を回りながら、隙を見て突っ込んでいくハイマニューバミサイルってのが主流。

 

 この誘導アルゴリズムをユリなりに手を加えているのですよ……。

 幾多の強豪が、この多弾頭ミサイルによる飽和射撃でなすすべなく散っていったのです。

 

 とにかく、このVR世界……ミサイル兵器は大半が対PS用の多弾頭ミサイルが主流。

 現実の最新兵器、亜光速爆雷なんてのは無い。


 そもそもPS自体が持てる携行兵器として、対大型艦用兵装自体がそこまで多くない。

 肉薄して取り付いてしまいさえすれば、大型艦でも割と為すすべがないからって、対艦兵装をわざわざ用意するってのは、少数派。

 

 いかんせん、フラッグシップ戦自体が結構、特殊と言えば特殊な上に、皆デストロイヤーばっかり使うから、そこまで問題にならないってのはあると思う。


 ……なんだけど、一番互角に近い条件で大人数での対戦ができると言うのもまた事実なので、今一番アツい対戦ルールでもあるので、多分これから色々と新しい戦闘様式とか開発されてくんじゃないかなぁ?

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