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宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!  作者: MITT


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第三十七話「スペシャルズの少女たち」①

 それから十分後……。

 アキちゃんは、ポートグラベスと呼ばれる企業中枢島アイランドワンの片隅にあるエアプレーンポートにいた。


 その姿は、焦げ茶色のワンピースに水色のジャケットを羽織って、少しばかり大きめのボストンバッグを背負っただけで、何処にでもいそうな休日の女子高生と言った雰囲気ではあった。


 もっとも、ここは大学や高校など教育施設が集まるカレッジタウンでもショッピングエリアでもなく、研究施設エリアの最寄りエアプレーンポートであり、その利用者も研究員や出入りの業者と言った一般社員がほとんどだった。

 

 そんなポートグラベスに、学生がいると言うのは珍しく、彼女は自然と注目を浴びていた。


「おお、ホントに来ちゃったよ! こっちこっちー!」

 

 唐突にそう叫ぶと、大きく手を振る彼女の目前に垂直離着陸式の無人エアプレーンが降りてくる。


 目が覚めるような深めの青一色の塗装にエスクロンのロゴマーク「ESC」の文字だけのシンプルな外装のダブルローター機。


 見る人が見れば、それは要人移動用の特別機だとひと目で分かるもので、この機体のシリアルナンバー000ともなると、本社機能が集結したアイランドワンでも滅多に見ないような超レア機体であった。

 

 同じように定時エアプレーンの到着を待っていた一般社員達も、一体どんな重役が来たのかとざわつき始めていたのだけど、そんな彼らを縫うように、どこにでもいそうな女子高生が普通に機体に乗り込んでいくのを見て、彼らは二重に驚くことになった。


 アキちゃんは手早く、ファーストシートに乗り込むと、コンソールに行き先を入力する。


「んじゃ、行き先は指定座標でよろーっ! え? その座標には、なにもないって? 行けば解るって……いいから、出発しんこーっ!」


 そう言って、問答無用で発進させようとするのだけど、それは寸前でストップがかかる。


「待った待った! ボクらも乗るよーっ! アキちゃん、おまたせっ!」


「すみません、アキさん。私達も便乗させてもらいますね! 良かった、ぎりぎり追いつきました! と言うか、いつもはIDチェックとかであちこちで、結構待たされるのに、今日は、ホントにまっすぐストレートにここまで来れちゃいましたね。それにこれ……VIP専用特別機の「ブルースカイ」……それも000号機とかめちゃくちゃレアな機体じゃないですか……ホントにこんなの使えるんですね……」


 ドタドタとエアプレーンのキャビンに、サイドテールにもみあげを長く伸ばした黒髪の快活そうな少女と、青いロング髪のお淑やかそうな少女が乗り込んでくる。

 

 二人共お揃いのブレザーを着て、傍目には普通の女子高生にしか見えない。


 周囲は、一般社員の野次馬でいっぱいになっていたのだけど。

 続々と女子高生が乗り込んでいく様子に、誰もが唖然としていた。


「あ、ダーナにフラン……。そういや、ここで待ち合わせてたんだっけ。先にエアプレーンが来ちゃったから、容赦なく置いていくところだったわー」


「もうっ! 危うく置いてけぼりになるかと……。けど、結局ユリコお姉様は来れないみたいですね……。フラン、寂しいです……」


 言いながら、青髪の少女フランセスは悲しそうにしょげ返ると、アキちゃんの隣の最前列、ナビシートに丁寧にスカートを整えながら、優雅に座りこむと手にしていた大きなボストンバックを足元に置く。


 そのまま当然のように、シートベルトを装着して、アームレストのコンソールを引き出して、操作をしようとして慌てたように止める。

 

 どうやら、いつもの癖なのか、着座後のキャリブレーション操作をしようとしてたらしかった。


 当然ながら、このエアプレーンはAIによる自動操縦なので、乗客が操縦する必要などなかった。


「そりゃ、7000光年彼方のクオン星系に居るんだもん。来れるわけないよ。けど、ユリコ姉さんかー。久しぶりに会いたいね! アキはこないだ会ったんだっけ! 元気だった?」


 こちらのダーナは、アキの後ろの席に回り込むと、後ろからアキちゃんの肩に手を回して顔を寄せる。


「元気も元気! 軽くシュバルツと一戦交えちゃったんだけど、軽く返り討ちだもんねー。おかげで、アキも実戦証明付きですよ!」


「聞いた! 聞いた! ……相手は新型のステルス潜航艦だったって話なのに、あっさり見破っちゃったんだってね! あの人相手にこそこそステルスなんて、通用する訳がないからねー」


「ですよねー。ユリコお姉さまとの模擬戦って、ジャミング環境下だろうが、ALスモーク焚いててもお構い無しで、ピンポイントで超長距離レールガン狙撃されたりしますからね。本人、何となくそこに来ると思ったとか言ってましたけど、着弾ラグが軽く一分くらいあるのに、偏差射撃の直撃をもらうとか、もう意味わかりませんよ……」


「だよね……。エーテル空間の対潜航艦戦なんて、誰も経験ないのに、手慣れた感じで対潜網とか展開させちゃって、ノイズの山から予想座標サクッと割り出しちゃうしさ! いやぁ、カッコよかったよー! 高速魚雷がロンギヌスにギュンギュン迫ってて、AIですらも取り乱してるのに、どうせ当たらないから、うろたえるなっ! とかビシッと決めてくれちゃってさ! で、ホントに目の前で自爆しちゃって、皆呆然って感じだったよ」


「ユリコさん相手だと、ブラフアタックなんて通じませんからね。半端な攻撃なんて仕掛けようものなら、本命撃つ前にカウンター食らって即死ですよ……。大方、その相手もそんな感じだったんじゃないですかね……」


「さすが、フランちゃん! 永遠の空間戦闘次席エースだけに、良く解ってるね。そっから先は、一方的な狩りの時間って感じで、あっさり蹴散らしておしまい。民間のCM飛行船に偽装したうっざい電子戦機も居たんだけどね。どうしたと思う?」


「……誤射と称して、しれっと撃墜ってとこじゃないかなぁ? ユリ姉さんって、大人しそうに見えて結構過激じゃない。戦場をうろうろしてて、流れ弾が当たるなんて普通なのです……とか、言ってそー!」


「さすが、チームユリコのメンバーだけはあるね。全問正解っ! ピンポンピンポーン! でも、年末には帰ってくるらしいから、すぐ会えると思うよ! それよりも、今日は私達の兄貴分、新CEOさんのお屋敷訪問の上で、ご挨拶なんだから二人も身だしなみとかシャンとする。他の子達も皆集まるから、第三世代全員集合お泊り会だよ!」


「……聞いてませんよ? でも、そう言う事ですか……。そうなると、ケリーとダゼルも一緒ですか? うふふ、あの子達とってもかわいいですからね。昔は寒い夜とか皆で、代わる代わる抱き枕代わりにしたりしましたよね」


「あはは……本人達は、お姉さん達に抱きしめられて、とても寝れなかったって嘆いてたよ。って言うか、全員集合になったのって、私のやらかしなのだよね……。いやぁ、メールの宛先間違えて、全員に送っちゃった!」


「アキのそれ……確信犯だよね? でも、ボクら第三世代強化人間を即時で全員招集とはまたすごい話だね! てか、ダゼルとケリーかぁ……あいつらチビだったのに、今や第三世代戦闘用強化人間のエース格だもんね。ボクもあの二人相手だと厳しいからね。もっとも、あの子達でもユリ姉さんには勝てないんだろうね……」


「あの人、白兵戦苦手って言ってましたけど、全然嘘ですからね……。言っときますけど、ダーナも別に弱くないと思いますよ。なにせダーナって宇宙軍のゼロG白兵戦演習では無敵……空間機動歩兵での空間戦闘でも負け知らず。私は白兵戦は専門外ですけど、ダーナとダゼル、ケリーは確実に近接戦闘トップ3だと思いますよ。ただし、ユリコ姉さまは別格だと思いますけどね」


「あれは、さすがに勝てないよ。なんせ先読みが尋常じゃないからね……一手どころか五手、六手先とかそんな世界だもん……いくらなんでもおっつかないって! 姉さんなら、噂のスターシスターズ相手でも勝てるんじゃないかな? フランはどうなんだい? 確か、宇宙軍の次世代兵器試験艦「ペイル・ギュント」のテスト中に暴走AI戦艦の生き残り艦隊と不期遭遇戦、随伴艦やコロニーへの被害どころか、一〇分もしないで軽く全滅させて、宇宙軍エースドライバー……「軍神」の称号もらったんでしょ? そろそろ、ユリコ姉さんの背中くらい見えてきたんじゃない?」


「私なんて、お姉さまとエレメント組んでも、後ろから付いていくのがやっとだったんですけどね。そんな私でもいきなり実戦に巻き込まれて、相手は十隻もいたのに、余裕で蹴散らせて、もうビックリです! 私って結構、強かったみたいです……と言うか、普通に避けるだけで全然当たらないし、普通に撃てば普通に当たる……拍子抜けしたくらいですよ」


「うーん、さすがはフラン……ユリちゃんに着いていけるって時点で凄いって皆、言ってたんだけどね。アキも色々聞いてるよ。ダーナとフランでコンビ組んで宇宙軍のアグレッサーやってるみたいだけど。宇宙軍の歴戦の猛者達がお前ら少しは手加減してくれって、泣き入れてきたって聞いたよ」


「私達二人よりも、お姉さまの方が遥か上なんですけどね……。私達如きに泣いてるようじゃ駄目ですよ。皆さん、頑張りと根性が足りないんですよ!」


 そう言って、フランセスが笑うと他の二人も笑いあう。

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